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東方伊吹伝  作者: 大根
第三章:永遠の蓬莱島
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生きるか死ぬか!?

3月16日改訂



「しっかし、この島はいったい何で出来てるんだ?金や銀に輝く木に生ってる実は凄く美味しいし、川の水は川底が見えるほど透き通っている。極めつけはこの空。全然変わらない昼間だし?」

「人の幻想が具現化したのがこの島って言ったでしょ。その幻想を形にしたのは武天だけど」


……つまり、どう言うことなの? とりあえず武天さんが常識の範囲外だと言うことでいいのかな?


「そして私がその作られた幻想を永遠に変えている。ほら、あんたがさっき食べた木の実はもう生っているでしょ? 私の能力の中にあるおかげで変化を拒んでいるの」


すごいでしょう、と胸を張って言う輝夜。輝夜も大概バケモノ染みた能力の持ち主だよね。なんだ、僕の周りには人外しか居ないのか……


「でも輝夜って、やっぱり姫って感じじゃないよね。言葉遣いもそうだし、その身の振り方も」


姫様っていうと、もっとお淑やかな感じのはずなのに、輝夜は……ねぇ? それに、僕の姫という想像とかけ離れているんだよね。姫なんて人はお話の中でしか聞いたこと無いけど、もっとお淑やかな人のことを指すはずだと思うんだ。


「私を見る人がいないのに意味ないじゃない。あんたには何でか直ぐにばれたし。ホント理不尽だわ、こんな子供にばれるなんて。姫の貫録を出すのって疲れるのにねー」


今すぐ全ての姫様に謝って! 僕の頭の中の姫様像が壊れる前に! 輝夜が姫だなんて認めてなるものか! だって姫だよ、姫……輝夜姫? ぷぷ、絶対似合わないや。むしろ否定するぞ!? 輝夜姫を否定するぞ!


「私が都に居た時は、それはもう注目の的だったわ。都中、いえ国の全ての男共が私に夢中だったのよ? 一眼見たいと毎日押しかけてきたわ。そんな男共は私に求婚し続けた。……ま、帝も含めて全部振ってやったけどね」


何より面倒だったしねー、とか何とか笑って言っている。やっぱりそんな言葉の節々からも姫の威厳なんて在ったもんじゃなかった。こんな嘘姫に誑かされる男って生き物は……哀しいね。ま、まあ僕も輝夜は喋らなければ可愛いと思うよ? うん可愛い。喋らなければね!

でもそれはこの際置いておいて、それより気になることがあるんですけど。


「その男共の中に藤原って人いなかった?」


そう。妹紅の話にあった輝夜と、輝夜の話す自身の自慢話があまりにも類似しすぎているんだよね。


「いたわよ。あの手この手で私を自分のものにしようとしてたわ。あまりにしつこいから難題までだして追っ払ったわ」


あいつか、と苦々しく言う輝夜。妹紅さーん、僕の目の前に君の仇敵がいますよー!?

でもごめんなさい。こういう時、どんな顔をしたらいいか解らないんだ。…馬鹿言ってる場合じゃないや。とりあえず伝えておいた方がいいよね。会っていきなり殴られでもしたら、輝夜だって驚くだろうし。


「その人の娘が輝夜を探してたよ?」

「は? 何言ってるの。誰かは知らないけど、とっくに寿命が尽きてるでしょうが」

「蓬莱の薬飲んだんだって」

「はあ? 何でそいつが勝手に飲んだわけ? あれ私が帝に贈ったのよ、手切れ金として」


酷くご立腹な様子の輝夜。それより手切れ金って何ですか、手切れ金って。この人に掛かったら一国の帝すら唯の人なのね……。


「一応伝えておいたから、暇を見つけて会ってあげてね。そして殴られてね」


いくらかは殴られて下さい。そうじゃないと貴方様に唆された人達が不憫で不憫で……。


「何で私が殴られなきゃならないのよ。返り討ちにしてやるわ」


フンフン、と拳を打ち出すポーズをする輝夜。

うげ、これは血を見ることになりそうだ。二人が会う時は絶対に近づかないようにしないといけないぞ。


「まあ一応、私に求婚しに来た男の娘だし名前ぐらいは覚えておいてあげてもいいわ。何て名前?」

「藤原妹紅。僕の姉みたいな人だよ」


願わくば、僕が理不尽な争いに巻き込まれませんように。





◇◆◇◆◇◆◇





「大和君、君は強くなりたいか?」

「ふぇ?」


輝夜に島をあっちこっちに引っ張られ、ようやく帰れてたと一息吐くなり武天さんにそう聞かれた。


「何?永琳、武天の奴コイツを鍛えるの?」

「そのつもりだそうよ。それに私も本気で鍛えるつもりだわ」

「うげ。ねえ大和、貴方ひょっとしなくても死ぬわよ。永琳の扱きはヤバイから」

「ちょ、ちょっとどう言うことなんですか? 訳わかんないんですけど」


し、死ぬってそんな大げさな……。

永琳さんが魔法について教えてくれるのは約束だからいいとして、武天さんも僕を鍛えてくれるって言うわけですか? それはそれで有難いんですけど。


「君が強くなりたいと一言言ってくれれば、私も君を鍛えようと思ってな」

「はぁ……一刻も早く強くなりたい気持ちに嘘偽りはないですけど」


でも一体何を教えてくれるんだろうか?


「それはよかった!では明日から君を内弟子とする。君にはこの武天の全ての武術を詰め込むつもりだ。では始めにこれだけ言っておく……頼むから死なないでくれ!!」

「……へ!?」


な、何それ!? 死なないでくれって……え!? 修行で死なないでってこと!? 一体どんな修行するつもりなんですか!? 人が死ぬような鍛え方は修行じゃなくて、ただの拷問ですよ!


「頭の中で君が思い浮かぶ限り、下手をすれば死ぬかもしれないと思う修行風景を想い浮かべてくれ」


死に掛け……死に掛けかぁ。そう言われて思い浮かぶのは、妖怪の山での文との模擬戦、あと妹紅の扱き…。あ、幽香さんとの闘いも死に掛けた。


「そんなものは天国だ!!」


考えとは全く関係なく、足が勝手に明日への逃走を図っていた。人間としての危機察知能力が全力で命の危機を察していたみたい。頭では何で逃げているのか解らないけど、とりあえずヤバイ。死ぬかもしれないって察知したみたい。ならば本能に従った方がいいに決まっている!


「逃がすかッ! 輝夜!!」

「は~い!」


目の前に輝夜が立ちはだかる。だがそんな事は知ったことか! 遊ぶことしか考えないお姫様にやられる様なやわな鍛え方なんかしてない!!


「どけぇぇぇ!!」


右腕を大きく振りかぶる。母さんにだって当たった拳だ、やわな姫様は簡単に突破できるはず!


「あら、野蛮ね」

「ノゥ!?」


手加減なしで顔を狙って放った拳を逆にとられ、まるでお手本かのように華麗に投げられた。


「ふふ、こんな小娘に手も足も出ないようじゃ、本当に唯の足手纏いにしかならないわよ?」


クスクスと僕の背中に座って言う輝夜。こ、このやろう!


「永琳、武天、コイツを思いっきり鍛えてやって。これじゃあ遊び相手にもなりゃしないわ」


見てろよ輝夜! 必ずギャフンって泣かせてやる! どんな修行でも来いってんだい!!






そう思ってた時期が僕にもありました。



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