八雲紫と言う妖怪・壱
※注意! 紫のキャラが崩壊しております! 関西弁丸出しのキャラがでます! 関西弁が解らない方、質問してくれれば幾らでも答えますので御一報を!
オリジナル話です。そう言った話がムリな方は、注意してください!
ここは八雲邸。私と紫様が幻想郷を見守るために建てた家。それがどこに在るのかを知っている者は、私の知り得る中でも片手で数えられる程しかいない。
「藍さま~、藍さま~?」
「……橙? 橙~? どこにいるんだい?」
「あ、藍さま」
「ああ橙、よく来たね」
今此処へやってきた橙もその中の一人だが、この子は私の式だから知っていて当然だ。それでも余程のことが無い限り近寄らないように言いつけてあるくらいだから、その程度も知れるだろう。
私と紫様のやってきたこと、やっていることを橙は知らない。世の為人の為、とても尊いことだと思っているのだろう。それは半分正解で半分間違い。
あの子を式にすると決めた時、紫様は強く反対した。これ以上私たちに巻き込まれる者が現れる必要はない。私達の代わりに自由に生きて欲しい。私達とは関係のない世界で、私達の創り上げた幻想郷で幸せになってもらいたい。
紫様はそう言ったが、私は一歩も引かずに式にすると言い切った。そうして懸命に紫様に訴え続けた結果、紫様は橙に関わらせないという条件付きで了承してくれた。
だから私達は教えず、知られることを避けるために橙を近づけないようにしている。
「えっと、この間幽々子さまからの御呼び出しがあって……」
「西行寺幽々子から? 何か言ってたかい?」
「『とても大きな花見をするつもりだから、寝坊しないでね』 って紫様へ伝言を任されました」
「花見? 花見は毎年してい…る……」
「藍さま?」
「……わかった。ありがとう、橙」
「はい! えっと、紫様は…?」
「……眠っておいでだ。もう冬だしな…」
そう、もう冬だ。紫様が……紫と私が変わってしまったあの年と同じ冬……。
「藍さま……? どうかしました?」
「…なんでもないよ、橙。紫様には私から話しておく」
「解りました、お願いします」
きっちりと役目を果たせたからか、満面の笑みを橙は見せてくれた。あぁ橙……橙は本当に可愛い奴だ。荒んだ心を癒してくれるのは、何時だって橙の満面の笑顔。私達の行いで幸せになってくれる者がいる。そう思うだけでどれだけ救われることか……。
だが……フフ。子供の姿を見て微笑むなど、我ながら丸くなったものだ。昔の私が見たら何と言うのだろう。指を差して軟弱者と言われるだろうか? それとも……
廊下を歩き、紫様の寝室へと向かう。襖を開けると、布団に包まっている紫様の姿が目に入った。すやすやと寝息を立てている姿はあの頃と一つも変わらない。
「……私はどうすればいい。紫のことを思えば止めるべきだと思う。しかし紫様のことを思えば、式の私にその権利はない」
そっと髪を撫でる。サラサラだと思っていた髪は、どこかガサついていて感じられた。忙しく働いているからか、手入れなどしてなかったのだろう。『彼女』 いや、『彼』 か? まぁどっちでもいい。とにかくアイツに見られでもしたらなんて言われるだろうか…
「……駄目だな、最近はどうも昔のことを思い出してしまう。紫様と大和殿の約束の日が近いからなのかもしれん」
目の前で寝ている人は、あの頃の光景を夢で見ながら眠っているのだろう。辛いことを忘れるために、夢の世界へ……。
◇◆◇◆◇◆◇
~白話~
「藍お姉ちゃんのバカ! 私だって何時まで経っても子供じゃないのに過保護過ぎ! 何でお魚を取りに行くだけでも付いて来るなんて言うのよ!」
まったくもう、私だって少しずつだけどちゃんと成長してるんだから! そりゃぁ藍お姉ちゃんみたいに胸も出てないし背も低いけど、もう何年も生きてきた立派な妖怪なんだから。
……私? 私は紫。『むらさき』 って書いて『ゆかり』 って読むの。見てくれはただの子供でも立派な隙間妖怪なんだからね。馬鹿にされちゃ困るわ。
「そもそも藍お姉ちゃんにだってやることがあるじゃない。火を起こすとか……瞬きする暇があればやれるか…。じゃ、じゃあ獲物! 野兎とか捕まえる…のも瞬きする間にしちゃうかぁ……。はぁ、私ってば藍お姉ちゃんに頼りっぱなしじゃない…」
何でもそつなくこなす藍お姉ちゃんに比べ、満足に火も起こせない私。獲物を捕まえる? 何言ってるの、私は血が大の苦手。見ただけで卒倒するわ。でも魚獲りなら得意よ? 何でだかは知らないけど、釣り糸を垂らしてると勝手に魚が喰いついて来るの。私ってば、魚に好かれてるのよね。
「あ、川みっけ。よーし! 今日もいっぱい吊り上げて藍お姉ちゃんを驚かせてやるわよ! でもその前に……」
ササッと周囲に目を凝らす。誰も居ない? 誰もいないわよね? わざわざ人や妖怪が居ないような場所ばかり選んで旅してるんだから、誰もいないわよね? ……うん、いない。居るわけがない。そう決めこんだ私は中華風の衣服を脱ぎ棄てて産まれたままの姿になった。
「右よし、左よし、上よし、下よし。では―――紫、突撃します!」
最後にもう一回だけ周囲を見て、川へと走り出した。小さい砂利と大きい砂利で足場が悪いが……フフフ、今まで走破してきた道を考えればこの程度!
「苦じゃないはぅぁッ!?」
うぉ! うぉぉ!? 大きい砂利に足を取られた!? だがしかし! 数多のけもの道と山道を潜りぬけた私の足を舐めて貰っては困る!
「……と言いつつも、頭から川に突っ込んだ私でしたとさ。久しぶりの水浴びがきもちぃ~」
結局、どぼん! なんて音を立てて川へと落ちた。ちょっと失敗しちゃったわね、うん。でも私は一人前のれでぃだから、この程度じゃ動揺したりしないわ。それこそ藍お姉ちゃんに今までの行動を見られていたり、こんな格好をしている時に誰かに話掛けられたりしない限りわね。
それにしても、と自分の身体を見て思う。なんで私のおっぱいは膨らまないのかしら? 下から持ち上げるようにしてもスッと零れ落ちるおっぱい……。ぼろっですらないの。スッ、よ? 持ち上げられる肉すらない。むしろ抉れてるんじゃないの? と思うくらい。惨めたらしいったらありゃしないわ。たぶん藍お姉ちゃんのを敬意を込めておっぱいって言うのでしょうね。…私の? ……ちっぱい?
……自分を苛めるのは止めようか。虚しい……
「そこなお嬢ちゃん、大丈夫かいな? エライ大きな音して川に落ちよったけど。まぁ、胸を凝視して弄ったりしてたからには大丈夫なんやろうけど」
「――――」
おっぱいのことを忘れて泳ごうかな、と思った私に高い声が聞こえてきた。そのとき私の首からはぎぎぎ、なんて音が絶対にしたと思う。だってあり得なくない!? 私、ちゃんと何回も確認したのよ? 上も下も右も左も確認したの。でも振り返ってみると、大きな石に胡坐を掻いている人がいた。顎に手を当てて、ニコニコ笑いながら私を見ている。
「後は見んかったよね」
「あ、そうか……っじゃないわよ! あなた誰!?」
「あ、漸く? ウチの名は―――あらら、えろうすんまへんな。ウチに名前はないんよ」
「え、あなた名前ないの?」
「おまけに片腕もない。ほれ、ウチの左腕のとこが寂しそうに風で靡いとる」
「お、おまけって……」
「うん? ウチの腕は問題やない。でもなぁ…お嬢ちゃんに名乗れんのが悲しゅうて悲しゅうて……」
なんてことだ……。私だって今でこそ名前があるけど、初めから紫なんて名前は無かった。でもこの人は、もう大人なのに名前がないなんて……はっ!? まさかこの人、迫害されていたんじゃないかしら!? そうよ、そうに決まってるわ! 腕が無いのも迫害を受ける対象……いいえ、もしかしたら腕を斬り落とされたのかもしれない。だから人も妖怪も居ない場所に一人で居るんだわ……。
―――よし! この人がどんな人なのかは知らない! でもこんな辺鄙な場所で出会ったのも何かの縁。私がこの人と仲良くしてあげよう! ……あわよくば、私の友達第一号になるかもしれないし。
「大丈夫よ! 名前なんて無くても、あなたを大切に想ってくれる人はちゃんといるわ!!」
「……ほんま?」
「居ないのなら私が想って、友達になってあげる! 私、見た目の通り優しい子だから!」
私、超優しいの。文字通り、初対面から裸の付き合いをするほど優しいの。だから友達になってください。いや、本当に切実に友人不足なの。藍お姉ちゃんは友達と言うよりも、お姉ちゃんだから数には入ってないから。藍お姉ちゃん以外の初めての友達になって、と念を込めて見つめてみた。
「そうかぁ…そら嬉しいこっちゃ……」
「じっ、じゃあ!」
「うん。ウチらは今から友達や。ウチのこと想ってくれるだけでも嬉しいのに、いきなり乙女の裸までみせてくれるんやからな。お誘いには乗らな罰が当たる」
「乙女? あなたも十分可愛い乙女じゃない。あ、私の方が若くて可愛いけど」
「くくっ……自分で自分のことそう言う奴がホンマに居るなんて…っ。それと、ウチは男やで? たぶん。あ、裸の付き合いなんやからウチも脱いだ方がええよな?」
おとこ? おとこ…オトコ…男……漢ォ!?
「―――キッ「痴女やぁ! 痴女がウチに裸みせてくるぅーーーッ!」 …ふざけんなぁー!? 誰が痴女だぁっ!?」
悲鳴を上げて叫ぶのは乙女である私の役目でしょうが!? なんで見た側のあなたが珍獣見つけたみたいに指差して叫ぶのよ!?
「え? ……お宅、痴女やないん?」
「当たり前じゃない!? 何を勘違いしたらそうなるのよ!?」
「だって、ウチが見てる前で裸に……」
「あなたが覗いたんでしょう!?」
「違いないよ」
ニシシ、と笑って誤魔化す…誤魔化されるか!? 騙された、また私は騙されたの!? 紫は騙されやすいから注意しなさいって藍お姉ちゃんに注意されてたのに、また懲りずに騙されたの!?
「ところでお嬢ちゃん、ものは相談なんやけど」
「……何よ」
「ウチの後におる怖い狐、宥めてくれへん? さっきから殺気が痛ぉて……」
うしろ? 後に狐なんているわけ―――あっ!
「……紫」
「藍お姉ちゃん!」
「大丈夫か?」
「う、うん!」
「そうか……」
変態の後から、仏頂面の藍お姉ちゃんの顔が見えた。良かった、と溜息を吐いているけど、表情はピクリとも動いていない。
うぅ、心配かけちゃってごめんね…。普段から仏頂面なのに、今は眉間に皺まで寄せるまで……。せっかく綺麗な顔なのに、このままじゃ顔の筋肉が能面で固まっちゃう。私のせいで藍お姉ちゃんの顔面緊張症が加速したら申し訳なさで死んじゃうわ。
「安心しろ、紫の裸を見た輩は今から殺してやる」
「ちょ!? 藍お姉ちゃん人殺しは良くないわ!」
「そうやそうや! ウチを殺すのは良くない!」
「あなたは黙ってなさい!?」
と言うか、何で藍お姉ちゃんに殺されるかもしれないのに笑顔なの!? ここからじゃ良く見えないけど、首筋には剣よりも鋭い爪を突き付けられていると思うんだけど……。
「だが……」
「だが……じゃないの! どんなに悪い人だって、心の根っこから悪い人なんていないの。目の前の変態だって、きっと止む追えない事情があるのよ…。思い出して、藍お姉ちゃん。私たちずっと旅して、これまでもいっぱい騙されてきたけど……皆いろいろな事情があったじゃない。話してみればみんな良い人ばかりで、苦しい中でも笑顔を絶やさない人ばかりだったじゃない」
「紫……」
「だから目の前の人もそうなのよ。こんな秘境みたいなところで住んでいるのよ? ただ魔が差しただけよ」
「実は確信犯だったり。『幼女の水浴びイャッホォォォォウ!』 とか思ってたり」
「……やはり殺すしか」
「こっ、こらぁ!? 何であなたは助けようとしてあげてるのに焚きつけるのよ!?」
「性分です」
「真顔で言うな!?」
キリッじゃないわよ、キリッじゃ! 何なのよこの人!? いきなり現れて裸見られるし、藍お姉ちゃんに殺されるかも知れないのにふざけてるし! 恐くないの!? 藍お姉ちゃん、私の知る限りじゃ一番強い九尾の狐なんだけど……。
「まぁ……なんや、傾国の。あんさんにウチは殺せん。止めといた方がええ」
「…っなんで知って「紫、黙ってなさい。……貴様、いったい何者だ」
っはいはい、どーせ私はのけものですよーだ。でも何で藍お姉ちゃんが傾国の美女って呼ばれてたのを知ってるのかしら? あれって何百年か前だったような気が……。
ま、別にのけものにされても構わないんだけどね。私は闘えないし騙されやすいから。血を見たら気絶するし、扱えないほど多い妖力は暴走する。たまに人肌恋しいな~、なんてふらっと寄った村や町で騙されなかったことなんて一回もないくらいだし。唯一出来る事と言えば……スキマを開いて逃げるくらい?
……なんて足手纏いなんだ、私。涙が止まらないぞ。
「名乗る程の名はないっちゅーか、ホンマに名前は無いんやけど……。そうやなぁ、皆からは長って呼ばれとる」
「何故私を知っている」
「何でか言われたら、そら見たことがあるからや。ウチの趣味は旅でな? そんときに見たんよ。たしか大陸の……そうそう、ずっと前にあった殷の国や。あんさんは妲己とか呼ばれて―――」
「もういい。死ね」
藍お姉ちゃんの目の瞳孔が開く。藍お姉ちゃんはやると言ったらやる人だ。私は次に起こる光景から、目を瞑って逃げようとした。
「なっ―――!? 紫!」
「ひょ?」
『手を上げろ』
「だーから止めとけって言ったのに」
ところがどっこい、私を呼ぶ藍お姉ちゃんの声が聞こえてきた。なになに? なんで目を開けたら見ず知らずの人に剣を向けられてるの? なんでみんな私を囲ってるの?
「貴様―――!?」
「ウチはこうも言った。『皆からは長って呼ばれとる』 ってな。……連れて行き」
『承知』
―――うん、今がどんな状況なのかさっぱり解らないけど、これだけは解った。
私、また騙されたぁ!?
◇◆◇◆◇◆◇
~黒話~
やられた……。後でに縛られた手を握りしめながら、目の前を歩く人間を睨む。
目の前の人間は上機嫌に右手をくるくると回している。その人間に左手は無いが……こいつを相手にして勝てる確率は五分と言った所か。目の前を歩く人物からか隙なんてモノが感じられない。ただ呑気に歩いているように見えるが、それは抜き身の刀のが歩いているのと同義。触れようものなら、すぐさまその身を翻して斬り掛ってくるだろう。
そんな状況で、私の命よりも大切な紫を隣においた状況で動くことなんて出来ない。こいつはそれを知ってか知らずか……いや、既に気付いているのだろう。自身にとっても脅威と成りえる私を、簡単に破ることのできる荒縄で縛るに留めている。紫においては縛ることすらしていない。まぁ、争い事とは無縁の彼女だ、数にも数えられていないのだろう。
だが……やはり紫を一人で行かせるのはやはり間違いだったか。大丈夫、少しは信頼してなんて言われて送りだしたが、やはり一人にするにはまだまだ早かった。あの子と共に何百という長い時を生きているが、あの子は世の中の物事を知らなさすぎる。……呑気だからなぁ、この子は。
「……私たちをどうするつもりだ」
だが今は紫の可愛さについて考えている暇は無い。なんとかして此処から逃げ出さねば、紫の肌に傷がつく。
「んー? ウチらのテリトリーに入ったのはそっちやからなぁ」
「私達は貴様らをどうこうするつもりはない。直ぐにこの縄を解いて貰いたい」
「そうはいかんなぁ傾国の……。実はな? ウチは金髪が大好きなんや」
「……?」
「カキタレって言えば解る?」
「―――下衆がッ!」
クソ! 端からそういう魂胆か! なら……なら私が耐えればまだ何とかなる。未だ全ての面において未熟な紫だ。そんな子に欲情するなんてことは―――
「小さい子が大好物なんよ」
「……紫には、手を出さないでくれ。頼む、私なら何でもする」
最悪だ。本当に最悪だ。これ程までに自分が情けないと思うことがあったか? いや、ない。私にとって紫は命の恩人だ。そんな子一人守れないでどうする。
今すぐ暴れてやろうかと力を込めたが、紫を牽引する者が再び剣の柄を握った。このままでは、紫は今まで守り続けた純潔を失ってしまう。しかも最悪な形で。だが私に出来ることは何もない。……紫、至らない私を許してくれ…。
「えっと、質問いい?」
「はいお嬢ちゃん。どうぞ」
「柿は渋柿なの?」
「は……?」
「え? だって柿のたれ、柿タレとか言うタレをくれるんでしょう? だから元の柿は渋柿なのかなぁ~って」
柿のたれってあれでしょ? 柿を潰したり絞ったりしたら出てくる汁。でもあれ、タレだったのね。初めて知ったわ~。ここらじゃ柿タレなんて言うのね。まぁ辺鄙な場所だし、醤油とかの代わりなのね。
……なんて思っているのだろうな、この子は。狙っているのか天然なのか……まったくこの子には驚かされる。
「クク……アッハハハハ!! こりゃ参った! よっしゃお前ら、全員先に帰ってろ! お嬢ちゃんと怖い狐さんのために渋柿を用意しとき!」
「…長」
「大丈夫、だいじょーぶ。この子らがウチらの『関係者』 やないってのは解ったやろ?」
「しかし、長の身に何かあれば皆が悲しみます……」
「そん時はそん時よ。第一、ウチが負けるなんてことはあらへん。そうやろ?」
「……」
「宴会の準備、任せたで?」
「行こう、皆。長の指示だ」
『解りました』
……いったい、どう言うことなんだろうな。長と呼ばれた男……いや、その前にコイツは人間か? 男の匂いも女の匂いもしない。先程まで居た奴等からは男の匂いがしたが、コイツからは何の匂いも感じられない。どれだけ身体を清らかにしようが、人間には人間の、妖怪には妖怪の匂いがする。こいつはいったい何者だ? そして、何故部下らしき者たちを返して悠々と歩いている? 私は何時飛びかかっても可笑しくないのだぞ?
「ねぇ、柿を食べさせてくれるの?」
「なんやお嬢ちゃん、柿が好きなんか?」
「うん。だって美味しいじゃない」
「さよか。ウチも柿は好きや。いっぱい食べさせたるさかい、楽しみにしとき」
「嘘じゃない?」
「嘘やない、嘘やない。……ああ傾国の、あんさんに言ったのは全部嘘やさかい安心し」
「えー!? オサ、また嘘ついたの!? しかも藍お姉ちゃんに!」
「おお!? 呼び捨てとは嬉しいなぁ。じゃあもう一つネタばらしといこか。実はウチ……女なんよ」
「嘘だ!?」
しかし……思っていたより悪い奴ではないようだ。紫も楽しそうだし、付いて行ってみることにしよう。だが、いざとなればその咽喉元食いちぎってやる。それだけは覚悟しておけ。
◇◆◇◆◇◆◇
~白話~
「長、お帰りなさい」
「お帰りなさいませ、長」
「あ、長だ。おかえり~」
「みんなただいま。元気だった?」
『つい今さっき会いましたよね!?』
「おお! 今日もいいツッコミありがとぉ」
寂れて……確かに少し寂しい感じはするけど、そう言うのは駄目。失礼と言うものよ、紫。そう、言い変えてみれば少し寂れた村だ。……あ、あら?
「どうやお嬢ちゃん、寂れた村や思ったか?」
「い、いえ……少し」
「はは! 正直でええ! でもな? ウチらの村じゃ、住んでるもんはみんな家族なんや。これほど温かい村はそうそうないで?」
うん、それはそう思う。みんな笑顔だし、オサも慕われてる。子供は数えられるくらいしか居ないみたいだけど、みんな同じ顔をして元気そうに働いて……同じ顔!?
「みんな家族なんよ? だからみーんな同じ顔。どう? 素敵やろ?」
「そ、そうね……」
バッと髪を揺らして振り返ると、オサは私が何を言いたかったのか理解してたみたい。すぐに答えを返してくれたけど……これってそう言うことなのかなぁ…。家族で家族を増やして村が出来たってことでいいのかしら…。でもオサ、そりゃあこんな辺鄙な場所じゃないと住めないわよ。家族だけで新しい家族をつくるだなんて、人が来れる場所じゃ出来ないもの。
「よっし我家に到着っと。…お、ちゃんと柿も置いてくれとるやないか。ほれお嬢ちゃん、柿喰え」
「わぁ! ありがとうオサ!」
そんなこんなで周りを見ながら歩いていると、オサの家に辿り着いた。中に入るなり私の目を奪ったのは、山のように詰まれた沢山の柿。これ、全部食べていいのよね!? 首がねじ切れるほどの勢いで藍お姉ちゃんを振り返ってみると、相変わらずの仏頂面で私を見ていた。……何も言わないってことは、大丈夫ってこと。山の神様に感謝しつつ、私は柿の山に突撃した。
「……貴様、いったい何が目的なんだ? 見た所、お前達は余りにも違い過ぎる。こんな秘境とも呼ばれる場所で生活を営んでいるのに、何故私達をここまで連れてきた?」
藍お姉ちゃんが何か言っているけど、私には難しいことは解んないから丸投げしておく。無駄に口を出さないほうが邪魔にならないだろうし、藍お姉ちゃんは私のことをちゃんと想ってくれているから任せておいても大丈夫。
それよりも次々と運ばれてくる料理の方が私にとっては重要だ。さっき見た人……かどうかは解らないけど、村の人がいっぱい魚やら木の実やらキノコやらを運んで来てくれる。私、全部食べられるかなぁ……。
「そうやなぁ……気に入ったから、かなぁ」
「……私は真面目に聞いている」
「ウチも真面目やって。このお嬢ちゃんが気に入った。あんさんと同じ理由や。あんさんも気に入っとるんやろ? 今でも、何かあればすぐに庇えるようにしとる」
「……」
あ、このキノコしってる。松茸ってやつでしょ? 香りは良いけど、味はそれほどなのよね。
「ウチらの村はちょいと特殊なんは解ってるやろ?」
「当たり前だ。同じ顔ばかりの村など在って堪るか」
「酷い言い方やな。まぁええ、それについてはウチもそう思う。それでや、ウチは家族にお嬢ちゃんと一緒にいて刺激を受けて欲しいと思ってる」
「……閉鎖された村だからこそ、か?」
ウマ、焼き魚ウマ。ちゃんと醤油まであるし、オサの村を舐めてたわ。後で謝っておかないと。
「流石傾国の、頭の回転は早いな」
「その名は好かん。今の私は藍だ」
「ウチにとってのあんさんは傾国の、や。まだあんさんのこと良く知らんからな」
「……紫をどうするつもりだ」
「何もせん。出ていくも良し、しばし居座るのもよし。決めるんはお宅らや」
「……ん?」
なに? 二人して私を見て。言っておくけど、柿はあげないわよ? 他の奴なら可。
「お嬢ちゃん、少しの間ここに居る?」
「……藍お姉ちゃん?」
「紫が決めなさい。私は傍にいるよ」
「…柿って、まだあるの?」
「……決まりやな。それにしても……ホンマ末恐ろしいわ、このお嬢ちゃん。絶対大物になるで」
「当たり前だろう」
なんだか解らないけど、私はこのヘンテコな村に少しの間で厄介になるみたい。
とりあえず壱話更新じらいです。3日と言う何とも早技ですが、皆さんの反応が怖い……石投げないで下さいお願いします!? 原作ガン無視の所もありますので、賛否が分かれるなぁ…と溜息しか出ませんorz とりあえずテストの形で壱話あげました。駄目なようなら……orz 手が無いです。消してクライマックスに行ってまいります。
何で藍がお姉ちゃんなんだ? その前に何で藍がいるの? 白面金毛九尾の狐って平安じゃないの!? A.九尾の狐=妲己設定にしました。何故お姉ちゃんかは次話くらいで。
『あんさん』 ってなに? お前と同義です。お前さんにするか悩みました。
その前に関西弁NGなんですが? そう言った方が多ければ、標準に戻しますので御一報を。ケビンの時よりもパワーアップした関西弁なので、解りにくいと思いますので…orz
関西弁NGとか、こんな紫は嫌だ! などありましたら御一報下さい。一緒に考えましょう(爆) 妄言は置いておいて、何か別の案を考えたいと思います。大和との最終決戦の時に『実はこうだんだ!』 といった感じに、出来るだけ解りやすい形にするとか考えてます。
それとご要望がありましたので、再び質問コーナーを設けたいと思います。ここまで来たのですから、もう何でも答えます。どんと来いですよ。むしろ来て下さいorz もしかして伊吹伝続くの? だけは駄目ですよ? そこはお願いしますorz
それではまた次回の後書きで