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東方伊吹伝  作者: 大根
第四章:動乱の大陸
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月の申し子とは僕のこと

タイトルは詐欺です。


日も傾きかけたきた頃、アキナを連れて帰る途中もパチュリーの機嫌は悪いままだった。ただ、何かを聞きたがるそぶりをしていたのが気になる。聡いパチュリーのことだ、僕とアキナの関係に気づいているのだろう。それよりもアキナを連れて帰った時の言い訳を考える方が今の僕には先決だ。





案の定、紅魔館に着いた時は大変だった。時間も夜なだけあって、姉妹が起きていたのが一番の原因だろうけど。何があったか一部だけ言うと―――――――――美鈴が僕そっくりなアキナを見て騒ぎだしたり、レミリアが僕が女の子を連れ帰ったと発狂しだしたり、フランが暴れだしたりしてもう大変。普段以上に混沌とした紅魔館の中で腹を抱えて笑っているアキナがいたり――――――――――――もう勘弁して…。そして今回の騒動で壊れた物は全て僕が直しておくように言われたりともう最悪の日だった。ああ、パチュリーは気がついた時にはもういませんでした。



他にも沢山カオスな出来事がいろいろあったけど、とりあえず僕が全面的に被害を受けたとだけ言っておく。





























「や~~ま~と~く~~ん、あ~そび~ましょ~」


「・・・鬱だ」



後片付けや我儘姉妹のご機嫌とりに時間をとられ、結局一睡もできずに迎えた襲撃の夜。秋とはいえ夜になると寒く感じるのは僕の心も冷えているからなのだろうか?いつもの調子で迎えに来たケビンさんを見てでた第一声がこれだ。


いっつもが不安だらけの任務だけど今回の不安はそれだけじゃない。今日は僕の隣にはアキナ、それとなぜかパチュリーが立っている。身体に障ると言っても無視されるのでお手上げである。特にパチュリーは魔法研究者のイメージが強いので、戦闘で足を引っ張られそうで怖い。



「なんでパチュリーまで?」


「別に・・・確かめたいだけ」


「いいじゃない。さ、行きましょ」



何時もより冷えた夜空の下、一抹の不安を胸に僕たちは紅魔館を後にした。




























明け方。おそらく研究所があるであろう手前の茂みに隠れ、僕たちはこれからの作戦について話し合っていた。何時もの作戦は『正面突破で陽動作戦』なんだけど、今回の標的は逃げ足が早いらしく、陽動するだけで逃げるかもしれないということなので、今になって作戦を立てることになった。とりあえず制圧するのはDrキリシマを捕まえた後になった。所謂スニーキングミッションである。ちなみに何時もは僕が正面突破する役です。・・・あれ?僕って毎回損してる?



「ここね」


「なんともまあ違法研究してます、みたいな空気やなぁ」



あの写真の男は、おそらく僕たちの誕生に関わっているのだろう。どれだけ関わっていて、月で何をしていたのかをアキナに聞いても「これは月の任務だから話せないの・・・ごめんね」としか返ってこなかったので良く解らない。それでも僕がこの男を捕まえることにかわりない。そのあとで真実を吐かせる。



「ほなメンバーはワイと大和、アキナちゃんとパチュリーちゃんでいこか」


「ちょっと待って。それ不安すぎる」




会ったばかりの二人が組むなんて無茶すぎる。僕がどちらかと組んだ方がいい。




「大丈夫よ兄さん。私は兄さんより強いだろうし、パチュリー?の一人や二人くらい守ってみせるわよ」


「あなたこそ私の足を引っ張らないで」




火花が散る・・・程ではないが、友好的なムードは一切感じられない二人に僕の不安は有頂天だ。




(ケビンさんケビンさん、これホントに大丈夫!?絶対問題あるって!!)


(大和君。女にはいろいろとあるんやから察したり。たぶんやけど、パチュリーちゃんはアキナちゃんになんかあるんやろ)


(それが心配だって言ってるんだよ・・・)



「それじゃあお先に」



そうこうしているうちに二人は潜入していった。ああ、不安だ・・・
































今、私の目の前にいる女、名前はアキナと言うらしい。大和の妹らしいが、その顔だちは大和のそっくりそのままである。まるで同じ存在であるかのように魔力の質も、放っている波長もまったく同じである。双子・・・という線も考えてみたが、それでもここまで似る可能性は極めて低い。如何な双子といへどもまったく同じなどありはしない。その理由を突き止めるべく今回同行したのだ。



「ふ~ん、それほど厳しい警備じゃないわね。これはアテが外れたかもしれないなぁ」



あちゃちゃ、と苦笑しているその仕草すら大和を連想させるものがある。性別こそ違うが、今までの判断材料を含めて考えてもこの二人は全くの同じ存在。クローンではないのだろうか?



「よし、警備は行ったみたいね。先に行くわよ」


「待って。貴方に話がある」


「私と兄さんの関係かな?」




・・・どうやら洞察力は馬鹿やまとより上らしい。




「あんたの思っている通り、私と兄さんは同じ存在よ。試験管から産まれたモルモット。男か女かの違いと、才能が有るか無いかの違いだけ。詳しいことは兄さんに聞いてね、面倒だから」


「大和は貴方のことが心配そうだった。あいつはあんなのだから産まれを気にしてないだろうけど、貴方はどうなの?」



私の目にはコイツもそれほど思いつめている様には見えない。だけど大和の目にはそう見えていたのだろう。紅魔館に帰ってからは何時もより溜息が多かった。



「・・・兄さんに会うまではそうだったわ。でも私はわたし。今はそう思えるようになってる。もういいかしら?早くしないとターゲットが逃げちゃうわ」


「そうね。先を急ぎましょう」



もっとも、聞きたいことを聞けた私はここで引き返してもいいのだけれど。そういえばレミィやフランも大和の変化に気がついていたわね。後で教えてあげることにしよう。

















































「気付いたか?」


「うん。血の匂いが濃いくなってきた」



鼻を埋めるのは鉄の匂い。何度も嗅いだ、真っ赤な血の匂い。『僕』を刻む白衣の人たち。すぐ横の台でも『俺』が刻まれている。この地獄にいるのは、『僕』とけんきゅうしゃ。




「大和君?大丈夫か?」


「っ!大丈夫です!」




しっかりしろ、アレは僕じゃない。僕の記憶じゃないんだ。引っ張られるな、自分をしっかり持て!




「しかし慣れへんもんやな。初めのげーげー言うてたころよりはマシやけど」




前まではあんな光景を視るなんてことはなかった。いったい、『僕』は僕に何を教えたいんだろう?




「大丈夫だって・・・何年同じ任務で付き合ったと思ってるんだよ」




ケビンさんは普通の騎士ではない。背中に聖痕と呼ばれる紋章を背負った守護騎士だ。それ故一般の騎士がするような任務は受けていない。いや、受けないと言うべきか。何時だったかヴリアント副団長が言っていた、『彼は進んで汚れ仕事を引き受ける。それ故敵ややっかみも多い。君だけは彼を見放さないでやってくれ』と。損な性格だと思った。彼がどうしてそうなったのか僕は知らないし、知ろうとも思わない。ただ、彼の友人でいるだけでいいと思う。彼もそれ以上を望んでいないだろうしね。



「・・・!ココやな」


「・・・制圧するよ」



扉を蹴破って突入。薄暗い部屋の壁と床には血がこびり付いている。その場にいた研究者二名を瞬く間に黙らせる。ついでに二人の間接をキメて動けないようにしておく。これが何時もの作業だ。


二人を気絶させた後、僕とケビンさんは乱雑に置かれた書類に目を通していた。




「書類と現場を見る限り、ここは解剖所やな。クソッタレ共が・・・・・・!大和君これ見い!!」



ケビンさんから渡された書類を見る。いや、見ているつもりだった。目の前にある書類を見ているはずの目には違う光景が視えていた。



「アキナ・・・?」


「大和君・・・?」


「やめろ・・・おいやめろ・・・ッツ!!」


「ちょっ!?大和君!?」



書類には犠牲となった被検体の数が書かれていた。






















































「こんにちはDrキリシマ。初めまして?それともお久しぶりと言えばいいのかしら?」


「あぁン?何だオマェ?新しく配属された奴か?」



壁一面真っ白の部屋の中、目の前にいるのは月の指名手配犯Drキリシマ。八意の計画中止宣言の後も秘密裏に私たちを創り続けていた張本人だ。豊姉とよねえも粋なことをしてくれる。コイツを捕まえるために私を派遣するなんてね。



「残念だけどあんたを捕まえに来た月の使者よ。ああ、別に罪が許されたから連れ帰るわけじゃないから。然るべき所で裁きを受けてもらうだけ。それより、私の顔に憶えは無いかしら?」


「月ィ?今更御苦労サンなこって。・・・うん?お前もしかして俺の作品か?その顔、確かに見覚えがあるぜ」


「手を出さないで。私がヤる」



それだけ聞ければ用はない。警告などしない。とりあえずぶちのめす。両手に銃を持ち接近、そのまま振り下ろす。



「おお、怖い怖い」



だがどうしたことか、一介の研究者のはずのDrキリシマは戦闘訓練を受けたアキナの一撃を避けてみせた。



「まさかナァ。成功品をこの目で見ることができるたァ思ってもみなかったぜ。傑作傑作」


「貴様・・・!」


「どうしたよ?反抗期か?お前ぐらいの歳の女ってのは喧しくてかなわねェな」


「・・・自分を改造でもしたか、変態研究者」


「あン?それはお前らモルモットの分野だろうが。やるわけねェだろバーカ」



もう何も話すことはない。ただ殺す。そう考えて銃から魔力弾を放つがそれすら防がれてしまう。




   ――――――障壁突破付与 アグニシャイン――――――




「あ?」



横から聞こえた澄んだ声。飛び出たのは劫火の炎。間抜けな声を残してキリシマは炎に包まれた。



「あんた何てことしてくれるのよ!?あいつは!!」



炎を放った本人に突っかかって行く。我慢ならない。アイツは私が・・・!



「貴方にどんな理由があれ私には関係ない。彼を始末して終わるのならそれでいいじゃない」


「一応連れてこいって命令だったのよ・・・。あれじゃあ跡形も「ハーハッハッハッハ!」!?」


「!?そんな・・・直撃のはずよ」



それは私も確認した・・・けど現にアイツは、



「効かねえなァ、ンな炎じゃあ俺は殺せねェよ。さ・て・と、次は俺の番だ。いい声で泣いてくれよォ、お嬢ちゃんたち!!」










































「アキナ無事か!?」


「はは、ちょっと厳しいかな・・・?」



嫌な未来が視え、二人目が居るであろう場所に急行した。幸いこの研究所は地下にあったためか、構造はそれほど複雑なものではなかったため、直ぐに見つけることができた。


目の前のアキナとパチュリーは傷だらけだった。特にアキナの傷が深い。おそらくパチュリーを庇ったのだろう、その分パチュリーの傷は浅い。が、二人とも動けないようだ。



「なんだァ?月の申し子は量産でもされてんのか?ったく、親に逆らうなんて不出来な餓鬼を持ったもんだぜ」


「ケビンさん、二人をお願い」


「どうするつもりや」


「決まってる。叩きのめすだけだ!!」



魔力糸を精製、目の前の男の首を落とす勢いで振るう。が、魔力糸は相手に触れる前に消え去ってしまった。



「!?」


「ヒュウ♪望外だ、悪くないぜお前ら!!」


「チィッ!」



お返しだと言わんばかりのレーザーの雨。魔力を使った月の科学兵器というやつか!?



「こんなもの!」



攻撃の向かう『先』を操ってキリシマに向かわせる。が、その能力で操られたレーザーすら目の前で消滅して当たらなかった。



「ハハ!やっぱり時代は科学だよなァ!魔法なんて時代遅れの産物なんざ、スイッチ一つで無効に出来るんだからよ!!」


「お前さん、いったい何をしたんや?」


「よくぞ聞いてくれた似非騎士様!仕組みは単純!魔法なんてふざけた力を無力化する力場を作ってやればいいんだよ」


「馬鹿な!それは月でもまだ実用化されていない技術なのよ!!」


「この俺様と八意を失った月が作れるはずねェだろうが。だいたいよォ、なんでお前らは個人の能力持ってんだ?月の全因子を含んだ月の申し子とも言えるお前たちがだぞ?何か劇的な反応が起きるハズだとは思わねェか?それこそ俺や八意にも想像つかねェような馬鹿げたことがなあ」


「劇的な反応!?僕らは人間だ!物をように言うな!!」



これ以上お前の汚い口から発せられる言葉なんて聞きたくない。魔法が効かないのであれば肉弾戦!そんなに殴り合いをしたいのならば朝まで付き合ってやる!



「だーかーら甘いんだよなァお前らは。近づけさせるわきゃねェだろうがよ」



ウザったい!!レーザーだけではない、鉛の銃弾も含んだ弾幕を避けたら後ろの三人に被害が及んでしまう。後ろを無視したら倒せるかもしれないけれど、『もしも』のために友人を危険にはさらせない。踏みとどまって弾幕を捌く。



「お前ら殺すのはこれから起こるお祭りの中までとっておくわ。じゃあな」



最後に極大のレーザーを放つキリシマ。僕は加速を使って三人を回収、躱すことで難を脱した。


結局キリシマは逃亡し、アキナの任務は失敗。研究所を潰すという騎士団の任務は達したが、後味の悪い任務となった。


















































~某所 歴史を感じさせる城の中~





「よォフィナンシエ、帰ったぜ」



一人はDrキリシマ。月の指名手配犯にして大和とアキナの真の創造者



「遅い帰りだな同志キリシマ。遅刻かと思ったよ」



もう一人はフィナンシエ・スカーレット。行方不明とされていたアルフォード・スカーレットの弟である。



「とりあえず宣戦布告はしてきたぜ。後は外でお前を待ってる馬鹿どもを扇動すりゃそれで終わりだ」


「正義を行う者を馬鹿呼ばわりするのは頂けないな。では行こう、同志が待っている」










『君たちは知っているだろうか?一部の人間は妖怪の存在を隠し、一部の人間は我々を忘れかけている。人類は己の発展のために我々をこの世から消滅させようとしているのだ。このままでは我々妖怪は活力を失い、諦観の内に壊死するだろう。それを良しとしないのであれば―――――――――――――――――――――――――――――戦争を始めよう』



「「「「「「「「ウオオオオオオォォォォォォォォォォオォォォオオオオ!!!!!!」」」」」」」」



『諸君、派手に行こう』



「ククク、扇動家がよく言う。だがこれで殺し放題だ。クク、ククククク」





歴史に刻まれることのなかった、人と妖怪との最後の大戦が始まろうとしていた。

ACファンの方ごめんなさい。『いちどつかってみたいせりふ』だったんですよw

ACって難しいゲームだと思うじらいです。エーシー♪じゃないよ?ACだよ?どうもあの手のゲームは苦手です。


オリキャラ多いんだよ!!と思っている方、サーセン。もうしばらくお付き合いください。そろそろ大陸編終わって幻想郷に帰るんで。もうすぐ大陸編も書き終わるかと。時間が足りないんだよねぇ。一日が48時間くらいあったらいいのに。

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