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東方伊吹伝  作者: 大根
終章:終わりは始まりの桜
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八雲紫と言う妖怪・弐

時代背景とか、飾りですから!


~白話~


私と藍お姉ちゃんがしばらくの間ここで過ごすと決めた翌日の朝。ただの御客人として置くだけの余裕はないとか言われて、今日から私と藍お姉ちゃんも農作業に駆り出されているの。藍お姉ちゃんは私が農作業など……って反対してたけど、私はそうは思わないのよね。何て言うか……土も滴るイイ女? 藍お姉ちゃんって本当に綺麗だから何しても様になるのよね。それに私、農業は産まれて初めてだし何事も経験しておいた方が人生の役に立つと思うの。

やる気を胸に、村の畑へと足を運んだ。もちろん嫌がった藍お姉ちゃんと一緒に。

肩幅よりも足を大きく広げ、焦げ茶色の大地を睨みつける。両手で一本の棒を握り、天高く翳す。棒の先には鋭く研がれた銀の刃。太陽の光に鈍く反応する姿はなんと頼もしいものなのか。その姿に思わず笑みが零れる。やれる……この鍬と私なら!


対農法具エクス……クワ―――!」


気合一閃だらっしゃぁぁ! 残像すら残さない速さで振われる数多の土を掘り起こす伝説の鍬! 私の鍬が突き立てられた後には土しか残らないぜ……。

…とでも思った? 自慢じゃないけど私ってば非力なの。見かけ通りの子供のそれよりもゆっくりしか使えないわ。だからカシュ…カシュ…なんて、本当の意味で残像すら残せない速さでしか振えない。本当に自慢にならない……。

それでも土を耕すと出る音に、私の身体は感動で震えが止まらなかった。

すごい…なんて凄い鍬なんだ……! この鍬に乙女の腕力が加ってしまえば、宛がわれた一畝など―――


「三日あれば耕してみせ 「アホなことしとらんと、はよ黙って耕し」 …るぅひゃぁ!? オ、オサ!? 何時からそこに!?」

「鍬を頭の上に掲げて、ぶつぶつ言いだしたところから」

「ぬ、ぬぉぉぉぉぉ……」


恥ずかしい…恥ずかしさで顔を上げられない……。

終わった…私、全て終わった。可愛らしい乙女紫ちゃん路線で行くつもりだったのに、これじゃあただのお馬鹿さんじゃない。


「……あれ? そう言えば、オサの担当は向こうじゃなかった?」


ここ、私専用の畝。オサの畝、遙か向こう。ほらあっち、あっちのみんなが見てるじゃない。私を指さしてる人たちがいっぱい居るじゃない……って何故私? ……ははぁん、さては私に見惚れてるのね? 珍しい金髪だし、顔に泥が付いていても可愛い乙女だもんね。お嬢さんは綺麗だね、なんて、旅で出会った知らないおじさん達は言ってくれたもん。ご飯食べさせてあげるから付いておいでー、なんて言ってくれる優しい人たちだったもん。私の乙女度は天元突破しているんでしょうね。

でも……話掛けてくれるのは知らないおじさん達だけで、他の人たちはみんな私のことを変な目で見てた。私はただ仲良くなりたいだけなのに、話掛けたらみんな逃げていく。人にも妖怪にも、一向に友達と呼べる人は出来ない日々。知らないおじさん達も藍お姉ちゃんを見たら倒れちゃうし……。まぁ藍お姉ちゃんは……ね? 見たら気絶しちゃうくらい綺麗だから仕方ないんだけど。なんせ一国の王すら堕としちゃうくらいだもの。その美貌が妬ましいわ。


「ウチがお嬢ちゃんとしたいから来たんよ。遊ぶんもええけど、はよ耕してや? 働かざる者食うべからず。一畝くらい一刻でやってもらわな……と言っても初めてみたいやし、ウチが手伝ったろ思ってな」

「…っそ、そう! なら一緒にしましょ! 私もオサと『仲良く』 『一緒に』 したいと思ってたの!」

「…紫、無理しなくていいんだぞ? 私がお前の分も働くから」

「ありがと、藍お姉ちゃん。でもそう言う訳にもいかないの。私だってやれるんだか…らっ!」


誰かに頼れるだなんて思っちゃ駄目。特に藍お姉ちゃんには今までずっと迷惑しか掛けてこれなかったんだから。私でも藍お姉ちゃんの手を借りずにやれるんだって証明しないと駄目なの。

それに、農業を『誰かに任せる』 なんて舐めた真似するのは駄目だと思うの。きっと奥が深いだろうし、何より美味しいご飯を食べるためには必要不可欠! 大好きな柿は放っておけば勝手になるかもだけど、お野菜は勝手にはならないもの。お水と一緒に愛情をあげないと育たないってオサが言ってたもの。


「でもオサ、この鍬の先……これって銀で作ってあるの?」

「銀でもあるし、銀でもないで?」

「じゃあ鉄? 私も鉄の鍬なら大陸でも見たことあるわ。でもこんなに洗練された鉄は見たことない」


手に持った鍬、本当に凄いのよね。私程度の腕力でも簡単に土を耕すことが出来るんだから。そう言えば大陸でもこの国でも、刃の部分を木で使ってた人たちが殆どだったような……。私には解んないけど、鉄を作るのって難しいらしいのよね。…あ、そう言えば諏訪とか言う国でも鉄なるものを使う~、なんて噂を聞いたことがある。でもオサの村の鍬はそれ以上なんでしょうね。一家に五本は欲しいわ。


「それで? 銀なの? 鉄なの?」

「うーん説明が面倒臭い……まぁ秘密っちゅーことで」

「え~…面倒がらずに説明してよ」

「別にエエやろ? 所詮は鍬なんやし。まぁ農業法具とやらなんやったら気になるんやろうけど、幸い法具なんかとは呼べんただの鍬やからなぁ」

「~っ! もっ、もう知らないっ!!」


忘れて! お願いだから今すぐ私の黒歴史を忘れて!!


「お嬢ちゃん怒った?」

「……」


知らない。私は畑を耕すのに夢中なの。お野菜いっぱい植えて、お腹がはち切れそうになるほどのお野菜を収穫するの。藍お姉ちゃんに今まで迷惑掛けてごめんねって渡すんだから。その為に頑張って耕しているんだから、意地悪なオサは邪魔しないでちょうだい。


「くわくわくわくわくわ……」

「変な掛け声。慣れん者が慌ててすると怪我するんやけどなぁ……。おーいお嬢ちゃん、ちょっとペース落しぃ。怪我するで」


聞く耳など持たぬぅ。


「くわくわくわ……ィタッ!?」

「紫っ!?」


ぉ…ぉお!? 手の皮! 指の付け根の皮が膨らんで破けて妙な液体が出てきた!? く、空気に触れると中々痛い……。でも泣かない! 泣かないんだから!


「紫、紫……大丈夫か!?」

「マメが出来て潰れて……あーあ言わんこっちゃない。痛いか?」

「し、しみるぅ……」

「弱いやっちゃなぁ…。ほれ、泣いとらんと手ぇ出してみ」


ひっく…ヒッゥ…泣いてないもん……。オサの見ているのは汗よ。頑張り過ぎて出た汗だもん。


「怪我をした時には長のおまじないってな。―――痛いの痛いの~…怖い顔した狐に飛んでけ!」

「ヒック……ヒ…? あ、あれ……? 治ってる…」

「どや? 長のおまじないは凄いやろ? 手を重ねておまじないするだけで、どんな怪我でも一発完治! 医者いらずとはこのことやで」


マメが潰れて痛みが走っていたのに何も感じない。それどころか怪我一つない掌に戻ってるし……は!? 解った! 謎は全て解けたわよ!


「オサは魔法使いなのね!? 私、大陸を旅してた時に聞いたことがあるの。どんな怪我でも直せるし、どんなことでも出来る夢みたいな人を魔法使いって言うんだって!」

「お、流石はお嬢ちゃんやな。ウチが魔法使いと気付くんが早い!」

「やっぱりそうなのね!」

「付け足すなら、ウチが最強の魔法使ってことやな?」

「本当!? オサは本当に凄いのね!」

「やろ? でも残念ながらウ・ソ」

「――――――」

「ハハハ! いい加減騙されんと……うおぉッ!?」

「ま……また騙したわねぇ!?」

「うわっ! ちょ、お嬢ちゃん鍬を振り回さんといて!? それ人の身体なんて真っ二つに出来るんやから!」

「じゃあ真っ二つになってしまえ!」

「ウ・ソ。鍬に出来るわけないやん」

「……ッ死ねぇ!!」


この嘘吐き人間! また私を騙して楽しむなんて、趣味悪過ぎよ! 正義の鍬捌きでお縄に付けぇ!


「アッハハハ! 当たらんなぁ~」

「も~~~~~!!」

「後に回ってスカート捲り「キャアッ!?」 …中は黒か。お嬢ちゃん、白にしとき。黒はまだ早い。乳も出てないんやから、な?」

「~~~ッ馬鹿ぁ!!」


乳が出てなくても、私は大人の女性よ!






◇◆◇◆◇◆◇





~黒話~



「…紫は楽しそうだな」


長と戯れている紫の顔には笑顔が浮かんでいる。つい先日までの無理して繕っていたような笑顔ではなく、あの子本来の可愛らしい笑顔が。

……無理させていたのだろうな。あの心優しい子のことだ、私に迷惑を掛けるのは嫌だ。せめて笑顔だけでも浮かべて心配させないでおこう……などと考えていたのだろう。初めて出会った時から此の方、助けられているのは何時も私の方だと言うのに……あの子は少し天然すぎる。そこが可愛いところなんだが…。


「傾国の、どうしたん?」

「…藍だと言っているだろう。それより貴様、紫はどうした」

「煙に巻いた。ホレ、あっちでウチの家族と話しよる」


指差された先には、こいつの家族と戯れている紫が見えた。

だが家族、か…。

私には無縁のものだな。国は壊し、壊された。

殷の妃として娶られた私だが、寿命の差のことを考えてしまえば帝との肉体関係など出来るはずも無かった。置いて逝かれる辛さに耐えられそうになかったから。それに子を儲けようなど思ったことも無かったしな。……生きる国があれば、だが。

では紫は何なのかと言われると……何なのかな。紫のためなら命を捨てることすら厭わないが、その感情が何なのか私には理解出来ない。ただ……そうだな、愛おしい。私は紫が愛おしいと思っている。それでいいだろう。


「貴様に聞いておかねばならないことがある」

「なんや? これから一緒に暮らすんやから、大抵のことには答えるで?」

「……貴様、人間ではないだろう」

「へぇ……続けてみ。まだあるやろ?」


目の前の男女おとこおんなはキョトンとし、次いでニヤリと笑った。私が力を込めて睨みつけているというのに、コイツは恐れを感じる所か楽しげに笑って見せた。不愉快極まりない。


「だからと言って妖怪でもない。貴様から妖力はしない。霊力も感じられない。人や獣、妖怪の持つ臭いすら感じられない。そして極めつけは貴様の持つ魔力と呼ばれる力。長年生きてきたが、貴様のような狂った魔力・・・・・を持つ者など見たことも無ければ聞いたことも無い」


土臭さ、血生臭さ、獣臭さ。誰でも持っている臭いがまったく感じられない。それはあり得ないことだ。生きているようで生きていない、まるでこの世の『穢れ』 をすべて捨て去ったような生き物。神でさえ持っている穢れをこいつからは感じられない。

そしてコイツが持っている魔力。隠しているのだろうが、その量はあまりにも膨大。昨晩のうちに器を覗いてみたが、正直底が知れなかった。アレだけの量をたかが人間如きが持てるわけがない。それがほんの少し覗いた私すら狂わせる質を持つ魔力ならば尚の事。


「それだけならまだ私も気付かなかっただろう。極めつけは紫の怪我だ。どうやって治したのかは解らないが、何らかの能力なのだろう? それをこの村に住む者全員・・からその力を大なり小なりとはいえ感じられるとなれば話は別だ」

「…で? あんさんの結論を聞かせて貰えるか? そこまで気付いたんや、ウチらが何者かくらい想像ついてるやろ」

「興味がない」

「―――は?」


興味が無い。はっきりそう言ってやると、目の前の男女は間抜け面を晒した。クク、いい気味だ。


「ちょ、ちょい待ちぃ! ウチらの事に興味があるんとちゃうんか!?」

「興味など無い。それに昨晩、貴様は紫に何もしないと言っていた。ならそれでいい」

「……何やの、それ…。言い逃れも考えて待ち構えとったのに、ウチはまんまと一杯喰わされたってわけかい。これじゃウチがただの自意識過剰な奴やないか……」

「フン、昨日はしてやられたからな。それのお返しだ」


私が自分と紫以外のことに興味を持つと思ったか、馬鹿め。貴様が何者だろうと何と関係あろうと私にはどうでもいい。あの子と居られる、あの子に手を出さない限りは私から関わることは一切ない。もちろん害悪があるかは判断するが。それに私は紫を導きはしても縛ることはしない。そこに貴様と言う石ころがいた場合は力の限り吹き飛ばすがな? 何時か紫に言い寄って来た下衆共のようにな。


「紫がいて、私がいる。それだけでいい」

「……あの子はそう思ってないみたいやけど」

「……」

「友達がおらん、そう言っとったわ。せやったらウチが友達になったるって言ったらな? 飛び跳ねて喜んでたわ。ホレ、今みたいに」


視線の先には、この者と同じように片腕が欠けた子供がいた。目も瞑っているが、紫が飛び跳ねているのを見えているかのように微笑んでいる。


「あんさんとお嬢ちゃんの間に何があるんか解らんけど、下手に他人から遠ざけるんはアカン。大事にしとるもんほど簡単に壊れるんや。傾国の・・・、お前なら解っとるやろ」

「……それでも、あの子は純粋すぎる。輝き過ぎているんだ。人や妖怪がその輝きに自然と引かれ、群れていってしまう程に。だがこんな世界の中では彼女の優しさもくすみ、汚され、犯され、騙され、そして輝かなくなる。あの子が生きていけるほど今の世の中は美しくない。私がそうだったように」

「だから他人から避け、誰とも会わんように旅を続けてきた?」

「そうだ。あの子には私と同じ思いをさせたくないからそうしている。愛した者に国の仇と称され、討伐された私のようにな」


後で辛い思いをするのであれば、始めから何にも拘わらないほうがいい。

殷の皇帝は確かに無能だった。だが無能でも私は愛していた。だから国の為に、民の為にと心血を注いで国の舵取りをした。国と帝を守る為なら何でもすると誓った。例え帝がその傍らに末喜と言う私と同じ九尾の愛人を侍らせていたとしても。だが帝と国に心血を注いだ私を待っていたものは、背中から斬りつけられると言う末路だった。末喜の虚言に言い包められた皇帝によって、私は国賊と称されて斬り付けられた。倒れ伏す私に、帝は淡々と罪名を告げていった。そして―――


そんな生き方をした私だからこそ言えることだ、若造。知らない方が幸せだとな。


「ウチを若造とは言うなぁ……実は年上なんやけど」


……やはり人間では無いらしい。


「でもウチ、決めたで」

「……何を」

「あんさんをウチらに関わらしたる」

「―――ふざけるなッ!!」


思った以上に声が出た。遠くにいる紫が何事かと振り向いたが、何でもないからと手を振って留めておいた。今来て貰っては困る。今来られると、紫が気に入っているこいつを殺せなくなる。


「貴様、虚言を吐くのもいい加減に―――「虚言とちゃう。本気や」 なお悪い! 私は…」


もう紫以外とは関わらないと決めたのだ。裏切られるのも騙されるのも、もう沢山だ。


「お嬢ちゃんだけや思たけど、あんさんも重傷や。ウチがそれを処方したる」

「……ッ何が処方だ! 私はもう、他人を信じることは出来ない!」

「じゃあそれでエエ。でもウチはあんさんを信じる。傾国の、あんさんは誰とも関わらんと言ったな? じゃあその先に何があるか知っとるか?」

「……」

「その先は闇だ。何もない、本当の意味での闇」


そこには喜びや怒りはない。憎しみや怨みもない。何もない空っぽな器が残るだけ。

目から完全に光が消えた状態で、目の前の者はそう言った。闇を知っている、といった生易しいものではない。闇そのものを感じた。

…お前は、お前達はそう・・なのか? 閉鎖された空間で生きる死人たち。それがお前達だと言うのか?


「ウチらはそれがどれだけ辛いか知っとる。だからあんさんには経験させたくない。あんさんがお嬢ちゃんに経験させたくないように」

「……そんなこと、信じられるか」

「ならウチを信じる必要はない。ウチが信じるあんさんを信じろ」

「……何故そこまで私に関わろうとする。私に関わったところで、何の利益もないのだぞ」

「あんさんのことを気に入った。ただそれだけの理由や。これほど強烈な理由はないで?」


真顔で言われても、私にはそう簡単に信じることなど出来ない。

信じたところで裏切られる。一度でも経験してしまえば、それは鎖となって心を絡める呪縛なんだ。他でもない自分自身を苦しめる鎖。そこから抜け出すことなんて、出来ないんだよ。


「……お嬢ちゃんと話している子供。あの子は村で一番の年少者や」

「……」

「ウチと同じで片腕が無い上に、目も見えてない。それはあの子だけやあらへん。この村のもんはどこかしら欠如してる部分がある。肉体的であれ、精神的であれ…。健康なもんからしてみりゃ、ウチらは所詮弱者の集まりってとこなんやろ」

「……だろうな」

「でもウチの村で、自分らが弱者やなんて思とるもんは一人もおらへん。何故なら、ウチらには他の奴等にはない強い絆があるからや。その根っ子にあるもんが、互いを信じる心」

「…それでも、裏切り者は出る。私の国がそうだったように」

「家族を裏切るもんがおるか、ドアホ」

「私達は家族では無い。赤の他人だ。貴様は赤の他人を無償で信じられるのか?」

「…せやなぁ、そこが一番の問題点や……。でも、案外簡単に解決するかもしれんで?」

「何を―――「藍お姉ちゃん!」 紫? ……どうしたんだ、その花飾り」


頭に色取り取りの花の王冠を乗せた紫が息を荒げながら走ってきた。その傍らには、先程紫と話していた子供がいる。遠くからでは良く解らなかったが、男女おとこおんなをそっくりそのまま小さくしたような子供だな。


「シロが作ってくれたの! 一緒にいるのなら家族だって! あ、シロって言うのはシロの名前で―――」


傍らにいる子供を一生懸命紹介する。私の友達になってくれたんだ、家族になったんだと笑いながら。嬉しさを表現するように大きく身ぶり手ぶりしながら、紫は笑っていた。


「……これ」

「…私に?」

「……家族」


紫にシロと呼ばれた子供が、私にも花飾りを手渡して来た。家族だと言って。私がどのような姿をしているのか見えてもいないのに、そんな私すら家族だと言って手渡して来た。私が何を経験してきたのかも関係なく、私が信じないのも関係ないと無償の信頼を込めた花飾りを私に手渡して来た。


「どや? 案外悪くないやろ?」

「……そう、だな…」

「藍お姉ちゃん……?」


…何でだろうな……もう二度と手に入らないと思っていた。もう二度と手に入れないと思っていたのに、いざとなるとこうも温かい。……あぁ、久しく忘れていたからか、目頭が熱くなるほど温かい。


「……良いだろう。最低限は関わってやるから感謝しろ」

「最低限や言わんと、ウチのこと好きになっても構わへんよ?」

「……この際だからはっきりさせておこう。貴様は男か?」

「ウチは男やで?」

「オサってやっぱり男なの!?」

「ウチ女やのに間違われてもぉた……」

「……さぁ紫、もう良く休んだだろう。続きをしようか」

「あ、じゃあシロも一緒に!」

「一緒……」

「あ、ちょい待ち! ウチを無視せんといて!」


ふん、嘘吐きの貴様など放っておいても良い。それに……貴様の方から関わってくれるのだろう?








~農作業中オマケ~



「ああそうや、傾国の」

「藍だ!」

「別にええやんか……。言い忘れとったけど、ウチらにもウチらの事情がある。それにあんさんらを巻き込むのはウチらとしても本位じゃないんよ」

「当たり前だろう。私達を貴様等のいざこざに巻き込むな」

「あんさんの言う通りや。やから最低限の線引きはさせて貰う。シロは家族や言うたけど、それだけは勘忍な……」

「……良いだろう。その言葉、違えるなよ」

「あんさんもな。いざとなった時、ウチらを助けようなんて真似はせんといてよ?」

「するか、馬鹿者」





一週間以内に一話は投稿しないと駄目だなぁ、と思ってしまうじらいです。どうも一年も続けているせいか、生活習慣の一部になっている気がして堪りません。


殷の国に変なのいないですかって? その人は殷じゃなくて夏じゃないの…? 何て方、気になさらないで下さい。もう出て来ないので(笑) それよりもこの紫編、思った以上に長くなりそうです。それに紫だけのつもりが藍の部分まで書いてるとかもうね…orz なんだか永遠に終わらない気がしてきました。どうしましょうorz


でもあれです。伊吹伝終わったら、後は外伝でもちまちま書きながらネギまで勘違いモノしたかったなぁ…と思ってました。無理になりましたがw

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