望まぬ帰郷と望んだ再会
自答編(仮)始まります
真黒。多数の目と不思議な物が浮かんでいる空間の中、上下の感覚すら曖昧な中を僕は確かに落ちていた。
「今さっきのはやっぱり紫さん…なんだろうな。だとするとここはスキマの中」
まるでタイミングを測っていたかのような悪戯。そう、あの人にとっては悪戯なのだろう。やられた僕としてはたまったものじゃない。でもこの中じゃ何も出来ない。ただ流れに身を任せて出口が開くのを待つ。
「・・・・・・・・光が見える!出口だ!!」
紫さんのことだ、何が待ち受けているか解らない。魔法が使えない分注意して、身体全体に気を纏わせて有事の際のために構える。
「――――――――――――――へ!?っちょ!?落ちる落ちる!!??」
――――隙間が開いた先は空でした―――
馬鹿言ってる場合じゃない!飛べ飛べ!僕は鴉天狗だ!!
「・・・これは地面の中じゃなかった分喜ぶべきなのかな?」
いやいや、喜んじゃだめだろ。ここはきっちり怒るべきだ。だいたい、タイミングを測っていたのなら、僕の行動も全て見えていたはず。それを解ってこんなことをしたのなら許せるなんてものじゃない。そう思って周りを見渡すも紫さんの姿はなく、僕の飛んでいる場所は山の上だった。春らしく、山の木々は緑の葉が生い茂っていて何処か懐かしさを感じさせてくれる。
「そう言えばここ、どこかで見たことあるような風景な気がする。・・・懐かしい?」
何処だったか?確かに見たことがある気がするんだけど。なんとか思い出そうとしていると、首の後ろがチリチリしてきた。所詮、殺気と言うモノだ。・・・解り易すぎる。そんな生の感情剥き出しで襲おうとするということは、今までの僕の経験上、何種類かの攻撃手段があると考えた方がいい。
こちらが隙を見せるのを待っているのだろうか、こちらをずっと見ているだけで手を出してはこない。仕方ない、少しだけ隙を見せて反応を見よう。そう思い、滞空したままであくびと背伸びを行う。もちろん隙を見せた『フリ』だ。実際はどんな出来事にも対処できるように力を隠しての行動だ。
・・・・・・・・・・ッ動いた!!後ろから飛んでくる、おそらく弾幕を気で強化した拳と蹴りで叩き落とす。すると山の中から多くの天狗が出てきた。もしかしてここ、妖怪の山なのかな?いやそれはない。だって母さんたちの持つ異常なまでの力が感じ取れないから。
数人の天狗がそれぞれ武器を持って仕掛けてきた。動きも遅く、攻撃のスピードも今まで闘ってきた人たちに比べれば止まっているように見える。でも僕は防戦一方だった。
『何の答えも見つけられていない僕がこの人たちを攻撃してもいいのか?』
そんな考えが僕の頭を過る。頭の中ではシルフィーユさんの最後、レミリアの泣き顔がはっきりと映し出されている。くそ…なんて情けないんだ僕は!?
「でもこのままじゃ・・・」
やられることはない、と思う。でもこれ以上コトを大きくすればどうなるか解らない。ここはひとまず逃げよう、そう思っていた僕の前に一人の鴉天狗が現れた。
「まったく、人間の一人も堕とせないんて「文ぁ!?」・・・あやややや!?もしかして大和さんですか!?」
「正真正銘の伊吹大和だよ」
「うううううううおっっっしゃああああああああああああぃ!?!?今日という日はなんといい日なのでしょう!大和さんが帰ってきましたよ!!ええい皆の者、控えおろう!!こちらにおわす御方を何方と心得る!?恐れ多くも鬼の四天王が一人、伊吹萃香様の一人息子、大和殿にあらせられるぞ!頭が高い!控えおろう!!!!」
「「「「「「は?ははーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」」」」」
・・・なぁにこれぇ?天狗たちの中じゃ空中土下座が流行っている・・・わけないよね。ノリがいいだけなんだろう。
「・・・・・・良し。ささ大和さん、積もる話もあります。下で話をしましょう」
「…うん、そうだね」
「…何だか元気ありませんね。大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫だから」
本当は全然大丈夫じゃない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ささ、どうぞどうぞ。汚いですけど、座ってお茶くらいは飲めますんで」
あの後すぐに文の家へ向かった。自ら汚いと言うだけあって、家の中は物が散乱していた。落ちているのは写真が多く、おそらく文が自分で撮ったものなのだろう。にとりに頼みこんでカメラを貰ったんだろうか。でも文って掃除が苦手だったのかな?新発見だ。
「男の人を家に入れるなんて初めてなんですよ?大和さんも大きく成りましたし、誤解されちゃいそうですね。射命丸文、昔の友人と一夜を共に…なんて噂されて…キャッ!もう、何言わせてるんですか!」
「昔からの付き合いなのに、今更そんなこと言う人なんていないと思うけどなぁ…」
「…ちょっと、本当に大丈夫?今まで何があったか知らないけど、話してもらっていい?私でも力になれるかもしれないから」
そう言い、真剣な眼差しで僕を見る文を見て思う。自分で答えを探すこともいいけど、違う人の意見を参考にするのもいいことかもしれない。話合うことすら出来なかった先生たちと違って、僕は話合うことが出来るのだから。僕は旅のことも含めて、今までの出来事を全て語った。
山を出て妹紅、幽香さんとの出会い。都で出会った陰陽師、妖怪は人間の敵だと言われた。遭難した後の輝夜や師匠、師父との出会い。僕とアキナの関係。美鈴やケビンさんとの出会いと共闘。そして、紅魔館と大戦。人間を愛しすぎた妖怪の話。
全てを話した頃には辺りはすっかり暗く、夜が訪れていた。長時間話したけど、文は真剣に僕の話しを聞いてくれていた。
「文、僕はどうすればいいのかな。どうしたら先生たちを救えるのかな…」
やっぱり話すべきではなかったのかもしれない。話した分、僕はもっと自分が惨めに思えて仕方なかった。
「…私は大和に救って貰った」
??僕が文を救った…?そんなことは一度もない。むしろ毎回僕を助けてくれていたはずだ。
「恥ずかしい昔話になるんだけど、昔の私って愛想無かったでしょ?正直のところ、大和のことが大嫌いだったの。鬱陶しいわズカズカと人の中に入って来るわ、その上ちょっとのことで泣く泣き虫だったし」
「・・・・・誠に申し訳ありません」
「別に責めてるわけじゃないの。でもね、そんな無愛想な私に大和はずっと声をかけてくれたでしょ?嬉しかった。今までただ与えられた仕事をこなすだけの灰色な世界を、色とりどりに染め上げたのは貴方よ」
「それは、いいことだったのかな…?それって文の生き方を僕が変えちゃったんだよね?」
「いいに決まってるわよ。だって今の私、すごい自分が好きだもの。その私を創り上げたのは間違いなく大和、貴方よ。何時だって真正面から人を見て、ぶつかっていける。そうやっていくことが、その先生たちを救うことに繋がるんじゃないかな?」
面と向かって言われると恥ずかしい…。文も恥ずかしいのだろう、頬が紅く染まっている。でも真正面からぶつかっていく、か。相手が受け入れるまで根気強く当たって行く、ねぇ。昔の僕は知らない内に凄いことをしでかしていたんだなぁ。世間知らずって言うか、何も考えずにただ危なっかしかっただけなのかもしれないけど。
「さて!暗い話はこれでお終い!…ねえ大和、その輝夜って人とパチュリーって魔法使いのこと詳しく話してくれる?」
「ん?別にいいけどどうして?」
「威力調査」
そう言いきった文さんの怒気は凄まじかった。僕の背筋は正直らしく、恐怖に震えて冷や汗だらだら。鬼もかくや、とばかりで後ろには炎が見えましたよ…。あまりの勢いに事故で接吻してしまったことまで話してしまった。その時はまぁ、地獄のように酷かったです。家が吹き飛ばんばかりに風が舞って、ねぇ。文さんや、ぱんつ見えちゃいますよ。
「いい?知らない女の人に勝手に着いていったら駄目。特に輝夜さんと会う時は私を連れて行きなさい。そうしないと食べられても知らないわよ」
「た、食べられるって…輝夜は人食いじゃないんですが?」
「い・い・わ・ね!?」
「イ、イエッサー!!」
あまりの勢いに頷くしかなかったです。
遅くなりましたandこれからもっと遅くなります、じらいです。私生活が多分厳しくなって行くので前みたいな毎日更新は出来なくなると思います。たぶん出来て一週間に一話か二話くらいかと。許してやってくださいね。
さて、幻想郷に戻ってまいりました。文との関係は親子?姉弟?大和の保護者(仮)みたいな感じだと思って貰えたらいいかと。一番好きなキャラとカップリングなんてさせてたまるか!




