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東方伊吹伝  作者: 大根
断章:未来の子供たち
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閑話 空白の時間

一気に時間が跳びます

~霧雨魔理沙~



私には大っ嫌いな奴がいる。本当に嫌いで、顔も合わせたくない奴がいる。そいつの名前は伊吹大和。腹立たしくも、私が幼いころ魔法を習っていた男だ。最初の頃はなんとも思わなかった。でも教えて貰っていくに連れて、私たちの仲は悪くなっていった。あいつは私のことなんて何も解ってくれなかった。理解しようともしてくれなかった。だから私はあいつが大嫌いなんだ。



でも妹紅の姉さんはそうは言わない。笑って、アホだけど凄い奴だと言ってた。姉さんが嘘を吐くとは思えなかったけど、確かめる為に阿求に資料を見せて貰いに行ったこともある。そこに書かれてあったのは、あいつの途轍もない経験の数々。大きな争いには必ず参加し、必ず戦果を上げていると書かれてあった。



でも、それは本当のことか? 私は一度もあいつが闘っている姿を見たことが無い。それどころか、妖精に売られた喧嘩すら謝って躱して行くような奴だ。そんな奴が強い訳なんて無い。そんな奴に教えて貰ったって、強くなれるはずもない。



だから私は一人で強くなった。あの男を見返す為に。今日はその為の最後の仕上げ、頼んでいた箒を香霖堂まで取りに行く予定だ。霖之助は私よりもマジックアイテムを創るのが上手だからな、頼んでおいたのさ。



「やぁ魔理沙。頼まれていた箒、準備しておいたから持っていくといい」

「サンキュー。……お! 流石は霖之助、いい仕事してるぜ」

「……そうかい、なら良かったよ。」



古くなった実家の箒とは今日でおさらば。明日からはこの箒で、新しい魔理沙さんの誕生だ。今の私を止められるやつは、そうそういないぜ!




「行ったよ……。まったく、そんなに気になるのだったら自分で渡せばいいのに」

「……嫌だね」

「二人とも素直じゃないね」





◇◆◇◆◇◆◇





~博麗霊夢~



私の神社には、何とも言えない不思議な魔法使いが住み着いている。古い記憶を漁ってみると、何時どの記憶の中にもその姿がある、なんとも不思議な魔法使い。記憶の中の彼は太陽のような笑顔を浮かべているのに、目の前にあるのはただの仏頂面。まるで別人だ。


そんな彼に一度『貴方は私の何なのか?』 と聞いたことがある。貴方が親なのか? とも。そう聞くと、彼は困ったように苦笑して『何なんだろうね、僕にも解らないよ』 と情けない言葉を返してくる。


そんな彼に、私は『ふーん』 とだけ返しておいた。物心ついた時から一緒に居たようだし、私の成長を見守ってきたとも言っていた。記憶の中もそう。そんな彼を今更追い出すことも出来ず、今でも共に神社で生活している。なんとも不思議な関係だけど、何故か心地いいと感じてしまう。



そんな彼がつい先日、『君が出て行って欲しいと、少しでもそう感じたら言って欲しい。僕は出ていくから』 と言った。私は笑って『馬鹿ね』 とだけ答えると、久しぶりに仏頂面が変化した。眉と口元がピクピクッと動いただけだけど、能面のような顔ではなくなった。



一緒に暮らしていると、まだ記憶の中でしか見たことのない太陽のような笑顔を見る事が出来るかもしれない。それを拝める日が来るまでは、とりあえずは一緒に暮らしていこうと思う。



「大和さん、御夕飯できたわよ」

「わかった、今行く」




◇◆◇◆◇◆◇




~十六夜咲夜~



駄メイドと言われ続けて数年、情けない自分に涙し、妹様にからかわれて涙し、大和様(一応敬称) に咬みついたり逆に咬みつかれたりした私は、紅魔館のメイドの長としての座を勝ち取った(キリッ。もう箒を掃いても箪笥が吹き飛ぶ事は無い。雑巾掛けでも床に穴が空くことは無い。全てがパーフェクトで瀟洒なメイドへと成長した私に死角など存在しない。



「ほら、そうやって時間を止めてればいいと思ってる。何時かこの戦法が通用しない相手が来るかもしれないのに、それじゃあ駄目だよ」

「貴方みたいな理不尽な人間、一人で十分だわ」

「……僕で理不尽なら、この世は理不尽の塊だよ……」



それでも能力が通用しないこの人だけは苦手だ。はっきりと『うぜぇですわ』 と言ったこともある。お譲様には叱られたけど、悔いは無い。毎回こってり絞られているのだから、これくらいの毒は吐かせて貰いたいですわ。と、上品に言っても聞きいれてはくれなかった。



将来のご主人様なのだから、最大限の敬意を払いなさい! とお譲様は仰るけど、別にこの人の扱いは適当でいいのではないかと最近よく思うようになった。少し苦笑するけど、どう扱っても何も言われないし。その代わりに手は出るけど……。



「さて、じゃあ僕は帰るかな」

「お帰りの前に、お譲様に会いに行って下さい」

「ちょっと調子が悪くて……」

「嘘は止めて下さい。貴方が行かないと、あとで私が叱られるの」

「なんだろう、この生贄の気分」

「間違っては無いわね」



ああ、悲しきはメイド長という身分。主の命令には絶対服従。でも私はそんなメイドどいう下僕の存在でありながら、長と言うだけあって権限が与えられている。例えば使えない妖精メイドの統括とか統括とか統括とか……。だから私はこう言うわ。



『中間管理職は辛い』 と。



この鬱憤は、最近紅魔館を私に任せている美鈴を苛めて発散しよう。あの門番め、私がメイドとして使えるようになったからって手を抜いき、挙句の果てには居眠りまで……許すまじ。


私はお譲様に仕えることは幸せだと思っているし、妹様に弄られるのももう馴れた。むしろあの愛くるしい二人の姿を見ていると不満なんて吹き飛ぶ。



だが門番、テメェは駄目だ。可愛げのない奴は自分の仕事はしろ。



「ナイフよし、時計よし、鬱憤よし。さて、今日もお仕置きの時間ね…」





◇◆◇◆◇◆◇





~あの男と人形遣い~



「本当に、何時見ても信じられないわ……」


「ふふん、いいだろ? このローブ。何と言っても大魔導師の証だからね」


「裸の王様ならぬ、裸の大魔導師よ。ま、貴方の場合は指摘してくれる私がいるから、ただの見かけ倒しな大魔導師ってところかしら」


「フ……アリス、お主も悔しいのだろう?」


「はいはい、悔しいわ。ね~上海?」


「……」


「相手にされないだけで本気で落ち込むんじゃないわよ……。それよりも貴方、この紅い霧に心当たりがあったりするんじゃないの?」


「ないよ!」


「あるのね」


「ないよ!」


「何か企むのはいいけど、私だけには迷惑を掛けないでよ?」


「最近なにか迷惑掛けたっけ?」


「森に住み着いたあの子」


「ぬ……」


「何がぬ、よ。最後まで面倒くらい見なさいよ。そうじゃないとあの半端者……いずれ死ぬわよ」


「解ってる。もう手は打ってあるから」


「そ、ならいいの。それよりも、この霧は何時晴れるのかしら?」


「あと三日もしない内に晴れるよ」


「やっぱり貴方の企みなんじゃない」


「あ゛」


「ふぅ……。まぁいいわ、せいぜい足元を掬われないように注意することね」


「心配してくれるの?」


「忠告してるだけよ」


「素直じゃないね。……じゃあもう行くよ。紅茶、美味しかった」


「はいはい、気を付けてね」




さて、と。じゃあそろそろこの紅い霧を晴らしに行きますか。ま、僕はただのサポートなんだけどね。


「頼んだよ霊夢。僕自身が賭けの対象なんだから」



ここ数年で怠惰になってしまった巫女に一抹の不安を覚えながら、僕は空を目指した。






――――――頼みの巫女は、まだ深い眠りの中




最後は会話文だけ、手抜き!と言われればそっぽを向くじらいです。三人とも、大和を入れれば四人とも数年の内に変化がありました。というこぼれ話。


大和については、まぁ…やせ我慢してるだけなんですが。お父さんでいたいけどいられない! みたいな。霊夢の前では表情を崩さないようにしています。この辺りの話も詳しく出来ればいいですね。霊夢の前では仏頂面ですが、他では…まぁ察してやって下さいw いつもの大和ですから。


魔理沙はそのまんま。大和のことが大っ嫌いに育ちました。何ででしょうね!


咲夜は駄メイド卒業。どうしてでしょうね!


と言った感じに、数年間に何があったのかを考えて貰えたらなぁ…と思いつつ、次回からは紅霧異変…ではなく予告編を入れようかと。それを除いても、ついに東方紅魔郷に突入です。長かったなぁ…。ここまで来るのに、一年近くかかりましたよ…。


ではまた次回

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