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東方伊吹伝  作者: 大根
第三章:永遠の蓬莱島
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蓬莱島小ネタ長編

3月15日改訂 3月16日更に改訂


~とある日、蓬莱島にて~



「ぐおおおお!! 馬鹿輝夜ばかぐやめぇェェェ!!」


輝夜と時々行われる模擬戦で連敗を期している僕は焦っていた。毎日のように死にかけている修行を行ってもう長い。それなのにまだ一本も取れていないから、焦りも当然のようにある。


「だああああああ!!」


一心不乱になって拳を突き出し、蹴りを放つ。


「どぅおりゃぁぁぁああああああ!!」


柔術で投げる練習に使う人形を投げ続ける。


「そんな無茶苦茶な修行は意味ないわよ」


何かアヤシイ薬を調合中の師匠がチラとも見ずにそう言った。


「師匠! 僕には武術も魔法も才能がないんでしょうか!?」

「ええ、ないわね(キリッ」

「せっかく師匠達が仕込んでくれた達人の技を、僕自身が駄目にしているんでしょうか!?」

「まさにそのとおりね。間違いないわ(キッパリ」


鬱だ……死のうorz 僕の才能の無さは無限大さ、えへへ…。


「まったく仕方ない弟子だ。どうだ大和君、ここは一つ私のとっておきを教えてやろうか?」

「頼みます!! ……でも殺さないでくださいね?」


さすが師父、師匠と違って話のわかる人だよまったく。え? 師匠? とんでもなく怖いです。何時も浮かんでいる笑顔の下を見たら、きっと誰でも再起不能です。


「責任は持てないなぁ「やっぱ止めた!」 ……冗談だよ、冗談。半分だけ」


師父、あなたもやっぱりそうなのですね。わかってましたけど。あぁ死神さん、僕また近いうちにそちらに逝かせてもらいます。今度会わせてくれるって言ってた閻魔様も呼んでお話しましょうね。




◇◆◇◆◇◆◇




「で、なんでこんな山の奥地まで?」


大和です。只今蓬莱島にある一番高い山の中心部に来ています。周りは可笑しな成長をした木々が生い茂っていて、周りよりも空気が濃いく感じる。でも蓬莱島ってやっぱり不思議……木が声を発するって言ったら解って貰えるかな? ……とにかく、自分を追い込んで逃げ場をなくすにはいい環境だと思う。


「ところでどんな修行を?」


輝夜を泣かせるためならどんな修行だって耐えてやる! ……その前に僕が泣くかもしれないけどさ…。


「何もしない修行だ。これより七日間武術の使用を禁ずる。魔法もだ」


……えー…、師父の秘密の特訓だと思っていたのにがっかり……。

そうやって一人落ち込んでいると、師父に頭を撫でられた。


「今は私を信じろ。必ず為になる」

「はぁ…」


そりゃあここまで良くして貰ってますし、師父がそこまで言っているのに信じない弟子はいませんよ。

でも何もしない山籠り……妖怪の山での生活となんら変わりないよね。ホントに意味あるのかなぁ。

……まあいいや、もう一度深く自分を見つめ直すのもいいだろう。座禅でも組んで、僕の今までの人生を振り返ってみよう。


山で普通に暮らしていたけど、みんなよりも先に死ぬのが怖くなって魔法使いを目指したんだっけ。いま思えば情けないよね、死ぬのが怖いなんて……もう何回も死にかけてるのに。

いっ、いやいや! 僕はまだ生きているぞ! うん! 嫌なことは忘れよう!


それから姉さんと修行して、文やにとりと遊びながらも楽しく生活していたんだっけ。

それで大母様に嵌められて、母さんとの決闘。勝てたからよかったけれど、負けた時にはどうなっていたんだろう。やっぱり山からは出して貰えなかったのかなぁ……。


山を下りたら妹紅と出会って、幽香さんに殺されかけて……ええい、考えるんじゃない!


その後は都だ。陰陽師の人には冷たくされたけど、僕を迎えてくれた人もいた。

それに初めて姉さんの本気の闘いぶりを見たのも都だったよね。あれはすごかった。僕も少しは近づけていたら嬉しいなぁ。

その後は運よく魔道書を手に入れた……のは良かったんだけど、読めかったんだよね。だから大陸を目指した。そして舟沈没で、僕漂流。その結果、今ここで修行中。


……な、中々に激しい人生送ってるね、僕。普通の人なら何回も死んでるのを運だけで生きてきたんだから。


   チリッ


うん? 今なにか後頭部を翳めたような…。何か異様な視線を感じる……?


「何をしている、山へ桜を狩りに行くぞ」

「あ、はい!」


……え? 桜狩り……えっ? 気のせいかな、何かすごいこと言われたような……って、ちょっと待て。


「一つ言わせてください」

「何かな?」

「桜狩りってなんです?」

「桜の花びらを掴むだけだが? 見ろ、あの桜の花びらは人の手に触れられると桃に変わる」


な、なんですかその常識を捨てたような桜の木は!?


「更に、あの桜は攻撃を仕掛けてくる。花弁も意思を持っているかのようにこちらから逃げていく」

「現在進行形で避けられてますよ! 本当に捕まえられるんですか!?」

「捕まえているが?」


こ、この人は……! 自分の常識を僕に当て嵌めて考えないで欲しいよ!


「自分の分は自分で捕りなさい。あと、桜に殺されるなんて面白い死に方は避けるように」

「……山で木の実を探してきます」


とれるかコンチクショー!! 木の実でも探すよ、まったく。僕はただの人間の子供なんだ。花弁を捕まえるだけならまだしも、すごい勢いで枝やら根っ子やらを振ってくる桜を素手で相手なんて出来ないんだからね!


「ところがまさかの木の実なし……どういうこと!?」


おかしい。明らかにおかしい。この不思議島の木に一つも木の実が生っていないなんて! いや待て、前はあったんだ。なら師父が何かしたに決まっている。でもキノコなら…地面に埋まっているキノコ様なら……見つけた! キノコ様頂きます!!


「ぅっぼぇええええ!?」


ど……毒入りとは、さすが蓬莱島の摩訶不思議…やるじゃないか……!


   チリッ


…っ!? まただ、今回ははっきりと感じれたぞ。いったいさっきから何なんだ!





◇◆◇◆◇◆◇




~四日後~



心の波を静めよ。さすれば鏡のごとくまわりを映す。其れ即ち明鏡止水なり。

なんてカッコいい言葉を残して、師父はどっか行っちゃった。正直堪ったもんじゃない。何とか毒のないキノコを探して食べ続けて飢えを凌いできたけどそろそろ限界。山の頂上付近には川が無いから魚は取れない。唯一食べられて力の湧くモノと言えば花弁変化の桃だけど……勝てる気がしない。


でも僕、気付いたんだ。取れないと解ってても行くのが男ってやつだと。自分に言い聞かせて、僕は暴れ桜を相手にすることにした。

でも明鏡止水、ね。そう言えば紫さんも僕のことを"静"に属する者だって言ってたっけ。

目の前には超巨大な暴れ桜。枝やら根っ子やらぶんぶん振り回して僕を近づけさせないようにしている。花びらは散っているけど、あれも意思があるかのように僕から逃げていく。……普通じゃなくても諦める所だけど……不思議だな。やけに心が落ち着いている。疲れきって頭が働かないのかも。だとしたら、相当ヤバイ状態だ。でも、そうは思えないんだよね。何故だか。


「…ッ!」


迫りくる枝。一度躱し、二度躱す。三度躱したところで無数の枝が高速で振われ、遂に僕の身体にを強く打った。それでも何故か心は乱れない。むしろまだ心に波があるのか……なんて思えるほどに、僕の心は落ち着いていた。野心を捨てろ、周囲に漂っている空気になればいいんだ。それでも、自分の空間だけはしっかりと把握しろ……

枝や根が振われることによって発せられる風切り音が聞こえなくなる。落ち着いて周りをみると、振われる枝の動きがはっきりとわかった。右前……はまだ遠い。左からも八つ近づいて来ているぞ。


僕の両手で届く範囲を意識する。腕が届く範囲は……!? まだだ、焦るな僕。

暴れ桜はと花弁は常に僕を意識している。下がれば前に出られるし、前に出れば枝と根で叩き伏せられる。だけど……孤塁は誰にでもある。暴れ桜の孤塁……それは、振われた際に出来る空間! そこに花弁は集まる! 相手の空間を潰すように、前に出ろ!


「どぅおりゃぁぁッ!」


片手で花弁を掴み、右足を思い切り振りきった。メキョ、なんて音を立てて枝が七本ほどが折れてしまった。枝を折って怖がらせてしまったのか、桜はしゅんと萎縮してしまった。……思わず気で強化しちゃったけど仕方が無い、後で師父に謝って……!?


―――パシッ

僕の手が、後頭部に当てられた師父の足に触れていた。自分で意識していないのにも拘わらず。


「気を使ったな?」

「……ごめんなさい」

「いや、いい。私の蹴りにも気付いたようだしな。だが冷や冷やしたぞ、気付かないかと思った」


僕も冷や冷やしましたよ…。もう生身で暴れ桜の相手をするのは嫌です。


「どうかね? 制空圏の感じは」

「制空圏?」

「君だけのパーソナルスペースのことだ。今の君で言えば、自分の手と足の届く範囲。今の君なら、私がそこに入れば腕が勝手に払おうとするだろう。簡単に言ってしまえば、自分の範囲内に入った攻撃や物を防ぐ防御の型と言った所だ。無自覚にでも、と付くがね」


すごいじゃないか! さすが師父の技なだけはある! さらにその先もあるだなんて!!


こうして僕は制空圏の修行に入った。そこからまた僕の苦労話があるんだけど、無事に制空圏は修めることが出来たとだけ言っておく。……制空圏の先にある物は触り程度にしか修められなかったけどね!!


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