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東方伊吹伝  作者: 大根
第二章:外の世界
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結界と再会と

「とりあえず帝が帰って来るまでここで休んでいくがよい。

 急ぐ旅とはいえ、身体は大事にせねばならん」


と言うお爺さんたちの好意に甘えて、帝との謁見まで陰陽寮で厄介になることになった。

だけど気持ちには落ち着きがなく、沈み込んでいた。

ようするに、自分の力不足にがっくりきているところである。

見かねた陰陽師の人たちが「外で気分転換でもしてくるといい」と半ば強引に僕を陰陽寮から

追い出した。なので今は外に出て気分転換をしているところだけど、


「そりゃ才能はないかもだけどさ、それはもうしょうがないじゃないか」


一人都を歩いていると、もっと惨めな気分になるし、愚痴もでる。むしろ陰陽寮でじっとしてたほうが良かった気がする。こんな賑やかな中だともっと沈み込んでしまうから。

ったく才能がなんだよ。僕だってがんばってるのに何で・・・


「いっそのこと山に帰ろうかな・・・。才能ない僕なんてどうせ魔法使いなんてなれるわけないし」


「才能がなければ諦めるのが正しいのかな?」


「えっと、どちら様ですか?」


あちゃ、さっきの話きかれてたのかな。

声の聞こえた方を振り向くと綺麗な服を着た人がこちらを見ていた。格好からして貴族の方かな?

ちょうどいいや、僕が妹紅から習った「貴族への対処法」の成果を見せてやる!


「なにやら悩んでいるようだったのでな、つい声を掛けてしまった」


「申し訳ございません、お耳を汚してしまいまして。すぐに消えますんで」



   その一 とりあえず謝って逃げるべし



「あいや、待ちなされ。なに、そなたの悩みを話してみなさい。何か力になれるかもしれないのでな」


し、しつこい!街中で貴族を相手にする時は大抵面倒事になるから逃げたほうがいいって言われてるのに、これじゃ逃げれないよ。


「じゃあお言葉に甘えて」



   その二 逃げれないなら当たり障りのないように 



とほほ。都に来てからロクな事がない。

でもいきなり話かけられたけど、この人になら何故か話せる気がした。

全てを包み込むような、そんな感じの人みたいに感じるんだ。不思議でだよね?

賢者って呼ばれる人ってみんなこんな感じなのかもね。僕の知ってる自称賢者は滅茶苦茶な人?だけど。





――――――――――――――――――――――――――――――――――




「魔法使いか。なるほど、帝は大陸の術を見てみたいと言っておるからな」


「はい。でも僕程度の魔法なら誰にでもできるって言われて・・・。

 帝に見せられるような物でも無いって解っちゃいましたし、このままじゃ首刎ねられて終わりです」


「帝はそのようなことはせんよ・・・」


しっしまったーーー!!??貴族の人に帝の悪口?とにかくマズイ言い方だったのか!?


「す、すいません。貴族の方にこんなこと聞かせてしまって」


不敬だ!打ち首じゃあ!とか言われたりしないだろうか。


「まあよい。・・・そうだな、この都に強力な結界が貼られていることは知っているかな?」


おろ、お咎め無しみたい。心の広い人だねぇ。

都の結界って言えば、何か妹紅も言ってたな。最も結界の力が高まる夕方から夜にかけては、力のない人で目視できるほど強力であるらしい。僕も都に入るときにこの結界を潜ったけど、強い安心感に包まれた。


「はい。妖怪から身を守るために張っているのですよね?」


「そうだ。そしてこの結界を貼ったのは陰陽師の爺だ。・・・君の頭に浮かんだ爺であっておるよ。

 奴は一人でこれほどの結界を貼りおった」


あのお爺さんどれだけ凄いんだ!?紫さんたちとも立ち向かえるんじゃないの?

まあそれも、持って生まれた才能が物を言うんでしょうね。


「しかしな、爺も才能があまりなかったらしい(嘘だがな。少年の為にはこう言うしかなかろう)」


「え?」


「弛まぬ努力、諦めぬ強き心が奴をあの高みにまで育てあげたのだ」


あのお爺さんに才能がなかった・・・。努力だけであの高みまで辿りつけた?

この人はそう言うが、本当にそうなのか、僕には解らない。


「そなたはどうかな?諦め、才無き身を嘆くだけで終わるのかな?

 そなたはまだ若い。これからも苦悩は続くだろうが、諦めてはそこで終わりなんですよ?

 それに、才能が無いなら、無いなりにもやりようもあるでしょう」


僕が強くなる機会はまだたくさんある。それを活かすか活かさぬかも僕自身の『これから』

にかかっているということ。そして自分を支えるのは強い心だということ。そう・・・でいいんだよね?


・・・不思議な人だ。人をこんなに安心させられるなんて。


「ありがとうございました。何か憑きモノがとれた感じがします。

 これでまた、頑張っていくことができそうです」


「よく言った。ではこれを持つがいい。そなたの欲しがる魔道『妖怪だー!妖怪が攻めてきたぞー!!』 何だと!?」











「妖怪だー!それも、鬼が攻めてきたぞー!!」


その叫び声と同時に都中の人達は我先と門の方角から逃げていく。

この貴族の方が何かあげるって言ってくれたようだけど、もう目の前の人は攻めてきた鬼を前に緊迫した面持ちへと変わっていた。誰か知らないけど空気読んでください。


「むう、鬼か」


なんかすいません。身内が迷惑かけてしまって。


「都には結界があるじゃないですか。心配はいらないのでは?」


そんなに心配することもないでしょうに。

お爺さん曰く、鬼も通さないことが自慢らしいし。


「確かに結界は強力。だが、鬼神や四天王ほどの者がくればどうなるかわからん」


あの人たちはねえ、人の常識に当てはまらないバケモノばかりですから。

気にしたら負けですよ。大母様とかなら世界相手に勝てそうだし。


「晴明が所用で出かけとる今に仕掛けてくるとは、間の悪いやつめ・・・」


晴明・・・安倍晴明のこと?

安倍晴明の名は僕でも知っている。文が天文道の達人の人だって言ってた。

って、所用で出かけてるんじゃやばいんじゃないの?


「でも他の陰陽師の人達もいるじゃないですか」


他の人もそれなりにできる人がいたはずだ。

あのお爺さんなら鬼とはいえ、母さんクラスじゃないと厳しそうだったけど。


「それでも鬼相手には時間稼ぎが限界だろうな。鬼の強さは破格のものだ」


「それでも闘うのが陰陽師ですぞ」


うわ、ビックリした。急に現れないでくださいよ!

周りには陰陽寮の陰陽師が勢ぞろいしていた。何処に戦をしに行くつもりですか・・・。

国を一つ落とせるくらいの戦力はあるよね、この人達全員なら。


いきなり現れたのは転移でもしたのか、力の残り香がする気がする。


「来たか爺。状況はわかっておるな?」


「わかっております。攻めてきた鬼は二人。伊吹と星熊、四天王の内二人が来ておるようです」


「よりにもよってまたあの二人か・・・。おそらく暇だからとかで来たのだろうな」


「おそらく」


何でこの人達母さんたちの性格理解してるの!?てか、理解されるほど攻めてるの!?

・・・土下座でもしたほうがいいんだろうか。


「いつも通り都の外で闘え。それと一人も死者をだすな。これは余の勅命ぞ」


「「「「陛下の仰せのままに」」」」


そう言うとみなさんまた消えてしまった。おそらく転移したんだろう。


「言い忘れておったが、余はこの国で一番偉い者だ。驚いたか?」


言わないでください。帝に向かって帝の悪口言ったことへの逃避が忙しいんです。







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







「よいか!必ず纏まって動くのじゃ!倒せなくてよい!負けなければよいのじゃからな!!」


わしがそう言うと皆は固まって防御の陣を形成し、結界を張る。

個々の力はそれほどでもないが、束ねれば強固なものとなる。これが人間の強みじゃ。


「ったく、相変わらず攻めてこないやつらだね。おい爺さん、晴明の奴はどうしたんだ?いないのか?」


「出かけておるわ。お主の目当ての者はおらんぞ。今日は引き返したらどうじゃ!?」


声を大にして言う。この二人は強者との闘いを望んでいるからの。

いないと分かっても帰るような奴らではないが、一応伝えておく。


「でもあんたはいるじゃないか。静明の師にして私の好敵手、天文道の使い手『賀茂忠行』」


何時もならわしがこの星熊の相手をして、晴明が伊吹の相手をするのだがあいつは今おらん。

しかたない、わしが二人の相手をするしかないか・・・。


「では、わしが二人の相手をしようではないか。何、小鬼如きわし一人で十分じゃわい」


故にこう言う。他の者にはこやつらの相手は危険すぎるのでな。皆の助けもある。死にはせんじゃろ。


「吹いたな、爺。後悔するよ」「私たち二人を相手にするか。流石は好敵手、言うことがちがうねぇ」


「もうよいかな?では、天文道 賀茂忠行 参る『ちょっと待った―――――――!!』?」


「伊吹萃香!お前の相手はこの僕だ!!」


「何奴!?」


おい小僧、いきなり出て来てわしの出番をとるな。

今日も更新、じらいです。今回は一話が短かったために急遽二話を合わせる羽目になりましいた。読みにくかったかと思います。すいませんね。

さて、今回お爺さんの名前が明らかになりました。彼も実在していたと思われる人物を名前だけ頂いてきましたw 改めてwikiの偉大さを思い知らされますね。

ではまた明日


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