動き出したモノ
やあみんな!大和だよ!のっけからテンション高いって?フフフ、実は今日いいことがあったんです!
それでは回想スタート
目の前には師匠達。今日は話があるということで、修行は早いうちに終り話を聞くだけとなった。
なにやら重大な話らしく、あの輝夜も静かに座ってこちらを見ている。
「大和君」
「はっはい!」
師父と師匠の今までにない温かな笑み。こ、こいつは危険な香りがプンプンするぞ・・・!?
また何か酷い修行を考えているに違いない!
「今日を以って、君は弟子を卒業する!」
「嫌だーーーー!?・・・・へ?」
「今までよく耐えたわね。正直驚いているわ」
「うむ。よくぞここまで育ってくれた。師としてこれほどうれしいことはない」
「ちょ、待ってください!弟子卒業って・・・僕まだ弱いんですよ!?」
輝夜相手にようやく勝ち星を拾えるほどにしかなっていないのに。
「貴方、自分の強さを理解してないの?」
「師匠、僕はまだ輝夜にすらまともに勝てないんですよ?」
綺麗な勝ち方なんてしたことがない。泥臭い闘いでようやく勝てるくらいだ。
「輝夜は上級妖怪クラスの強さの持ち主だ。それにまぐれでも勝つことのできる君は、
人間としては最強クラスといっていいだろう」
輝夜が上級クラスだって?そんな馬鹿な!?
自称お姫様がそんなに闘えるわけ・・・あ、実際に僕と闘ってるじゃないか。
「そんな貴方をもう弟子にはしておけないの。魔法も武術も基本以上のことを徹底的に叩きこんだ」
「あとは君が自身で力をつけるべきだと判断したのだ」
「そうなんですか」
言葉ではこうしか言ってないけど、内心すごく喜んでます。それはもう今すぐ飛び跳ねたいくらい。
喜んでいいですかね?
「喜んでいいわよ」
「いぃよっっっしゃぁぁぁああああああああああああ!!!!」
やった!ついにやったよ!僕、ついに強者の仲間入りを果たしたんだ!!
才能に悩まされ、悩む暇も与えてくれないほど修行に明け暮れて約何年?
ついに僕は努力によって勝ち取ったんだ!!
「しかし」
「へ?」
「しかし、君はまだまだ弱い」
はは、何を言ってるんですか師父~。さっき貴方が弟子は卒業って言ったじゃないですか。
「弟子を卒業しただけであって、貴方が上級クラスとは誰も言ってないわ」
「へ?」
「ま、中級ぐらいかな。今の君は(上級に近いけど」
なんてことだ。あれだけの修行をしてもまだ上級じゃないなんて・・・。
でもいい、まだまだ強くなるんだ!今までだってやってこれたし、これからもやっていけるさ!
「これからも精進していきます」
「「あたりまえね(だ)」」
なんてことがあったんだよ。いや~、それにしてもうれしいねぇ。
きっと三途の川の死神姉さんの喜んでくれるはずだよ全く。
今日は一日もう休みでいいみたいだし、僕から輝夜を誘って遊びに行こう!
「輝夜ー!遊びに行こー!」
これから起こる事件に、僕が気づく余地なんてなかった。
~弟子卒業を告げる少し前~
「ここの結界に綻びが見つかったとは本当かね?」
「間違いありません。現在修復作業を行ってますが、発見されたことは確かです」
ついに見つかった。おそらく発見はされていたのだろう。
長い年月をかけて結界対策をした、そう考える事が妥当であろう程の早さでの結界への対処。
見つかる可能性があったのは確かだが、これほど早くに結界が破られるなんて思っていなかった。
「確証はあるのか?」
「輝夜も能力の干渉を受けていると言っています。もってあと二日かと」
奴らは確実に攻め込んでくる。おそらく狙いは輝夜と私。大和の存在には気づいていないはずだ。
「明日には輝夜と此処を出ます。・・・彼のこと、よろしくお願いします」
「・・・いいのかね?最後の別れになるのかもしれないのだよ?」
「今更です。最初に彼と会ったときから覚悟は出来てますから」
私にできることは全てしてあげた。それに、彼は思いのほか頭がいい。流石は私の・・・
「では明日、彼には弟子卒業を言い渡すとしよう」
「お願いします」
「どうしたの輝夜?いつもの元気がないね」
元気など、出るはずがない。
この楽しかった生活も今日で終わり。明日からまた逃げ続ける日々が始まる。
私の遊び相手だったコイツとも別れることとなる。自分の想いすら解らないままに・・・。
「明日はさ、何しよっか。久しぶりに山に登る?それともまた宝探しでもする?」
それなのにコイツは何もしらずに話掛けてくる。
イヤだ、聞きたくない。コイツと、大和と離れたくないよッ・・・!
「てい」
「ひぃたひ。ふぁにふんのょ」
いきなり人の頬を抓るな!?痛い・・イタいって!?
「なに悩んでるの?」
「え?」
「話かけても知らぬ顔だし。ほら、大和君に話してみな。悩み相談くらい聞いてあげるから」
ホレホレと言う馬鹿。本当に馬鹿だ、コイツは・・・。
・・・ごめんね永琳。でもね、逃げ続けるのはもうやめる。
コイツの頑張っている姿を見たら、自分が情けなく見えてくるの。そんなの嫌だから。
だから、最初に謝っておく。
「あのね、大和・・・」
私は私の闘いを始めるわ