動き出すモノ
なんとか更新間に合ったかな?
今回は難産でした。詳しくはまた後書きで
「貴方にはこれから私の暇つぶしに付き合ってもらうから」
強烈な平手から目が覚めて一番、いきなりそんな言葉を叩きつけられた。何で?
「えっと、何で僕がそんなことをしなくちゃいけないの?」
「死にかけのあんたを助けたのは何処の誰かしら」
それを言われると困るなぁ。でも僕だってずっと此処に居るわけにはいかないし。
「僕は大陸に行く用事があるんだけど」
大陸に渡らないと魔法使いになれないわけでして。
「ふーん。ねえ永琳、場合によっては私たちが大陸に行く可能性ってあるわよね?」
「その場合、その子の存在は確実に私たちの足を引っ張ることになるわ」
「その時は捨て置けばいいじゃない。どうせ奴らも捨て置くでしょうに」
な、なんか僕の知らないうちに話がどんどん進んでいくんだけど。
捨て置くなら最初から放っておいてほしいと思っても罰は当たらないよね?
もういいや、ほっとこ。
あ、カメラは大丈夫だったかな?
「それにこの島を感知される可能性もあるわよ」
「私と永琳の力でこの島は隔離されているわ。それなら問題ないでしょ?」
「それでも破られるかもしれない。この世に完璧など在りはしないわ」
なんか嫌な話してるなぁ。別にそこまでして僕を引き留める意味ってあるの?
・・・逃げることも無理そうだなぁ。永琳さんとの力の差がはっきり感じとれるし。
なんて言うかもう、圧倒的?月とスッポン?
お、さすが河童のカメラだ。水に濡れても大丈夫ってね。
文の笛も無事だし、よかったよかった。
「どうしても諦めないつもり?」
「せっかくの楽しみを潰すわけにはいかないわよ」
「・・・わかったわ。大和君、ちょっといいかしら?」
「なんですか?」
話が終わったみたい。
たぶんお世話様係になるんだろうけど、隙を見て途中で逃げてしまえばそれでいい。
どんな人にだってそういう瞬間はあるだろうし。まあ、まずは自分の口で説得するけど。
「大陸に行くって言っていたけど、何をしに行くのかしら?」
「魔法使いになるんです。寿命を延ばす魔法があるらしいんで」
自分の考えを悟られないように、カメラを弄りながら答える。
とりあえず輝夜でも撮っておこうか。・・・あ、ちゃっかりカメラ目線でポーズまでしてるし。
「だったら永琳に師事してもらいなさい。永琳は天才だから魔力の使い方ぐらいお茶の子さいさいよ。
私の世話をする傍らに教えてもらうといいわ。永琳もそれでいいでしょ?」
ポーズしたままの体勢でそう応える。何?まだ撮れって?
「永琳さんは長寿の魔法を教えられるんですか?」
面倒くさいからもうほっといて真面目に話を聞くことにした。僕のこれからが掛ってるしね。
僕に一番大切なのはそこだ。いかに永琳さんが天才だといえど、この魔法を教えられるとは限らない。
僕の目的の妨げとなるのなら、問答無用で此処は出ていかなければならないからね。
「無理ね。魔法が専門ではないから」
それならば、輝夜には悪いけど出て行かせてもらおう。
「悪いですけど出ていk「あら、させると思う?」・・・無理やりにでもさせるつもりですか?」
話は聞かない。そんな不敵な笑みを輝夜は浮かべながら僕を見てくる。
狙った獲物は絶対に逃がさない。餌となる人間を追いかける妖怪のような凄みを感じる。
あ、そういたら僕って美味しく頂かれちゃうわけ!?
「別にあなたにだって悪い条件ばかりではないわ。
例えばあなたの持っていた魔法書。あれって幻術関係の魔法書よね?
あれくらいなら私でも教えてあげられるけど?」
フフン、と輝夜が自信ありげに胸を張って言う。あの書には不老の法が載ってなかったのね・・・。
って、輝夜はあの文字が読めるの!?もしかして結構賢かったりするのかな?
「永琳さん、そうなんですか?」
「その点に関しては輝夜の言う通りよ。
それと、あなたの懸念事項についてもおそらく解決できているわ」
「どういうことですか?」
「あなたの問題は人間の持つ寿命の短さ。
それを無くすために捨食・捨虫の法を修めに大陸に行くのでしょう?理由は知らないけど。
これらの魔法は習得するのに多くの時間と努力が必要難だと聞いているわ。
そこで私から提案よ。ここで魔法の基礎を私から習っていかない?
ここから出て行く時に少しでも魔法について知っているのならば、だいぶ変わってくると思う。
それに、これからこの島は私と輝夜で外界との時間を断絶して時の進まない場所にする。
つまり時間は永遠にある、ということになる」
「私の世話をする傍らに魔法をならうことになるけどね」
「時間が永遠にあるってどういうことですか?」
時間を止める?外界との断絶?何を言っているのかさっぱりだ。
そして輝夜が何を言おうと無視だ。ちょっとでも関心を示すと揚げ足をとられるに違いない。
「さっき言った通りよ。輝夜は時を止められるの。だからあなたが歳を重ねることはない。
そしてその永遠を生きるのに一番厄介なのは変化がないこと。つまり暇つぶしね。
貴方はその相手になってくれればいい。わかったかしら?」
ほんのちょっとは理解できた。つまり、ここにいれば歳をとらない。だから寿命では死なない。
そういうこと、だと思う。・・・納得はできないけど。
「捨食・捨虫の魔法の習得は難しいと言いましたよね?
だいたいでいいですから、どれくらい掛かるかわかりますか?」
「おそらくだけど、60は過ぎると思うわ。けどまあ、努力しだいね」
「そうですか・・・」
うげ、とんでもない時間がかかるのか。魔法使い舐めてたかも。
だとすると、その永遠の中とやらで魔法について勉強するほうがいいかもしれない。
だって僕、才能無いじゃない?・・・おじいちゃんの魔法使いって、僕的にちょっと嫌だし。
「わかりました。その話受けるよ輝夜。そのかわりに永琳さん、ご指導よろしくおねがいします」
ほんと、しょうがなしですけど。嫌々ですけどね!どのみち逃げられそうにないしね!
「話は終わったか?」
「えっと、どちら様ですか?」
「はじめまして、になるのかな。この島の主だ。武天と呼んでくれればいい」
「あ、はい。よろしくおねがいします武天さん」
「うむ、よろしく」
これまた立派なお髭のお爺さんですね。まるで仙人みたい。
きっとあの髭には武天さんの夢が詰まっているのだろう。
「話もすんだことだし、さっそく私に付き合ってもらうわよ」
「えっちょ輝夜!?」
挨拶もそこそこに、いきなり輝夜に手を取られてその場を後にすることになった。
「あの子を育てるつもりか?」
二人が出て行った後、いきなり話を振られた私は困惑していた。話かけられた事にではなく、彼、伊吹大和と言ったか、と出会い、あのように会話できたことに、だ。
輝夜があの子を拾ってきた時、私の心は驚愕に包まれていた。
知らぬうちに記憶に埋もれていたのだろうか、顔を見るまで忘れてしまっていた。
・・・違う、自ら忘れようとしていたのだ。あの記憶を。
「そのつもりです。私が彼にできることといえば、今はそれくらいしかないですから」
あの子の顔を見るまで考えもしなかった。もうあの顔を見る日はこないと思っていたから。
「わざわざあの子の前で反対したのも演技だったのだろう?
あの子はまだ、自分自身のことを何も知っていないようだった。
このまま何も知らずに一生を終えることもできるかもしれないぞ?」
「見られてましたか。・・・あの子の生まれ持った環境がそれを許しはしないでしょう。
もし此処が見つかった場合、彼の存在は周知の事実となります。
それまでにあの子を少しでも鍛えておかないと。取り返しのつかないことになる前に」
彼らは必ず感づく。そしてその時を守れるのは私だけ。
だが、いかに私といえど数の暴力にたった一人では抗うことはできない。
それに今は輝夜も一緒に守らなければならない。輝夜も確かに強い部類には入るが、実際の戦闘訓練を受けたことはない。ホンモノが出てくると厳しいだろう。
故にあの子自身を強くし、自分の身を守れるまでになってもらわなければならない。
・・・心苦しいけど、私にはそれ位しか対抗策が閃かない。
月の頭脳が聞いて呆れるわね・・・。
「その結果、あの子の覚醒を速めてしまうのではないか?」
「あの子なら自らを律することができる。そう信じてます」
今度は私が最初から仕込む。同じ過ちを繰り返してなるものか。
「信じているのだな。・・・ならばこの武天もあの子を鍛えてみるか。一番弟子として」
「ふふ、それはよい考えですね。なら、人類最強にまで鍛えますか?」
「何を言う。月の頭脳とこの武天老師が鍛えるのだ。世界最強まで鍛え上げてやる」
じらいです。今回の話は無理なこじつけが多いので、不快なひとも多いでしょうね。って、前からですねw
永琳の言ってたことですが、永夜での時止め&密室のミニバージョンとでも思ってください。残念ながら私にはこれが限界でした。