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東方伊吹伝  作者: 大根
第四章:動乱の大陸
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gdgd旅路と妖怪退治

3月17日改訂


太陽の光がこれほど憎いと思ったことはない。

信じられない程に乾いた大地を、ただひたすら列をなして歩いていく。ラクダと言われる動物に香辛料などを運ばせ、ほぼ全ての人が地に足をつけて進んでいく。その顔に笑顔はなく、話声など聞こえはしない。口を開けばすぐにでも喉が乾いてしまうから。砂漠では水の確保は難しい。旅人がオアシスと呼ぶ場所まで行かなければ補給も、まともに休むことすらできない。

それは一般人をあらゆる点で超えている僕も同じだ。人より身体が丈夫であるとか、気や魔法が使えるとかは自然の力の前には全くの無力であった。


何が言いたいかというと、砂漠越え舐めてましたゴメンナサイ。

妖怪である美鈴はどうなのだろうか? 妖怪でもこの砂漠はキツイのだろうか? そう思い隣を歩く新しい相棒を見上げて見る。

外套を頭から被り、吹きつける熱風から身を守っている。しかしその顔に辛い表情はなく、むしろ活き活きとしていた。何が面白いのか、地平線の向こうまで砂まみれの砂漠に目をやっては笑顔まで浮かべている。少し気になるので、無茶を承知で話かけてみた。


「美鈴、何か面白いものでも見つけたの?」

「あの向こうの緑が見えますか?たぶんオアシスです。久しぶりに好きなだけ水を飲むことができますよ!」


どれどれ? 美鈴が指で示す方向を見てみる。……なんと! 裸眼でも薄らと見ることができる天国がそこにはあった。


「今度こそ……今度こそ蜃気楼とか言う奴じゃないよね?」


実は美鈴がオアシスを見つけたと言うのは今回が最初ではない。今までに二回あった。地図にはそんなオアシスは存在しておらず、商隊の隊長もただの幻だと言っていた。ただ美鈴はそれがオアシスであると、見間違いではないとしきりに僕に訴えていた。だから僕は、まだ見つけられていないオアシスじゃないの? とだけ言っておいた。酷いかもしれないけど、この砂漠で道を外れるのは自殺行為でしかないんだよね。


「お前ら、もうすぐ休憩所だ! 紅と伊吹、先行して安全かどうか確かめてこい! あそこは妖怪の休憩所でもある。いたら蹴散らしておいてくれ」


どうやら今回は間違いないみたいだ。僕達以外の人はその場でいったん停止して、報告を待つつもりらしい。そりゃそうだ、僕らの仕事といえば、こういうことなんだし。


「じゃあ美鈴、行こうか」

「妖怪がいたらボコボコですね。水場占領とか許し難い行為です」

『僕(私)たちの天国オアシスのために』


そう言って僕達は二つの閃光となった。オアシスサイコー! なんて美鈴が叫んでる。……何と言うか、美鈴もイロイロ溜ってるみたい。


「誰もいない……よね?」

「みたいですね。私たち以外の気も感じ取れませんし」

「魔力も感じ取れないよ」


オアシスについて、まず最初にするのは索敵。いいよね、索敵。こんなことまで出来るようになったんだから、僕ってば強くなった。それにしても美鈴の能力『気を使う程度の能力』、僕としてはすごく羨ましい。だって気を扱う練習をしなくてもいいじゃん。武術家にとっては最高の能力だと思うよ? 僕は身体強化に気と魔力のどちらかをその場の状況で切り替えているからなぁ。魔力はもう増えないし、自然と気に頼る部分が増えていくと思うんだ。気の絶対量を増やす修行もしているけど、そうなるとバランスが……。


そこで僕は新しい技の開発に取り組んでいます。美鈴が発案した技なんだけど、はっきり言って発想が無茶苦茶だ。旅の始まりに試してみたけれどえらい目にいました。爆発ですよ、爆発。身体が吹き飛ぶかと思いました。今使えるのはその爆発の威力だけですねー、とか笑って言う美鈴のお尻にケリを入れた僕は絶対に間違いじゃない。もっと蹴っておけばよかったと思う。


「じゃあ私は水浴びしておきますから、報告頼みますね」

「は!? 僕も汗流したいんだけど!?」

「こういう所で気を効かせるのがイイ男っていうものですよ。……覗いたら潰しますからね」

「自分に誓って覗きません」


非常に勿体ない気もするけど、僕の身体にある一点に指さして言う美鈴に逆らうことなんてできません。ごめんね皆…僕がヘタレで……。

でも最近煩悩が多すぎるぞ僕! いくら輝夜に教育(調教)されたとはいっても、これは酷すぎる。いい機会だし、煩悩なんてものは捨ててしまおう!


「紅が水浴びしているだと!? 急ぐぞお前ら! 天国オアシスはすぐそこだ!!」


ダメだこの商隊、早くなんとかしないと……。





◇◆◇◆◇◆◇





「いや~、オアシスって正に砂漠の中の天国ですね~」

「そうだね~」


僕達が着いたころには既に美鈴は服をきて待ってました。ただラクダに乗って突撃していった隊長がその横でボロボロになってましたけど。正に天国だったと言い残して気を失った隊長に、一人の男として敬意を示します……。



「今日明日とここで休憩するみたいですし、どうです大和さん? 久しぶりに組み手でも」

「疲れてるんで勘弁してください。……軌道戦だけならいいですよ」


軌道戦とは、相手の攻防の動きを脳内で先読みし牽制し合うことで発生する戦い方である……って師父が言ってた。つまるところ、脳内で詰み将棋を行うようなもの。それの武術版だ。


「むぅ……仕様が無い。それで勘弁してあげましょう」

「じゃあ先に相手に一撃当てれたら勝ちということで。では早速」


目を瞑り、間合いを取って構える。構えだけだよ? 勢い余って攻撃しないでよ?

……美鈴の右膝蹴りは前にでて避けるか? いやいや、それは向こうも解っているみたいだし一度下がって……右を払えば左、いやもう一度右……突いて捌いて、払って突いて―――!? そこで気を多くため込んでいる!? だったら!!


「紅寸剄!」

「剛堕浸透掌!」


入れ違うように前に出、互いの後に向かって実際に技を放つ。


「「ギャアッ!?」」


なんだこの妖怪? 目を瞑っていた僕らの隙を突いたつもりなのだろうか?


「思った通り、此処は狙われていたみたいですね」

「美鈴気づいてたの?」

「え? …気づいてなかったんですか?」

「……キガツイテマシタヨ?」


男の子とは、見栄を張りたがる生き物ナノデス。


「大和さんもまだまだですねぇ」


うんうん、と頷いている美鈴は放っておこう。藪蛇はごめんだ。


「それより商隊のみんなが心配だよ。急ごう美鈴」

「大和さんはホントに解りやすいですね」


…蹴っていいかな?





◇◆◇◆◇◆◇





商隊のみんながいるところに行くと、そこでは既に戦いが繰り広げられていた。

僕達と同じ護衛として雇われている人は剣や槍、弓で妖怪に立ち向かっている。商人たち非戦闘員は木や草なども物陰に隠れて様子を窺っています。


「下級妖怪ばかりでよかったです。こちら側の錬度はそれほど高くありませんし……」

「問題はあの姿だね。あんな気持ち悪い生き物見たことないよ」

「いやいや!? 問題は数でしょう!? 形は別に関係ないと思いますよ!!」

「じゃあ美鈴は叩いたら変な液体がでそうな相手を殴れる!?」

「あ、いや、それはちょっと……」


砂漠でよく見るサソリみたいな妖怪とか、なんか胴体膨らんでるし。あれは叩いたら臭い液体が飛び出ると思う。


「じゃあどうしますか? 言ってる間にも劣勢ですよ?」

「まかせて。……皆さん! 下がってください! あとは僕がやります!!」


そう言うと戦っていた人達は僕より後に退避していった。うん、誰だってあんなの相手にするのは嫌だもんね。解りますよ、その気持ち。

全員が下がったことを確認してから僕は空へと上がり、オアシスを見降ろす。

すると、地上にいる妖怪たちが妖力弾や変な液体を飛ばしてきた。


「うぇ、まだ何もしてないのになんで出すかなぁ」


想像通りの異臭がする真っ白い液体。臭すぎて鼻が……。早くケリをつけよう、そう思って両手から魔力糸を放つ。飛び交う攻撃を避けながら指を操り、糸で妖怪を刻んでいく。以前のように一本一本に気をやる必要などない。蓬莱島での修行は並ではないのだ。この程度が出来なければ師匠の霊弾によって死んでいた。


「よっと、妖怪チャーシューのでき上がり! ……って、誰も食べないけどね」


細切れになった妖怪を見やり、地上に降りた僕を待っていたのは待っていた人達の賞讃の声だった。


「すごいな坊主!」「あれだけの妖怪をこれほど早くに始末するなんて…b」「ぜひ私の専属護衛になってくれ!」


えへへ、照れるなぁ。大切な人を守ることが僕の最終目標。今ここでこの人達を守れたということは、僕にとっても嬉しいことだ。


「すげえな坊主。ここまでやるとは思わなかったぜ」

「僕なんてまだまだですよ隊長さん。美鈴のほうが僕よりもだいぶ強いですし。それよりも早くここを出た方がいいと思います。遠いですけど、大きな妖力を発見しました。皆さんを守りながらでは闘いきれないと思うので、早く逃げちゃいましょう」

「そうなのか? まぁお前さんがいうならそうなんだろうな。おいお前ら、出発するぞ!」



こうして補給を終えた僕達はオアシスを後にした。あの時感じた力も襲ってくることはなく、あと7日程度で目的地に着くらしい。それまでの護衛はまかせたぜ、と隊長に言われた。頼りにされるっていうのは嬉しいものだ。今は最後の補給を終えて、熱い砂の上を歩いているとこ。


「魔力糸のことですけど、上位クラスになると通用しないと思いますよ?」

「それは僕も思っていることだよ。魔力や妖力でガンガンくる相手には所詮ただの糸になるだろうし……」


糸が通用するのはある一定の強さ…おそらく通用するのは自分よりも弱い存在までだと思っている。修行をして人並み以上にはなったけど、僕自身がこの技にそれほど向いてないんだろう。自分より格上の存在と闘う前に何か対策を考えないと……。


「だからこそ、あの技ですよ」

「……コレかぁ」


そう呟く僕の両手の間には気でも魔力でもない力が渦巻いていた。




「あ、やばい制御が……「ちょ!?しっかりしてくださいよ!?」





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