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東方伊吹伝  作者: 大根
第五章:幻想となった故郷
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地獄廻りと新たな境地への一歩

久しぶりに真面目な話? になりました


3月18日改訂

「構えなさい」



永遠亭で夜通し行われた宴も終わり、一眠りした後師匠に叩き起こされた。はっきりしない頭で少し懐かしいな、そう思った時には僕は見事に宙を待っていて、目が覚めた時には畳の上に叩きつけられていた。受け身すらとれなかったのは長いブランクのせいだ。そう言われ、鍛え直しとどれだけ成長したかを見るために今師匠と向き合っている。



「…行きます!!」



魔力を身に纏い急接近。ほぼ毎日行っていた身体強化は力強く、見る者を魅了するほどのものとなっている。あの頃とは一味違う動きをもって師匠の腕をとり、重心の下に自分を入れ背負い投げを仕掛ける。



「………!」



普通ならば背中から畳に叩きつけられる。だが、僕も含め師匠も『普通』 ではないのだ。腕と肩の関節が外れているのではないかと思うほど空中で身体を捻り、そのまま僕の投げから逃げて目の前に着地。逆に顔面を掴まれ後頭部から叩きつけられた。



「ぇほっっっゲホッッッゲホ…」


「……どういうこと?」


「どういう…ことって…?どういう…こと…ですか…?」



畳に打ちつけられた影響で息も絶え絶え、痛む後頭部を抑えて尋ねる。僕を見つめる師匠の表情は、今まで見た中でも特に深刻な顔をしていた。



「自己鍛錬を怠った? これと言って進歩が見えないの。本当に修行してきた?」


「そんな!? 修行もしてきたし、命を賭けた実戦を何回も経験しました! 確かに島ほどの馬鹿げた量をやってたわけじゃないですけど、達人相手に毎日組み手もしてきました!!」



師匠の言葉に痛みすら忘れて起きあって反論する。そりゃ島での命懸けの修行じゃなかった。けど多くの闘いの中で僕は打ち勝ってきた。だから強くなってないことなんてありえない! そうやって必死に師匠に訴えかける。僕は必ず強くなったはずだと。



「…私の目に間違いがあるとは思えないわ。貴方は変わっていない。達人の領域に片足が浸かった程度のあの頃となんら変わりはないわ。おそらく周りの仲間や短剣に備えられた魔道機関、魔法の影響が大きいはず」


「そんな…じゃあ、じゃあ僕は…」


「残念ながらあの頃とまったく変わっていないわ」



武術では美鈴に勝てず、魔法ではパチュリーの足元にも及ばず、総合力では輝夜に劣る。今まで勝ってこれたのは、周囲の助けとイクシードによる魔力の底上げがあったから。それらが僕を強いと勘違いさせてきた。沢山の物が詰まっていたと思っていた箱を一度開けれてみれば、そこには何も入ってなかったのだ。悲しみや喪失感以上に驚きで言葉が出なかった。



「でもそれほど深刻に考える必要はないわ」


「え…? どういうことです?」


「何故なら私がもう一度鍛え直してあげるからよ。喜びなさい。死んだ方がマシな修行になるけど、必ずもう一度限界を超えさせてあげるわ!」



目から怪光線を出しながら師匠はそう宣言した。そこに痺れる憧れるぅ!? あまりの師匠の勢いに蛇に睨まれたカエルのように動けなくなってしまった。これが真の達人なのか!?


一瞬憧れもしたけど大事なことに気がついた。限界を超えるって、それってあの…、もしかして『地獄廻り』 だったりします?



「あの…拒否権とk「ないわね。さあ逝くわよ」 師匠! 字が、字が違います!?」



落ち込む暇すら与えてもらえない。スパルタなんて言葉では表現できない地獄廻りが始まった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




蓬莱島での修行を表現するのならば壮絶、この一言に限る。私なら一日で止める。あんなのは死なない私でも死ぬ。でも死ねないから精神が崩壊して廃人になってしまうだろう。今は常人の目には映らない速度で動きまわり、ひたすら勝ち目のない組み手を行っている。目に映らないとは言ってもかぐやには『まだ』 見えているのだけど。



「全然見えないウサ…。姫様には見えてる?」


「もちろん。今も泣きながら投げ回されてるわ」


「それは修行じゃなくて虐めウサ…」



虐め? たったのこれだけで? こんなのはまだ地獄廻りに於いては序の口でしかない。本格的に始まったらもう私でも目で追えないことになる。たぶん大和も何をされているのか解らないだろう。気絶させられればそれ以上の苦痛で起こされ、更に酷い痛みを覚えさせられる。頭で理解させるよりも、身体が勝手に反応するまで続けられる。



「本当の地獄廻りはこんなもんじゃないわよ…」


「……てゐちゃん用事を思い出したから失礼するウサ」



そう言っててゐは退出していった。おそらく遠くで見ている私たちにまで衝撃波が届くようになったからだろう。既に永琳の振る腕のスピードが速すぎてもう影すらも見えない。大和の姿も見えないので、おそらく見えていない腕の先で振り回されているのだろう。



「可哀そうな大和。頼むから死なないでね」



ホロリと涙が流れそうになるほど見ていて面白い修行風景。目から怪光線を出し、腕を振り回し続ける永琳を見ているともう手遅れな気もするけれど。でもとりあえず此処を離れよう。巻き込まれたら酷い目に合う。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




死ぬ。本気で死んでしまう。どう投げられているのかすら理解できない。覚えが悪い僕は頭よりも身体で覚えなくてはならない、何度も身体で受けてみれば技の特性が理解できる、そう言って蓬莱島で始まった修行。通称地獄巡り。現在地獄の一丁目くらいかな? ちなみに今まで意識を失わずに覚えていられたのは4丁目までです。もう何がなにやら。



「立ちなさい! 立たないのなら死になさい!!」



師匠、そりゃ無理ってもんです。何回も気絶させられて、その度に叩き起こされての繰り返しがもう何時間も続いている…と思う。頭は別のことを考えながら、身体は勝手に動いているせいで時間の経過すら分からない。少しでも技を見極めようとしたけどもう無理っす。



「遅い! 百回は死んだわよ!!」



意識とは正反対に師匠に身体が立ち向かっていくも襟首掴まれてまた振り回される。ああ、時が見える…。



「……よし、今日はこれくらいね」


「やっと終わ 「次、72時間耐久で魔力による身体強化。自分の分身を50人創ってやるわよ」 ですよね…」



あの頃の3倍の時間と2倍の分身げんじゅつの数。もう無理。僕これが終わったら映姫様のところで判決受けてると思うんだ…。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「月に一度ここに来なさい。鍛えてあげるから」


「……………ハイ」



天に月が昇った時間に漸く解放された…何日も経った後だけど。


あの後気絶したままで何が起こったのか解らない。ただ師匠の顔を見ただけで身体が震えだすのだからよっぽど酷いナニかがあったのだろう。既に永遠亭を訪れて20日が経過していると師匠が言っていたから、僕は19日くらい意識がない状態だったみたいだ。…もしくは脳が覚えた記憶を忘れさせたのかもしれないけど。



「どれだけ修行させられたんだよ…。ここに師父がいたら絶対死んでた…」


「私がいるのだから死なせるはずないでしょう」


「また変な薬でも飲ませました…?」


「いい実験になったわね。これからも頼むわ」



気絶した弟子に変な薬飲ませないでください。



「自己鍛錬も忘れちゃ駄目よ。取り戻すのが大変だから」


「肝に銘じておきます!!」



もう嫌だ、あんな目には二度と合いたくない。だから一日たりとも修行を疎かにすることができないんだ! 美鈴と一緒に組み手をしておこう! 少しでも強くなろうと努力すれば師匠も容赦を…してくれないだろうなぁ…。



「じゃあ帰りますね…」


「一ヶ月後に会いましょう。これからは2~3日で終わるようにメニューを組んでおくから」



それは頼もしいことですね! これだけ死にかけたというのに見送りは師匠だけ。輝夜とてゐちゃんは中で寝ているらしい。薄情な上に羨ましいぞコンチクショウ!




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




久しぶりに家に帰った後、疲れでくたくたのはずなのに何故か身体を動かしたくなった。夜も更けているので派手な活動は控えなければ迷惑…といってもここらに住んでいるのは妖怪だけだから別にいいんだけど。とりあえず動きたくなったので外に出て構えをとってみた。



「なんだろう、疲れたはずなのに妙に心が落ち着いている…」



構えに何時もの力はない。疲れているせいで気も魔力もそれほど多くない。しかしいろいろ合ったからか、それとも飲まされた変な薬のせいか自然と桜花制空圏のような無心になっていくのが解る。何もない、夜の闇と静けさに己の身を任せる。



「右手に魔力…左手に気を…」



自分でも何故そんなことをしたのか分からないけど、自然と身体がそう動いた。桜花制空圏…心を静めた状態で初めて行った気と魔力の合一。爆発しか生み出さなかった欠陥技は見事に身体に馴染んでいった。



「なんだろう…気持ちがいい。ずっとこのままでいたいな…」



相反する二つの力に包まれた身体は、今まで以上に満たされていた。今なら何でも出来る、そう感じさせるほどに僕は全てから解放されているように思えた。



「今夜はこのままこうやって過ごそう…」



立った状態で力を纏ったまま目を瞑る。力を抜き、己を周囲に溶け込ませるように身を任せる。今日はいい夢が見れそうだ…

GW。久しぶりにド田舎にある実家に帰ってみたところ、なんと既に家族が揃っていました。帰って早速した仕事は近所の子供の相手です。兄ちゃん兄ちゃんと呼んでくれる子供がお兄さんには眩しいよ…。


子供 「何してるのー?」

じらい 「お話書いてるんだよ」 

子供 「ねっとしょうせつだよね」


最近の子供って発達早いですね。一日中驚いてばかりでした

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