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東方伊吹伝  作者: 大根
第六章:君と過ごした最高の日々
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大和と4兄弟―再・中編―


「ッ~~~~! まだ頭に響くよ…」


「確かにアレは痛い…。以前にアレを快感に変えようとしたが、失敗に終わった経験がある。気持ちよくなろうとすれば威力を上げられてしまって…。おかげでデコが鍛えられたんだけどな!」


「慧音さんに手を出したら僕が黙っちゃいないよ…。~~~ッでも痛い!」



結局あの後飯屋さんに慧音さんがやって来ることとなった。僕が兄弟を千切っては投げ千切っては投げと大暴れしていたので何事かと文字通り飛んで来たのだ。そんなことは露知らず、暴れている僕は愛の鞭と言う名の頭突きを額にブチ込まれた。突然の痛みに悶絶したままの状態で説教が始まり、その場から逃げようとした4兄弟も当然の如く説教を受けることになった。いい歳して大人げないことするな! だってさ。心は何時だって16歳なのに!!



「ご主人さま、頭大丈夫?」


「ルーミアちゃんは優しいねぇ。僕の知り合いの中じゃ希有な存在だよ」



この可愛い子め! 頭を撫でてあげると「えへへ」 なんて擽ったそうに微笑を浮かべている。…何だこの生き物、すごく可愛いんだけど。



「お前、本当に大丈夫なのか? まさかあの頭突きで頭が可笑しくなって、幼女趣味に目覚めたなんてことはないよな…?」



誰が幼女趣味だ、誰が。僕は今でも年上(外見が)好きだ。


まあ色々な事があったけど、今は牛鍋の材料を買う為に通りを歩いているのです。が、何故か付いてくるのが4人。人里にやって来た時も思ったけど、いったい何の用があるのやら。…どうせ碌なことじゃないんだろうけど。



「実は折り入って頼みたいことが「断固拒否する!!」 まだ何も言ってないぞ!?」


「前の覗き事件を忘れたとは言わせないよ!!」



あれは忘れはもしない数年前の話。慧音さんのお風呂を覗こうと誘われ、それに付いて行った僕の愚かすぎる行為。あの事件の後、僕は零夢に半殺しにされ、妹紅には弄られ、慧音さんには軽蔑され、人里の女の人たちに白い目で見られる日が何日も続いたのを忘れることなんて出来るわけがない。全て自業自得とはいえ、元凶がこの兄弟の企みであることを忘れてはいけない!



「いや、今回は至って真面目な話なんだ…。聞いてくれるだけでもいい。いや、聞いてくれ! この通りだ!」



そう言って頭を下げる4人。一郎さんに至っては土下座までしそうな勢いで深く頭を下げる始末。



「…何です? 話してください。聞くだけ聞きますから」



あまりの勢いについそう言ってしまった。でも聞くだけ、聞くだけだよ、うん。だから聞き流しても大丈夫。相手にしなくたっていいんだよ! そう軽い気持ちでいたけれど、次に一郎さんが発した言葉に僕は度肝を抜かれることになった。



「………実は、好きな人が出来たんだ」


「………はあ!?」


「何年も前から想っているんだ。出来れば一緒になりたいとも思っている」


「一郎さん、それって本気…なんですか?」



嘘、だよね? 何時もみたいに僕を嵌めようとしてるんだよね? そう思って弟たちを見るも、全員が真剣な目つきをして僕を見ている。その目からは今まで見たことのないモノが見えている。どうやら本気、いや本当の事みたいだ。如何な4兄弟とはいえ、人生の一大事にまで嘘を吐くほど腐っちゃいないはずだ…と思いたい。



「俺は今まで数々の変態の所業をやってきた。俺たちの行いを皆が白い目で見つめる中、その人だけが笑っていたんだ。解るか、大和? 笑ってくれたんだ。でも俺が幾ら好きだと言っても、その人は何時もの悪戯だと思い込んで相手にしてくれないんだ。…全ては今までやってきた俺の業だ」


「「「「一郎(兄)さん…」」」」


「ご主人さま、このお兄さんが変態なのが悪いんじゃないの?」



ブッ!? ルーミアちゃん、それは確かにそうだけど、せっかくイイハナシをしてるんだからそっとしておいてあげてね!



「…だから俺は強硬策に出ることにした」



強硬策? 花束でも贈って求婚とか、ずっと家に通い続けて愛の囁きをするとかかな? ああ、そう言えばこれは大陸の文化だったっけ。じゃあ恋文か歌でも贈り続けているのかな?



「夜這いを仕掛けるとつい先程宣言してきた」


「おいィィィィィィィィ!? 何やってんだよあんたは!?!?」



その発想はなかったよ! 正に逆転の発想ってか!? 嫌よ嫌よは嫌なんだって解ってるのかこの人は!? 今日こそは許さん、清く正しい僕がその女性の為にこいつを叩き潰してやる!



「一郎さん、地獄へ行こうか。罪をするまでは罪に問われないから大丈夫。映姫様にも話しておくから、ね?」



身体に魔力を滾らせぇ、それを腰だめに合わせた両掌に集中ぅ! マスパの発射準備を完了。安心してくれていいよ一郎さん。せめて痛みを伴わないように一瞬で細胞も消し去ってあげるから…



「待て待て! 待ってくれ!! これは先方も承知の上なんだ!!」


「は? 今更命が惜しくなったの? 嘘ですって言うの?」



だとしたら尚性質の悪い悪戯だ。もしそうならメチャクチャ痛いようにしてやる! 既にマスパは発射10秒前、何時でも打てますよ! さあ返答は如何に!?



「先方の家族も、あの人も承知の上なんだって! 家の娘が欲しければ奪ってみろってそこの親父がそう言ったんだ。その代わりに最高の罠と最強の防人を配置するって。それでも欲しいのなら掛ってこいと言われたんだ」


「それ、本当の話?」



本気と書いてマジと読む。そう頻りに頷く4人は顔が真っ青だ。…やば、僕の魔力に当てられちゃったみたい。ま、いっか。


でも4兄弟は絶対に間違いないと言ってるし…本当なんだろうね。しかし、すごい豪気な親父さんも居たもんだ。一郎さんを息子に迎える準備があるなんて、普通の家庭じゃあり得ないことだよ。だって浮気発生率100%じゃないか。



「おそらく向こうの最強の防人は慧音さんと妹紅さんだと思う。だからお前の力が必要なんだ! あの2人を相手に出来る知り合いはお前くらいなんだ、頼む!!」


「「「大和、兄さんの願いを叶えてやってくれ!!」」」



…知らない間に、皆大きくなったんだなぁ。たった10数年まで大和お兄ちゃん、大和お兄ちゃんって慕っていた子供たちがもう結婚をするまで大きくなって。あの小さい頃から問題児だった君がこうやって大きくなった姿を見ると、僕も感慨深いものがあるよ。



「わかった。出来る限りの協力はしよう」


「ありg「ただし!」 ?」


「絶対にその人を幸せにしてやるんだぞ? 一郎・・



だから、あの時のように兄貴面して笑ってやる。小さい頃から見てきた子供の新たな門出だ、笑って見送ってやるのが筋ってもんでしょ?



「ッはい! 大和さん!!」



満面の笑みを浮かべる一郎。あの頃から全く変わらない笑顔だけど、一皮向けた男の顔はこうも頼もしいものなんだね。…母さん、僕もこう成れてますか? 自慢の息子に成れてますか?



「あと一つお願いが…」


「何?」


「武術には女を一撃で倒す技があるって聞いたんですけど、あります?」


「何言ってんの。そんなのあるわけ…………………あ゛」



あるぞ!? トンデモない技が一つだけ! 師父が対女性用最終奥義とか悪ふざけで僕に習得させた秘儀が一つ! ヤバイヤバイヤバイ!? あんな技僕が使えると知られたら、この人たちに教えたらトンデモナイことになる!?



「あるんだな!? さあ大和、キリキリ吐け! そして教えろ!!」


「ちょ!? 良い空気だったのになんで!? 口調も元に戻ってるし!」


「やっぱお前に敬語なんて使うのは嫌だね!」


「子供の頃はそうだったじゃないか!」


「随分と昔の話だぜ! 今はこれで十分!」



横暴だ!? さあ吐け大和! 絶対に吐かん! 横を向いて頑なに拒否し続ける僕を4人は必死になって説得してくる。



「お前も出来る限り協力すると言ってくれたじゃないか!」


「出来る範囲を超えているんだよ! 第一、武術は付け焼刃で出来るものでもないんだよ!」


「女性に対する熱い想いがあれば常識なんぞ糞喰らえだ! 無理なんて言わせないぞ! なあお前ら!!」


「「「当然だぜ兄さん!!」」」



ええい、暑苦しい奴らめ! なんで女性に対してだけはこんなに勢いづくんだよ!? 本当に、本当にこの技を教えることだけは出来ないんだ。特にこの人たちにだけは教えられない!



「大和さんは…、俺の門出を祝ってくれないんですか…?」


「うっ…そ、それは…」


「人生の一大事だって言うのに、兄貴分が祝ってくれないなんて…そんなの悲しいですよ…」



ひ、卑怯なり! 一郎は卑怯なり! 情に訴えようなんて、そんなの卑怯だよ!



「まあまあ兄さんも落ち着いて。ここは俺に任せてよ」


「二郎…。解った、頼むぞ」



一郎さんの弟、二郎。通称4兄弟の頭脳と呼ばれる参報役だ。今まで行われて来た数々の変態行為を成功させたのは、この男の作戦があったからだと言われる程だ。僕を覗きに誘う計画を立てたのもこいつらしい。変態の癖に頭の回転が早いなんて、もう手のつけようがないよね…。



「大和さん、少しこっちに来てもらえますか?」


「う…。わ、解った」



二郎に近づいたところで肩を組まれる。…顔近いって!



「大和さん、どうしても兄さんを助けてくれないのですか?」


「仕方ないんだよ。二郎は頭イイんだから解ってくれるでしょ?」


「まぁそう言わずに。手伝って貰えるのなら、技を授けてもらえるのならこちらもそれ相応の報酬は払う準備があります」


「…お金には靡かないよ」



お金なんかに靡くのは当の昔に止めました。お金で買えないものだってあるのを知ったからね。人、それを信頼と呼ぶ。



「お金なんてそんな無粋な! 私が用意出来るのは…これです」


「んなっ! こっこれは!?」



何故二郎がこんなモノを!? 驚いて顔を二郎の顔を覗いた僕だけど、目に映った二郎の顔はただただ笑顔のままだった。



「まだまだありますよ? どうです? これと引き換えに引き受けてくれませんか?」


「で、でも…。慧音さんの信頼を失うわけには…」


「信頼では手に入らないものもありますよ。ね、大和老師?」


「…………やってやろうじゃんか。いいよ、やってやる。こうなったらもう妹紅でも零夢でも何でも来いだ!」



結局、こうして僕は全面的に協力することになった。秘伝を教え、罠を突破し、一郎さんを花嫁の所まで送り届ける。約束の日は近い。




◇◆◇◆◇◆◇




「ご主人さまは結婚とか考えたことないの?」


「ん~? ルーミアちゃん、急にどうしたの?」



買い物を済ませた神社への帰り道でそう尋ねられた。太陽が沈んだからか、隣を歩くルーミアちゃんの表情は良く見えない。



「ううん、ただ結婚って面白いのかな? って思って」


「難しい質問だなぁ…。僕も結婚なんてしたこともないし、考えたこともないから分かんないや」



だからごめんね、と頭を撫でてあげる。わはー、と楽しそうな声が聞こえてくるので、別に誤魔化したことに怒ってもいないようだ。…でも結婚、か。本当に考えた事もないや。実際どうなんだろう、好きな人と一緒になると言うことは。



「じゃあね、私が大和のお嫁さんになってあげてもいいよ?」


「あはは、じゃあ大きくなったらそうして貰おうか」


「うん! 私が大きくなるまで生きていられたら《・・・・・・・・》なってあげてもいいよ!」


「うーん、じゃあ長生きしないといけないね」



他愛もない、子供を相手にした話だとこの時は考えていた。思えば、僕はこの時から深淵よりも更に深い闇に囚われてしまったのかもしれない。








オマケ



「遅い!」


「ごめんごめん、ちょっといろいろあって。ああそうだ、友達を紹介するよ」


「はぁ? あんた何言ってんの? 誰もいないじゃないの」


「え!? …ホントだ、何で?」


「はぁ…。もういいわ、今日は私が作るからそこで寝てなさい」


「いいの!?」


「特別に、よ。折角の牛鍋が不味かったら嫌じゃない」



この後、割烹着姿の零夢を見て「似合ってるね」 と言った。零夢を煽てて、これからもご飯を作らせようとしたけれど、バレていたのか針人間にされてしまいましたとさ。




◇◆◇◆◇◆◇




文「むふふ…むふふふふ」


大「どうしたの? そんな気持ち悪い笑い方して」


文「特大のネタを手に入れたんですよ! このネタを元に文文。新聞を発行すれば私の新聞も…。むふ、むふふふふ」


大「(怖い…) それで、今日の質問はなんだっけ?」


文「おっと、そう言えばそうでした。今回は面白い質問が来てますよ? 実は大和さん宛じゃなくて、作者宛なのです!」


大「な…なんだってー!? …じゃあ僕いらない子?」


文「そんなことはないです。私が質問しますので、そこにあるカンペを読んでくださいね。じゃあ質問です! 『大和より、作者のじらいの好きなタイプが知りたいです』 だそうです。さぁちゃっちゃと答えてくださいな」


大「僕の存在意義って…。え~と『幽々子様が好きです。でも射命丸の方がも~っと好きです!』 …何これ?」


文「つまりそう言うことです。私は作者に贔屓されてますからね。今もこうやって出てますし」


大「ああ~成程成程。つまり出てるとこは出て、へっ込むところはへっ込む人が好みだと」


文「ま、私は着やせするタイプですから」


大「(何か言ってるよこの人。そんなことないのを僕は知ってます) それじゃあまた次回にお会いしましょう!」

変態準備中…


今回はイイハナシだなー、なんて思って貰えたら嬉しいじらいです。大和も人里の人間の成長を見てきたんだな、と思って貰えたら嬉しいです。あと、変態準備中というのは私ではなくてですね、4兄弟のことです。あんたは変態じゃないの? と聞かれるとNOとは言えないのですがw


次回で4兄弟+主人公で人里大決戦の予定です。大和秘伝の技とか、二郎が大和への報酬に用意したものなども次回に回します。つまり、次回で変態の襲撃開始ということです!


ではまた次回の後書きで

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