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東方伊吹伝  作者: 大根
前章:狂言紅魔郷
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誰も彼もが猫かぶり



~紅魔館~



「レミィ、報告よ」

「何か」

「霊力と魔力の移動を確認。おそらく大和と巫女よ。真っ直ぐここを目指している。あと大和が読んでいた通り、もう一つの魔力も確認したわ」

「そうか」



フッ、と唇の端を吊り上げて哂う。漸く……漸くこの時がやってきた。上座に座りながら私は今までの出来事を振り返っていた。



思えば……長かったものだな。大和を夫して我が一族に迎え入れる時まで本当に長かった。運命の出会いから五百年、想いを伝えたのは数十年前。そして今日この日、私は生涯の伴侶を手に入れる。それも嘗て苦渋をなめさせられた巫女の系譜を下して、だ。



「妹様、お譲様の様子が何時もと違うのですが…?」

「あぁー、当主モードで無駄に虚勢を張ってるだけだから放っておいていいよ。どうせヤマトを見たら元通りになるんだから。……可愛いでしょ?」

「愛くるしいですね」

「でしょ? だから咲夜も何時も通りポカしてもいいんだよ? その方が可愛いし、弄りがいがあるから」

「もっ、もう下手はしませんよ!」



フッ、煩い外野だ。新しい当主の来訪を待ち望むのは構わないが……まぁいい、この神聖な決闘に水を差さない限りは何も言うまい。



「それよりもパチュリー、歓迎の準備はどうなっている?」

「問題無し。適当に暴れるように言ってある」

「ならいい、お前たちも美鈴のように配置に付け。私は此処で巫女を待つ」



今宵、紅魔館を訪れる運命を持つ者は全部で三人。大和、博麗の巫女、そして招かれざる魔法使い。歓迎の仕方は各々に任せてあるが、当たる相手だけは私が決めさせて貰った。


大和には咲夜が当たる。相性は決してよくないが、咲夜の成長が見るためには丁度いいだろう。そしておそらく突破されるだろうが、その後にはフランが詰めている。流石の大和も二人続けて襲撃を受ければ大人しくなるはず。


巫女には私が当たり、完膚無きまでに潰す。前情報によると、その姿はあの勝ち逃げされた巫女の生き映しらしい。……個人的には非常に楽しみだ。現巫女には関係ないことだが、私自身のけじめだけはきっちりと果たさせて貰おう。


招かれざる客は……どうでもいい、眼中にないからな。美鈴とパチェの好きにするといいさ。大和からも何か頼まれているようだし。



「ねぇ咲夜、パチュリーは『適当』 って言ったよね?」

「その通りですわ。私には万事適当と聞こえましたけど……お譲様はお気づきになられませんね」

「仕方ないなぁお姉様は。ヤマトのこととなると周りが見えないんだから」

「妹様はどうなのです?」

「ん~……秘密!」




しかし懸念もある。お父様が何やらこそこそと動いているのだ。邪魔をするつもりはないのだろうが、大和を襲う可能性があるかもしれない。だがもし大和に怪我を負わせてみろ、『お父様なんか大っ嫌い!』 と言って出て行ってやる。そのままハネムーンよ。



「さぁ、盛大なパーティーと洒落こもうではないか!」



大和。私、五人は欲しいわ。頑張るから!






◇◆◇◆◇◆◇





「……」

「……」

「……」

「……へっぷしゅッ、ぅー流石に空は冷えるな…」

「……」



無言。それは物を言わないこと。紅い夜空を駆け抜ける僕たちの間に会話はなく、まさにそれだ。普段からも事務的な会話しかしないのに、長い間一緒に居るからと言って会話が成立するはずもない。昔みたいに霊夢が話をしたがっている雰囲気を作らないし、僕からなんて尚更だ。自分で撒いた種とはいえ、互いに何も発しない無表情のまま寂しい空を飛ぶ。




少し居心地の悪い空気の中を飛び紅魔館まであと僅かと言ったところ、僕たちは紅魔館付近の湖まで来ていた。しかし何時もと様子が違い、本来なら月の姿を反射しているはずの水が凍っていた。


確かこの辺りは氷の妖精がよく遊んでいたはずだ、もしかしたらあの子の仕業かもしれない。そう思い、辺りを見渡してみると小さな人影が行く手を阻むかのように湖の上で静止しているのが見てとれた。しかしこんな夜更けに妖精が遊んでいるはずは…、などと考え、確認するよりも先に声が上がってきた。



「止まれー!」

「止まるのか~」

「と、止まるのは二人だって! 止めようよ、勝てっこないって!」



両手を広げ、夜空に浮かんでいる影の正体はやはり考えた通りの人物だった。しかし、その隣には僕の友人の姿も見てとれたが。


現れたのは悪友であり、影で支えてくれるルーミアちゃん。破天荒な氷の妖精チルノと、その友人の大妖精。二人は行く手を遮るように手を広げ、大妖精がそれを止めようと必死になっている。



「誰よあんた達。邪魔する気?」



この異変を解決することが目的の霊夢がそんな二人にいい顔をするわけもなく、御札を手に取り威嚇するように構えた。そんな霊夢の成長を嬉しく思いながらも、僕は悪友の奇行に頭を抱えたくなっていた。にこにこと笑いかけてくる姿は何時も通り可愛げがあっていい。でも今回は、霊夢のこれからが懸っている今回だけは絶対に邪魔だけはしないでくれと頼んでいたのだ。にも拘らず、この場に妖精たちを引き連れて現れた。


それなのにこうして現れたということは、何か外せない理由でもあるのだろうか? でもそうなると、その理由はきっと大きいに違いないと思われる。普段の行動から奇行ばかりなだけに、いったい何を企んでいるのか気が気でならない。



「あれれ? やっぱりおチビは憶えてないのか~?」

「はぁ? あんたみたいな奴を見るのは初めてね」

「むぅ、酷いおチビなのだ。あんなに可愛がってあげたのに……。ね? ご主人さま」

「はぁ?」

「……何を言っているのかな?」



本当に頭が痛くなってきた。鉄仮面を装っている額を揉みながら、それはもう盛大な溜息を吐いた。いや、本当に何を言っているんだろうか、この小悪魔は。霊夢の前では秘密にすると約束したことをこうもあっさりと……。いったい何がしたい……いや、何を企んでいる?



嘗て敵だったころがあるだけに、僕の心は少しづつ不安に苛まれていく。なぜなら今の姿は仮初、本来は僕よりも強く頭の回転も速い大妖怪だ。油断なんて出来るはずもなく、彼女が本気になれば紅魔館に辿り着くことすら危うくなる。それに最近は会わない日がほとんどだったためにその動向を知らない。それが余計に不安感を煽ってくる。



「ルーミ「おおっと! アンタの相手はあたいよ!」 ……チルノ?」

「フン! 前のあたいとは違う所を見せてあげる! それにあたいがどれだけ強くなったか見てもらわないとね!」

「ご、ごめんなさい伊吹さん。チルノちゃん、成長したのを見せてやるんだって聞かなくて……」



……どうする? どうやらチルノは僕が狙いみたいだ。となると大妖精もそうなるはず。チルノは端から霊夢を見ていないし、当の霊夢はルーミアちゃんと睨み合っている。二人を同じ空間に居させたくないけど、チルノが僕を逃がしてくれることもないだろう。



…よし、先にチルノを沈めよう。その後でルーミアちゃんに真意を問う。



「いいよ、チルノ。相手をしてあげる。ただし、スペルカードルールは解ってるね?」

「もちろん! よし、じゃあ付いて来な! あたいの実力、見せてあげる!」



そう言い、霊夢たちから距離を取るように飛んで行った。あまり二人から離れたくはないんだけど……この際仕方が無い、すぐに帰ってくればいいだけのことだ。



「霊夢」

「なに?」

「油断は禁物だ」

「言われなくても」



霊夢の背中に一抹の不安を抱きながらも、僕はチルノを追って行くことにした。霊夢を信じよう、この子ならきっと上手くやるさ。僕もすぐに終わらせて帰ってくるから、それまで頑張ってくれ。





◇◆◇◆◇◆◇





「ちぇ、遅れちまったか。まったくこの私を差し置いて弾幕ごっこなんて羨ましいぜ。残念と言えば残念だけど、まぁそこで時間を喰ってればいいさ。一番槍は私が頂いて行くからな」



数もほぼ同じ、私が手を貸すまでもない。そう判断した私は、戦闘を開始した二人を遠目に先へ進むことにした。



あの二人が気にならないかと言うと、そんなことはない。霊夢とは友達? のような関係だし、ライバルだとも思っている。アイツが負けるなんてことはあり得ないだろうが、それでも気になるものは気になる。


それよりも気になるのがあのへっぽこ野郎だ。あの時は平身低頭もかくやと言わんばかりの対応をしていたにも拘わらず、今回は自ら進んで闘いに行った。霊夢の前だから良いカッコをしたいのか、それとも引くに引けない状況だったのか。遠目に見ていたから会話は聞き取れなかったが、まぁ雑魚はすぐに堕ちるだろうな。その方が邪魔者もいなくて空が静かでいい。



「…にしても紅い館だな、これ。二人が目指してたのも此処なのか?」

「その通りです」

「おっと、いきなり案内人発見だな。幸先がいいぜ」

「ようこそいらっしゃいました、若き魔法使い。お帰りは反対側です」



デカイ館にデカイ門。そして行く手遮るように待ち構えているデカくて紅い妖怪。これだ、私はこう言うのを求めていたんだ。魔法を使って悪を薙ぎ倒していくシチュエーションを。誰だって一度はヒーローに憧れて、あんな風になりたい、あんな風でありたいと思うんだ。


でも現実にはヒーローなんか居ないって、ただのおとぎ話だけの存在なんだって気付いてしまう。そしてそれに気付いた時に、信じていた気持ちを粉々に砕かれるんだ。結局、誰もが憧れる存在なんてありはしないって。



だから私がヒーローになりたい。いや、ヒーローになるんだ! 誰もが憧れるヒーローに!




「ブチのめしてやるぜ!」

「気合は十分……でも実力が伴っていなければいけませんよ」



さぁ行くぜ、私の記念すべき初陣だ!





◇◆◇◆◇◆◇





「どうしたどうしたー!?」

「なかなかどうして、楽にやらせてくれない……ッ!」

「頑張って! チルノちゃん!」



大妖精の応援を背に、チルノはその弾幕の数を増やしていく。



開戦から数分、僕は未だにチルノを堕とすことが出来ないでいた。放った魔力弾や気弾がチルノの放つ弾幕と衝突して弾ける。数こそ僕の方が多く放っているが、次の闘いを見越した僕では色々と足りない物が多い。


それは元々僕が保有する魔力であったり、気であったり。魔力は魔法に全力を注ぎたいと考えているし、気はこれからあるであろう接近戦のために残しておきたい。だから本来なら直ぐに片が付くはずの闘いが長引いてしまっているのだ。




「アンタ本気だしなさいよ! 今のアンタに勝っても全然面白くないわ!」



確かに全力には遠いけど、それでも真面目にやっている。だからこそ焦りが募る。楽に勝てると思っていた相手にこれほど時間を喰われるなんて……。次を見越したはずの闘い方が逆に仇となったか。


霊夢の事も気になるし、これ以上時間を掛けるわけにもいかない。此処からは全力で行かせてもらおう!



「目つきが変わった! 『凍符-パーフェクトフリーズ-』」

「スペルカードか!?」



質、量、速度。どれをとっても今までの通常弾とは比べ物にならない……が、所詮は妖精の放つ弾幕。大した脅威には……




「止まれぇ!」

「なッ、止まった……凍ったのか!?」

「フフン! 驚いたでしょう!」

「驚いたけど、弾幕ごっこで弾を凍らせてどうするつもりなんだ!?」

「……あたいったらサイキョーね!」

「照れ隠しか!? 照れ隠しなんだね!?」




弾幕が止まったせいで、潜りぬける隙間が極端に狭くなっている。ならば、と魔力糸を用いて弾を弾いていくと、目の前から更に次の弾幕が迫ってきていた。それを回避しながらこちらも弾幕を放っていると、またチルノの弾幕が止まった。



「……わざとやってるの?」

「えっへん! すごいだろう!」

「いや、まぁ……うん。退路を制限するには凄いと思う……けどッ!」

「ッいなくなった!?」




通用しないけどね、と小さく付け足して高速移動。高速、などと言っているけど、それはチルノにとってはだ。僕にしてみれば師匠との修行でしているようにしか動いていない。後に回り込み、ここで決めるために脚に気を纏わせ、振う。もちろんチルノの目が追えるはずもなく、僕の存在にまったく気付けていない。


もらった―――脚を振う瞬間、確かに僕は自分の勝利を確信した。



「うしろ!」

「……うそ―――避けられた……!?」



だがそんな思惑とは裏腹に、綺麗に、そして完璧に避けられた。目で追えるはずがないにも拘らず、チルノは僕の渾身の一撃を躱してみせた。結果として僕が出来たことは、スペルブレイクだけだった。でも何だ今の……。脚の振りが一瞬鈍ったように感じたぞ…?



「フフン! 驚いたでしょう!」

「驚いた……まさか避けられるなんて…」

「あたいは最初からこうなるって解ってたけどね! なんたってサクをねったんだから!」

「……へぇ、是非ともお聞きしたいね。今後の参考にでも」



まさか自分で自分の策を披露するはずはないだろう、と思いながらも聞かずにはいられなかった。



「いいわ、教えてあげる。感謝して聞きなさい!」



教えてくれるんですか……。



「アンタの動きを読みとったのよ!」

「……ふーん」

「あれ? 驚かないの?」



そうは言われても、ねぇ? どう読み取ったのかを聞きたかったんだけど。



「冷気? だっけ? それをいっぱい身体につけて、そこにあったかい物が入ってきたから感じ取れた。冷気がなかったらあたいは死んでたわ……」

「死にません。……つまり、冷気で僕を感じ取ったんだね?」

「それだけじゃない! 冷気に気付かれないように湖に氷を張って周囲を冷やしておいた。それにアンタ、さっきから何か焦ってたじゃない。だから気付けなかったんだ」




……なるほど、なるほど。次の為に僕は全力を出せない。自身と僕の手を抜いた弾幕はほぼ同じ威力、ジリ貧になるのは確実。ならば僕が接近するのは時間の問題。しかし目で追えないのは解っていたため、目以外の感覚を頼りにするために冷気を纏う。しかも膨大な冷気の層によって、攻撃が遙かに遅くなるため避けやすい。更に冷気を纏っている事を至近距離でしか悟らせないために湖を凍らせ、周囲の気温を下げておく。



以上のことが今回のチルノの策。……すっごいや。こんなこと考えるなんて、一介の妖精の出来ることじゃない。……ルーミアちゃんの差し金かな?



「これ、誰が考えたの?」

「あたい! アンタを今日倒すために、みんなに少し考えて貰ったけど……でもあたいが考え出したことにかわりはないね!」




―――――は…ははは! あっははははは! なんだこれ、笑いが止まらない!


笑わずに居られないよ! だって絶対に負けることがないと思っていたのに、まんまと一杯喰わされたんだから! 最近になって忘れかけていたことに気付かせてもらったことに、感謝してもしきれない! そうさ、誰だってどんな相手にでも勝つ可能性はあるんだ!



でもすごい、こんな、なんかすごく嬉しい。今まで感じたことがないよ、こんな感覚。今までは僕が挑戦者で、ずっと挑む側だったからこんなの初めてだ。まさかこんな、挑まれる側がこんなに嬉しいだなんて思ってもみなかった。自分を倒そうと思って来てくれる相手がいるなんて、武人としてこれ以上の誉れはないよ。



「すごいよチルノ! 本当にすごい!」

「あたいったらサイキョーね!」

「うん、本当にすごい―――だから、僕も本気だ。この一撃で決める」



一枚。宣言するためにローブから一枚のカードを取り出した。そこに描かれているのは幼い頃から使っている砲撃魔法。僕の中でも最高の破壊力をもつ最高の一撃!



「魔砲『マスタースパーク』」



チルノからもスペルカードの発動が確認できたけど、それすらも呑みこんで行く極光。やがて光が収まった時には、チルノが地面に一直線に堕ちていく姿が見てとれた。それを大妖精が追って行っている。心配はないだろう。



でもチルノには僕の全力を受けて、それでもまた向かって来て欲しい。楽しみに待ってるから。






◇◆◇◆◇◆◇






「わははー、当たらないのだー」

「……ちょこまかとしつこいわね!」

「おおっと!? 当たらなければどうということは無い! と言うのだ」



ひらりひらり、のらりくらりとまるで揺れ動く葉のような動きで弾幕が躱されていく。横に広げられた手からは弾幕が放たれている。



「むー、このまま闘うだけじゃつまらないねー。お話でもしよっか?」

「いらん。むしろ早く堕ちろ」

「言葉がキツイのだ。昔は、いやご主人さまの前では今もか。柔らかい言葉だったのに何でなのか? それとも、今の姿が素のおチビなのか?」

「ッあんた、あいつのこと何か知ってんの!?」

「知ってるも何も、ご主人さまなのだ。夜符『ナイトバード』」



っ、会話をすると言いながらもスペルカードを発動だなんて、ちゃっかりしてるわね。でもやる気があるのかどうか知らないけど、こんな単純な弾幕なんて目を瞑ってても避けられるわ。



「本当は気付いてるんじゃないのか? 記憶をよーく探ってみるのだ。おチビにとって、ご主人さまはその程度の人なのか?」

「おチビって呼ぶんじゃないわよ、このドチビ」

「私のこれはないすばでーに変身するからいいのだ。でもおチビ、最近は気持ち悪~い感覚に包まれてるんじゃないのかな? ご主人さま……大和さんが遠くに行ってしまったような、自分が遠くに行っているような」

「……」

「沈黙は肯定なのだ」




たしかに私はあの人のことが気になっている。いったい何者なのか、どうして私に手を焼いてくれるのか。……どうして、こんな関係になってしまったのか……。



記憶の中のあの人は笑っていて、小さな私も楽しそうにしていた記憶がある。あるってだけで、実際どうだったのかは知らない。でも今は氷のように、まったく変わることのない鉄の表情。事務的な受け答えしかせず、まったく弾まない会話。


私が悪い子だから大和さんはああなってしまった。気を惹く……なんて子供みたいな真似もしたいけど、迷惑を掛けてこれ以上関係が悪くなるのも嫌だ。肉親でも親戚でもないみたいだけど、あの人は昔から傍に居てくれた人。今でも居てくれなければきっと寂しくなってしまう。どうでもいいなんて思うことは一度もなかった。



出来れば記憶の中のような関係になりたい。でも目の前にある現実がそうである限り、それは決して覆らない。だから私は別にそれでいい。このままでいいんだ。大和さんの前では良い子なんだ、私は。




「話はそれだけ?」

「うん? もっと色々話したいのだ。おチビと私の関係とか、私のご主人さまへの愛とか」

「あ、そ。じゃあ堕ちとけ。夢符『封魔陣』」

「……ふぅ。おチビ、堕ちる前にこれだけは言っておくのだ」




―――――見えているものだけが真実じゃない。主も、たぶんお前も




「そんなの……私が一番良く解っているわよ」




最後にそう言い残して堕ちていく姿を眺める。……勝つには勝った。でも、何故だか勝たせて貰ったという感じがしてならなかった。本当に、嫌な奴だった。




ふと、後方から私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。振り向くと大和さんが片手を上げて近づいて来ていた。その姿が笑ってて、記憶と重なるように見えたけど、近づくとやはり笑ってなんかいなかった。




「霊夢、怪我は無い?」

「大丈夫。大和さんは?」

「問題無し。じゃあ行こうか」

「ええ」



再会のあとも言葉少なく、再び空を駆ける。でもそれでいい、これが今の私たちなのだから。





もう幾つ寝ると御正月? じらいです。


今回は自分で納得がいかない部分が多いのですが、情けない話、自分でも何が納得できないのか解っていないんです。おそらくないとは思いますが、急に思い立ったように書き換えたりするかもしれません。その時は活動報告で報告します。



と、言う訳で猫かぶりは誰? という回でした。言わずもがな、被っているのは大和とルーミア。あとは読めば……。



出来れば来年までにあと一つは上げたいですね……。それではまた次回

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