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東方伊吹伝  作者: 大根
第三章:永遠の蓬莱島
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兄妹ゲンカ

3月16日改訂


~とある隊長~



「死んだか……」


闘いは一瞬で決まる。

八意が見せた隙は時間にすれば一秒にも満たない時間。そこを突いて奴の首を刎ねることができた。普通それは隙とは言わないだろうが、我々ほどの実力者となればそれは致命的な隙となる。だがその隙のでき方、あれは"らしく"ない。奴ほどの者がああも隙を見せるなど有りはしない。

となると、気になるのは部下の言った言葉、『失敗作』と『成功作』。この二つが関係していると考えるのが妥当だろう。


「おいお前、『失敗作』 とやらは何の話だ?」

「……何の話ですか?自分は何も知りません」


なるほど、惚けるつもりか。……まぁいい、結果がすべてだ。当初の任務を続けよう。


「おい、奴の首を持ってこい」


部下に八意の首を持ってくるよう命令する。脳さえ残っていれば、何の問題もないのだ。人としての考えなど不要。私たちは何も考える必要はない。軍隊とはそういうものだ。


「なっ、なんだ!?」

「ッどうした!?」


部下の声に反応して見てみると、八意の身体と首が光を放っていた。…一体なにが起こっている!?


「ぎゃぁぁぁぁあ!!」

「なんだ!? 何が起こった!?」


目も開けられないほどの光が放たれるなか、部下の悲鳴が辺りに響いた。そこには死んだはずの八意がいた。


「『失敗作』ね……。生きていたら教えてあげてもいいわよ」

「貴様、まさか蓬莱の薬を!?」

「ええ、飲んだわ。輝夜と共に生きるために」


ええい、なんということだ! 私たちは始めから勝ち目のない闘いをしていたのか!?


「さあ、第二ラウンドと行きましょうか?」


狩る側であったはずの私達が、狩られる側になった瞬間だった。





◇◆◇◆◇◆◇





「あっはっは! 兄さん避けるの上手いね! ゴキブリみたい!!」

「ちょっとは手加減しろー!!」


失敬な! あんな真っ黒クロスケで地面を這う妖怪と兄を同じにするな! アキナもゴキブリの妹は嫌だろ!?

なんてツッコミを入れている現在。アキナが使う二丁拳銃から撃たれる魔力弾を余裕をもって回避してます。向こうも遊んでるみたいだしちょうどいいや。折角だしアキナの実力でも測らせてもらおう、って感じのケンカが続いてます。

それで解ったことが、僕と同じ存在だからか魔力を使うってこと。おそらくだけど、アキナは今の僕よりも強いってこと。ちょっとだよ? 負け惜しみじゃないからねっ! ……まぁいいや(良くないけど)、強いのは事実だし。……でもさぁ、すっごく納得いかないコトがあるんだよねぇ…


「僕と同じ存在だっていうのに、なんで僕より魔力がそんなに多いんだよ!? 不公平だ!」

「言ったでしょ? 兄さんは基礎能力値がとんでもなく低い、いわば『失敗作』 なんだって!」


避ける避ける……危なッ!? 弾幕がだいぶ密度を増してきたぞ!

避けきれない分を両手で魔力糸を操って魔力弾を切り裂いていく。


「だったら何か!? 僕も本来ならそれだけ魔力があったってか!?」

「それはないね。だって私は最終的な調整を受けて生まれた、いわば『成功作』。『失敗作』 の兄さんとは次元が違うのさ」


こんちくしょう! 才能ないから失敗作ってことですかぁ!? ……くそっ、また密度が増してきた! このままじゃ捌ききれなくなる! こうなったら未来をみて弾幕の軌道を読んで、なんとか接近戦に持ち込んでやる!


『未来を視る程度の能力』 発動


これさえあればこの状況を打破することが出来るはず。何と言ってもこの能力は未来を視て、これから起こる事象を知ることができる―――ッ未来が視えない! なんで!?


「今、未来を視ようとしたでしょ」


クソ! どうしたっていうんだ!? 今まで能力が発動しないことなんてなかったのに!

だったら、もう片方の目に魔力を集中して加速だ! 意地でも接近してやる!


「遅いわ兄さん。私はその『先』 にいるわ」

「ガァッ!?」


ッツ―――! まともに何発か貰ってしまった。この―――何でっ! どうして僕の能力は通用しないんだ!?


「やっぱり思った通り、私と兄さんの能力は同じみたいね。ただそれが使いこなせているか、使いこなせていないかだけの話。まあ兄さんは『失敗作』 なわけだから私に敵うわけないのは当たり前だけど。…やっぱり兄さんは弱いから、私が保護してあげないと駄目ね」


どうする……? 能力は通じない、接近は出来ない。ダメージ覚悟で接近したところで有効打を与えられるか解らない。

だとすると、幻術しかないか。今までアキナは僕の幻術を見たことはない。確実に騙し、キツイ一撃を喰らわせてやる。


「じゃあね、兄さん。大丈夫、気がついた時にはもう月の都だから」


アキナが銃をこちらに向けてくる。

……今だ! 幻術を発動。アキナの目には偽物の僕だけが見えるようにして、僕は気で身体を強化。魔力と気の同時使用ではない。幻術との魔力ラインは切ってある。時間が経てば消えるけど、瞬間的な利用では問題ない。


「なっ偽物!?」


直撃するはずの魔力弾は幻術を通り過ぎていった。


「気がつくのが遅い! もらった!」


加速したまま背後に回り込み、一撃を放つ! ……はずだった。

背後に回ったはずの僕は何故かアキナの正面にいた。


「!?」


気で強化した僕の突きを、両手に持った銃で止めた!?


「危ない危ない、とっさに能力を発動してなかったら痛い目にあってたよ。でも妹を殴ろうだなんて、そんな兄さんにはお仕置きが必要よね」


そのまま拳を払い、至近距離で銃を僕に向けるアキナ。


「しまt「ブラスト」 …!?」


茫然とした僕にできた、決して見せてはならない僅かな隙。そこを狙って、凄まじい威力と密度をもった銃撃をその身に受けてしまった。全身を刺すような痛みが襲って、僕は地に転がった。


「私たちの能力はね、『先を操る程度の能力』。兄さんの攻撃が向かう『先』 は全て私の思うがままなの」


地に伏した僕に向かって、アキナがそう宣言した。



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