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第1話 「死ね爺」

最初に言います、この小説はテンプレ的要素が含まれていますのでそういうのが苦手な方は早急に戻って下さい。


他にもいろいろ至らない点があるでしょうが作者はガラスのハートの持ち主なので辛口コメントはご遠慮願います。


ではどうぞ。

朝。


静かな和風の屋敷の端にある道場の傍で雀がチュンチュン鳴いている。


その道場の中で、真剣の刀を腰に挿した老人が1人。


老人の姿は剣道着に頭の後ろで結った白髪、そして顎と鼻の下に白い髭があり、顔に年相応のシワがあり、貫禄が見られる。


しかし、雀の鳴き声が止まったその瞬間


「死ね爺」


物騒な言葉と共に、老人の足元の板が壊れてそこから1人の青年が飛び出してくる。


青年の姿は老人と同じく剣道着。髪は黒く、首の付け根の少し下辺りまで伸びており、紐で結ってある。


顔つきは美形、と呼ばれてもいい程だが目つきが悪過ぎる。その鋭く、赤い目はかなり恐い。


その手には朝日を受けてギラリと輝く刀。これも本物である。


地面から突然現れた青年は刀を突き刺す様に老人に突き出すが、慌てず老人は回避して腰の刀を抜いて青年を斬ろうとする。


「チッ」


青年は避けられて、奇襲が失敗したのを悟ると穴から出て老人と距離を離す。


「フォフォ、少し驚いたがまだまだ甘いのォ」


「喧しい。今日こそアンタの頭と胴体をサヨナラさせてやる」


青年は刀を構え直すと老人に接近する。


「荒神式刀剣術・斬龍刀」


肩に担ぐ様に刀を構えて老人を攻撃範囲に入れるとその刀を鋭く振り下ろす。


「ホイっとな」


だが老人は焦った様子も無く軽くその刃を手に持つ刀で受け止めると、甲高い金属音が辺りに響く。


再び青年は老人と距離を離して刀を正眼に構える。


「今度はこっちから行くぞい」


老人が言葉を発すると同時にその場から消える。


「…っ!後ろっ!」


振り返らずに刀だけを背中側に回すとまた金属音が鳴り、ぶつかった鋼と鋼から火花が飛び散る。


「ほう…よく止めたのう。じゃか…!」


青年は振り返りながら刀に力を込めると老人を弾き返した。


「…最後まで言わせんかい」


「アンタの言葉なんて聞きたくないね」


再び正眼に刀を構える青年に対し、老人は右手に持つ刀を杖にして左手は顎の髭を弄っているという余裕の表情だ。


「それにしてもかなり成長したのぅ…流石僅か15歳で荒神式武術を全て免許皆伝しただけはあるが…」


老人が語り出すが青年は関係ないと言わんばかりに刀を後ろに下げて腰の辺りまで落とし、老人に突っ込む。


「まだまだワシには…ってだから最後まで言わせぇ…」


渋る老人に向けて下から斬り上げる。


「荒神式刀剣術・昇牙刀」


老人は刀でその一撃を防ぐが、青年はそのまま飛び上がる。


その高さは実に3mを超えている。


え?天井?5mはあるのでぶつかったりはしない。


「荒神式刀剣術・落斬岩(らくざんがん)


そのまま落下の際の重力を利用して老人を上から叩き斬る。


「フォフォ…荒神式格闘術・霧影」


老人は少し笑うと上から来る青年の刀を、極自然に、刀身に手を添えながら受け流した。


「くっ…!」


青年は受け流されると、床に降り立つが老人の方を振り返ると目の前には勢いの付いた足があった。


とっさに青年は腕を交差させて足を受け止めるが、勢いに負けて吹き飛ばされてしまい、およそ10mは吹き飛び、木製の壁を突き破ってしまった。


「ありゃりゃ…全力で蹴ったら受け切れんかったかの…向こうの部屋は確か武器庫だったかの?」


再び顎の髭を弄る老人だが、突き破り、埃の立つ壁の向こうの部屋から影が立ち上がる。


「荒神式槍術・槍時雨!」


埃を突き抜けて老人に飛ぶ10本の槍。刀と同じくこれも本物である。


これは先ほど蹴り飛ばされた青年が投げたものである。


「荒神式刀剣術・瞬撃」


老人は一度刀を鞘に戻すと、居合いの構えを取ると、槍は全て老人に当たる直前で弾き飛ばされてしまう。


しかし青年も、先ほど老人がやったように一瞬で老人の目の前に現れた。


「荒神式格闘術奥義…!」


右手を後ろに下げて指を折って掌の構えを取り、左手を老人の顎に添える。


首颪(くびおろし)!」


神速と呼ばれても差し支えないほどの速度で掌が老人の顎目がけて放たれる。


が、それは易々と老人の右手人差し指に止められてしまう。


「なっ…!?」


流石の青年も、これには驚愕する。


「ふむ、成長したのぅ。槍を投げて隙を作り、縮地で懐に潜り込むまでは良かったが…首颪の初動が遅かったの…今日はここらで終わらせるかの」


すると老人は左手の中指を曲げて親指で留め、それを青年の額に当てる。


デコピンの様な構えだ。


「荒神式格闘術奥義・指弾(ゆびはじき)


そのまま中指が弾かれると、青年はさっき蹴られた時よりよく吹き飛び、壁に激突して、そのまま座り込む。


どうやら意識を失った様だ。


「カッカッカ、まだワシに勝つのは早いのう!」


嬉しそうに天井を仰いで笑う老人、名は荒神(あらがみ)(まこと)


そして今、真にデコピンを受け、気を失ったの青年は荒神(あらがみ)(みこと)。本編の主人公である。


今までの組み手…と言うか殺し合いは、荒神家では毎朝起こる、祖父と実の孫のじゃれ合いのような物だった。



□□□□□


「ぐっ…効いた…!」


額を擦りながら和風の廊下を歩いているのは、先ほど祖父である真から強烈なデコピンを頂いた本作の主人公である命だ。


「あの糞爺…明日こそ殺す…」


何やら物騒な事を呟いているが、命にはこれがデフォルトである。


つまり毒舌キャラ。


朝6時から組み手を開始し、そこから1時間ほど気絶してしまい、現在7時過ぎである。


今、自分が昨日から下ごしらえしておいた朝食を食べる為に台所へ向かう途中なのだ。


そして台所がある部屋の襖をガラッと開けた。


「やあ、おはよう」


そして閉めた。


この部屋の中を見なかった事にし、学校に行く準備をする為にそこを去ろうとするが…


「酷いぞ?折角朝食を作りに来たと言うのに…」


襖が開き、挨拶をしてきた美女が出てきた。


「知らん、頼んだ覚えは無い。早く帰れ」


「ふふふ、そんな辛辣な言葉をかけられたら…興奮してしまうだろう?///」


「このド変態が」


この人物の名は門脇(かどわき)百合菜(ゆりな)


命の幼馴染である。


腰まで届く長い黒髪をポニーテールにし、キリッとした顔立ちは凜とした雰囲気を纏っている。


しかし問題なのはその服装。


「…何だそれは?」


「ふむ、気に入らなかったかな?」


その姿は裸にエプロン…そう裸エプロンと呼ばれる服装だ。これは目のやり場に困るであろう。


「君の部屋のタンスの裏にあった本を参考にしたのだが…」


「勝手に人の部屋を漁るな」


「そうか…しかし命…君は私に興奮しないのか?」


百合菜のスタイルは抜群。


出る所は出ているし引き締まる所は引き締まっている。しかし特に胸が凄い。


目測でだがFカップはある。


それによりエプロンはぱっつんぱっつんだ。


「全くしていない訳じゃないが…今さらと言うか…ある意味慣れた。分かったら早く着替えて帰れ」


「ふむふむ、やはりちゃんと興奮はしてくれているのか。嬉しく思うよ」


「帰れと言っているだろう、この変態マゾ女が」


「あぁ…良い…君に厳しい言葉を言われると体が火照る…もっと罵ってくれ!///」


目を閉じてハァと溜息を吐く命。


皆様お気づきだろうが百合菜は命にベタ惚れ。そしてマゾである。


命はもう返事をするのも疲れてしまい、無視をする事にして台所に入った。


「朝は白米と豆腐の味噌汁と目玉焼き…もう温まっているのか…」


台所の炊飯器と鍋の中を見て確認すると、今朝の朝食があった。


「私が暖めたんだ。さあ罵ってくれ!」


そこは普通褒めてくれと言う所ではないのだろうか?


「…」


それを無視しながら食事を食器によそってく命。


「あぁ…!今度は放置プレイ!だがするなら私を縛ってからにして欲しい…///」


無視すればしたで、また面倒な事になっている。


「…ハァ」


命は、最近こう考える。


溜息ってのは出すと幸運が逃げると言うが幸運が逃げたから出るのではないか、と。


その後、何とか百合菜に服を着せて朝食を食べ始めた。


「命、今日の組み手はどうだったんだい?」


毎朝、命は百合菜にこの質問をされる。ただの興味本位らしいが。


「今日も殺せなかった」


憎々しげに言葉を吐き出すと、味噌汁を飲む。


「そうか、相変わらず真さんは強いんだな」


苦笑いをしながら百合菜も味噌汁を吸う。


「本人曰く全盛期は今の倍は強かったらしい」


「今の倍…か、やはり真さんは人間とは思えないね」


「俺も爺を人間とは認めん。やはり化け物は首を斬って殺すのが常套手段だから明日も首を狙ってみるか」


そう言うと、ガラリと襖が開き、そこには命の祖父、真がいた。


「って何を物騒な事を言っとるか」


「来たな化け物」


「って誰が化け物じゃい」


「爺以外に誰がいる?鏡見て来い」


「化け物って外見の事かい!?」


命の言葉に思わずズッコケそうになる真。


「ふむ、私も真さんと同じくらい厳しい言葉を言って欲しいのだが…」


この言葉は華麗にスルーし、受け流した。


「カッカッカ!そういえばお主等はいつ結婚するのじゃ?」


「私は既に婚姻可能年齢なのですが命はまだ16歳なので…命が18歳になればすぐにでもと思っています」


「そうかそうか!早くひ孫の顔を見せておくれ。死んだ婆さんや夜言(やこと)愛奈(あいな)にも顔向けできるからの!カッカッカ!」


…今の会話から分かるように命の祖母と両親は既に他界していて、この家には真と命の2人しか住んでいない。


夜言と言うのは命の父親で真の息子。愛と言うのは命の母親。死因は交通事故らしく、真が1歳の頃だったらしい。


真の祖母の名前は愛奈(あいな)。こちらは寿命…老衰で逝った。


「って朝からそんな会話をするな」


「良いではないか良いではないか」


命が2人を注意するがふざけて返すのは真である。


そして今の返事で命の額に青筋が見えるようになった。


「それ以上口を開くなよ爺…」


「百合菜ちゃんと命のイチャイチャラブラブな毎日…ヒューヒュー!」


次の瞬間、命の左手にあった茶碗が真に向かって放たれるが、真はそれを何も無かった様に掴む。


「ではワシはこれから近所の囲碁同好会に行ってくるからの~」


掴んだ茶碗を机に置き、そそくさと部屋から出て行く真の背中を憎憎しげに見つめている命。


ここで何故命が真を嫌うのか、実はこういった態度を見せてはいるが、実際はそんなに嫌ってはいない。


その理由は、まだ命が幼い頃に遡る。


町の武道場である荒神式武術道場。


今では門下生はかなり少なくなっているが昔はかなりの人数を誇っていたらしい。


そんな道場の1人息子として生を授かり、幼い頃から厳しい特訓を受けていた命。


両親は記憶の中におらず、写真でしか顔を知らない程。


そんな命の肉親は、祖父である真と当時はまだ生きていた祖母の荒神愛奈である。


祖父は、荒神式武術道場の名を取り戻す為に命をしごいた。


生傷の絶えぬ修練の毎日に、それを見ていた百合菜は命が壊れてしまうのではないかと思っていた程だ。


だがそんな命を支えていたのは祖母の愛奈である。


毎日傷の手当をし、やり過ぎの稽古の時は真を正座させて長い長い説教をしていた。


しかし、そんな愛奈は命が12歳の頃に老衰で亡くなる。


心の支えを無くした命。真も愛奈の死を悲しみはしたが稽古の手を抜く事はせず、寧ろ愛奈が死ぬ前の3倍は厳しくなった。


真もまた、愛する者の死で、躍起になっていたのかもしれない。


そんな真を、命は稽古で1度負かしたのだ。


そしてこう言った。


「婆ちゃんが死んで、自分は悲劇のヒーローか?俺だって婆ちゃんが死んで死ぬほど悲しい!でもそれをズルズル引きずって婆ちゃんが喜ぶかよ?違うだろ!だったら婆ちゃんの死を受け止めて…前を向いて…後悔せずに生きろよ!」


この言葉で、真は何かが吹っ切れた様だった。


和解はしたが、昔からの厳しい稽古続きにより、命は真を嫌っている態度を見せるのだ。


つまりツンデレ。


「ツンデレ言うな」


…まあ命にツンデレは禁句である。


「ん?誰と喋っているんだい命?」


「いや、なんでもない」


そんな事を言っている内に、食事は終わった。


命は部屋に鞄を取りに行く。


命の部屋は、和室だが、テレビもあればゲーム機もある。


中でも目を引くのが、本棚に並べてある本。


タイトルは、伝説の幻獣図鑑やら、英雄の使った武具図鑑やら様々な宗教の天使や悪魔など。


そう、命はこういったファンタジーな魔物やら武器とかが好きなのだ。意外な趣味。


ゲームのソフトも、よく見ればファンタジーRPGが多い。


他にも本棚には機械系の本もあるので、機械弄りも得意なようだ。


まあそれはさて置き、鞄を肩に担いで、待たせている百合菜の元へ行く。


そして命と百合菜は学校へ向かうのだった。



□□□□□


私立南出学園。


ここは命達が通う学園である。


制服は紺色のブレザーだが命はネクタイとボタンを外して着崩している。百合菜はしっかり着ているが、その自己主張の激しい胸は隠しきれていない。


広さはかなりの物で、命の家から徒歩20分と比較的近い場所にあり、緑が多いのが特徴。


「うわぁあああああああああ!」


遅刻の時刻よりずっと早いのだが、校内を疾走する1つの人影があった。


いや、1つではない。その後ろから多くの影が1つの影を追いかけている。


「待って~!刹那様~!」


「宮里君!私生まれる前から貴方の事が~!」


「退きなさいよ!あぁ!刹那君~!お願い待ってー!」


多くの影の正体はこの学園の女子生徒。いや、よく見れは数名女性教師も混じっている。


学校に到着した命と百合菜だが、目の前の光景は見慣れているので軽くスルーしていた。


「あ!命!百合菜!助けてくれー!」


その多くの女性を引き連れて走っているのは宮里(みやさと)刹那(せつな)と呼ばれる青年だ。


命と百合菜とはそれなりに古い付き合いで、もう1人の幼馴染。


この青年、茶色い直毛の髪で、顔はかなりの美形である。しかも命とは違い、目つきは優しそうなので異性からはモテモテ。


それは後ろから走ってくる女子達が証明している。


「私は断る」


「俺もヤダね。さっさとどっか行け」


2人とも流石に女子の大群を止める方法は無く断る。命に至っては更に突っぱねる言い草だが。


「頼む2人とも!切羽詰ってるんだ!」


尚助けを求めて2人に走ってくる刹那。


「ったく…こっちだ。早く来い」


仕方なくといった感じで刹那を先導する命。


「やれやれ、教室に辿り着くのも一苦労だね」


それに首を振りながら付いていく百合菜と刹那。


そして曲がり角を曲がると、命は刹那を奥にあった掃除用具入れに押し込んだ。


「わっ!?ちょ、ちょっと命!?」


「大人しくしてろ。見つかるぞ」


女子達は、掃除用具入れとその傍にいる命と百合菜には目もくれずに走って行ってしまい、次第に見えなくなってしまった。


「…行ったな。刹那、もう出ても良さそうだよ」


百合菜の声で掃除用具入れの中から出てくる刹那。


「た、助かったぁ~…」


「これで貸しがもう1つな。合計で18個の貸しがあるから…また適当な所で返してもらうぞ。利子ありで」


最後の部分でニヤリと笑って言う。鋭い目つきのせいで妙に悪い笑みになる。


「うっ…利子って…?」


「…さぁな?」


またニヤリと笑い、教室のある方向へと歩いていく命。


「ハァ…命とは小学校からの付き合いだけど、未だに腹の内が見えないな…百合菜はどう思う?」


振り向いて百合菜に問う刹那だが…


「あぁ…今の笑み…少し悪そうで、格好良いあんな顔でもし責められたら…///」


残念ながら百合菜は勝手に妄想して悶えていた。


「…俺も教室に行こう」


1人で悶えている百合菜を放っておき、命と同じく教室を目指す刹那だった。



□□□□□


所変わってここは2年C組の教室。


命の席は窓側の前から2番目。苗字が荒神だと出席番号も早い。


その右隣には百合菜が座っていて、刹那は少し離れた席だがまだHR前なので2人の間に立っていた。


「もう4月も終わりか…」


刹那が不意に呟いた言葉に近くにいた2人は反応する。


「そうだな。来年は進学か就職だし…そろそろボヤボヤしてられなくなってきたな」


「そうか?私は命との結婚が迫ってくると思うととても嬉しいぞ」


「刹那、蜜柑(みかん)はまだ来ないのか?」


百合菜の言葉をまたもスルーし、話題を変える命。


「ん、あぁ…もうすぐ来ると思うよ。最近俺への態度が厳しくてね…昔は可愛かったのに…」


「早い所妹離れしろよ…このシスコン」


すると勢い良く教室の扉が開く。


3人ともそちらを見ると刹那と同じ茶髪のセミロングの髪をピンク色の髪留めで留めている小柄な美少女が教室に入ってきた。


「やっほぉ!皆おはようっ!」


大きな声で元気に挨拶したのは宮里(みやさと)蜜柑(みかん)。苗字とさっきの会話から分かるように刹那の双子の妹である。


「よう、蜜柑」


「おはよう、今日も元気だな」


命と百合菜が返事をすると、その小さな体はもの凄い速さで命に突っ込んだ。


「命兄!百合姉!おっはよー!」


蜜柑は命に抱きつき、胸に顔を当ててスリスリしている。


「どうした蜜柑?今日は随分甘えるな?」


この蜜柑、何を隠そう…いや隠していないがかなりの甘えん坊である。


しかし双子の兄には全く甘えないという妙な性格だ。


「ん~?何でもないよ!」


その言葉と共に更に顔をこすり付ける。


「むぅ…蜜柑、それ以上私の未来の夫に手を出すと流石の私も怒るぞ?」


少し不機嫌になる百合菜だが蜜柑は離れようとしない。


「えぇ~?」


それに蜜柑も少し不満そうな声を出す。


「そうだぞ蜜柑、大体蜜柑には俺というお兄ちゃんがいるじゃないか」


「べぇ~!刹兄には甘えないもんねーだ」


手を広げてこっちに来いとジェスチャーするが蜜柑は命に抱きついたまま刹那に向かって舌を出した。


「ぐっ…お兄ちゃんショックだぞ…」


膝を付いて崩れ落ちる刹那。朝から混沌(カオス)な光景だ。


「ったく…そろそろHR始まるからさっさと席に戻れ2人とも」


命がそう言うと少し名残惜しそうだが蜜柑は命から離れた。


「うん!また次の休み時間に甘えさせてね!」


元気に席に戻っていく蜜柑。


「だからそれは未来の妻の私の特権だ」


その蜜柑の背中に向けて文句を言う百合菜。


「はいはい、先生来たからそこまでにしような」


担任が教室に入ってきて、始業のチャイムが鳴ると同時に、刹那もそう言って席に戻って行った。



ここからはこの南出学園2年C組の授業風景を見てもらおう。(主に台詞)


1時間目、数学。


「じゃあここの公式を…荒神、解いてみろ」


「…x=3」


「正解だ。次のこの問題を…宮里妹!解いてみろ」


「え、えーっと…x=4?」


「違う、x=2だ。ちゃんと覚えておけ…そして宮里兄!お前は起きろ!」


「うがっ!?」


数学教師の放ったチョークは見事に刹那の額に命中した。


2時間目、体育。


「よーし、今日はひたすら走って貰うぞ。覚悟はいいな?」


所々で不満が出るが結局男子は走らされる事に。


「ハッハッハッハッハ…」


「おーし、1着は荒神だな。流石家が道場なだけあるなー」


「どーも…」


「お、2着は宮里か…朝追い回されてるだけあるな」


「い、言わないで下さい…ハァハァハァ…」


「女子もマラソンか…門脇の胸は弾むなー…」


「変態教師…(ボソッ)」


「荒神、もう10週走って来い」


「…うぃー」


どうやら体育の教師は地獄耳なようだ…。


3時間目、国語。


グー…


この時間は担当教師がご老体で、体育の後なのでほとんど皆いびきをかいて寝ていたとか。


4時間目、世界史。


「で…バスコ=ダ=ガマを初めとして大航海時代が…」


この時間は特に何も無く、ノートを取っているだけだった。


そして昼休み。


本来ならば昼食の時間だが命は自分の食事の箸を止めていた。


「…どうした?用が無いなら地面にでも埋まっていろよ、(たちばな)(ゆかり)?」


命の席の前には背中の真ん中まである黒髪を後ろで三つ編みにして、赤渕の眼鏡をかけた美少女が立っていた。


「どうしたもこうしたもありません。今日こそ委員長として貴方の悪行を止めて見せます」


…この少女の名前は橘縁。


このクラスの委員長であり、何かと命と百合菜と刹那…主に命に突っかかる。


命が普通に他人を見ていればカツアゲするつもりなど、刹那が女子に追われていると不純異性交遊だの百合菜の成績が自分より上だとカンニングをしているだの…八つ当たりですね、分かります。


因みにこのクラスのテスト成績の順位は、42人中…


1位 門脇百合菜 平均点98点


2位 橘縁 平均点95点


3位 …… 平均点92点

………


13位 荒神命 平均点81点


………


28位 宮里蜜柑 平均点48点


………


40位 宮里刹那 平均点22点(赤点)


といった感じだ。


宮里兄妹は勉強が苦手な様です。


「で、今日はどうするんだ?」


命は、止めていた箸を再び進めながら聞く。


「貴方の悪行を止める為に、私は色々工夫をしてきたつもりだったけど………」


何やら言っているが命は殆ど無視している。


そして弁当を食べ終わると牛乳を買うために購買へ急いだ。


「つまり、今日!ここで!貴方と決着を…っていない!?」


お後が宜しいようで。


5時間目、6時間目と終わり、命は再び橘に絡まれない内に退散する。


「あっ!こら待ちなさい!」


その声を聞こえない物として、命はそそくさと教室から出て行った。


百合菜は今日は掃除当番、刹那は女子に追われているだろう。蜜柑は陸上部なので一緒には帰れない。


だが何時もは百合菜や刹那がいるので、1人は久し振りだと思いながら下校していく。





『見つけた…』



□□□□□


「ただいま」


帰宅。


真は帰っていないのか、鍵がかけっぱなしだった。


鍵を開けて、家に入り服を着替える。


命の私服は、黒いタンクトップに黒い長ズボン。そして黒い長袖の上着を腰に巻きつけるといったもので、中々似合っている。


「さて…何をするか…」


これからの事を考える。


その内百合菜が来るだろうが、何をするか分からないし、相手をするのも疲れる。


刹那は女子を撒くのには少し時間がかかるだろうし、蜜柑は部活だ。


やはり、真を殺す為に鍛錬か…そう思い、1歩足を出す。


その瞬間、命の日常は崩れた。


踏み出した足元に、光の、よく分からない模様…魔法陣の様な物が広がる。


「な、何だ!?」


次の瞬間、魔法陣は強い輝きを放った。


「うっ…!?」


そして


荒神命は


この世界から


姿を消した。

三点「ふぅ、やっちまったぜ!皆さんゴメンなさい!この小説の作者である三点リーダです」


命「この小説の主人公、命だ」


三点「毎回こうして主要キャラクターを呼んでラジオ的な事をしたいと思います。尚あとがきでは台本書きで行きます」


命「さて作者、こんな小説を書いて何かいう事があるんじゃないか?」


三点「ああ、この1話を読んだのに気に入らなかった方、本当に申し訳ありません。ですがまだ1話なので長い目で見て下さい」←土下座


命「だそうだ。つーわけで今後ともよろしく頼む」


三点「そして気に入らなくても辛口コメントだけはお願いですのでやめて下さい!私は傷つきやすいんです!」←超土下座


命「プライドとか無いのか?」


三点「プライド?そんなモン遠い昔に捨ててきちまったぜ…(キリッ)」


命「言ってる事と格好が全く会っていないぞ」


三点「まあこんな茶番劇はここまでにして次回予告でもするか。


謎の魔法陣の光に飲み込まれた命。しかし目が覚めたらなんだかんだで見習い天使と共に異世界へ!


その異世界で謎の物体を見つけてその中を探索!しかしその中には思いもよらぬ物が…!?


第2話「断る」を待て!」


命「待つほどの事でも無いけどな」

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