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東方伊吹伝  作者: 大根
第二章:外の世界
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閑話~大和昔話~

ただのネタ。書きたかっただけです。


今日はあと一つ更新予定。

いろいろと考えさせられた都を出てから少し経った後、僕は手紙を開いた。

その手紙には一文しか書かれてなかった。




   『鬼子の夢 大事にせよ』




この一行にあの二人の気持ちが含まれていて、心が熱くなった。

で、その下に帝の印があるんだけど、


「乗船許可証?」



なるほど、大陸に渡るためには船に乗らなければならない。そのための許可証みたいのも入ってた。



「魔道書も手に入ったから、大陸には行く必要はないと思うんだけどなぁ」



ムフフ、これで僕も魔法使いの仲間入りだよねぇ・・・!

と自分でも分かるくらいニヤニヤしながら魔道書を開く。いざ行かん!新たなる境地へ!!

こっこれは!!??



「読めないorz」



なんてことなんだ!読めなければ話にならないじゃないか!?

おそらく大陸の文字なのだろうけど、学の無い僕がこの国の文字を読めるようになったのは

にとりの『読み書き詰め込みマッスィ~ン』の甲斐あってである。

そんな僕が大陸の言語を独学で理解することは無理です。



「しょうがない。行きますか、大陸に」



まさか本当に国を飛び出すことになるなんて・・・。



「母さんたちを長いこと待たせることになるかも」


「それなら私が伝えましょうか?」


「うひゃあ!?ゆっ紫さん、急に現れないでくださいよ!」


「うふふ、悪戯せいこ~う」



ニュニュニュと擬音が付きそうな感じでスキマから出てくる。

そう言いながらニコニコ笑うあなたが時々憎いです。

                                           


「話は聞いたわ。私が萃香に伝えてあげましょう。大和は大陸で帰らぬ人となったって」


「いや、山狩りが大陸規模で行われそうなんでやめてください」



一度妖怪の山で実際にあったし、母さんたちならやりそうで怖い。



「あら、母のことを想っているのね」


「違いますよ・・・。嫌な思い出ですから」


「ああ、山狩りのことね」



ああ、思い出すのもおぞましい。








~妖怪の山でのある某日~


「人里?」


「そうそう。大和と同じ人間が沢山いるんだよ」



僕と同じ人間が沢山・・・。僕が沢山いるのか。



「河童にとって人間は盟友なんでしょ?会いに行かないの?」


「恥ずかしいじゃないか」



その考えはどうかと思う。



「相変わらずの人見知りね」


「そういう文は友達が少ないじゃないか」



にとりさんや、そりゃ禁句ですぜ。射命丸がメッチャ落ち込んでるじゃないか。



「そんなこと言っちゃ失礼だよ。射命丸、僕はちゃんと数少ない君の友達の一人だからね!」


「そりゃトドメって言うんだよ大和・・・」



あ、あれ?何で射命丸は座り込んで泣いてるの?僕が友達でそんなにうれしかったのかな?



「いいんです、いいんですよ大和さん。貴方がそう言ってくれるだけで私は・・・」


「まっまあ、文もこう言ってることだしいいじゃないか。それより大和、人里だよ」



そうだね、射命丸も喜んでいることだし元の話に戻そう。



「でも、一度よね行ってみたいよね。人里」



うん、本当に一度行ってみたい。僕は人間に会ったことがないから凄く興味が沸く。



「それならば、私が偵察に行ってきましょう!!」


「うわっ、ビックリした」



ハイ!っといきなり立ち上がる射命丸。今まで座ってたのに急に元気になるんだから。

そんなに人里に興味があるの?



「なら文、ちょっくら行ってきてね」「頼んだよ~」



言うや否や、ジュワッと射命丸は飛んで行った。元気だよねホント。










「人間がいっぱい居ました」



そりゃ当り前だろうでしょうに。帰って来た射命丸はそれしか言わなかった。

というより、それしかなかったらしい。射命丸の報告を聞いた後で一人考えを纏めていたんだけど、いまいち分からないんだよねぇ。やはりここは、



「大和、行ってきま~す」



直接行くに限る。今日は母さんたちは居ないので、誰に言うのでもなく一人山を下っていく。


妖怪の山は幾つもの山が連なってできている。僕も詳しいとはいえ、未だ全てを把握している訳ではない。下りかと思えば上りになる。できれば日帰りが出来る距離かどうかを聞いてくればよかった。








「ただいま~ってあれ?大和居ないのか」



何だ、せっかく今日は母の武勇伝の続きを話してやろうと思っていたのに。



「あれ、居ないのかい。まあそのうち帰ってくるさ」



勇儀の言うとおり、日が暮れだしたら何時も通り戻ってくるだろうし、後でいいか。










~歩き疲れた頃~



「ま、まだ山は続くの!?」



正直疲れました。だってどれだけ歩いても山道ばっかり、足が痛いよ。



「日も暮れてきたし、母さんたち心配してるだろうな・・・」



一人で山道を歩いていく。正直馬鹿なことをしたって思ってます。やめないけど。

その背後を一匹の妖怪が見ていた。














~夜 鬼の集会所~



「遅い!!」



遅すぎる!日はとっくに沈み、妖怪の山特有の強い妖気が辺りの闇に広がっている。

いったい何処で油を売っているんだいあの馬鹿息子は!!



「確かに遅いね。・・・萃香、大和は今日何処に行ったか分かるかい?」


「確か、天狗と一緒に河童に会いに行ったはずだ」


「とすれば川か。よし、私が探しに行ってきてやる」


「わたしも行くよ。とっ捕まえて拳骨してやるんだ」



心配させる悪い息子にはお仕置きが必要だ。でもまずは事情聴取だ。

息子に付く悪い虫は駆除しないと。



「誰か、その天狗を連れて来ておくれ」











「じゃあ何か?大和は人里に向かったとでも言うのか?」



目で殺すとはこの事か。眼力で相手を殺せるほどの力で天狗を睨みつける。

連れてこられた天狗はプルプル震えていた。周りは大和を心配する鬼ばかり。

こうも鬼に囲まれては誰でも萎縮してしまうだろう。だがそれ以上に驚くべき事実が発覚した。

なんと大和は一人人里に向かったらしい。



「はっはい。ひ、人里にきょっ興味を持たれて、ましたのでッ」



あの馬鹿息子、あれだけ夜はうろつくなと言っておいたのに・・・。

あの無邪気に人を困らせる性質は一体誰に似たんだか。



「じゃとするとまずいの。今の時間帯は妖怪が活発じゃ。そんな所に人間の子供が一人で歩いてみろ。

 ・・・この先は言わぬでも解るな?」



大将の言にわたしは自分の血の気の引く音が聞こえた。



「大和っ・・・!!」



気が付けばもう走り出していた。


それを邪魔するのが一人。



「待ちな!萃香!!」


「うるさい・・・邪魔をするのか勇儀。殺すぞ・・・!!」



目の前に立つ勇儀を殺すつもりで睨みつける。



「そうじゃない。あんたの能力を使って探すほうが早いだろうが。

 でも流石にあんたでもここいらの山一 帯を囲って探すには時間がかかるだろう?

 だから、あんたとあたしは西側。他には東側を探してもらったらいいだろ。

 それと・・・今度私が大和の事を考えていないと取れる言い方をしてみろ。

 いくらあんたでも容赦はしないよ!!」

 

「・・・ごめん」


「わかりゃいいんだよ」



はっはっは、豪快に笑う勇儀にわたしも周りの空気も和んでいった。

大和のことで周りが見えてなかった。ごめんね勇儀。

大和だけじゃなく、わたしまで心配してくれたのに。



「じゃあごめん。みんな、力を貸してくれるかい?


「「「おう」」」 「「「ヒャッハー!山狩りだお前ら!気合入れてけよ!!」」」



もう今までのような悲痛な面持ちな鬼はいなかった。

そう言って皆大和のために駆けていった。大和、あんたはこれだけ皆に愛されているんだよ・・・。

それじゃ、わたしもがんばりますか「あの~」



「なんだ天狗、もう帰っていいぞ」


「私も手伝います。こう見えて飛ぶのも速いですし、こうなった原因は私にもあります。

 それに彼は私の友人ですから」



この天狗なりに考えてのことか。足が速いのなら一番に駆けつけてもらうにはもってこいか。

・・・本当なら私が一番がいいけど。



「わたしが見つけるから現場に急行してくれ。

 事件は此処で起こっているんじゃない。現場で起こっているんだ」


「はい!!」



こうして鬼による大和捜索隊が発足した。悲観している者は居ないだろう。

むしろ、楽しんでいる者のほうが多い。



「どいつもこいつも、親バカばっかじゃな・・・」



鬼神が呆れるほどに。









「・・・何か寒気がした」


うーん、これは母さんっぽい。かなり怒ってるねこりゃ。

でもねぇ、帰ろうにも帰れない状態なんですよ。



「いい加減諦めて俺の腹に入れ」


「嫌です!」



現在逃走中です。後ろからムカデが追っかけて来てるんで。まさに明日への逃走!状態です。



「しぶとい小僧め、逃げても無駄だと解らぬか!」



そんなの知るか!?逃げるが勝ちだ。逃げるしか手が無いともいう。

ちょっとは立ち向かえって?自殺願望はありません!

・・・ちょっとだけ振り向いてみようかな。



「え?」


振り向いた時には追いついた妖怪が体当たりしてきたところだった。


「ブッ」


おもいっきり吹き飛ばされて木に当たった。



「ゲホッゲホッ、身体強化が無ければ即死だった・・・」



かっこつけて言う言葉じゃないけど。それに言ってる場合じゃないし。



「鬼ごっこは終わりだ。潔く食われろ!!」



ムカデの巨体が再び迫る。もう駄目と思い潔く目を閉じた。みんな、ごめんね・・・




    一陣の風が吹いた




「大丈夫ですか、大和さん?」


「・・・射命丸?ってあれ?何で飛んでんの?」



目を開けた時には射命丸の腕の中にいた。正面から抱きかかえられているので表情は解らないけど、

体が小刻みに震えていた。



「よかった、本当に助かってよかった・・・!(主に私の命が)」


「苦しいよ射命丸」



そんな力込めないで!?折れる、折れるから!?



「萃香さんに言われてここまで必死に飛んで来ました(間に合わなかったら唐揚げにしてやるって言われたから必死でした)とにかく、もう安心です。ほら、もう萃香さんたちも来てますよ」


「うわぁ、ムカデが悲惨なことに・・・」



言われて下を見ると凄い光景が見えた。中々見れることのない母さんの本気で怒った姿です。

ムカデを殴って蹴って甚振っている。ああ、僕もこの後そうなるんですね。そんな馬鹿な事を考えていると母さんがムカデを踏みつけて殺、もとい退治していた。ひ、酷い。一方的すぎてもう見てて辛い。

おぇ、中身見えてる。良い子には見せられないね。



「先に帰っているように言われてますから、このまま送りますね」


「死にたくないなぁ・・・」



本気でそう想った。








あ~、思い返したらとんでもない事してたんだよなぁ。自衛すらまともに出来ない頃に一人飛び出して行ったんだから。もちろん帰ってからは母さんに拳骨もらって、大母様の説教、みんなの小言を聞かされた上に宴会での下働きをさせられた。それも一月。

正直罰にしても酷すぎると思わない?そりゃ危なかったけどさ。



「萃香から話を聞いたけど、その時もまだあの子怒ってたわよ?大和は無鉄砲すぎる、てね」


「もう言わないでください・・・。だから紫さんも母さんに早まったことは言わないで下さいよ?」



もう拳骨は嫌です。鬼の力で何回も叩かれたら本当に頭が割れるんで。



「ふふ、わかったわ。しっかり伝えておいてあげるから行ってきなさい」



そう言って紫さんはスキマに消えていった。・・・不安だ。

紫さんを信用しよう。うん、きっと大丈夫だ。きっと。



「さて、じゃあ僕も大陸目指して行きますか!」


海を見るのが楽しみだ!


詳しくはあと一つ投稿するので、そちらで書きます。

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