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東方伊吹伝  作者: 大根
第六章:君と過ごした最高の日々
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番外 親子2人

前半健全 後半R-15かも。ご注意を

それは博麗大結界が貼られて間もない頃の話。



~魔法の森の手前・大和家~




「な~な~、大和~。母さんには手伝ったお礼は無いのかい?」


「息子に物をねだる親がいますか」


「大和は紫と私から服貰ったくせに、息子の為に頑張った母さんは何も貰ってないなんて変な話だねぇ」



…解って頂けただろうか、僕が母さんを頼りたくない理由の第一がこれです。小さい時から何かを頼ると、こうやって対価を求めてくる。これも躾だと言われて納得した昔の僕よ、今すぐ目の前に出てこい。頭冷まして上げるから。…まあ、感謝の気持ちを持つことは重要だと思うけどさ。


その対価がお酒やら手造り御飯とかなら別にいいけど、一日中肩車させろ、とか、一日中抱っこさせろ、なんて無茶苦茶なモノばかり。勇儀姉さんには笑われ、他の鬼の皆にはニヤニヤした視線が集中する。昔でも恥ずかしかったのに、今そんなことになってしまえば羞恥のあまり死んでしまう。



「お酒でも買ってこようか?」



それだけは何としても阻止しなければならない。今の僕はあの頃とは比べ物にならない程に友好関係が多い。その分笑われる数も多くなる!


なんなら破産覚悟で超高級酒をダース単位で買ってあげてもいい! 頑張れ大和、久々に母さんに反抗する時が来たのだ!



「間に合ってる。それよりも何かこう、私と大和の絆を更に深めるようなものは無いかい?」



ガッデム! 母さんがお酒に振り向かないなんてどうかしてるぜ! どうする! どうする大和!? お酒が駄目なら何を犠牲にすればいい!?



「よし決めた。大和にはこれから一日、母さんの言うことを聞いて貰うことにする」



終わった…。僕、今日は里から依頼を受けているのに…。この様子じゃ母さんも付いて来るに決まってる。人里での僕の威厳がガタ落ちになる…。



「じゃまずは肩車からだよ。母さんがしてやってもいいけど、今回は労ってもらう側だからね。大和にやって貰うとしよう。さ、屈みな」



神様、もし僕の声が聞こえるのならお願いします。助けて下さい。―――――――どうやら幻想郷にはそんな勝手の良い神様はいないようです……。



「さあ行こうか!」


「母さん、スカートが被さって前が見えないんだけど…」




◇◆◇◆◇◆◇




「今回の依頼はですね、その…」


「店主さん、僕の頭上は気にしないで下さい。僕も気にしませんから」


「は、はぁ…」



八百屋で売られる旬の作物。そのほとんどは人の手によって作られた物だけど、それだけでは満足できない人もいる。春には春の、秋には秋の旬の食物をもっと大量に仕入れたい。しかし作物が実る場所には妖怪も多く出没し、危険も多い。


そんな時に僕が持って来たのが竹林のタケノコだった。何年も前の話だけど、そうやっている間に、報酬と引き換えに作物を採って来てくれないか? と頼まれた。それが子や孫にも引き継がれているのだ。



「山に入って川魚、ねぇ。今の時期って何だっけ?」


「夏は岩魚や山女だ。母さんも手伝ってあげるから、さっさと山に入ろうか」



何とも頼もしいお言葉ではあるんだけど、僕の髪の毛で遊ばないでください。




◇◆◇◆◇◆◇




山に入ると同時に監視の目が飛んで来た。僕が何時もの事にげっそりしていると、何を思ったのか母さんが妖力全開で周囲を見渡すように顔を向けた。肩車をしているせいで表情を見ることはできないけど、全ての視線が一瞬で消えたことから、凄くおっかない顔をしているのだろうと思う。


そりゃあ誰だって山が揺れる程の妖力を込めて睨まれたら気絶するよ。



「…大和。何時も『こう』 なのかい?」


「そうだよ。でももう気にならないけど」


「へぇ……。最近の天狗ってのはどうも調子に乗ってるみたいだね。この山が誰の物だったのかを忘れちまったらしい」



…何故だろう。これだけの妖力を身に浴びたら寒気がするはずなのに、逆に温かく感じるのは。何度も浴びていたから感覚が鈍くなったのかな?


なんて気付かないフリはしない。自惚れでも何でもなく、母さんは僕がこういう対応をされるのが気に喰わないのだろう。でも少しは天狗のフォローをしておいた方がいいかもしれない。母さんに暴れられでもしたら面倒だ。主に事後処理に当てられるであろう僕が。



「でもさ、僕がそれだけ警戒に値する人物だってことだよね? だって僕、母さんの息子だし。おまけに強いからね」



出てきた言葉は当然と言えば当然の答えだった。でもその言い回しを気にいったのか、母さんは上機嫌で笑ってくれた。



「大和も言う様になったじゃないか! いや~母さんは嬉しいぞ!!」


「だからって頭を撫でまわさないでよ!?」


「この可愛い奴め! こうしてやる!!」



なんて言って頭を抱きかかえられる。肩車をしたまま頭を抱かれるので自然と足が首を絞めてくるわけで。



「絞まってる!? 母さん首が絞まってるって!? ――――――――――――ぁぅ」


「うわぁ!?」



だからそのまま後に倒れても仕方がないことです。もちろん母さんの足を掴んだままだ。せめて道連れにでもしないと僕も納得がいかないよ。




◇◆◇◆◇◆◇




まったく、酷い目にあった。僕じゃなかったら確実に死んでたね。まあ、僕が母さん程の力で首を絞められて折れなかったのは、地獄廻りで鍛えられた身体のおかげなんだけど。でも、もし一つ間違えていたらぽっくり逝ってた所だった。



「だから悪かったって言ってるじゃないか」


「もう怒ってないよ」



妖怪の山。河童が住む川の岸辺に2人並んで座り、釣り糸を垂らす。母さんと一緒にいるためか、何時もは川に見られる河童の姿は見えない。川のせせらぎと、蝉の鳴き声だけが静かに一帯を包み込む。



こうやって母さんと一緒にゆっくり過ごすのは本当に久しぶりだ。昔、僕がまだ弱くて幼かった頃もこうしていたのを今でも覚えている。あの時もそう、こうやって親子水入らずだった。



「懐かしいね。大和が豆粒みたいな頃もこうしてたよなぁ…。遠い日の記憶のはずなのに、まるで昨日のことのようだ」


「豆粒って…僕は一寸法師じゃないよ。鬼退治じゃなくて、鬼の為になりたかったし。そう言えば母さんと姉さん、それに大母様のお酒のつまみの為に毎日通ったこともあったなぁ…」



宴会が何日も続いたせいでつまみが切れたんだっけ? あの時の宴会は酷かった思い出がある。皆酔っ払っててどうしようもなかったんだよね。今思えば、妖怪の山で子供一人だけだなんて、どれ程危険なことをしていたのやら…。



「あの時の宴会が終わったのは大和のせいだったはずだ。魚を捕ってきてくれって頼んだが最後、日が暮れても帰って来なかったから」



何やらニヤニヤして言われているけど、僕にはそんな記憶ない。無い…はず。



「あれ? そんなことあったっけ?」


「あったあった。あの時は大変だったんだぞ? 総出でお前を探しに出て、朝日が昇るころに漸く大泣きしているお前を見つけ出したんだから」



ええ!? そんなことあったっけ!? …う~ん、覚えてないなぁ。



「それよりもさ、私が知らない大和の旅の話を聞きたいな」


「そうだね。母さんにはまだ詳しく話したことなかったし、前に話した時はお酒が入っていたからね」



これ以上昔話をしていると、僕も覚えてない恥ずかしい話が出てきそうで怖い。昔話も別にいいけど、僕も自分の通って来た道を母さんに知って貰いたい。



「じゃあ都で母さんたちと別れた後の話からするね。あの後大変だったんだよ? 帝の所に連れて行かれて――――――――――――――――――――――――――――」



都で問い詰められた母さんとの関係。初めて見た海に感動しているのもつかの間、船ごと海に呑まれて漂流。辿り着いた蓬莱島。母さんは僕の話に一喜一憂し、まるで自分のことのように僕の体験談を聞いてくれている。


蓬莱島での出合った輝夜・師匠・師父。僕の武術・魔法の基礎を創ってくれた人たちには感謝してもしきれない。そして生き別れの妹、アキナとの出会い。迷ったけど、僕とアキナの関係も全部話した。僕がなんであそこに居たのか。どういう存在なのかも全て。



「お前がどう思っているかは知らないけど、私はお前のことを大切な一人息子だと思っている。たとえ創られた存在だろうと、戦いの為だけに創られた存在だろうと、お前は私の息子だ」


「…ありがとう。僕、母さんの息子でよかった」



僕の素性を話しても母さんは微笑んでくれた。微笑んで、お前は自慢の息子だ、と。だから僕も笑って告げる。母さんに拾われて本当に幸せだと。…なんだ、目の前が見にくいや。



話は続き、紅魔館での死闘の話になると、流石の母さんもハラハラしている。それがすごく子供っぽくて、なんだか新しい一面を見れた気がした。


紅魔館の面々。騎士として、己の正義を貫く大陸の武士の話。ケビンさんの話をした時に母さんは酷くご立腹のようだったけど、裏では人情に溢れた良い人なんだろうと言っていた。…驚いた、話からだけでそこまで判断できるだなんて。


そして人妖大戦。私も死ぬ時は闘って死にたい、と言う母さんに、少し釘を打っておく。もう僕の大切な人達が死んでいくのは嫌だ。


先生が愛娘の前で死んだ様子を告げると、母さんも俯いて納得してくれたようだ。



「母さんが誰かに殺されたとしたら…大和はどうする?」


「……解らない。殺しはしないと、そう心に決めた。でも、目の前でそんなことが起こったら、たぶん僕は自分を押さえきれない。死んででも仇を…そうなると思う」



母さんに限ってそんなことはないと思うけど。


そう付け足したけど、これは母さんだけに当てはまる話じゃない。零夢やレミリア、フランにパチュリー、慧音さんや妹紅…は死なないのか。輝夜も死なないから心配はないけど、親しい誰かが目の前で殺された時、僕は自分を押さえられる自信がない。


心が弱いから、とは言わない。それだけ失いたくない人達だから、大切な人達だからこそ。




そして話は幻想郷へと続く。ここからは母さんも何故か、な・ぜ・か非常に詳しく知っていた。まるでずっと後で見ていたかのように。



「母さん、もしかして僕の後を付けてたりしてた?」


「? 可愛い息子の後を付けちゃ駄目なのかい?」



…何だ、愛されている…のかな? でももう小さくないから危険なことはしない、だから安心して大丈夫だと伝えても、母さんは首を横に振るばかり。



「大和に悪い虫が着いちゃ駄目だからね。こうやって母さんが見守ってあげてるのさ!」


「…僕も大きいですから意味は解っているつもりです。でもね、僕に限ってそんなことはないから大丈夫だよ」



何時までも小さくないから! いいや、お前が気が付いてないだけだ! 私はこの目で見たぞ!!


なんて言い合いが始まり、気がついたら僕の女性事情の話に変わっていた。月に何度か輝夜に会いに(地獄廻りの間違い) 行っているとか、零夢に向ける視線が変わってきてるとか。閻魔との同棲では何をしていたんだ!? 挙句の果てには紅魔館の小さなお嬢様がいいのか!? 母さんが大好きだから、母さんくらいの子がいいのか!? 母さん(自主規制) なんて暴走しだす始末。




ここまで騒いでいては魚が針に引っ掛かることもなく、日が傾きだしたにも関わらず一匹も捕れず仕舞いだった。



「……まあいい。また家に帰ってから詳しく聞くことにする。それよりも魚だよ、魚」


「騒いだせいで魚が逃げちゃったからね。どうしようかな」


「ふっふっふ、ここは偉大なる母に任せなさい!」



そう言って川に入って行く母さん。何をするつもりだろう? そう思っていると、母さんは拳を振り上げ、



「魚!!」



川底に向けて思いっきり振り下ろした。凄まじい轟音と共に水しぶきが上がり、川に入っていない僕までもが水浸しになってしまった。



「見ろ大和! 魚が浮いているぞ!!」


「母さん、それ反則ですよ…」


「何を言ってるんだい? 母さんは昔からこうやって捕っていたぞ? 釣りもいいけど、アレは飽きる上に時間が掛るからねぇ。その点、これは速くて大量に手に入れられる」



何てことない、と魚を拾っていく。まあ僕も拾うけどさ。


でもね母さん。魚だけじゃなくて河童も流れて来てるんだけど…




◇◆◇◆◇◆◇




~大和家~



依頼されていた分の魚を納品して、余った分は家に持ち帰って来た。そして今、大和は風呂に入っている。私が水浸しにさせたからか、今日はお湯に入って温まるらしい。あの子は炎系の魔法が使えるから、水を沸かすのもお手の物。便利な魔法を持っている


折角だし、わたしも入ろう。久しぶりに一緒に入って息子の成長ぶりを見てやるのだ!



善は急げ。服を投げ捨て、一糸纏わぬ姿になる。右手に手ぬぐい、左手に桶を持ち風呂場の扉を開ける。湯に浸かっている大和が驚いたような顔で私を凝視していた。



「かかかかっ、母さん!? 何入ってきてるんですか!?!?」


「いやぁ~、折角だから私も入ろうと思ってさ」


「だったら後でいいじゃないですか!?」


「母親が可愛い息子と一緒に入りたいと言ってるんだよ」



私に背を向けて必死に説得し続ける大和を見て、少し意地悪をしてやろうと思った。



「何だ何だ、母さんの裸体に興奮でもしたかい? 初心な子だねぇ」


「そ、そんなことないよ!!」



見てやってくれ勇儀。この子も立派な男子になったみたいだよ。これくらいで真っ赤になっちゃっうなんて、本当に可愛い子だねぇ。



「邪魔するよ」



そのまま風呂ぬ入って大和の隣に座る。前を隠してください! と言う大和に、それは風呂場での規則違反だと言ってやる。すると大和は必死になって目を閉じて何かに耐えているようだった。…ふむ。



「くぁwせdrftgyふじこlp!?!?」


「おお!?」



何だ、その…。掴んだソレは立派な物だった。我が息子ながら恐るべし。月の全因子とやらはこんな所にも影響を与えているみたい。わたしも掴んでビックリしたよ…



「大和は肝っ玉が大きいからね。コッチも大きくなったんじゃないのかい?」


「…もう、泣いていいですか…?」



何言ってんだい。泣くのは大和じゃなくて、相手の方だろうに。こんな大きいものだと壊れちゃうよ。…………ふむ。



「くぁwせdrftgyふじこlpッ!?!? う、うわーーーーーーーーーーーん!!」


「あ、逃げるな!」



…少しやり過ぎたのか、大和は大泣きしながら逃げて行った。仕様がない奴め。これから背中を流してもらおうと思ってたのに。あと、風呂から逃げる時にちらりと一物が見えたけど、思った通りのモノだった。一瞬私が驚きで固まるぐらいに。



「……なんだ、わたしも火照ってきちゃったよ」



お湯が熱いからだろう。この心地い火照りを逃がさない為にも、今日はゆっくりと浸かっていよう。








それは久しぶりに親子水入らずで過ごした、とある一日の話。




◇◆◇◆◇◆◇




文「記念すべき100話でも質問コーナーは行います! 射命丸文です!」


大「実はこのコーナーも、(仮) をいれると10回目になるのです。正直、ここまで続いたことに驚いてます」


文「では早速質問の方に行きたいと思います。今回は人里の守護者こと、慧音先生に質問が来ているのでお越しいただきました」


慧「どうぞよろしく」


文「では慧音先生に質問です。『四兄弟も子供の時は寺子屋通っていたはず。子供の頃から現在のような才覚を発揮してたんですか?』 だそうです。気になりますねぇ~」


慧「あの子たちのアレか…。実は私と伊吹君のせいだと言っても過言ではないんだ。年に一度、性に関する授業をすることがあってな。私は女性だから男性のことは良く知らない。だから伊吹君には当時寺子屋に来ていた4人を含む男子の説明を任せたんだ」


大「…僕は何もしてませんよ?」


慧「確かに伊吹は何もしなかった。だからこそ、それが不味かったんだろう。彼らが初めて不埒な行為をした時、何を行ったか分かるか?」


大「…?」


慧「『だって大和さんが、不思議に思うんだったら確かめたらいいって言ってた』 だぞ? あの時、私は心底君を恨んだよ…。その後は君も知っている通りだ」


文「あやや…。ではあの4人がああなったのは大和さんのせいだと?」


慧「伊吹君と、伊吹君に任せた私の責任だ…。だからあれから伊吹君を授業に呼んだことはないんだ」


大「(絶句)」


文「大和さんは知らない内に彼らを導いていたと…。今の気持ちを一言でどうぞ」


大「後悔もしてるし、反省もしています」


文「以上、第10回質問コーナーでした」

直接的な表現は無しで頑張ったじらいです。


まず言い訳をしましょう。大和はロリじゃないと。例え親であれ、いい歳した男が一緒に風呂に入られたら誰だって恥ずかしがります。そして大和の『息子』 ですが、どういう状況かは皆さんでご想像ください。風呂場でのIFなんて書く気ないんですからね! そしてもう一度言いましょう。大和はロリじゃないよ。



さて、次回からは日蝕異変が始まります。レポートが溜まってますので更新が遅れます。更新してない時は1話目から読み直してもらえると嬉しいです。

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