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東方伊吹伝  作者: 大根
第六章:君と過ごした最高の日々
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今日も良い日だなぁ

綺麗な萃母さんを書いてみました。


あと、主人公への質問等は何時でも受け付けておりますので

~文文。新聞増刊号 噂の魔法使い~



今回は個人的にも深い付き合いのある友人、伊吹大和さんについて纏めた。何分彼については語るべきことが多いので、通常とは違う増刊号として書かせてもらうことにする。


伊吹大和。旧妖怪の山出身。人間の子供ながら、嘗てその名を轟かせた鬼一族の一員として迎え入れられ、四天王の一人、伊吹萃香の義理の息子として生きていくことになる。若干10の身にて条件下ながら母親を破り大陸へと旅立つ。その後、紆余曲折を経て帰還。現在は魔法使いとなり、魔法の森前に居を構えている。


そんな彼にはおもしろ…もとい、様々な噂が付き纏っている。曰く、新たに現れた館の吸血鬼ととても親密にしている。曰く、裁判長と同棲したなどなど。挙句の果てにはつい先日、博麗神社境内にて博麗の巫女と抱き合っている姿を私は見つけてしまった。巫女が泣いていたため痴情の縺れかと思われる。カメラを定期検査に出していたため、生憎とその瞬間をカメラに収めることが出来なかったため証拠品はないのだが、事実である。彼の噂の多くが女性関係なため、友人である私もとても彼のことが心配でもある。


だが打って変わり、人里ではかなりの高評価を得ている。人間が普通入れないような場所に行けることから、上質な食材を届けて貰えて嬉しい、妖怪退治の腕前は人里でも有名だ、よく家の子供と遊んでもらっている、など優しい一面も見られるようだ。


そんな彼を語るにはまず彼の母親、伊吹萃香について知らなければ――――――――――




「それで大和、これ本当なの?」


「…イエス」


「閻魔と同棲してたというのも本当なのね?」


「マチガイアリマセン」



紅魔館、図書館の一角で何故か公開処刑が行われている。裁判官・レミリア、書記・パチュリー、罰執行人・フラン、そして傍聴人・美鈴。…なんだこれ。



始まりは一枚の新聞だった。零夢との一件から三日、久しぶりに穏やかな日々を送っていた僕にいきなり“召喚状”が届いた。それも血のような真っ赤な文字で『今すぐ紅魔館に来い』 と書かれていたモノが。いったい何が起きたのか? 不思議に思った僕はその日のうちに紅魔館に出向いた。


紅魔館に着いてみると、何故か門番である美鈴が居なかった。なのでそのまま門を潜ろうとしたところ、不意に背後からの一撃を受けた。まさか紅魔館で襲撃されるなんて思ってもみなかった僕はそのままお寝んねすることに。不覚をとったとはいえ、こんなことを師匠に知られると…。うぅ、寒気がするよ…。そして気がついた時には縄で身体をぐるぐるに縛られて図書館の椅子に座らされていましたとさ。



そんなこんなで今はレミリアからの質問に答えている。何故返答がおかしいのか? 可愛らしい顔に青筋立てて歪めているお嬢様が目の前にいると言えば解ってもらえるだろうか? 更にはその隣でイイ笑顔のフランドールが魔杖をブンブン振り回しているのでさあ大変、下手すれば明日の朝日は拝めなくなるね! …もう一度言うけど、なんだこれ?



「そう…全て真実なのね。…フラン」


「な~に? お姉様?」


「やれ」


「いえっさー!」



肩を回しながら近づいてくるフランに顔が引きつる。待った待った!! 何で!? 何でこんなことになってるの!?



「ちょっ!? 待っ!? …アッーーーーーーーーーーーーー!?!?」



その日、青い空に弧を描きながら飛ぶ黒焦げの物体が、幻想郷各所から見られたらしい。




◇◆◇◆◇◆◇




「あやややや!? 私は記者として真実を伝えただけですよ!?」


「アレのせいで死にかけたんだよ!? いい加減嘘を書いたことを認めてお縄につけ!!」



紅魔館から吹き飛ばされた勢いのまま、僕は妖怪の山目指して飛んだ。目的は新聞を書いた犯人、文を締め上げて誤解を解くこと。…零夢の件は誤解だよ、うん。他はだいたいあってる。


…身体と心の両方が痛いね。だってあの新聞、もう幻想郷各地に配られたらしいし。せめてそれを見たであろう慧音さんや妹紅が誤解を解いてくれようとしてくれていると信じよう。そうじゃないと今度から人里を歩けない…



「言うこと聞かないなら、今日の晩御飯は鴉の丸焼きだ!!」


「んもう、大和さんったらだ・い・た・ん♡ そうやって私まで食べちゃうつもりなんですかぁ?」


「ムキーーー!!? 馬鹿にして! そこまで言うなら本気出すよ!!!!」



空を縦横無尽に駆け回っている文を追う。しかし悲しいかな、文の飛ぶスピードが速すぎて僕じゃまったく相手になってない。必死で追いすがる僕に自分が捕まるなんて微塵も思っていないのだろう、スカートを端を摘まんでチラリ、健康的な太股をアピールして挑発してくる。



「え~? 今までも本気じゃなかったんですか? それとも本気って、私を本気で食べるつもりなんですかぁ? もう、夜が寂しいのならそう言ってくれればいいのに~」


「…吹き飛べーーーーーーーーーーー!!!!」



―――魔砲 マスタースパーク―――



結局、文を捕まえることは出来なかった。武士の情けでどうか誤解を解いて下さい、と土下座までしたのにそのまま椅子にされる始末。


尻を乗せるな尻を!? 興奮しました? ………。本当にエッチになりましたねぇ。



男は皆、変態になると思うよ…。僕だってもういい歳なんだから、ね?




◇◆◇◆◇◆◇




~大和、風邪で寝込む~



「~~~~ッ寒い、風邪ひいたかなぁ」



20日の間に何も飲まず食わず。更には姉妹にボコられ、文との追っかけっこには完敗。魔法使いになったから飲まず食わずでも生きていけることが解ったけど、心情的には結構きつかったです。境内で座っている時とかほとんどご飯のことばかり考えてたし…(零夢には内緒です)


そんなこんなで今までに溜まっていた疲れが一気に出たようです。朝起きた時に頭痛と寒気、あと熱が出てました。…ついでに吐き気も。



「うぅ~~~~~~~~…しんどいけど、それよりも暇だ」


「だったら母さんが話相手になってあげよう!」


「…せめて玄関から入って来てください」



何処から…と言うより、何時の間にか母さんが寝ている僕の隣に現れた。息子が風邪をひいているというのに、隣で呑気にお酒を飲んでいる。美味しそうに咽喉をならす姿を見たら僕も飲みたくなってきた。



「母さん、僕にもお酒頂戴」


「ん? 風邪に酒は効いたっけ? まあ飲みたきゃ飲めばいいさ、御猪口はどこだい? 動けないお前に代わって母さんが飲ませてやろう」


「自分で飲めるから大丈夫だよ」


「そう言わずにさぁ、今くらいは私に甘えなよ。お前の悪い癖だぞ? 何でも自分でやろうって思うのはいいけどさ、誰かを頼ることも大事なんだぞ?」



それよりも御猪口だ御猪口、と家の中を粗探ししだす母さん。そこ探っちゃダメです!?


しかし、誰かを頼れってか。今までもずっと頼って来たのに、これ以上迷惑を掛けるわけにはいかないんだよ。むしろ頼られる存在になりたい。それで今までお世話になった分を返していきたいんだ。



「あったあった。さあ母さん特性の酒だ。これを飲めば風邪なんてあっという間に飛んでっちまうよ」


「…だから自分で飲めるって言ってるのになぁ」



母さんに支えられるようにして起こされる。僕の方が母さんより背が高いので、母さんが僕に隠れるようになってしまう。しかしいくら小さい(言ったら怒られる) と言っても鬼だ。その細い腕に似合わない力を持って僕を支えてくれている。



「……大きくなったなぁ、大和も」


「そりゃあね、あれからもう何年も経ってるんだ。何時までも小さくないよ」


「…私の気のせいだったみたいだ、気にしないでいいよ」



本当にお前は大きくなったよ。何時までも私たちの後ろを付いてきたあの頃と比べるとね。


少し、悔やしい…。


だって私はお前が成長する過程を見てやることが出来なかったんだから。お前は弱くて泣き虫だったから、人一倍悩んで迷ったはずだ。出来ればそれを一番近くで見てやりたかった。悩んで迷って、それを全部背負って進んでいくお前の姿を見てやりたかった。


…やっぱり付いて行くべきだったね、勇儀に止められようとも。


帰ってきた時のお前と今のお前も全然違う。また強くなった。お前は知らないことだろうけど、勇儀や大将、仲間にお前のことを話した時は楽しかったんだぞ? どんな風に大きくなったんだとか、強くなったのかとか、中には娘と結婚させるなんて奴もいた。もちろん言った奴は殴ってやったが。


お前は皆から祝福されているんだ。だから周りを頼れ。必ずお前の為になってくれるはずだ、私が言うんだから間違いない!



「母さん、ありがとうね」


「ん?」


「いや…その…、普段恥ずかしくて言えないからさ。お酒が入った時に言わないと言えないんだ」


「~~~~~~~~!! このぉ! 可愛い奴め!! ほら、どんどん飲みな! 今日はこのまま宴会だあ!!」



あ~~~~~~~~ッ! もう、可愛い息子だな! 絶対婿になんてやらせないからな!!




◇◆◇◆◇◆◇




~翌日の夜~



「…で、はしゃぎすぎて酷くなったと」


「ゲホッゲホッ…申し訳ない…」


「…別に私に関係ないからいいけど」



結局夜通しで飲み続けた結果…風邪が悪化しました、はい。



「でもさ、零夢は心配してきてくれたんだよね?」


「ばッ、馬鹿言ってんじゃないわよ!? ただ単に、毎日来てた奴が急に来なくなったから気になっただけよ!」



一般的にはそれを心配して様子を見に来たと言うんじゃないのですかね? そう言えば何故か風邪が悪化すると思えたので黙っておくけどさ。



「で? ご飯食べたの?」


「へ? いやまだだけど」


「そ。食材くらいあるでしょ? 作ってあげるから早く食べて治しなさいよ」



…明日は空から槍が降るのか? それとも夢想封印が降るのか…? その前に目の前の存在は本当に零夢なのか…? あまりの優しさに目の前の存在が幻覚に見えてきた。むしろ視界が潤んできて見えなくなってきたんだけど。



「ってあんた、何泣いてるのよ気待ち悪い」


「うぅ…零夢の優しさに感動してるんだよぉ。今まではあんなに横暴だったのに…」


「…あんたも馬鹿ね。私とあんたは『友達』 でしょうが。これくらい当然よ」



いいから病人は寝てなさい、そう大和に言い聞かせて私は台所に立った。割烹着がないので服が汚れるかもしれないけど、その時はこいつに洗濯させれば済むか。…とりあえず咽喉を通りやすい物を作ろう。こいつの家、男の一人暮らしの癖して保管されている食材が多いのね。


…こいつと一緒になった奴はそりゃいい暮らしするんでしょうね。人里にも妖怪にも顔が利いてるってのもあるし…。


…別に、悔しいとかいう嫉妬はない。……嘘ね、もう自分に嘘を吐くのは止めておこう。悔しいですよ、嫉妬してますよ、これでいいかしら?


ほんと、ふざけた奴め。あの新聞は私も見た。女関係で苦労しているみたいだし、これからも苦労するのだろう。ま、今となっては関係ないんだけど。何と言っても友達なわけだし。


私が本気になればこいつなんて一発だろうけど、私は彼を置いて先に逝くことになる。そうなった時、たぶん大和は耐えられないだろう。だってこいつ、ヘタレだもの。しかも本人よりも周りの方が理解しているのだから余計にタチが悪い。


だから悔しいけど、別に私は悲しくない。女の人と仲良く話をしている所を見ると心がモヤモヤするけど、別に悲しくはない。むしろその女の人を応援したい。どうかこの男を幸せにしてやってほしい。私にはもう無理なことだと理解出来たから…。



「ほら、おじや出来たわよ。いっぱい作ったから、そこで寝ている鬼にも食べさせてあげるといいわ」


「ごめん零夢、迷惑かけた」


「馬鹿ね、こういう時は『ありがとう』 って言うのよ。じゃあね」


「ありがとう、夜道に気をつけて~」



人間の寿命は妖怪に比べると非常に短い。妖怪にとっては瞬きの間の時間でも、私たちにとっては必死に生き抜いた時間になる。でも私たちは妖怪と違って成長するのが早い。短い寿命の間で驚くほど変わっていける。だから私も変われた。



「だから吸血鬼、あんたも早く変わりなさい」


「…いつから気付いていた、博麗の巫女」


「ずっと前からよ。私が大和の家に入る前から」


「………」


「明日になれば治ってるでしょうね」


「そう………」



大和の家のある場所から少し離れた場所、木の影になっている場所に吸血鬼はいた。


一瞬厳しい視線をぶつけて来た吸血鬼は柔らかい表情になったが、直ぐに厳しい視線を私に向けてくる。ああ、この子もそうなのか。乙女のカンなのかは知らないけど、はっきりと解った。私と同じ、でも私とは大きく違う。



「安心しなさい、別に盗ったりしないわ。貴方のモノでもないようだけど」


「何の事かしら? さっぱり理解できないわ」


「なら別にいい。ただ、はっきり言わないと伝わらないと思って。悪かったわね、それじゃ」


「…待ちなさい。貴様の名は?」


「博麗零夢。博麗の巫女よ」


「そう。私は「別にいいわ。もう会うこともないだろうし、妖怪の名前を聞いてもしかたないから」 …ならいいわ。行きなさい」



吸血鬼が見送る中、私は神社目指して飛んだ。今夜は気分がいい。ゆっくりと夜風を味わいながら空を飛ぶ。隣を飛ぶ人が居ないのは少し寂しい気もするけど、きっと直ぐに隣であいつが飛ぶだろう。その時は精一杯の笑顔で迎えてやろう。



別に友達でも構わない。そこに確かな絆を感じられるのであるのなら…














「巫女と魔法使いは恋人同士ではないのかー。……これはもう少し調べたほうがいいわね。フフフ…」

質問が来たので答えようかな? と思ったけど番外にして詳しく答えようか、それとも後書きでちょちょいと答えようか迷っているじらいです。


今回は萃母さんに焦点を当てる話しにするつもりが、何故か零夢が持っていくということに。そう言えば文や姉妹も出てましたっけ? まあいいや。


次回はおふざけ回です。人里の男衆と大和が大暴れの予定になっております。あとは白玉楼かなぁ。それが終われば博麗大結界に入ります


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