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東方伊吹伝  作者: 大根
第二章:外の世界
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人と妖怪《ばけもの》

「つまりそなたは伊吹の義理の息子で、星熊の弟子であると」


「あっはっは、黙っててごめんなさい」


やあみんな、今日も元気な伊吹大和だよ。え?なんでそんなに元気かって?頭おかしいって?

はっはっは、こんな状況じゃ笑うしかないですよー。ではどんな状況か説明しましょう。

あのふざけた闘いの後、今回の襲撃の報告をするためにお爺さんたちと一緒に帝の下へ向かったんだ。

そこで今回の事と僕のことが報告されて今にいたるんだけど、


「縛られているのはなんでだろう・・・」


「何を笑っている!もとより、お前に発言など許しておらん!!」


「申し訳ございませんでしたーー!!」


陰陽師その1さんの言葉に這いつくばって謝罪をする。


「陛下、この者の処分はどうなさるおつもりで」


陰陽師その2さんそう言うと、次々に「厳しい罰を」と声が上がる。


「みな、少し黙れ」


帝の一声でその場が静まる。ああ、10年間の短い人生だった・・・。


「今回の少年の一件 不問とする」


「「「「なっ!?」」」」「へ?」


帝の一言に大勢が驚きの声を上げる。一番大声出したのは僕たけど。


「恐れながら陛下、そのものは鬼に育てられた身。いつ人に弓引くかわかりません。

 死罪はもとより、せめて封印処理はお許しください」


本屋のおじさんの紹介でここまで連れてきてくれた人がそんな事を言った。

騙していたのは事実だけど正直、胸が痛い。


「ならん。今回の一件は余が預かる。・・・報告は以上か。なければ少年と爺以外は解散。

 それぞれ持ち場に戻れ。・・・戻らぬか!」


まだ納得がいかないといった感じだったけど、陰陽師の人達はしぶしぶと立ち上がり去って行った。





   「お前が鬼の子と知っていれば、俺は真っ先にお前を殺していた。

    この人の皮を被った妖怪ばけものめ」





去り際にそんな言葉を残して去っていく人もいた。


「・・・すまぬ。みな妖怪に恨みはあれ、好意など欠片も持ち合わせておらぬ者ばかりだからな」


「いえそんな、都を守る者として当然ではないですか」


そう、彼らは陰陽師。都を守り、人に仇なす存在を滅する人達。決して間違ったことを言ってない。

それがただの子供相手だろうとも。・・・思うことはたくさんある。でも、それを口にするだけじゃ何もかわらない。


「無理をするでないわ。そんな顔で言われても誰も信用せん。

 正直に生きたほうが楽じゃぞ、お主の師匠のようにな」


「そう、ですね。つらいです、本当に。笑い話ですよね。母さんたちに育てられたことは

 僕の誇りのはずなのに。妖怪ばけものは褒め言葉のはずなのに、こんなにも悲しいなんて・・・。

 僕はまだ、どこかで人間でいたんですね・・・」




     言葉にするだけじゃ、決して何も変わることはない。


     力が欲しい。自分を貫くことができる、本当の強さが。




「・・・正直、鬼に育てられたと言えばそこらの忌み子よりもたちが悪いじゃろうな」


「鬼の子、伊吹の名。どちらも人の世には溶け込めん。この都でもな」


伊吹、か。はは、覚悟してたようで、僕は本当に何もわかってなかったんだな・・・。


「では陛下」


「うむ。伊吹大和、そなたを都から追放する。二度とこの地を踏めると思うな」


「・・・わかりました」


「しかし陛下、あの誰も使えぬ書はどういたしましょう」


「そうだな、あの本屋に渡してしまえばいいだろう。後、厄介払いの金と手紙を忘れぬようにな」


「承知しております。では小僧、行くぞ」


「え、あ、はい、わかりました。陛下、お世話になりました」


「早く行け、爺がまっておる」




――――――――――――――――――――――――――――――――――




「賀茂殿、お久ぶりです。おかわりないようでなにより」


「ふん、わしも老いたな。お前の様な悪戯な餓鬼が今では立派になっているとは」


追い出されてから僕たち二人は自称都一の本屋に来ていた。


「その話は無しですよっと。所で今日は何用で?」


「何、厄介払いじゃ」


「こ、こんにちわ」


な、情けない。あれだけ頼んだのに収穫無しとか・・・終わったorz


「おお!久しぶりだな少年。で、厄介払いってことは失敗したってわけだ」


笑って言うとか酷くないですか!?泣くよ!?


「あなた、空気を読んでください。賀茂様、本を御所望ですか?」


「いや、要らぬ書を売りに来ただけだ。ではまた」


それだけ言うとお爺さんは早足で帰って行った。・・・もう僕も行こう。


「じゃあねおじさん、奥方様。僕ももう行くよ」


「少し待て。・・・ははぁ、帝様も賀茂殿も人が悪いなぁ」


ニヤニヤしながらそんなことを言うおじさんがちょっと、いやかなり気持ち悪い。


「どうかしたんですか?」


「この書とここにあるお金は全部君の物だってことだよ。

 帝様も賀茂殿も君をいたく気にいっているみたいだ。

 ここに手紙が入っているから、都を出てから読んでみなさい」


そう言うとおじさんは笑って僕に書とお金を渡してきた。


「すまないが少し手紙を読ませてもらった。その上であえて言わせてもらおう。

 私は君が何処の誰でも恐れはしないよ。子供を恐れる大人はいない、前も言っただろう?」


  

   知らず、目から涙が溢れていた。



「あら、泣いては駄目よ。あなたは笑顔が似合うのだから」


奥方までも優しい声をかけてくれた。


「そういえば、君の名前を聞いてなかったな」


三人、蒼い空を見上げて笑う。


「僕は伊吹、伊吹大和。鬼の、伊吹萃香の息子です」




   頬をつたう雫を日の光が照らしていた。




   心の空は蒼く晴れ渡っていた。

はぁ、疲れました作者です。ネタに戦闘、ギャグよりもシリアスのほうが話を作りやすく感じるのは私だけ?正直今回はシリアスと呼べるかどうか・・・。気にしたら負けですかね。


さて、次は閑話を一つ挟みたいと思います。そこで一旦投稿が途切れます。続きは五割ほど出来てるんですけど、矛盾したら後々困るので。しないようなら投稿しますけどw 


ではまた明日会いましょう

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