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東方伊吹伝  作者: 大根
第五章:幻想となった故郷
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幻想郷での日々

だいたいこんな感じです


~祝 我が家~



「わっはっはっはっは! 目出度い、今日はなんて目出度い日なんだ! こうやって大和と一緒にお酒を飲める日が来るなんて! くぅ~~~今日は酒が美味い! 天狗、お前も飲め飲め!!」


「い、頂かせてもらいます!」


「わっはっは! どうだ大和!? わたしと飲むお酒は美味いだろう!?」


「美味しいよぉ…こうやって帰ってこれて嬉しいよぉ…」



何だこの空間は? 紫様に言われてスキマを抜けてみれば萃香様・天狗・大和殿がお酒を飲んでいた。それはいい。だが目の前の光景は常軌を逸している。何度も天狗に酒を勧めている萃香様、逆らえずに死を覚悟して酒を飲む天狗、酒に酔って明後日の方向を向いて泣いている大和殿。もう一度言おう、何だこれは?



「しかし大和殿は泣き上戸なのか」


「ま、この子もいろいろ我慢してるのよ。それよりも藍、私たちも相伴に預かるわよ?」


「賛成です。私も大和殿同様、溜まっておりますので」


「…それって喧嘩売ってるの?」


「さあ? ただ、性根の腐った主を持った身になれば分かるかと」


「…いいわ。今日はとことん付き合ってあげる。酒を持ちなさい!!」


「上等です。吠え面かかせてあげますよ!!」



僕の目が覚めた時には新築なのにゴミが散乱した床と、誰かの吐瀉物が広がっていました。



「片付けてから帰ってよーーーー!!!」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




~1人暮らし準備中~



とりあえず食料がなければどうにもならない。魔法使いは食べなくても生きていけるとはいえ、元々が人間なのでご飯時には何かを口に入れないと気が済まないんだ。とは言っても僕は無一文。食材が買えない上に食器や調理器具すら買えないのが現状だ。



「と言うわけで、困ってるのはそれくらいです」


「…それは『それくらい』と片付けられる問題ではないと思うのだが」



人里へ行く→慧音さんに捕まる→事情聴取→助けてやろう! なんて素晴らしい人なのでしょう。食うだけ食って、飲むだけ飲んで帰った人たちとは大違いだよ! あの4人、いつか必ず思い知らせてやんよ!



「食器は土の魔法を使えばどうにかなるかと思うんですけど」


「火を使っても大丈夫なのか?」


「…粉々になりました」



家財や食器がないなら作ればいいんだよ! そう夢を見ていた時もありました。一応生活に困らない程度には属性魔法が使えるので、土釜とかは母さんと一緒に作れた。でもお皿とか小さいものは難しく、フライパンになると火に翳すと砕けた。なので貰いに…もとい買いに来たのだ。



「…なんだ、私の使ったお古でよければ譲るが」


「お願いします!!」



それは閃光のような即答であった。慧音さんの譲るの一言で僕の生活は救われたのである。持つべきものは美人で優しい友人だと思う。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




~摩訶不思議な魔法の森~



魔法の森には不思議がいっぱいだ。生えているキノコを食べると大きくなったり、掌から火の球が出るようになったりする。人面樹もあれば肉食の花も咲いている。魔法の森の名にふさわしい馬鹿げたモノが多いけど、数多くの修羅場を潜りぬけた僕にはどうってことはない。



「このキノコは食べれるのかな? 向こうの人面樹の木からは良い魔法杖が出来そうだし、この森って宝の宝庫だ。瘴気のおかげで並の人間も妖怪も近づかないから独占出来るぞ。…これで商売してお金稼ごうかな?」



ここでの生活が我が馬鹿弟子1号の為になるとはこの時思ってもみなかった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




~懐かしい影~



一年中タケノコが採れると噂される竹林があるらしい。もし本当ならばなんと素晴らしいことなのだろう、我が家の食料事情はこれで解決されたも同然だ。なんでも一年中採れる場所は竹林の中でも奥深い場所にあるらしい。迷いの竹林とも呼ばれているらしく、あまり深くには入らないほうがいいと里の人に聞かされた。



「飛べば関係ないのでは?」



生憎こちとら普通の人間ではございません。更に言えば幻術は十八番なので解析とかも得意中の得意だ。僕に幻術は効かないぜ!



「…………oh迷った」



なんということでしょう、迷うはずないと思っていた竹林でまさかの迷子。400年以上生きているのに迷子である。知人に知られたら恥ずかしさで死にそうだ。1人頭を抱えていると竹林の奥から音と、何やら言い争うような声が聞こえてきた。



「――――――――――――――――ッ!!」


「~~~~~~~~~~~ッ!!」



うん、間違いない。誰かが争っている。気で強化した聴力を頼りに現場へ向かってゆっくりと飛んでいく。ゆっくりと確実に、心を静め、周囲の気と自分の気を同調させる。抜き足、差し足、忍び足。僕の気持ちに呼応し、背中に背負った大量のタケノコでさえ音を出すことを躊躇っているようだ。



「輝夜ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「妹紅ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・帰ろう」



一目見た瞬間に撤退開始。まさか懐かしい顔を二つ同時に見ることになるとは思ってなかった。血沸き肉躍る闘いを繰り広げ、血で血を洗う殺し合いをしている二人を背中に音も立てずに飛ぶ。巻き込まれたくないとです。


しかし幻想郷に輝夜が潜伏しているとは。…ちょっとマテ。ここに輝夜がいるということは師匠も…?甦るのはあの地獄の日々。そして最近の僕は自分でも分かるくらいにまで鈍ってる。そう考えると背筋に震えが起きた。あの師匠のことだ、結界の一つや二つ、予備も含めて罠も張っているはず。となると、僕は罠にノコノコ入って行った兎さん?



「じーーーーーーーーーーーー」


「………どわーーーーーーーーーーーー!?」



1人思考を走らせていると、真横で一匹の兎が僕を見ていた。思わず声を上げてしまった僕は何も考えずに全力で飛んだ。恥も外聞も関係なく全力で竹林より上の空を人里目掛けて飛んで行った。


その後人里では季節外れのタケノコが予想以上の高値で売れて僕の懐は潤ったけど、新たな心配が出来てしまった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇




~お久しぶりです~



それは懲りずに竹林で採ったタケノコを人里で売りさばいていた時の出来事。



「私にもタケノコをくれ」


「はいどう……ぞ?」


「どうした商人。私の顔になんかついてるか?」



oh…目の前でニヤついているのは懐かしの藤原妹紅さんじゃありませんか。



「ひ、久しぶりだね妹紅。タケノコが欲しいのかな…?」


「ああそうだな。私を放ってまで採れるタケノコとやらに興味があってな、わざわざ金を払って買いに来たわけだ」



魔力を身体に纏わせ幻術を使用、同時に地面を殴って砂埃を立てて逃走開始。逃げろ逃げろ! 妹紅の意地悪そうな顔を見たくなければ全力で逃げるんだ!



「待て――――ってなんだぁ!?」


「ふはは! あばよもこたん!!」



砂埃がはれてみれば、そこには幻術で30人近く増えた僕が散り散りに逃げて行く様子が見てとれる。その様子を見た妹紅は目を見開いて驚いている。その隙に僕はタケノコ両手にその場をその場を後にした。



一刻後



「よう、家燃やすけど構わないよな?」


「お助けーーーーーーーーーーーーー!!」



慧音さんから聞いてきたらしく、僕の家には妹紅がやって来た。



「冗談だって。…まったく、そそっかしい所は変わってないのか?」


「あはは、最近はマシだよ。でも久しぶりだね妹紅」


「本当に久しぶりだ」



どっこいしょ、そう言って座る妹紅がどこぞのお婆ちゃんに見えるのは白髪だからだろうか。本人はあの頃とまったく変わりないようだけど。



「で、お前は魔法使いに成れたみたいだな」


「おかげ様で」



とりあえず御茶を出そう。そう思って急須に入っていた冷めた御茶に、炎の魔法を当てて瞬間的に温め直す。とりあえずこれでいいだろう。



「横着だな。まあ構わないが」


「妹紅ならそう言うと思ったよ」


「なんだそれ、私だって繊細なんだぞ?」



そこでお上品に笑ってくれたらそう思えるけど、ズズズっと構わず御茶を啜る姿を見ればとてもじゃないけど繊細とは言えないと思う。



「妹紅は誰かと争っていたようだけど、アレは何だったの?」


「ん? ああ、前言ってた輝夜姫との殺し合いか?」


「って本当に殺し合いしてたの!?」



そうだぞー、とあっけらかんに言う妹紅に驚きが隠せない。もし本当にそうだとすれば忌々しき事態だ、早々に止めさせないと!



「とは言っても、私もあいつも蓬莱人。死ぬことなんて絶対にないから無駄なんだけどな」


「あ、そうなの? ならいいや」



そう言えば蓬莱人だったよね。死なないんだったら別にどれだけやっても何も言いません。わざわざ不毛な争いに首突っ込めるほど強くもないし。第一どっちの味方も出来ないので出来れば関わり合いたくないのが本音だ。



「そう言えば私が輝夜を見つけたと言っても驚かないんだな。知ってたのか?」


「知らない」



僕は何も知りません。ホントウダヨ! だから2人の殺し合いに巻き込まないで!!



「…まあいい、今日は飲みに来たんだ。大和も酒くらいもう飲めるだろ?」



どこから取り出したのか、妹紅はそう言って酒瓶を床に広げた。その後は翌日の朝日が見えるまでお互いに語り、飲みつくした。朝日が辛いよ…


いわゆる閑話ですね、じらいです。今日の講義中にネタが頭を過ったので形にしてみましたけど、山も谷もない話になってますねwただ久しぶりに妹紅が出せたのは嬉しかったです。これからは輝夜・妹紅・大和の3人で絡むことが増えたらいいですねぇ。



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