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東方伊吹伝  作者: 大根
第六章:君と過ごした最高の日々
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博麗大結界

独自解釈塗れで始まります。テンション上げて行かないと持ちません。


~大結界の構築三日前 紅魔館~



「じゃあ要請は受け入れられないと?」


「当たり前だ、お前たちだけでやればいいだろう。だいたいお前自身がそんな嫌そうな顔をして頼みに来た時点でお断りだ」


「来たくて来たわけじゃないし、頼みたくて頼んでるわけじゃない。頭首がお前じゃなくてレミリアだったらそっちに話を通しているよ。後で紫さんに何か言われないために来ただけ」


「なら早く帰れ。娘たちにも手伝わせんからな」



ふん、相変わらず偉そうな奴め。こっちだって名目上で頼みに来ただけだっての。だと言うのによくもまぁ踏ん反り返って言えるもんだ。お前に助けてもらうつもりはねーから!


ケッ! 軽く舌打ちして叩きつけるように扉をしめて部屋を出た。イライラするなあもう! だいたい紫さんが自分で話をつけたらいいんじゃないか!



「ヤマト、お父様とのお話終わった?」


「終わったけど、どうかしたの?」



紅魔館の廊下を音をたてて歩いているとフランが曲がり角から現れた。何やら落ち着きがなくそわそわ…いや、もじもじしている。僕の機嫌が悪いのを理解しているのか、話すのを躊躇っているように目線を合わせようとしない。



「えっと…その、また本を読んで欲しくって…」



偶然出会ったのではなく、どうやら話が終わるのを待っていたみたいだ。後ろ手に持った本がそれを知らせてくれる。今も目を背けてそわそわしているし、少し脅かしちゃったかな…。



「じゃあ図書館に行こうか」



勤めて優しく話す。フランは人の感情を捉えるのが凄く上手い。感受性が高いと言った方が良いだろうか。少しのことでも大きく受け止めてしまう傾向がある。それは僕が出て行く前からあったみたいだけど、地下室に籠った後更に強くなったとレミリアが言っていた。なんでも、嫌われたくないとか。こんなに可愛い子を嫌う人がいるのなら逆に見てみたい気がするけどね。



「うん! 今日もいっぱい読んでね!!」



荒んだ心にその笑顔は眩しすぎるよ…。



紅魔館に来た時に僕がすることは主に三つ。レミリア達とのお茶会・パチュリーとの勉強・そしてフランと一緒に本を読むこと。子供らしくなったフランは暇を持て余すとこうやって本を読んでと頼んでくる。だから図書館で読んであげているんだけど、それをみた幼い姉も目を輝かせて聞いていることがある。…本人にいったら、そんなことはない! と強く否定してくるけど、それが返って疑惑を強くしているんだよね。



「あ、お姉様がいる」


「本当だ。勉強してるみたいだから、あっちの奥に行こうか」


「もう終わったから気にしなくていいわ。せっかくだし、私も聞かせてもらおうかしら」



かなり注意して小さな声を出したはずなんだけど…まあいっか。でもお嬢様、不敵な笑みを浮かべて言うのはいいですけど、口元が緩んでいらっしゃいますよ?



「むぅ…ヤマト、膝借りるから!」


「どうぞー」



椅子に座ったところでフランが膝に跳び乗って来た。まるで私の場所だと言わんばかりにレミリアに向けて唸って? 威嚇している。…残念ですけど、これは僕の膝ですから。あと、レミリアも悔しそうな顔しないでね。余計にフランが膝上で暴れます。



「じゃあ読んでー」


「……………」


「じゃ、じゃあ読もうかなー」



何でだろね、何でこんなにも殺伐とした本読みが始まるんだろうね…。最近ね、この姉妹実は仲が悪いんじゃないかと思うんですよ。普段は仲良さそうなんだけど、時々こうやってケンカ腰になるんだ。しかも僕の居る時だけだってパチュリーが言ってたから、こうして僕も出来るだけお願いごとを聞いてるんだけど…意味ないんです。



「しかし、また恋愛小説なんだね…」



騎士がお姫様と助けて恋に落ちる話。これで何回目なんだろうか…。僕の妹的存在であるフランドール・スカーレット、どうやら御年頃のようです。




◇◆◇◆◇◆◇




「じゃあまた今度」


「うん! また本読んでね!」



本を読むのも終わり、夜も明けようという時間帯に僕は帰路へとつこうとしていた。レミリアとフラン、美鈴が門まで見送りに来てくれている。…美鈴は門番だから居るだけだけど、寝てるのかな? 目を瞑ったまま微動だにしないんだけど…。



「明日の夜、美鈴は非番になっているわ」


「…! わかった。じゃあ美鈴を誘って遊びにでも行くよ」


「そうね。幻想郷を案内してあげて頂戴。…大きな運命が動くのを感じるわ。気をつけてね」


「わかってる」



レミリアは少し心配したように、フランドールは満面の笑みを浮かべている。アルフォード、どうやらお前の娘は強かに育っているみたいだ。次期党首、レミリア・スカーレットはきっとあんた以上の器を持っているに違いない、そう思うよ。




◇◆◇◆◇◆◇




~博麗大結界構築当日の深夜~



「悪いね美鈴、こんなことに付き合わせちゃって」


「別に構いませんよ。それに大和さんとまた背中を合わせて戦える機会を無駄になんて出来ませんから」


「…実を言うと、僕も美鈴と一緒に戦えて嬉しいんだ」



紅魔館から美鈴を借りて、僕は博麗神社から少し離れた空を漂っていた。美鈴にはこれから何が起こる可能性があるのかを伝えてある。妖怪たちが動かなければ僕らは何もしなくてもいいけど、そんな楽は出来そうにない。僕の能力がしきりに警戒するべきだと伝えてくれている。妖怪がやって来るという、ね。だからほぼ確実に動くこととなるだろう。



「ではこの場は頼む。私はもう少し後方に位置する」



僕らが神社から少し離れているのは、もし防衛線を抜かれても追撃によって対処できるようにするためだ。前衛・美鈴、中衛・僕、後衛・藍さんの三人が迎撃チームだ。美鈴が単騎で突っ込み、僕は広い範囲を魔力糸でカバーする。藍さんはその零れた部分のカバーに入るのが今回の作戦だ。また、僕の魔力糸は中級の中位程度なら難なく切り刻めてしまうため、構成を雑にして面で叩き落とすように考えている。



「そろそろ始まる頃合いだな……地面を見るといい、肉眼でもはっきりと見ることが出来るぞ」



藍さんの声と共に地面が淡く輝いていくのが見えた。その光は線となり、力が博麗神社から外へと向かっているのがはっきりと見える。地脈エネルギーを幻想郷中に広げているのだろう。おそらくこの後に結界の構築が始まるはずだ。



「前方より妖怪接近!」


「って!? 何であんなに大量に!?」


「事前に情報を知らせておいたのが仇となったか。紫様も博麗の巫女も、妖怪たちの怨みを多く買っているからな。これを気に始末してやろうと思う輩がいても不思議ではない」



だからってこの数はないでしょ…。ぎりぎり上級に届きそうな人もチラホラと。戦力比、見た感じでざっと100対3。まったく嫌になる。



「言ってても仕方ないですし、私が突っ込んで数減らしますんで。大和さんと藍さんはフォローお願いします」


「任せてもらおうか」


「無駄な殺生は避けて!」


「1人も殺しませんよ! ただ、一生歩けなくなるくらいの覚悟はしてもらいましょうか!!」



美鈴は虹色に輝く気を纏い、妖怪たちの中へと吶喊していった。




◇◆◇◆◇◆◇




「さて、じゃあ始めるわよ。準備はいい?」


「何時でもいいわ」



何時もとは違い、博麗に伝わる神器を片手に境内に立つ。向かい合って立つ八雲紫の顔も緊張からか、何時もより厳しい顔が見てとれる。何時も飄々としている妖怪だけど、それも仕方ないことかもしれない。何せ私たちは今から一つの『世界』 を創ろうとしているのだから。


緊張しているのは私も同じだ。失敗は許されないし、もしかしたら死ぬかもしれない。歴代最高という評価も前代未聞の出来事を前にすると霞むというものだ。…あいつが心配してくれているから少しはマシなんだけどね。



「地脈エネルギー、来るわよ」


「…!」



境内に張られた巨大な術式に膨大なエネルギーが流れていくのが解る。私たちの仕事はこの力を暴走させることなく、かつ結界を幻想郷を囲むように張り巡らせること。とても骨が折れる仕事だ。少しでも歪みがでると力が暴走し、私たちに害を及ぼすのだから。



「ん…………………………………ッ…………」



正直、いっぱいいっぱいだ。幻想郷中から流れ込んでくる膨大な力をたった一つの術式に入れる。大量の力を受け入れるために入口は大きく調整されていても、流れてくる力がそれよりも遙かに大きければ意味がない。額には大量の汗が浮かび、目の裏がチカチカと光る。



「…………………………力の軌道を確保、後は任せたわよ…………」



力の通る道を制御下に置いたところで一息をつく。身体は汗でびしょびしょだし、頭はがんがん痛むし、なんかもう、どっと疲れたわ。まだ全部終わってないけど、後は目の前の賢者様にでも任せていればいいだろう。どうせ後は足りない分の力を私たちで補えばそれで済むはずなんだし。



「―――――――――術式も稼働し始めたわ。後は時間が経つのを待つだけね」


「…そうみたいね。幻想郷が覆われていくのが解るわ」



集められた力が幻想郷中に再び、今度は明確な意志によって広げられていく。でも、よくもまぁこんなモノを創ろうと考えたものよね。一つの世界を丸々覆ってしまうだなんて普通の奴が考えることじゃない。…だから賢者だなんて呼ばれているのか。



「足りないのはちょうど1人分ってとこね。じゃあ、足りない分の力を入れて行きましょうか」




◇◆◇◆◇◆◇




「ああもう、何だってんだよこいつ等! それほど強くもないのに全然堕ちない!!」


「熱くならないで下さい! ここを抜かれなければいいんですから!!」


「解ってる!!」



解ってるけど、さっきから胸の奥がざわついて仕方ないんだ。視界の端で零夢が泣いている光景が映っているんだ、冷静になれるわけないだろ! こんなことしている場合じゃない、今直ぐにでも助けに行かなきゃならないのに目の前の妖怪たちは全く堕ちてくれない。



「誘われてるのか…? いや、だとすれば何で…?」



追えば引き、引けば詰め寄られる一進一退がもう長い間続いている。まだ1人も通してないけど、これじゃあ千日手だ。どうにかして早く堕とさないと、そう思っていると正面から真黒い物体が凄いスピードで飛んできた。



「真黒い…玉…?」



少し離れた場所でふわふわと滞空している黒い球体。球体といってもはっきりとした球状のものではなく、形はいろいろと変化しているのだけど。周りの妖怪たちはその球体を見て怪しんでいるのか、動きが止まっているものが多い。



「今の内に「大和さん避けて!!」 …ッツ!?」



動きの止まっている妖怪の隙を突こうとしたところで美鈴が声を張り上げた。何事か!? そう思った瞬間には濃厚な殺意と妖力を含んだ黒い槍が、玉から僕目掛けて飛んできた。



「ッ突破された!?」



瞬きする暇もない程の速さで放たれる無数の黒槍を前に、捌き、避けることしか出来ない僕の横を妖怪たちが素通りしていく。美鈴が追いすがろうとしているけど、そちらにも同等の黒槍が放たれた。あの通り過ぎていった妖怪たちはもう藍さんに任せるしかないだろう。彼らよりも、目の前の存在の方が零夢たちにとって危険になるだろうから。



「何者だ? 闘うと言うのなら姿くらい見せるのが筋じゃないのか?」



避けきれず、所々皮膚と服が裂かれた。掠っただけで致命傷は受けてないけど、この玉がとんでもない使い手だということは解る。これが全力でなかったとしたら…ゾッとするね。



「……………」


「だんまりか。美鈴、倒すのにどれくらいかかると思う?」


「…正直解りません。強敵なのは確か、なんですけどその度合いが」



隣で滞空している美鈴も所々傷を負っている。こちらもかすり傷程度だけど、一筋縄ではいかない敵を前に顔を顰めている。美鈴を以てしても目の前の不思議な物体は測りきれないと言うことなのか。


思わぬ強敵を前に、僕らは足止めをくらってしまった。


















「どうしたの零夢? 苦しそうだけど…大丈夫?」


「…誰の、せい…だと、思ってんのよ!!」



大和が謎の妖怪に足止めされているその時、零夢は冷笑を浮かべる紫の前で膝をついていた。




博麗大結界の完成は近い




◇◆◇◆◇◆◇




文「第二回! お便りコーナ~! 嬉しい限りですねぇ、こうやって届けてくれる方が居ると言うのは」


大「第二回にして弄られるのが確定してる大和です…。大和です…。やまとです…」


文「古い人のネタだしても誰も反応しませんよ? やるんだったら、そのシリアスをぶっ壊す! くらい言ってもらわないと」


大「そ、その「では質問入りまーす」 ……」


文「『大和って結局どこに住みたいの?』 だそうです。どうですか? これを気に私の家に永住しませんか?」


大「文ちゃん寝言は寝て言おうね~。住みたい希望は、鬼の皆がいる近くかなぁ。やっぱ家族とは近い方がいいし」


文「本当に鬼の方々が好きですよねぇ。こんな美少女が一緒に住まないか? って聞いてるのに断るなんて。普通はホイホイ付いて行きますよ?」


大「じゃあ住む? なんなら死ぬまで一緒でもいいけど」


文「え……。そ、それって、その…ぷ、プロポー 「そしたら文、絶対僕のことこき使うよね。帰ってきた時もご飯作らされたし、新聞のネタにされるから却下で」


文「一瞬でもドキッとした私が馬鹿でした…。ちょっぴり落ち込みますね。まあ別にいいですけど。じゃあ次です。『本家才能のない主人公様とどっちのほうが才能ないですか? 飲みこみはどちらの方が早いですか?』 です」


大「僕のほうが才能あります」


文「即答!?」


大「男の子は負けず嫌いです。たとえ負けていても心では負けれません」


文「根性論どうもありがとうございました。詳しくは愚かな作者が超番外の方で絡む機会を考えていますので、その時にちゃんとした答えがでると…思いたいですね。残念ながら今回はこれで終わりです。また何かあれば送ってくださいね」


大「…ああそうだ、別に僕のことだけじゃなくていいですよ? 伊吹伝独自の世界観とか、師匠に勝てる人いるの? でも何でもOKです。それではまた次回」

こんにちは、じらいです。博麗大結界始まりました。が、直ぐ終わりそうな気配がした御方、正解です。これも含めて全3話にするつもりですので。


大和の前に現れた黒い物体、2人の八雲の思惑、零夢の行方、大和の言った助けてくれる人とは誰なのか? 次回以降に判明しますのでお待ちください。





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