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東方伊吹伝  作者: 大根
第七章:未来を見据えて
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踊る阿呆に舞う阿呆


~1930年~



博麗大結界によって外の世界と隔絶されて早45年の時間が流れた。幻想郷がどう変わったのかなんてのはあまり実感ができない。その間に友人が以前とはまるで別人のようになってしまったが、それでも幻想郷自体にはゆったりとした時間が流れている。特に幻想郷の中に於いても外との繋がりの少ない此処ではその傾向が顕著に現れていると私は思う。むしろそうであって欲しい。





「座禅を組み始めてもう50年近く。大和もだいぶ大人っぽくなったじゃない。落ち着いた風格を纏ってるわ」


「はは、華扇さんにそう言って貰えると僕も嬉しいです」


「大和様、私も成長出来たでしょうか!?」


「もちろんだとも。僕と同じ修行をした椛が成長出来ないはずないよ」





だってそうじゃないと、私の友人がこれほど変な方向に変わるわけないから。今も忠犬椛の言葉に菩薩様のような笑みを浮かべているのは、精神修行によって性欲すら乗り越えてしまった大和だ。既にデフォルトと化した後光が眩し過ぎて、私にはもう直視できないレベルにまでなってしまった。華扇様はそんな大和を直視し、満足気に頷いている。……萃香様に『この子は私が育てたと』 でも言うつもりなのだろうか。



そんなことになったら……山、平地になるんだろうなぁ。



……駄目だ、早くなんとかしないと。この状況を打破できるのは私しかいない。文、私に幻想郷の未来が掛っているわよ。なんとしても大和を元に戻す。それがともの出来ることだ。





「では久しぶりに外出許可を出しましょう。悟りを開きつつある貴方なら、今までと違った世界が見えてくるはずです」


「分かりました。それを糧に、また精進します」





なんていう眩しさなの!? 更に強さを増す後光に私は思わず目を瞑ってしまった。…クッ、状況は最悪ね……ッ!




「今日はもう休ませて貰います。明日は朝から人里に向かって、紅魔館に行くので帰りは遅くなると思います」


「わかったわ。でも羽目を外さないように」


「解ってます。お休みなさい」





……人里。これは……チャンスだ……! 流石に外出する時くらいは華扇様も付いて行かないはず。なら大和さんは自然と一人になる。ここで大和を以前の彼に戻してあげよう。さもないと本当に手遅れになってしまう。



とりあえず大和がこうなった原因を思い出してみよう。確か大和が菩薩様のような後光を放つようになってしまったのは、精神修行によって己の欲を乗り越えてしまったからだ。それなら……抑えきれないほどの欲望を与えてあげればいい。溢れだすパッション! 迸るパトスをもう一度! 酷くヤラシイとまで称された『あの頃の大和ver.変態』 をもう一度この世に顕現させてあげようではないか!! ……うん? 私がやればいいって? そりゃあ自信はあるけど残念ね。私はそこまで軽い女じゃないの。



場所は人里、用意するのは掻き立てられる欲望。ムフフ……浮かぶ、浮かびますよ~! 記者として培った私の頭の回転の速さは伊達ではない!




「人里なら、あの人たちの力を借りなければ始まらない」




自然と口元が吊りあがっていく。ボロを出さない為にも、今から人里に向かって向かうとしましょうか。




「文文。新聞、射命丸文。いっきまーす!」






◇◆◇◆◇◆◇





翌日の朝、私は大和さんの変態仲間である三人と一緒に物影に隠れていた。理由は言わなくてもいいでしうけど一応言っておきましょう。身体が老いても、下心は老いないこの人達の力を借りる為です。





「嘘だ……。あれが、大和……!?」

「ありえない……奴も俺たちと同じなのに! なのに何故! あの人は俺達にはない輝きを放っているんだ!?」

「輝きと言うか、普段よりもキリッとしてますね。愚弟達にはない大人の雰囲気……いや、これは余裕ですか? 文ちゃん、もしかして大和さんは――――――」


「それはないです。そんな一大事、あったなら私が新聞に載せないわけないですよ」





上から五十を過ぎても年下好き(それはもう犯罪だ、とは言ってあげないで) の四郎、貧乳から巨乳に鞍替えした三郎、そして一郎を除いた兄弟の中で唯一所帯を持った二郎、そして天狗一の記者・射命丸文です。ちなみにもしかしての後に続く言葉は……言う必要はないですよね?



それにしても、やっぱりこの方達も大和さんの変わりようを驚きますか。道行く人も思わず振り返っているし、古い知り合いの人たちの中には目を擦っている人までいるくらいだと言えば、少しはその異様さが伝わるでしょうか。



でもそれも仕方のないことなのかもしれません。今までの活発で少年らしい雰囲気は鳴りを潜め、童のような笑顔は消えました。その代わりに悟りを開いた仙人のような落ち着きと、見る者を安心させる温和な笑みを浮かべ、周囲の人と挨拶を交わしています。




――――――なんだか私の知らない大和がいるようで……すごく怖い。




「許せん……! あの子はしろうが赤子の頃から手塩に掛けて食べ時を待っていたというのに! 俺の光源氏計画がッ!!」

「むぅ、その隣の家の子もか。中々のバストだと言うのにもったいない。俺なら更なるバストを提供できると言うのに、大和には勿体なさすぎるぞ」

「四郎、捕まる前に慧音先生に頭突きを貰ってきなさい。と言うか現実を見ろ。そして三郎、それは少々凹凸に欠けた嫁と結婚した俺に対する厭味か?」



「と言うか、女性の前でそんな話をしないで下さいよ」


「俺たちに何を言っているんだか」

「女性を見て感銘を受けるのは男の性だ」

「そもそもの前提から間違ってますね。変態にそんなことを言っても無駄です」




「ですよねー。あ、そう言えば一郎にも孫が産まれたらしいですね、おめでとうございます。―――あれ? そう言えば一郎は何処に居るんです? こう言ったことには直ぐに喰いつくと思ったんですが?」



「兄は……人生の墓場に頭まで浸かってしまったんだ。――――――惜しい人を、亡くしたよ……」

「「二郎兄さんが言うな」」




大和さんの親しい友人で、兄弟の中でも一番の変態だった一郎がこの場にはいない。聞いた話によると、一郎は霧雨家に婿入りしてからは奇行に走っていないらしい。なんでも霧雨家のお嬢さんがとんでもなく強かなんだとか。一度浮気をしようとしたところを先回りされて、そのあと酷い折檻をうけたらしい。なんともまぁ、犬も食わない喧嘩なことで。





「まぁ戦力はこれでも十分でしょう。頼みますよ皆さん、大和さんを以前のような彼に戻してやって下さい」


「応」

「任せてくれ」

「まぁそれなりにやらせて貰いますよ」


「私はこっそり見ているので、各々が思うままに行動してくださいね? では……散開!」





◇◆◇◆◇◆◇




~四郎の場合



「お~い大和、ちょっといいか?」


「四郎? 久しぶり、元気にしてた?」




近づくと余計に光って見えるのだろう、四郎が大和から少しめを逸らしている。でも落ち着きなさい四郎、嘗ては同じ志を持った同士。何も怖がることはないはず。欲望という希望の光を持って、大和さんを覚醒させてあげてください。




「ちょっと見てくれよこの写真。さっき大和が話していた女の子の写真なんだけどさ、可愛いだろ~? あの子、俺のことをおじさんって慕ってくれるんだ。それでさ「四郎、ちょっといい?」 ……え?」




ふむふむ、人間にカメラを売ったとにとりが言ってたけど四郎のことだったのね。よりにもよってあんな変態に売るとはにとりも何を考えているのやら。……まぁそれは置いておこう。とりあえず大和さんがそれに反応すれば……ってあれ? もし大和さんがそれに反応したらロリコンということに…?




「僕はね、元々そんなのじゃないんだ。それに今となっては尚更さ」




なんと! 巷で噂されていたロリコン説は嘘だったのですか! ちぇ、もし本当なら今度の特集にそのネタを使おうと思ったのに。まぁ沢山の人から裏は取れるでしょうから何れ特集を組むとしましょう。




「―――ッ嘘だ! 大和、お前だって一緒に風呂覗いたり、服を剥ぐ技を教えてくれたじゃないか!?」


「もう過去のことさ……。じゃあね」




四郎は敗北、と。ま、犯罪(仮) 写真集に興味を示されなかった時点で負けは決まってましたけどね。次行きましょうか、次。






◇◆◇◆◇◆◇




~三郎の場合の場合





     割☆愛




「(三)ちょっ!?」




面倒臭いので簡潔にすると『チチの大きさの神秘について三郎が語る→僕興味ないんだ』 の流れです。はいはい、私はそれほど大きくないですよ。大きくないから聞く必要もないんです。





◇◆◇◆◇◆◇




~二郎の場合




「―――――つまり夜の営みにおいて大切なのは、如何に相手の表情を読みとれるかです。一瞬によって変わる表情、声の大きさ・質、汗。これらを逃さず把握できれば、普段の生活でも夫婦仲がこじれることはないでしょう」


「二郎は出来てるの? 奥さんは大事にしなよ、あと子供も」


「あ、それは大丈夫です。それよりも聞いて下さいよ、家の娘がね――――――」




思わず赤面してしまう程の生々しい男女の話すら、しれっと流してしまう大和さん。私なんか途中で耳を塞いじゃったのに、大和さんったらニコニコして聞いているんだから……。



これで私が頼んだ兄弟は全敗。ちょっとでも欲を与えてやれば後は大丈夫だと思っていたちょっと前の私を叩いてやりたい。でも今までだったら直ぐに跳び付いてもおかしくなかったのに……。




――――――もしかして、本当に枯れちゃった?




それは不味い。ひじょ~に拙い。萃香様にとってそれがプラスになるかは分からないけど、今までの面影が全くない大和さんを見たらきっと悲しまれる。と言うか、華扇様にブチ切れる。そうなれば山は崩壊、一緒に居た私は何をしていたんだと打たれて物理的に地獄に落とされる。椛は……まぁどうでもいい、大和さんの為なら本望だろう。



――――――それに私もこんな大和は嫌だ。馬鹿みたいに明るくて、馬鹿をやっては笑って、馬鹿なことを本気でやる大和だからこそ私も惹かれたのに。それなのに大和は……




「あら、鴉天狗じゃない。そこで何やってるの? ……何あれ、いったいどうなってるの?」


「思わぬ助っ人アリスさん、確保ーーー!!」


「うわぁっ!? な、何よいったい!?」


「お願いです! 私の為にひと肌脱いで下さい! 出来れば物理的に!!」


「はあ!?」





◇◆◇◆◇◆◇





~飛び入り・アリスの場合




「ちょっといいかしら」


「あれ、アリスじゃないか。久しぶり」


「ええ、久しぶりね……」


「…………」


「…………」


「……? で、何の用?」


「えっ!? えっと、その―――そう! 人形のことなんだけど――――――」




チッ、嫌がる背中を無理やり押したせいか全く話にならない。人形遣いなら男の一人くらい操ってみろっての。ひと肌脱いでと頼んだのに全然脱ぐ気配もないし、これじゃあ何の成果も上げられないではないか。


そんなこと知ったことではないと魔法談義で盛り上がり始めた二人が妬ましい……。私の努力を知らずに楽しそうに話している大和が妬ましいわ……。



仕方が無い。格なる上は強制的にひと肌脱いで貰いましょうか!!




「風よ!!」


「へ―――? ―――……ッキャァァアアアア!?!?」


「ブホッ!?」




小さな竜巻を起こしてアリスさんの長いスカート巻き上げ、刻んでみた。へっへっへ、お嬢さんいい声で泣いてくれますねェ。その甲高い悲鳴が何よりのスパイスですよ。刻まれたスカートの奥、神秘に満ちた秘境から見える綺麗な太股がこれまたエロいエロい。大和さんも目の前で起こったことに加えて今までの我慢が集ったのだろう、滝のような鼻血に頬を伝う涙、グッと握りしめられた拳で目の前の光景への感動を示している。




「あ、ありす……黒は、黒色はだめだと……プハッ!!」


「う、煩い見るなぁっ!!」


「む、無理っす。それよりも某、眠っていた欲望が目覚めてもう限界でごわす。早く服を着るかどうかして貰わないと、アリスに向かってダイヴしてしまいそうです」


「ちょ、ちょっと……馬鹿な真似は止しなさいよ!?」


「だから早く服を着てと言っている!!」


「逆切れ!?」


「「「「アリスちゃーーーーん!!」」」」


「更に四兄弟!? 変態が編隊を組んでいるとでも言うの!?」




おお、流石は歳老いても最低の紳士達。必死に千切れたスカートで下半身を隠すアリスさんに向かって行く変態の一個小隊。いつのまにか一郎まで加わっているじゃないですか。妻の折檻を受けてでも見る価値があると言うのですね、わかります。




「あんた達……死ねーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」




おお、アリスさんの人形から放たれた魔力弾で変態たちが錐揉みしながら空を舞っている……ん? あの中に大和さんの姿がないですね。




「その程度でやられる程、軟な鍛え方はしてないんだよね!? お願いだから服着るか逃げるかしてよ! 身体ガ勝手ニ動クノデス!!」


「そそっそれくらい我慢しなさいよ!! 男でしょ!?」


「男ダカラデス! むしろアリスみたいな可愛い子がいたら、発狂するのもおかしくないですよね!?」


「それもそうね……じゃないわよ! 本気で怒るわよ!?」


「我々の業界では御褒美です! むしろそれ位じゃないと迸るパトスを抑えきれませぇん!」




最早涙目になってしまっているアリスさんの前に人形たちが集結していく。なんとなく怒っているような表情を浮かべているのは主の仕様なのでしょう。そして槍や剣を構えた人形が大和さんに突撃していき――――――光が弾けた。




「うわぁ……これは死んだかも……」




思わず顔が引き攣ってしまう程の爆発と共に大和さんは光に包まれて行った。




「お前たち……頼むから里の中で暴れないでくれ……」





◇◆◇◆◇◆◇




「スイッチの切り替え、ですか?」


「そうだよ。こう、キリッとしたカッコイイ僕と、普段の僕との切り替えが出来るかなぁって練習してただけなんだ」


「相変わらず馬鹿ね、貴方」


「相変わらず酷いなぁ。けっこう苦労したんだよ?」




大和さん曰く、ヘタレた自分を直す為に考え出したらしい。キリッと凛々しい人に成りたいから頑張ったらしいですけど、正直意味不明です。そんな無駄なことするくらいなら、仙術の一つでも修得すればいいのに。




「しかもカッコつけたいからだけって言うのがふざけてます」


「だから謝ってるじゃないか、ごめんって。でもスイッチ切り替えるのも便利なんだよ? 一種の悟りみたいなものだから」


「興味ありません。……心配して損したじゃないの」


「ん? 何か言った?」


「何でもないです。私はもう帰りますから」




変わったようで何も変わっていなかった友人に安堵しつつ、私は風を切っていく。心の底からの笑顔を浮かべながら。


























「大和、貴方何を企んでいるの?」


「何も。ただ必要だったから切り替えを憶えただけだよ」


「……私に関係ないのなら別に何をしようが貴方の勝手よ。でもね、周囲の人を悲しませることだけはするんじゃないわよ」


「―――了解。じゃあね、アリス。また話せるといいな」




何とか間に合わせようとして頑張りましたが、無理だったじらいです。できたてほやほやですので、誤字が多いかもしれません。むしろ今回はなかってもよかったかも…なんて思っていたりしていますorz


特に最近、話数が多い伊吹伝がどうなのかと考えるようになりました。これほど話数が多ければ読み返すのも面倒だし、もっと一話一話の字数を増やそうかな、と。今更ですけどねw それに一人称にも限界を感じてきました。三人称でやってればよかったなぁ…orz


次回はまた時間が跳んで、遂にうどん&みょんです。もう二人一遍でもいいかなと。嵩張りますし。それで時間一話か二話挟んで原作。紅魔郷・そして…と言った感じですかね。紅魔郷始まるまでに、ちょっとしたアンケートでも採ろうと思ってます。それはまたその時に。

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