第3話 「SFの次は王道ファンタジーか」
今回はファンタジーです。
良い言い方をすれば王道。
悪い言い方をすればベタです。
ではどうぞ。
今、右腕が変形して銃になっている瑠璃色髪の美女は、命に跪いていた。
「…俺が何だって?」
「私にプログラムされた主は貴方です」
間髪入れずに、淡々と答える美女。
「…質問を変えるか。お前は何者だ?」
今度は顔を上げてその無表情な顔で答える。
「私は戦闘用に作られたロボ、BR-02、アスカです」
「戦闘用ロボットさんですか~?何でこんな所に~?」
しかし、アスカと名乗ったロボは、カガミの方を向くが質問には答えない。
「あの~…?」
「私はマスター命以外からの命令、質問を答える義務はありません」
淡々として、変わらない口調で答えた。
「成る程、さっき入力したマスターネームと言うのは主を設定する物でその主以外の命令に従うのか…」
「はい、その通りです」
命が呟いた一言に、コクリと頷いて肯定するアスカ。
「それじゃあカガミの質問にも答えてやれ」
「はい、マスター命。私の中にある情報によると私は、この運搬飛空艇ハイペリオンで研究施設に運ばれる途中だったそうです」
「じゃあ何てこんな所に飛空艇が墜落しているのですか~?」
「それは不明です」
その後、暫く沈黙が辺りを支配する。
「まあいい、警備ロボは全部破壊したみたいだし…メインブリッジが何処にあるか分かるか?」
「はい」
「ならそこに案内してくれ。どれだけのシステムが生きているか知りたいからな。っと、創造・解除」
そう言うと同時に、命が手に持っていた村正が光となって消えた。
「了解しました、マスター命」
アスカはそう答えると、右腕を変形させて普通の手に戻した。
こうして3人はアスカの案内でメインブリッジに向かう事になった。
□□□□□
「ここか」
機械的な扉を潜ると、そこはガラスがドーム状に張ってあり、見晴らしの良くなっている場所だった。
そして左右には階段で下りれる場所があり、下はまた透明のガラス張りの部分があり下が透けて見えた。
そして、3人の正面には船の舵の形をした操縦桿があり、その左右に3つづつディスプレイが設置してあった。
「起動させるにはどうすればいいんだ?」
「此方の鍵穴にキーを刺して回せば起動します」
ディスプレイの横に鍵穴があり、そこには既に鍵が刺さっていた。
命はそこに近づいて鍵を回した。
キィィィンと音が響くと、メインブリッジに電気がつき、ディスプレイは左側の1番端以外は何かが表示された。
「わぁ~、凄いです~」
「システムは思ったより生きてるな…」
ディスプレイを確認しながら命は呟く。
「と言うか、言語は日本語かよ…」
そう、ディスプレイに写されている文字は日本語だ。英語も所々にあるが。
「損傷は…メインエンジンの魔核と左翼の魔核が破損?…飛行不可能か」
飛空艇の状態を確認していると、そんな表示があるのに気が付いた命。
「魔核って何だ?」
カガミとアスカに向かって質問をすると、カガミが前に出て命と同じくディスプレイを見ながら答える。
「魔力の塊である石です~。飛空艇に使用している核は風の魔核と呼ばれる風の石だそうです~。この国以外でも使われていて他にも火の魔核、水の魔核、土の魔核があります~」
「それは修理できるのか?」
「いえ~、一度破損したら修理は不可能です~」
それを聞いて命は少し考える。
「(となると新しい物を入手するしかないか…この国以外でも使われているという事は販売もされている筈…)購入はできるのか?」
「はい~。でも魔核は高級品なので普通の市場には出回らないと思います~」
「そう上手くはいかないか…他に入手できる方法は?」
「鉱山から掘ったり…上位の風の魔物の体内でも稀に見つかるそうです~」
そこで命はまた考える。
「(普通の市場に出なくても闇市なら手に入るか?ともかく金が要るな…食料を買う金、風の魔核を買う金…前途多難だ)ともかく町に行く。後の事はそれから考えるとするか」
「はい~!」
「了解です」
こうして3人は飛空艇から出て、東にある町を目指すのだった。
□□□□□
「創造・ブリューナク!」
創造の力を使い、命の手に光が集まり、それが1本の槍の形を成した。
ブリューナクとは、ケルト神話の太陽神ルグが持っていたとされる光の槍であり、貫くものという意味である。
武器自体が意思を持ち、敵に向かって飛んでいくという投げ槍だが、命の創造したブリューナクは意志は持たず、投げる事もできるが斬る事も付く事もできる形状だった。
黒い柄に白銀に輝く刃、柄頭に短い鎖が付いていた。
その槍で、命は向かってくる鎧で武装した二足歩行のトカゲの頭を貫いた。
「これってもしかしてリザードマンとかいう魔物か?」
命達3人は、鉄の大地と呼ばれるガラクタ山から抜けて森に入り1時間ほど歩き続けた所、鎧を装備し、剣やらトマホークやら槍やらを持った二足歩行のトカゲの集団に襲われたのだ。
ブリューナクを肩に担いで後ろにいるカガミとアスカに聞く命。だが後ろからはまだ武装したトカゲだ手に持ったトマホークを振りかぶる。
しかし命は振り返りもせずにブリューナクを手の中で回すと、切っ先をトカゲの方へ向けてそのまま突き出すと、見事トカゲの喉を貫いた。
そのまま振り返り、ブリューナクを薙ぐと、血を噴出してトカゲの首は飛んでいった。
「は、はい~…此方の世界では討伐ランクBBBのリザードマンです~…」
血を見たせいか、カガミは口元を押さえながら顔を青くしている。
「SFの次は王道ファンタジーか」
そう呟いて、再度ブリューナクを構えた。
アスカは、変わらない無表情で右腕を銃に変形させる。
「魔力充電………ファイア」
銃口に淡い光が灯り、そこから高速で光が放たれると、リザードマンに命中する。
命中したリザードマンの鎧は粉々に砕け散り、大きく吹き飛んでいった。
それを見た他のリザードマンは勝てない事を悟ったのか、さっさと逃げていった。
そして命とアスカは、カガミから聞いたリザードマンの部位である牙と鱗、他には装備していた剣やトマホークを回収した。
牙や鱗はカガミが大きめの革袋を持っていたのでその中へ。剣やトマホークは命とアスカがそれぞれ幾つか持っている。
「なあアスカ、お前の右腕の銃の弾って何だ?」
命は、ふとした疑問をアスカに聞く。
「…私の主力装備の銃、EX-バーストは私の魔力を弾として撃ち出します。…少々充電に時間がかかりますが私の魔力がある限り撃ち続けれます」
「なら、他の装備はどうなんだ?」
「私の場合は左腕も変形してマシンガンタイプの銃が装備されていますが此方は弾丸が有限なので使用は控えています」
「成る程、ならフォーメーションは俺が前線、カガミは後方から白魔法でサポート、アスカはカガミの傍で射撃だ。アスカはカガミが狙われたら近づく前に撃て、いいな?」
「了解しました」
「はい~…うっぷ…」
淡々と答えるアスカに対し、カガミはまだ吐きそうになっている。
「だらしが無いな…」
ブリューナクを消すと同時にカガミに近寄っていく命。
「大丈夫か?」
命は、座り込んでいるカガミに手を差し伸べると、カガミはその手を掴んで立ち上がった。
「は、はい…何とか…」
「なら早く立て、さっさとしないとまた魔物に襲われるぞ。と言うか仮にも天使なら戦った事無いのか?」
「わ、私…師匠との修行の稽古くらいしかした事無くて…」
「…ったく、もういい。とにかく先に進むぞ」
気を取り直して先に進む3人。しかし進んで行くと、また妙な魔物の群れが見えた。
「緑色の…気味の悪い生物…あれは?」
「あれはゴブリンですね~…討伐ランクはDで、特徴としては女性を攫って巣に持ち帰り犯すらしいです~…」
背が低く、2頭身そこそこで緑色の子鬼のような格好をし、手には短刀や棍棒を持っているゴブリンの群れを発見した。だが向こうはまだ気づいていないようだ。
「マスター命、向こうはまだ此方に気づいていません」
「そうか…カガミ、ゴブリンの部位は?」
「え~…装備している武器くらいです~」
武器はありすぎると持ち運びに面倒だという理由で、ゴブリンの群れはスルーする事になった。
が…
「ひゃうっ!?」
カガミが足元の木の根に躓き、転んでしまう。
勿論ゴブリンは一斉に3人を見た。
「マスター命、発見されました」
「…見りゃ分かる。契約・キマイラ」
契約の力により、命の姿が変化していく。
まず頭からは獅子の耳が生え、首周りから少し毛が生えて指の爪が鋭くなる。そして両肩の後ろからは山羊の頭が現れ、後ろ腰からは蛇を模った尻尾が生えた。
キマイラ、知っている方は知っているだろうが複合獣として名高い幻獣であり、顔は獅子で胴の左右からは山羊の頭が生え、尾は蛇という姿。
ギリシャ神話によればキマイラは巨人テュポーンとエキドナの子であり、皆さんもよく知る三つ首の番犬、ケルベロスとは兄弟関係にある。
閑話休題。
命達に気が付いたゴブリン達はワラワラと3人に向かってくる。
「いいか?さっきのフォーメーションで戦うから援護は任せたぞ」
「了解です」
「はい~!見つかってしまったからには何とか汚名返上するのです~!」
カガミは後ろに下がり、アスカは右腕を銃に変形させ、命はゴブリンに向かって突っ込んで行った。
「ガアアアアアアッ!」
まず命は、鋭くなった爪で一番近いゴブリンに接近し、切り刻んだ。
「ギョアアアアアアアアアアアア!?」
全身から赤い血を噴き出して、そのゴブリンは息絶えた。
「ヘェアアアアアア!」
他のゴブリンは命に武器で襲い掛かろうとするが、一旦命は後ろにバックステップで下がる。
すると命の横を瑠璃色の光が通り過ぎてゴブリンに直撃した。
言うまでもないがアスカだ。
アスカの銃撃を受けたゴブリンは当たった部分から血を噴き出しながら吹き飛び、草陰の向こうに消えた。
「荒神式格闘術・乱打拳!」
命は、キマイラの力で強化された拳をゴブリンに突っ込みながら連続で放つ。
「光よ…勇なる彼に猛き力を…!ストレングス!」
カガミが呪文を唱えると、命の体が淡い光に包まれてそのままゴブリン達を殴り飛ばした。
するとゴブリン達は想像以上に吹き飛び、森の奥まで行ってしまい見えなくなる者や、木に直撃し、その木が折れるなどの事が起こった。
「…カガミの補助魔法か?まあ無くても大丈夫だったと思うが…今殴ったゴブリン達死んだな…」
元々身体能力が高く、異世界は重力が弱くて更に力が出せ、キマイラの力で強化されていると言うのに更に身体強化の魔法までかけられた命の拳に殴られれば、骨の一本や二本では済まないだろう。
それこそ今殴られたゴブリンの様に絶命してしまう可能性大だ。
すると、ゴブリン達はバラバラに散り始めた。
一箇所にいると一網打尽にされてしまうと思ったのだろう。
しかし、命は気にせず大きく息を吸う。
そしてそのまま大きく息を吐くと、歪んだ空気が命の口から放たれた。
キマイラは、口から高熱の吐息(炎という説もある)を吐き出すと言われ、その熱量は鉄をも溶かすそうだ。
その高熱の息を散ったゴブリン達全員にあびせると、ゴブリンの持つ武器は溶け、更には肌を焼き、苦しませていた。
「み、命さん凄いです~」
「油断するな、まだ生きてる奴もいるぞ」
今の熱息をもろに受け、焼死したゴブリンもいるが、難を逃れて生きているゴブリン達は少し溶けている武器を構えて突撃して来た。
「ケケケ、右だぜ宿主さんよ」
突然聞きなれない声が響くが、命は右を向くとゴブリンが短刀を持って襲ってくる所だった。
それを裏拳で吹き飛ばし、声の主を探す。
「ケケケケ、何処見てるんだ?アンタの肩だよ宿主さん」
「そういう事だよ。君が宿したのに分からないって酷くないかい?」
ハッとして自分の左右の肩を交互に見る。
「そうそう、俺達だよ」
先ほども描写した通り、キマイラの力を宿した命の両肩には山羊の頭が生えている。
「お前等は何だ?」
「俺達に名前はねえよ。分かりやすく右とか左とかって呼んでくれや」
飄々とした口調の右肩の山羊。
「そういう事、僕達はそれぞれ個別の意志を持ってるから…まあ君が宿主だし死なれないようにサポートするよ」
少し子どもっぽい口調の左肩の山羊。
「まあ尻尾の蛇も個別の意思はあるけど…君の意志でも動かせるから試してみたら?」
「ケケケ、ってか前見ろ前」
命は右と左が喋った事に驚きながらも、戦闘中だったのを思い出して前を向いて構える。
飛び掛ってきたゴブリンをカウンターの拳で吹き飛ばし、左から接近してくるゴブリンに素早く近づき、武器が振られる前に蹴って吹き飛ばす。
「ヒュー、やるじゃん宿主さんよ」
「うんうん、中々優良物件だねぇ」
「お前等煩い。捥ぎ落とすぞ?」
左右の直ぐ傍から聞こえる声に少しうっとおしそうに顔を顰める。
「ケケケケッ!口は悪いが実力は本物か!」
「これは面白そうな宿主だね?」
「…やれやれだな」
そう呟いて、前から飛び掛ってきた2匹のゴブリンの頭を掴むと、手に力を込めて握りつぶした。
「ケケケケケケッ!」
「おー!スプラッター!」
そして離れた場所にいるゴブリンが瑠璃色の光…アスカの魔力弾に吹き飛ばされると、後ろから襲ってきたゴブリンを、尻尾の蛇でかんじがらめに縛り上げ、そのまま蛇の毒牙の餌食にした。
「あはははは!面白い具合に手が真っ赤だね!」
「ケケケ!でも服には返り血なんて一滴も付いてねえ!上手くかわしてたんだな!」
「…もういい。契約。解除」
「「あ…」」
そう言うと命の姿は元の姿に戻り、両肩にあった煩い山羊の首も消えていた。
「まったく…クセの強い奴らだったな」
勿論、それはゴブリンではなく山羊首の右と左である。
「大丈夫ですか命さん~?」
此方に走ってくるカガミと、腕を戻しながら歩いてくるアスカ。
「…ていっ」
だが命はカガミの頭に軽めのチョップを入れた。
「あいたっ!?」
そのチョップを受けたカガミは頭を押さえてよろめく。
「な、何するんですか~?」
「…過ぎた事を一々言いたくは無いがもう少し戦闘に参加しろ。お前後半なにもしてなかったじゃねえか?自分で見つかる原因作ってコレか?」
「だ、だって呪文を詠唱していたらもう終わってたんですもん~」
「だったらもっと早く唱えれるようにするんだな。足手纏いなら置いていくと最初に言ったからな?二度目は無いぞ」
そこで命は説教を打ち切り、ゴブリンの武器を回収するのだった。
「むぅ~…どうすれば上手くいくのでしょうか~?」
カガミは、首を捻ってどうすればいいか考えていたのだった。
□□□□□
「…で、ここが?」
「はい~、ここがこの北大陸最西端の町のフェルナードです~」
辿り着いた町はいやに活気がなかった。
「…妙に暗いと言うか…沈んでるな」
道端にはボロボロの衣服を身につけている子供や、バタリと倒れて、寝ているのか死んでいるのか分からない老人もいた。
道に並んでいる出店の商品も、あまり多くない。
「部位の換金は何処ですればいいんだ?」
「ギルドに行けば換金できます~」
するとガラの悪そうな5人組が命達の行く手を塞いだ。
「なぁ兄ちゃん…何か金目の物置いてけよ?後ろのお譲ちゃん達でもいいけどなぁ?」
だが次の瞬間、5人組は宙を舞った。
命が全員の顔面を殴り飛ばしたのだ。
5人組は吹き飛んで建物の壁にぶつかってやっと止まった。
「ガラの悪そうな連中もいるな…カガミ、アスカ、俺からあまり離れるなよ」
「は、はい…」
「了解です」
2人とも、特にカガミは怯えているのか俺に近づいて町を進んで行く。
町を暫く歩くと、大きな看板で傭兵ギルドと書かれた看板が見えてくる。
「あそこか…」
その建物の中へ入ると、そこは酒や食べ物の臭いが漂い、命はあまり好きにはなれないなと思った。
その辺の席には、鎧や魔導士の服で武装し、剣や戦斧、杖を背負っている屈強そうな男達がいた。
いや、女性もいるが…ゴリラみたいな奴ばかりだ。
辺りを見渡すと、カウンターらしき場所に向かう。
するとカウンターの向こうにいた受付嬢らしき女性が命達に気が付いたのか営業スマイルを浮かべる。
「いらっしゃいませ!傭兵ギルドにようこそ!本日はどのようなご用件ですか?」
「魔物の部位を換金したい」
そう言うと、カガミが前に出て革袋をカウンターに置き、持っていたリザードマンの剣とトマホーク、ゴブリンの短刀や棍棒をカウンターに置いた。
「…」
受付嬢は、目を見開き、口をあんぐりと開けていた。
「…どうかしたか?」
暫く待っても何の反応も無かったので、命は声をかけてみる。
「えっ!?あ、これってリザードマンの牙と鱗と装備ですよね!?ゴブリンの短刀や棍棒はともかく、リザードマンなんてどうやって討伐したんですか!?」
「どうやってって…普通に戦っただけだ。それくらい察しろ」
「ちょ、ちょっとギルドカードを見せてもらってもいいですか?」
「持ってない」
ギルドカードというのは何だろうかと考えながらもきちんと受け答えする命。
よく見ると周りのギルド員や傭兵達もどよめき、驚いている。
「も、持ってないって…ギルドに登録はなされていないんですか!?リザードマンといえば熟練の戦士が2人がかりでやっと倒せるBBBランクの魔物ですよ!?貴方達みたいな若い人達が倒せる相手じゃあ…」
「煩い、少し黙れ。俺達は鉄の大地の方から歩いてくる途中にリザードマンに襲われて、倒した。それが全てだ。早く換金しろ」
初対面、そして年上の女性に対する言葉使いではないが淡々と言い放つ命。
「は、はい…!すぐ換金します!」
女性は牙や鱗や武器を品定めして、カウンターの下から袋を取り出した。
「此方に部位全てで…21397ギルになります」
袋に入っていたのは、銅貨7枚、銅塊9つ、銀貨3枚、銀塊1つ、金貨2枚であった。
「良し、行くぞカガミ、アスカ」
そしてその袋を受け取ると、外に向かおうとするが、大柄な男に阻まれる。
「…何か用か?」
命はうっとおしそうに声のトーンを落として男に問いかける。
「ヘヘヘ…何、オメーみたいな小僧がリザードマンを倒せる訳がねえからな?どんなインチキしたか聞きたくてなぁ?」
嫌な笑いを浮かべて命に近寄っていく男。
「お譲ちゃん達美人だなぁ?そんなガキじゃなくて俺達の所に来ないか?」
「ひっ!お、お断りします~…」
「…」
カガミは少し引き気味で、アスカに至っては完全無視だ。
「おい、何だよ今の?そっちの譲ちゃんは無視か?あァ?」
命を押しのけて2人に近づこうとするが、その命は大男の腕に押されてもビクともしない。
「く…この…!」
「邪魔だ。引っ込め三下」
「あァ!?何だとテメェ!?俺はギルドランクCCだぞ?三下はテメェだろうが!」
殴りかかろうと腕を振りかぶる男だが次の瞬間、男の視界はグルリと回って地面に倒れた。
「がっ…はっ…!?」
「で、どうした三下?」
今のは、殴りかかろうとした時に命が手を取って投げ飛ばしたのだ。
「ゲホッ…!テメェ…ぶっ殺す!」
男は立ち上がり腰に挿している剣を抜こうとするが、命は剣が抜かれる前に柄頭を足で押さえ、柄頭を踏み、軸足にして反対の足で男の顔面を蹴った。
「グボッ!?」
「…荒神式格闘術・刀止脚」
今の技は、相手が腰の剣を抜く前に足で止め、そこを台として足を置き蹴りを放つものだ。
男は蹴り飛ばされると木製のテーブルに突っ込み、倒れた。
「行くぞ2人とも」
周りが呆然としている中、命はカガミとアスカを連れて外に向かおうとする。
「待ちなさい」
低い老人の声で止められる命。
振り返ると、背が低く、腰の曲がったしわくちゃの老人がいた。
「どなたですか~?」
「ワシはここの傭兵ギルドの支部長じゃよ…所で少年、今の身のこなしにリザードマンを倒したのもお主等じゃろう?ならワシからの依頼を受けてみんか?」
「今はいい、金は今換金したし探している品があるんだ」
きっぱりと断り、ギルドから出て行こうとする命だが…
「フム、その品とは?」
「風の魔核なのです~」
支部長が質問し、カガミがバカ正直に答えてしまい、軽く溜息を吐く。
「成る程、じゃがこの町ではたとえ闇市でも魔核なんて手に入る状況ではないぞい?」
「何故だ?」
「この町の状況は見たじゃろう?ここは北大陸の最西端じゃ。つい3ヶ月前に東へ向かう唯一の道であるバグラの谷にAAランク魔物の大百足が住み着いたのじゃ」
その話の内容に命は話の展開が見えてきた。
「最西端じゃし此処以外に大きな町は無く、行商人の出入りも全く無くなってしまってのぅ…そこで大百足を討伐してくれんかう?」
3ヶ月も誰も討伐しない所を見るとかなり強力な魔物のようだ。
そう察した命は実力を上げる為に戦ってもいいかと考える。
「し、支部長!?登録もされていない方に討伐の依頼を出すのは…」
「煩いのぅ…だったらこれはワシが個人的にお主等に頼む依頼じゃ。これなら問題あるまい」
「報酬は?」
「フム、風の魔核が必要ならばワシの私物である風の魔核を…まあ3つやろう。勿論金も報酬として出す。そうじゃな…風の魔核が3つじゃから30000ギルでどうじゃ?」
命はまだこの世界の金銭感覚は分からないが高級品の風の魔核を3つにさっきの換金より高額となるとそれなりにいい依頼なのだと悟る。
「カガミ、アスカ、2人はどうする?」
「私は構いません~」
「私はマスター命に従うだけです」
返事を受けた命は、支部長に向けて言う。
「その依頼を受ける」
三点「はい、どうも!今回の後書きにはアスカさんに来てもらいました!」
アスカ「どうも」
三点「えーっとアスカさん、ちょっと聞いていい?」
アスカ「何ですか?」
三点「アスカさんって腕が銃になるけど、その腕って痛みとか感じるの?」
アスカ「はい、一応神経はあります。神経が無ければ物を触れる時に上手く持てないので。しかし銃そのものは鉄なので痛みはありません」
三点「じゃあ血とか出るの?」
アスカ「私の場合、血液ではなくオイルが体を流れています」
三点「因みに色は?」
アスカ「赤です」
三点「ほぼ血じゃん」
アスカ「ではこれで」
三点「え?もう行くの!?って行っちゃった…まあいいや!では次回は…
町に辿り着き、大百足の討伐を引き受けた命一行。
その準備を進める内に、思いもよらぬ所で新しい仲間が!?
次回、「臆病である事と慎重である事も違う」をお楽しみに」
えー、次回はゼロの使い魔のような成分がありますが決してパクリではありません。
書いていたらあんな風になっただけでゼロ魔をパクッた訳じゃありませんのであしからず。