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東方伊吹伝  作者: 大根
第三章:永遠の蓬莱島
35/188

目覚める大和

3月16日改訂


「『先を操る程度の能力』 ですって?」

「そうよ輝夜姫。貴方の能力に干渉できたのも、私の能力が貴方の能力を相殺したから」

「どおりで……」

「……じゃあ僕にも、それだけの力が眠っているってわけだ」


痛む身体に鞭を打ち、なんとか立ち上がろうと身体に力を込めた。けど入れた傍から力は抜けていって、地面から一歩も離れられない。


「立たないで、兄さん。骨や内臓へのダメージが大きいわ。無茶したら死んでしまう」


…知ったことか。僕はアキナを助けるって決めたんだ。無茶も無謀も、そんなことは何時ものことだ! 修行に比べたらこのくらい!


「意地があるんだ、男の子にはぁぁぁあ!!」


震える足に力を入れて立ち上がり、突貫! どれだけ辛くても、策無しで突っ込むことはしない。両目に魔力を込めての接近戦を仕掛ける。


「だぁぁあ!!」


加速した勢いそのままに跳び蹴り、着地後に拳を繰り出す……が、アキナは両手の銃でそれを捌いていく。


「銃使いは接近戦が出来ないって? それは何世代も前の話よ!」


近接砲撃タイプとでもいうのだろうか。アキナの振るう銃も、僕の繰り出す拳と同等以上の鋭さを持っていた。だけど、近接で負ければ僕に勝ち目はなくなる。

でも技の豊富さは僕の方が勝っているんだ、手数で勝負!


「浸透勁!」

「無駄よ!!」

「なら投げ技で!」

「遅い!!」


そんなのは本人が一番解っている! 今までのは唯の時間稼ぎ、本命は孤塁を見つけること!

……見つけた、アキナの孤塁! そのガードを破らせてもらう!!


「やぁ!!」


膝蹴りを防御の隙間に捻じ込み、防御に隙間をあける。そこに


「だあぁぁぁあ!!」


今まで鍛え上げた脚力を、重心のコントロールを使ってそのまま打点につぎ込んだ蹴りを放つ!


―――師父直伝・孤塁堕し


「なっ、グゥッ!?」


一ヶ所に全ての力を込めて当てた蹴りが、アキナの身体を穿った。


「アキナが隠してた急所……孤塁を一点突破するための目と技を、僕は学んできた!」


これが、今の僕ができる最も威力の高い攻撃だ。足腰を徹底的に鍛え上げた結果によって生まれた凄まじい威力を誇る蹴り。それ受け、倒れ込むアキナ。

頼む、立ってくれるなよ。これが決まらなかったら……


「…った、確かに強力な蹴りだったわ……。打点をずらさなければ負けてたかもしれない」


……クソッたれ。

ダメージはかなりあるようだけど、それでもアキナは立ち上ってきた。打点がずらされたと言っても、かなりの威力のはずなのに……!


「残念だったわね、今のが私を倒す最後のチャンスでしょうに。―――もう手加減はしない!!」

「ぐっぅぅう!」


立ち上がったアキナの二丁拳銃から、凄まじいな密度の魔力弾が撃ち出されていく。そのの中を必死に逃げていくが、何時当たってもおかしくない程に僕は追い詰められている。


「向かう先は我に仇名す者なり」


―――なんだ!? 魔力弾が全部停止した!? まるで魔力弾という檻の中に閉じ込められたみたいじゃないか、コレは!


「ブラスト」


さっきの物と違い、レーザーと化した二つの閃光。幽香さんや僕が使うマスタースパークの様な力の濁流。


「クゥッ!?」


周囲を魔力弾に囲まれているせいで避けることはできない僕は、ただ必死に守りに徹するしかなかった。

だが絶対的な魔力量の差か、たいした抵抗もできずに光に包まれた。




◇◆◇◆◇◆◇





大和と永琳が死闘を繰り広げている中、武天は新たに月からきた部隊を蹂躙していた。


「今時の月民は軟弱になってしまったものだ。あの頃に比べるとだいぶ劣る、平和ボケでもしたのか」


武天は月の住民の弱体化に呆れを隠せなかった。

あの頃の、人妖大戦頃の彼らは強かった。武器に頼らず無手で戦う者が多かったあの時代。

彼らと比べると、この者たちは武器に頼りすぎる。武器の強さを、自分たちの強さだと勘違いしている彼らに落胆の遺を隠せなかった。


「なぜ止めを刺さない……?」

「長生きしていると、難しいことにチャレンジしたくなるのだよ。殺すことより、生かす方が難しいだろう?」

「このバケモノめ……」

「褒め言葉だな、それは」


武天にとって、彼らとの闘いなどただの暇つぶしでしかない。それは今回の騒動も同じこと。なにも彼は、善意で輝夜の申し出を受けた訳ではない。

それは大和を鍛えたことに対しても同じことである。

ただ長い時を生きる自分に刺激が欲しかっただけなのだ。大和を弟子にした当初は、いつか自分を殺せるくらい成長してくれれば面白いとも考えていた。たが大和には才能がなく、彼の思惑は外れることになったのだが。それでも結果的には暇が潰せたことはよかったと思っている。


「そろそろこの島も潮時か」


彼にとって重要なのは自分が楽しいか楽しくないか。

長命な彼は何時も自分を中心において物事が考えている。それはこれからも変わらないだろう。





◇◆◇◆◇◆◇





目の前が霞む……。…誰? そこにいるのは……?


「……と、ymと! 大和! しっかりして!!」

「か、ぐや……? なんっで、…泣いて、るの……?」


何で泣いてるんだよ、らしくない。……なんか、体が冷たいな…。地面の紅い液体……これは僕の血、か…?


「さあ、兄さんを渡して貰おう」

「……渡すもんか」

「は?」

「こいつは、渡さない!!」

「……言っておくけど、貴方じゃ私の相手にならないわよ。碌に戦闘訓練を受けたこともなく、頼みの能力は私にはきかない。辞めておいたほうがいい」

「月は私が目的なんでしょ!? 捉えなくていいわけ!?」

「今回の任務は八意永琳と蓬莱山輝夜をとらえることだけど……私には関係ないのよね。兄さんがいれば他はいらない」

「…っさせない!」

「放っておくと、兄さんは死ぬよ?」

「それでもさせない!」

「……じゃあ、お前も死んでしまえ!」


アキナ放たれた魔力弾。輝夜は身体に力を入れて迎撃の姿勢を見せるが…


「僕と1対1だって……言っただろッ!!」


二人の間に入って弾幕を受け止めた。溜ったダメージは計り知れない。

それでも負けられない、負けてやるわけにはいかないから!


「……兄さんは弱いよ。沢山の人に利用されているってことに気がついてない哀れな人なんだ。だから私が保護してあげるって言ってるのに、なんで反発するの?」

「僕はそんなに弱くない! 保護してあげる!? それが一番人を見下しているんだよ! 僕は地上で生きて、死ぬんだ! 誰にも邪魔はさせない! そして君も、君の幸せを掴むんだ!!」


身体中から溢れだす血と同じように、僕は心の内を叫んだ。


「何よ、それ。私は今幸せなの。……どうしても一緒に来ないの?」

「そうだ!!」

「……じゃあ仕方がないよね。私と来ないって言うのなら、望み通りにここで死なせてあげる!!」


眼前に迫る弾幕は、もはや津波と化した一面の魔力弾。だがそれでも、僕はまだやれる……やるんだ!


「攻撃が向かう『先』 に僕はいない!」

「―――なっ!?」


その弾幕は僕の周りを素通りしていった。

…思ったとおり。僕が能力を使いこなせなかったのは、本当の自分を知らなかったため。能力を知り、自分の置かれている状況を理解することができた今、僕は真の意味で能力持ちの人間になった。それを月の研究者は『成功作』 と皮肉を込めてそう呼ぶのだろう。でも、この力は僕の『ゆめ』 を貫くための力だ。誰の思惑とも関係ない、僕だけの力だ。


「今、僕は自分の能力を完全に掌握した。これで能力差は関係ない。―――勝負だアキナ!」

「能力を使いこなせただけで私と同等だなんて思われるのは心外だわ」

「だから見せてあげるよ。"静"の極みの技の一つ、真の制空圏を!」




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