表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方伊吹伝  作者: 大根
第六章:君と過ごした最高の日々
89/188

伊吹大和。これでも僕、男なんです

今回、主人公が変態になっています。そんな主人公が見たくないと言う素晴らしい方がいれば戻るを押してください。キャラが崩壊していますので。

~永遠亭 真・免許皆伝~



竹林の大気が揺れる。


常人が見れば影すらも残さぬスピードで動き回る2人。そのスピードは正に神速。竹林の間を縫う様に駆け抜ける2人の後には粉々に吹き飛んだ竹が無残にも散らばっている。


ただ勝利を。


一秒にも満たぬ時間の中に太鼓を叩いたかのような轟音が葉を揺らし、衝撃波によって吹き飛ばしていく。その轟音と衝撃波が拳撃によって生まれたモノだと誰が理解できようか。常人ではない、達人とカテゴリーされる己の限界を超えた者同士のみが為せる技、拳撃乱舞が繰り広げられていた。



「どうしたの! そんなものでは私は倒せないわよ!?」


「うッツらあああアアアアアアアアアア!!!」



己の技と力に絶対の自信を持って放たれる無数の拳。音速を超えて突きだされるそれはただ目の前の存在を打ち抜くためだけに真っ直ぐに放たれている。時折幻術を混ぜて放たれる突きの数は最早点ではなく面で相手を捉えようとしていた。


その猛攻を涼しい顔で往なしていくのは一人の長身の女性、八意永琳。赤と青、二色を持った特徴的な服を翻しながら拳を避け、時には防ぎ、隙を見つけては声を張り上げ指摘する。


嘗て大陸の騎士や月の使者が用いた銃などとは遙かに比べ物にならない力を持った拳撃を単身で放ち続ける2人。降り注ぐ拳の弾幕を躱しつつ隙を探し、己で隙を作らせる。瞬きも許されない中で見つけられた隙はすぐさま己に跳ね返り、自身を窮地へと追いやるだろう。一瞬の油断も許されない乱舞が一進一退で進む。



くそ…このままじゃジリ貧だ…。



逆手に構えた短剣に魔力を纏わせ、長剣とすることで虚を誘う。常人には剣筋すら見えない回避不能の斬撃の嵐。高密度で形成された魔力剣は周囲の竹を真っ二つにしていく。だが彼女はその平素と変わらぬ涼しい顔でそれを躱していく。物を断つことは出来ても目の前の存在を断つことは出来なかった。



「嘘ッ!?」


「馴れないことはしない方がいいわよ」



逆袈裟で脇を狙った剣は二本の細指によって止められ、そのまま腹部を蹴りによる剛撃が襲った。肉眼でも目視することが出来るほどの気で身体全体を覆っていたにも関わらず、その衝撃は内臓を抉るほどのものだった。



「~~~~ェッホッゲホッツ」



地に足を着けて耐えられるほど柔な蹴りではない。冗談のように吹き飛ばされ、地に打ちつけられる。だが、この程度でやられる程少年も軟ではない。すぐさま起きあがり、口内に溜まった血を吐きだして構えをとる。



「能力使用、並びに魔道機関の使用を許可」



女性の言葉を聞き、少年の顔が笑顔に染まる。そう、これだけの人外な闘いを繰り広げておきながらも少年は本気ではなかったのだ。これでようやく全力でイケる、そう呟いた少年の右目と左目が淡く光ると同時に、予備動作すら見せずその場から姿を消した。


背後! 女性が振り返った先には笑う少年の姿。既に迎撃態勢を整えているにも関わらず何を笑う、そう思った彼女は刹那の内に己の失態に気がついた。目の前の少年の姿が煙のように消えていく。


幻覚。それは少年の十八番。こと幻術に関しては天才と言っても過言ではない才を持つ彼はその成長麗しく、もはや彼女ですら完璧に騙されてしまう程にその腕を上げていた。ただ見せるだけでなく、『そう思わせる』 精神系の幻術すら自由自在。自らの奥義と定めた有幻覚には未だ程遠いと聞いたが、これでも十分に脅威となり得る絶技。彼女は己の弟子の成長を嬉しく思うと同時に恐怖した。


眼下で自身の幻覚に騙されている彼女を見、この好機を逃さんとばかりに急降下。同時に雷鳴を思わせる鋭い踵落としを放つ。対する女性は辛うじてそれを両手で受け止める。インパクトの瞬間、女性の立っていた場所は深く陥没し、地形が大きく変わる。再び襲った衝撃波が竹を根元から吹き飛ばした。


これで終わりじゃないんでしょう? 当然!!


目と目で語り合う2人。お互いの健闘を誇りつつ、相手への賛美も忘れはしない。


お互い後方へと跳び、距離を取る。女性が何かを呟くと同時に構えを解き、両手を地に向かって降ろした。それを見た少年は息を飲み、額から大量の汗が噴き出し始めた。呼吸は乱れ、大量の汗を含んだ服が背中にへばりつく。



「本気で行くわよ」



構えを解いたのではなく、これが彼女本来の構え。流れに身を任せる流水に似た動きこそが彼女の真骨頂。油断も隙もない、鋭い眼光で少年を睨みつける。自らの師にここまでさせた少年が手を抜けるはずもなく、彼も全力を出さざるを得ない。これこそが彼の望んだ試合なのだから。



―――イクシード 起動―――



小さく呟かれた言葉と同時に少年の身体が紅い魔力に包まれる。身体が紅く輝くのは、弾に篭められた己の魔力を一定時間爆発的に高め、使用することの出来る魔道機関の副次効果だ。



―――桜花制空圏…気と魔力の合一―――



戦意が失せたと見える程の虚ろな瞳に、身体を纏う明らかに異質な力。これが少年の新たな技。その状態で幻覚・有幻覚を混ぜたモノこそが彼の秘奥。


今までの喧騒が嘘のように竹林が静まりかえる。だが今までで一番その場は張り詰めていた。もし彼ら以外に誰かがこの場にいれば立っていることはおろか、多くの者が彼らの放つ圧力に失禁することになるだろう。



「「勝負!! 」」



地が爆ぜるよりも早く2人は消えた。




◇◆◇◆◇◆◇




「うぅ…また負けた…」


「ま、当然の結果よね。大和如きが永琳に勝てるハズないもの」


馬鹿輝夜ばかぐや、少しくらい慰めてくれてもいいじゃないか!」


「嫌よ。敗者は地面を這ってなさい。それより肩揉んでよ、最近よく肩がこるのよね~」


「てゐちゃんにやってもらいなよ…。僕もう無理…」



結局あの後本気になった師匠にボコボコにされた。途中で気を失ったのに身体は勝手に動き続けていたらしい。…師匠の修行の異常性が解るよね、まるでアンデッド大和だよ。勝手に動いてたのを沈黙させるために殴って蹴って投げ続けた師匠も異常だけどね…。



「てゐにしてもらうより大和の方が利くのよね~。ねえ、私の専属整体師にならない?」


「心底御断りです。輝夜は傷薬持ってきてくれたんじゃないの?」


「あら、昔の男たちならハァハァ言いながらやるわよ?」


「お生憎様。僕はその人たちと違って輝夜を知ってるからね」


「……貴方って本当に厄介な男よね」



そんなことより早く背中に薬塗ってよ。ここまでは流石に届かない…って!? なんで叩くんだよ!!




◇◆◇◆◇◆◇




~突撃 人里紳士隊!~



風邪と永遠亭でのケガが治ってから幾数日、ようやく元気になったことを喜びながら人里へと足を運ぶ。寝込んでいたために溜まっているであろう依頼の確認をしに行くのだ。基本的に僕は商人の人に頼まれて山の幸や魚なんかを取って来ている。それが僕の生活費になったり、博麗神社の財政を助けることになっているのだ。つまり、僕がいなければ零夢が餓死する…と思いこんでいる。



「すいませーん。大和です、お仕事貰いに来ましたー」


「おお、ようやく来てくれたのか。風邪をひいていたんだって? もういいのかい?」


「それだけじゃないんですけど、おかげ様で。この通り元気いっぱいです!」



むん! と身体を魔力で包んで笑って見せる。淡い光が身体を包んでいる僕を見た店主さんは、それは頼もしいことだ、と笑ってくれた。



「これが今回の依頼だ。秋も近づいてきたし、何時も以上に山の良いやつを期待しているよ」


「解りました。山の神様たちにもお礼を言って頑張ってもらいますよ」



紙を貰った後、通りを歩きながら紙を見る。紙に書かれたリストには山の幸を沢山と書いてあった。…なんてアバウトなお願いなんだろう。苛められてるのか、それとも信頼されているのか…。信頼されてるんだよねきっと。そうだ、あの山の姉妹にも手伝ってもらおう。何と言っても神様だし、美味しい所を熟知してるだろうし。



「いたぞ! 大和だ!」


「んぉ? 一郎さん、そんなに慌ててどうしたんですか?」



通りを歩いていると前から4人の男たちが走って来た。通称人里4人兄弟、ある意味人里で一番有名な男性たちだ。長男から一、二、三、四ととても分かりやすい名前をしているのも理由なのだろうけど。



「実はお願いが「嫌ですよ、今から山に入るんですから」 それが終わってからで構わないからさ! 頼むよ!!」


「えー…」



これは厄介なことになったなぁ。この兄弟が有名なのは人一倍女性に興味があるからなんだよね…。覗きなんてほとんど毎日してるのでは? と人里では思われている程の猛者であるから、清く正しいイメージを保ち続けたい僕的にはあまり関わり合いたくない人達なんだけど…憎めない人達なのです、はい。



「実は…俺たち兄弟全員が慧音さんに恋をしたんだ」


「なっ…なんだってー!?」



慧音さんに恋を…。うんうん、凄く解るよその気持ち。優しいし、柔らかいし、顔立ちもすごく整っている。惚れるなと言う方が無理な話だよね。



「だが俺たち兄弟の絆は堅い! 誰かが抜け駆けを謀るなんてことは絶対に出来ないんだ!」


「無駄に仲良いですからね…」



兄弟の誰かが捕まったら全員で謝りに行くほどの潔さを持っているからなぁ。真摯に謝る姿を見たらどうも怒る気がなくなるって女の人も言ってたし。…それが嘘かどうかは知らないけど。



「そこで俺たちは決めたんだ。…慧音さんの風呂を覗くと」


「待てその発想はオカシイ」


「可笑しくはない! 俺たち兄弟が共に幸せを勝ち取るにはこれしかないんだ!!」



グッ! っと拳を突き上げて宣言する四人に気圧されそうになる。こ、この人たちなんて目をしているんだ!? 目の前にいる四人全員が死に逝く漢の目をしている。本気だ…本気で慧音さんのお風呂を覗くつもりだよこの人たち!?



「…止めるべき…なんだよね」



気を身体に纏わせ、直ぐに戦闘を行えるように構えをとる。慧音さんの為に…あわよくば慧音さんの気を引くためにも、僕は貴方達を止めなければならない!



「止める? 何を言っている、お前も一緒に覗くのだよ」


「なん…だって…!?」



その時、体中に電流が走った。僕が、慧音さんのお風呂を覗く…だって…?



「フッ…お前が慧音さんのようなお姉さんが好みなのは知っているさ」


「でっ、でも僕はそんなことはしないッ、出来ない!!」


「お前の力が必要なんだ! 大和、お前は真の幻想郷を見たくないのか!?」


「ぼっ僕は、僕はあッツ!!?」


「行こうぜ兄弟…共に夢の国へ行こう…」


「…兄さんと呼ばせて下さい…」


「「「「弟よ!! ((((ちょろいもんだぜ)))) 」


「これより我々は人里紳士隊と名を変える! 決行は今夜だ!」



すいません慧音さん。僕も男なんですよ…




◇◆◇◆◇◆◇




夜。太陽が沈んだころに上白沢邸に近づく5人の漢たちがいた。



「正面に罠なし。よし、前進するぞ」


「罠って…そんなの仕掛けられてるの?」


「俺たちの覗きに対抗するために、今では年頃の娘さんの居る家では常備されているのさ」



親指をぐっ! と立てていい笑顔をするのはいいけど、それは別に誇ることじゃないと思うんだ…。なんて言っても無駄ですよねー。



「! 止まれ、罠だ。大和、これは解けるか?」


「…大丈夫、この草の陰になっている部分を踏まなければいいから。僕が向こう側まで皆を運ぶよ」



罠が仕掛けられた一帯を一人一人担いで飛んで躱す。トラバサミに落とし穴とか、下手すれば一生の傷になるかもしれないものをよく躊躇いもなく置けたものだと思う。慧音さんも自分を守るためには手段を選ばないということか…



「しかしその目は便利だよな。俺も能力持ちになりたいぜ」


「一郎さんたちもある意味能力持ちでしょうに…」



変態行為を行える程度の能力とか。むしろ貴方達が能力持ちになったら誰がを止めれるんですか!?


ちなみに僕、これから嵌るであろう罠を先読みしています。僕が助けなければどういった罠に嵌るかが視えるため、罠の設置場所と種類が手に取るように分かる。でもこんなことに使うのは初めてだよ…。




◇◆◇◆◇◆◇




「諸君、よくここまで付いて来てくれた。長男としてこれほど嬉しいことはない。今、この薄壁1枚の向こうには幻想郷が広がっている。本当なら俺が一番に覗きたいところだが、今回一番の功労者は新たに仲mに加わった大和だ。だから大和に一番に覗かしてやろうと思うのだが、どうだ?」


「「「異議なし」」」


「よし。では大和、お前が一番だ。楽しんで来い」


「イタダキマス」



この壁の向こうに真の幻想郷が…。そう思うと胸の高鳴りが抑えきれません。押さえられないのは慧音さんのけしからん胸かもしれないけど。



「おい慧音、背中流してくれよ」


「いいぞ。ただもう少し浸かってからな」


「その後で構わないさ」



こ、この声は妹紅!? 何と言うことだ、土壇場で一人追加されるなんて!! 神様、これはいつも頑張って来た僕へのご褒美なんですね!? ありがたく頂戴します!!



「おっ、おい慧音、何処触ってんだよ」


「せっかく一緒に風呂に入っているんだ、普段洗えない所までしっかり洗っておかないとな」


「こそばいっての」



ブホッ!? 鼻から血が出そうです…。声だけ聞いても十分に桃色空間が楽しめるんだけど、そろそろ本番と行きましょうか! 気配を消しながらそっと浮き、覗く。



「!?」


「よう変態。元気か?」


「…伊吹君、まさか君までこんなことに手を貸すとはな」



衝撃の事実発覚。なんと2人は風呂に入らず、服を着たまま窓を見張っていた!? 僕がほんの少し顔を覗かせた瞬間に目と目で解り合うアイコンタクト。お前が覗き魔か? イエス! 正直でよろしい。



「な、何で妹紅さんがいるんです?」


「あのなぁ、通りであれだけ大きな声出してたら誰でも気付くっての」


「!?」



再び体中に電流が走った。なんてこった、まさか初めからバレていたなんて。こうしてはいられない、早く皆に伝えて逃げなければ、



「っておいいいいいぃ!? 何でもう逃げだしてるの!?」



尻尾を巻いて逃げるとは正にこの事だろう、振り返って見えたのは明日へ向かって走り出していた4人の兄だった男たち。僕を置いて逃げやがったな!?



「お前は逃げられないけどな」



壁の向こう側から妹紅が宣言してくる。でもね妹紅、壁なんだよ。壁があるから僕は確実に逃げ切れる自信がある。だから僕は壁に手をついて勝利を確信する。…覗きとは、帰って一息ついて笑えるまでが覗きなのです。



「妹紅か慧音さんが追いかけてくるの? 残念だけど、回り込んでくるまでに僕は逃げさせてもらうよ」



たかだか覗き魔を捕まえるためだけに壁をブチ破るなんてことはしないはずだ。直すのに時間も手間もかかり過ぎる。



「安心しろ、お前には私たちよりも適任がいるさ。後ろを見てみろ」



何を言っているんだ、そう思って後ろを振り返った。



「…変態。あんたって最低ね」


「れっ、れれれッ、零夢さん!?」


「私もあの新聞を読んでな、一応巫女にも知らせておいたんだだけど正解だったみたいだな」



振りかえった先には巫女の皮を被った夜叉がいました。



「変態は死ななきゃね。安心しなさい、ちゃんと神社で供養してあげるから」


「に、逃がして貰えたり…なんて。あは、あはははははは」


「あははははははは。…無理ね」


「お助けーーーーーーーーーーーーーッ!?!?」



清く正しい伊吹大和。人里では少しの間、酷くヤラシイ伊吹大和と揶揄されることとなりました。トホホ…。もちろん4人のことは直ぐに吐いた。生贄は多い方がいいもんね、ただじゃ転ばないよ…!




◇◆◇◆◇◆◇


あれですよ、ちやほやの法則ってやつです。頑張ったと思われた後に落されるアレです。


久しぶりに戦闘描写を書いてみようと思ってやってみましたが、見ての通り酷いものですorz どうも戦闘描写は苦手なようで、書きにくいですよ。日常書いている方がだいぶ楽なのですが、そろそろ異変もやって来るので練習も兼ねて今回やってみました。


そして人里紳士隊。嘗て原作登場人物に対して覗きを敢行した二次の主人公がいただろうか? 私は読んだことがありませんw 最近主人公の男としての部分が問われているようなので本気出してみましたw












…覗きが成功してたらワッフルワッフルでノクターンへGOですね…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ