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東方伊吹伝  作者: 大根
終章:終わりは始まりの桜
155/188

焦らない、焦らない


パコーン パコーン。太陽が真上に近づく時間帯、魔法の森に心地よい音が響き渡る。

両手で握りしめた斧を振り下ろし、薪を真っ二つに割る。優に百回以上は繰り返したであろう行為に、額には自然と汗が浮かぶ。辺り一面には木・木・木。真っ二つにされた薪から、これから真っ二つになるであろう大木がモノを言わずに並べられている。


「……ルーミアちゃん、あと何個?」

「解らないよ。でも見た感じ、あと千回以上は斧を振り下ろすんじゃないかな?」

「うげ……。ね、ねぇルーミアちゃん? 魔法使ったら駄目かな?」

「駄目なのだ。それにアリスが許さないと思う」

「シャンハーイ」

「はいはい、解ったよ上海。ちゃんとやるって」


僕は今、アリス宅の前で、アリスのために薪割りをしている。もちろん自分からなんて殊勝な心がけがあってやってるわけじゃない。無理やりやらされているのだ。しかも魔法と気の使用を禁じられた状態で。面倒ったらありゃしないよ。まったく、魔力糸や気を纏った手刀が使えたらどれだけ楽になることやら。


そう嘆きながらも薪割りを続けていく。百や千くらいなら身体的にはまったく辛くないけど、同じ作業ばかりだと精神的に辛い。


「なんでこうなったかなぁ……ふんっ!」

「怒髪天を衝く。食べ物の怨みは怖いのだ。ご主人さまも良く覚えておいたほうがいいよ?」

「つい先日から、現在進行形で身に憶えさせられてるよ……っと!」


こうなった原因は先日の宴会で拝借したあのワインだ。アルフォードと話すということで舐められてはいけないと思った僕は、良いお酒を探していたんだ。でもここのお酒は僕に合ってもあいつには合わないだろうから、選ばれるものは自然とワインに限られる。


そのとき僕の頭を過ったのは、宴会前に見たアリスのワイン。アリスに少し、ほんの少しだよ? 借りようと思ったんだ。でもアリスも相当酔ってたし、その時はワインを横に置いてここのお酒、日本酒をちびちび飲んでた。だからこれ幸いとワインを『借りて』 行った。


ちょっと借りるつもりだったんだけど、それがまた美味しいの何の。気付けば中身はスッカラカンになってた。流石に拙いと思ったけど戻せるものでもないし、一緒に呑んでいたアルフォードにはワインの礼まで言われる始末。これは引き返せないと思った僕は、ワインの中身を詰め替えてそっと返しておいた。


で、バレた。

なんでも宴会が終わったあと、口直しに少しワインを呑んだ時に気付いたらしい。ワインの善し悪しが解る人なんてここじゃ限られてるし、しかもアリスがワインを持参したことを知ってたのは僕だけ。中身を安物(アリス曰く) にすり替えられるのも僕だけということで、イの一番に疑われた。

知らぬ! 存ぜぬ! 吾輩ではござらぬ! と突っぱねたけど、だんだんと目のハイライトが失われていくアリスに流石に悪い気がしたから正直に話すと、こうなった。


「肉体的奉仕活動、ねぇ。これ、もう一年分は過ぎたんじゃないの?」

「アリスのノルマにはまだまだだけどね。でもご主人さまのことだから、肉体的奉仕活動のこと勘違いしたんじゃないの? いや~んな奴隷とか」


ニコッと笑いながら語りかけてくる君。いったい君の中じゃ僕はどういった感じで見られているのか甚だ疑問だよ。


「ないない、アリスに限ってそれはない。それに、確かにアリスは意地悪だけどそんな奴じゃないよ。それに男に興味なさそうだし」


僕からしたら願い下げだ。確かに人形みたいに整った顔をしてるし、一つ一つの行動も上品でご飯や紅茶も美味しい。でも性格がキツイ……と思う。里の人と話してる時はにこにこしている癖に、僕が相手だとキリッとなる。僕はお淑やかな慧音さんみたいな人が好みなんです。


「へぇ、なんで男に興味がないと思うのかしら?」

「そりゃあ好きなのは人形だろう……し…?」


ヘーイ、ちょっと待ってくれ。僕は今だれと話をしているんだい? ルーミアちゃん? 彼女はニヤニヤして僕を見てるだけだ。じゃあ斧? あ、薪か。切られた薪と話をしているんだね! ここに生息してる木はよく喋るし!


「好きと言うより、研究対象なだけよ。それに私だって男に興味くらいあるわ。それより大和」

「はい! なんでしょうかアリスお譲様!」


振りかえらない! むしろ振りかえれるか! 真後ろにいるであろう人を想い浮かべるだけで泣き顔は必須だよコンチクショウ!

でも振り向く。振り向かないともっと酷いことをされるだろうから。でもアリスの顔を見たら身体が震えだす。けど怖いんじゃない。決して怖いわけではない。ただ……そう、厠に行きにげたくなっているだけに違いない。


意地悪・・・な私から追加命令を下すわ。ルーミアを連れて、里で一番いいワインを買ってきなさい。今すぐ」

「お、お譲様? 代金は……」

「貴方のを使いなさい、このワイン泥棒。あれ一つで一年は暮らせたのよ? まさか……断るとは言わないでしょうねぇ?」

「謹んで務めさせてもらいます! sir!」


超必殺負け犬根性舐めんな。いま土下座したら、きっと土下座で穴が掘れる。


「私は女よ、ゴミクズ」

「ma'am yes ma'am!!」

「ルーミア、しっかり見張ってて頂戴。今晩は一緒に呑みましょう」

「任せてアリス!」


ご主人さまを売るのか、ルーミアちゃん!?


「最近冷たいから丁度いいのだ。さ、ご主人さま行こ?」


ええい、こうなったらうんと高いの買って、アリスを驚かせてやらぁッ!

背中にぴったりと張り付いたルーミアちゃんの重みを久しぶりに感じながら、人里へと飛ぶ。きっと財布の中身も飛ぶ。


……フ、明日は山で猟だな…。











「―――さて、いい加減出てきたらどう?」

「……悪い、どうもあいつが居るところには顔を出しにくてさ」

「この間で貴女の誤解は解けたのでしょう? ならそれでいいじゃない。それに大和だって、貴女が居たことに気付いていたわ。ま、気付きながらも捨て置いたのでしょうけど」

「……」

「今日は何の用?」

「い、いや、今日はアリスに用じゃなくて……」

「じゃあ大和に? 無駄よ、きっと相手にしてくれないでしょうから」

「……や、やっぱりか…」

「当然じゃない。仮に私が大和だとしても、貴方が来たら無視するわ」

「…私はどうすればいいんだ?」

「自分で考えなさい。言っておくけど、私を巻き込んで有耶無耶にしようなんて考えないことね。きっともっと怒るわ」

「…わかった。じゃあ今日はこれで…」

「ええ。またね、魔理沙」





◇◆◇◆◇◆◇




「ご主人さま、御汁粉食べたい!」

「ん~、解った。じゃあ寄ろうか」

「わかったのだ!」

「……ルーミアちゃん?」

「なんなのか?」

「ご機嫌だね」

「えへ~」


お汁粉は美味しいからねぇ。餡子は嗜好品で値が張るけど、最近はあまり会わなくなったお詫びも込めて贈らせて貰おう。


「すいません、お汁粉一つ。あと団子とお茶も二つ貰えますか?」

「はい、少々お待ち下さい」


通りに置かれてある椅子に座ると、店員さんが店の中から出てきた。注文をすませると、店員さんはパタパタと中に入っていった。


「うーん……」

「ご主人さま、どうかした?」

「いや、僕って昔はよく人里に来てたじゃない? だから里を訪れた時には誰にでも声を掛けられてたんだけど、今はちょっと寂しいなぁ……なんて」

「仕方ないよ。イチロー達だってもうだいぶ前に逝っちゃったし、時代は変わるもん。それにご主人さまってばおチビに付きっきりだったし」

「ぅ……ま、まぁ必要なことだったし?」

「そーなのかー?」


じとー、と半目で睨んでくるルーミアちゃん。

あれか? 僕が霊夢に付きっきりなのが駄目だって言うのか? でも僕が小さい時なんて、どこに目を向けても母さんが視界に入ってたんだよ?


「親馬鹿は困るのだ。そうだ! 親馬鹿と言えばアレだけど」

「アレだけど?」

「萃香、いま地上にいるよ? って言うよりも、里の前で血涙流してる。私が離れるまでご主人さまに近づくな! って言ったから」

「……なにゆえ?」

「ご主人さまが死に掛けたからだって。萃香もアリスみたいにカンカンだったよ? 蝙蝠退治だ、物理的家庭訪問だー! なんて言って大変だったんだから。それでも地下に引き籠ってグダグダやってた駄鬼には変わりないから。だから数日は来るなって言って聞かせてあるんだ」


それじゃあ次に会う時は……うわぁい、暴走した母さんに会えるんダー。ウレシイナー。



「ってちょっと待った。何でルーミアちゃんが僕より先に知ってるの?」

「私達はそれなりに仲良いんだよ? 確かご主人さまが倒れてから三日目だったかな、ボロボロの萃香が血相変えてやって来たの。それで私が説明すると……」

「……解った。解ったからそれ以上言わないで。…苦労を掛けたね……」

「まったくなのだ。ちなみにそろそろ我慢の限界みたいだよ? 目を凝らしてよーく周りを見て」


じぃ、と周囲に目を凝らす。すると薄く、これ以上ないというほど薄く伸ばされた母さんの妖力が、僕の周りを囲んでいた。

しかも僕が見つけてもまったく逃げていく気配がない。むしろ見つかったことに対して喜びを表しているかのように、薄くなったり濃いくなったりしている。……なにがしたいんですか、母さん…。


「愛されてるね」

「愛が重い……」

「迷惑に感じてるんだったら、はっきり言ったほうがいいと思うよ?」

「……ルーミアちゃんは『ヤンデル』 って知ってる? 愛するあまり、相手を殺してしまうんだって。外じゃ流行りらしいよ」

「……私が悪かったのか」


「お汁粉と団子、お茶をお持ちしまし―――お客様?」


二人仲良く空を見上げて笑っていると、店員さんが品を持って来てくれた。僕たちが肩を並べながら薄ら笑いをしていたのが気になったのだろう、大丈夫ですかと心配されてしまった。


大丈夫ですよ、と軽く返した所で団子を齧る。うん、美味しい。お店の人は代わっても味は変わらない。なんだか嬉しく感じるのは、僕が精神的に老けた証拠なのだろうか。



「あら……大和ではないですか。珍しいですね、休憩中なのですか?」


最近よく聞く声だな、と声のした方向を見ると、大きなリュックを背負った紅魔館のメイドがいた。きっとあの背丈の三倍くらいにまで膨らんだリュックの中には、沢山の食糧なんかが詰まっているのだろう。だけどそれはいい、別に驚くことじゃない。驚いたのは生意気なメイドが『大和様』 なんて言う訳がないことだ。



「……様付けとか、咲夜ちゃんは熱でもあるの?」

「仕事中ですので。あと、認めて下さったのなら『咲夜』 とお呼び下さりやがれ」

「地が出てるじゃないか。減点1」


よっこいしょ、とメイドの発する言葉とは言い難い掛け声とともにリュックを地面に降ろす。地面に落ちたとき、ボスッと鈍い音が響いた。



「メイドって、力持ちなのか?」

「どうでしょう? 私はそこの御方に嫌と言うほどやられましたので、それに対抗しようとするうちに力持ちになってしまいましたわ。ところで貴女は?」

「ルーミアだよ。ご主人さまとは旧知の仲で、腕は千切れるほど愛し合ったこともあるんだよ?」

「紅魔館でメイドをやっている十六夜咲夜です。……そこの鬼畜野郎とは腐れ縁ですわ」

「はいそこ黙っておこうか。それとも黙らされる方が好みかな?」


鬼畜だなんて酷い言い草だ。まるで僕が幼女趣味のペドフィリアみたいな顔しやがって。あれか? あれなのか? 僕が事あるごとに年下好きだと弄られる最大の理由はルーミアちゃんなのか? ……この際、封印解いた方がいいのか…。



「冗談ですよ。―――すみません、私にもお汁粉貰えますか? お代は一緒で」

「はい、少々お待ち下さい」

「……咲夜ちゃん、なに人のお金でお茶しようとしてるの?」

「『咲夜ちゃん』 はまだまだ子供なんです。……まさか大人が子供にお金を払えとでも?」

「あはは! ご主人さま、これは一本取られたね!」


なんて薄情なメイドなんだ、この子は。澄ました横顔をしているけど、口元が吊りあがって良い気分だってか? またスカート捲りするぞコノヤロウ。



「そう言えば紅魔館の修理はどうなってる? まだ続きそう?」

「解りやすい話題の変え方ですね」

「……」

「睨まないでくださいよ…。…まぁ先輩を立たせるのも後輩の役目ですから、良いとしましょう。そうですね、紅魔館の修理はほぼ終了してます」


へー。まだベッドで寝てるとき、パチュリーが基礎から建て直しだとか言っていたのにもう出来たのか。



「大暴れだったもんね、あの時のご主人さまたち。私は結構離れて見てたけど、魔力や妖力がこーんなに感じ取れてたし」


隣で手を大きく広げて表現をしているルーミアちゃんは本当に可愛らしい。メイドなんかとは比べ物にならないぞ。本来なら身体も妖力も大きいはずなのに、この姿を見慣れてしまってからはこちらが本来の姿なんじゃないかとすら思えてくる。だって小さくて可愛いし? 小動物的な愛らしさって言うのかな? たぶんそれだ。



「その結果が紅魔館半壊です。まったく、修理する私達の身にもなって貰いたいですわ」

「それは素直に悪かったと思ってる」

「ならいいです。……それはそうと、今回はお譲様からの伝言も預かっております。『今夜から数日、紅魔館で約束を果たしてもらう』 だそうです」

「あー……あったなぁ、そんな約束」

「あったなぁでは困ります。引っ張ってでも連れていきますからね」

「はいはい、了解しましたよ」

「ご主人さま、アリスは?」

「ルーミアちゃんにワインを渡して逃げる。もう十分働いたはずだし」


霊夢がレミリアに勝ってくれたお陰で婿入りはなくなったけど、数日は紅魔館に居ないといけない約束だったからね。何をやらされるのか、何をやられるのかは知らないけど、とりあえず約束だけは果たしに行かないと。アリスには悪いけど、一番良いワインを贈るからそれで許してもらおう。



「でも……」

「うん? どうかした?」


何か言いかけてとまった咲夜ちゃんにそう聞くと、『あっ』 と声を上げて口を手で覆った。どうやら言おうと思って言葉にしたのではなく、自然と口から出てきてしまったようだった。



「なになに? ナニかあったの? それともナニかされたのか!? ルーミアお姉ちゃんに言ってみてよ!」

「……初めて容赦なく殴られました」

「違うよね?」

「ぅ……」

「ほらほら、お姉ちゃん怒らないから。ね?」


ほぅ……お茶が美味しいねぇ。心に染みるねぇ。目の前で怪しい雰囲気をだしてる二人を肴にお茶を飲むのも乙なものだねぇ。……いい加減煩いけど。じわりじわりと手をワキワキさせながら咲夜ちゃんに近づいていくルーミアちゃんに、さしものメイドも若干引き気味だ。お二人さん、その辺にしておいた方がいいよ。通行人の人も変な目で見てるから。……こらそこ、鼻息粗くするんじゃありません。



「その……凛々しかったと思います。普段がああなのに、あんな一面もあったんだなと」

「カッコ良かったでしょ? 血がぶわーって吹きだして、美味しそうな臓物が見えてるのに立ち向かう姿。う~……ッ! 私ももう一回チャンスが欲しいなあっ! 次は絶対に美味しく頂くよ!」

「あ、それは確かに。あの傷の上からナイフを突きたてたら流石に死ぬだろう、などと考えおりました」



今一度、僕は己の身に振り方と安全について深く考えた方がいいかもしれない。

咲夜ちゃんのお汁粉が届くまでの短い間、僕はそう思った。






◇◆◇◆◇◆◇






『酒』 と大きく書かれた暖簾を潜った先には、酒好きにとっては天国のような景色が広がっていた。

見渡す限りの酒、酒、酒。古今東西、様々な種類の酒が置かれてある。もちろん僕が好きなワインも、母さんが好きそうな日本酒もここでは取り扱われている。


僕も普段はここで買って、今は香霖堂と名前を変えた家に結界を施して隠していたこともある。それは遊びに来た妹紅とかに力ずくで破られいたのだけど、今となっては良い思い出……じゃない。金返せよあの焼き鳥。


金を返せと言えばあれだ。慧音さんの醜態を初めて見た宴会での借金は、霖之助くんに返してもらっている。脅したわけじゃないよ? 僕に渡すはずだった家の代金をそっちに回しているだけ。それに霊夢を養うために、時々は前みたいにタケノコを売ってるからそれなりに手持ちはある。手持ちはあるのだけど……



「まけてください」

「無理です。びた一文まけれません」

「おじさん、流石に六円はない。数ヶ月は生活できるよ」

「一番良いモノを、と言ったのはお客さんじゃないですか」


それを考えてもふざけた値段だよこんちくしょう。財布の中身が丁度空っぽになる値段じゃないか。霊夢に生活費は渡してあるからアレだけど、僕の小遣いは全部吹き飛ぶ。全部だぞ!


どうにかしてまけてもらはないと。いや、いっそのことグレードを下げて……。いや駄目だ駄目だ、それはすぐにバレる。ルーミアちゃんもこの場にいるし、アリスの舌は肥えてるからね。

なら安物を何本か買って……。いや、それも駄目だろう。どうすれば……ってそうだ! 閃いたぞ!


「咲夜ちゃんの能力ならヴィンテージ・ワインくらい作れるよね?」

「作れますよ。紅魔館のワインも私が管理してますから」

「モノは相談なんだけどさ「嫌です」 ……うぉい」

「私が手を貸す義理がありません。それに大和さんの能力でも出来るんじゃないですか?」


…それが出来たら世話ないよ、とは口が裂けても言えない。馬鹿にされるから。僕の能力は『先を操る』 だけであって、『ヴィンテージ・ワインという結果』 は作れても『物の時間を進める』 ことなんて出来ない。実を言うと、今回作った魔法の一つとの重ね合わせでたぶん・・・できるだろうとは思うけと、こんな事のために使いたくないと言いますか…。


「ご主人さま」

「解ったよ……。はいおじさん、六円」

「まいどありがとうございました!」


うへぇ、財布の中身が空っぽだ……。今回の異変で頑張った霊夢に何か買ってあげようと思ってたのに、これじゃあ何も買えないよ。トホホ……


「じゃあ私はアリスの所に帰るね!」

「気をつけてねー」


酒屋を出て直ぐ、ルーミアちゃんはワイン片手に飛んで行ってしまった。残されたのは特大リュックを背負ったメイドと、懐が寒くなった僕だけ。今からは紅魔館に行って、数日厄介になるのだろう。霊夢には数日帰れそうにないって連絡を入れないといけないな……




そう、思ってた―――




「――――ッ」

「これは……!」


突如として、僕らを包み込んだ濃厚な妖力。あまりの強大さに、隣の咲夜ちゃんはカタカタと震えだした。僕も右に同じだ。頭の天辺から足の爪先まで、まるで舐めまわすかのような感触が全身を襲う。道を行き交う人は、そんな僕らを不思議な様子で見ている。

彼らは気付けないのだ。いや、本当は気付いているのかもしれない。しかしあまりの力の大きさに感覚が麻痺でもしていまっているのか、それとも人間という種の自己防衛がその存在を認識外へと追いやっているのかは定かではない。彼らは誰一人としてこの圧力に気がつく者はいなかった。


しかし、しかしである。『恐怖』 という感覚で捉えることは出来ずとも、目で見た真実は誰の前でも平等だ。そしてその情報は脳へと送られ、認識する。認識させられる。そして運悪く、今日この日、この時間この場所にいた者たちは一人、また一人とある方向を見つめては言葉を失っていった。


一歩、また一歩とその人物が足を進めるにつれ、人は道を開け、あるいは腰を抜かしていく。誰もが目の前の光景を信じられないのだ。なぜならその人物は幻想郷ですら姿を見せなくなった鬼であり、



「大和ーーーー!!」



何より僕の母親なのだから。



「……やっば」




2月半ばと言っておいて、二月の初めになってしまったじらいですorz ツッコミを入れるのならオラに学力をわけてくれー!

そう言えば何日前に投稿したかなー、と思ってPCを開けば、まだ一週間しか経っていない事実に驚愕でした。私の中では2週間のはずだったのに……。なんかもう、書けないやら何やら言わない方がいいかもしれませんね(笑) どうせ守れないんですから…はぁ…。のんびり気ままに、やりたいようにやらせて貰います(殴ってやって下さい)


今回から終章突入です。終章は長く―――とかも言わない方がいいかもしれませんね(笑) 実際どうなるか書かないと解りませんし。


次回は伊吹親子。皆さんお待ちかねのSuicaルー…ゲフンゲフン。失敬、冗談です。他は色々と。そろそろ完結への準備もしないといけません!


最後にお知らせです。マチュピチュさんの作品『目が覚めたら東方の世界にいた』 の最新話に大和がゲスト出演? とりあえず出てます! 歪みねぇです! 一度見て、笑ってみてくださいw

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