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東方伊吹伝  作者: 大根
第七章:未来を見据えて
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腹黒い、黒いよ君



つい先ほど淹れた紅茶をテーブルに置く。数は二つ。僕と訪れてきた少女の分だ。水に加熱の魔法を掛けてお湯を沸かしてもいいんだけど、初めて会う人には僕が紅茶を沸かせることが出来る紳士だと知って貰いたい。特に女性に対しては良いカッコをしておきたいと思う小さな男心。



手間を掛けて水を沸かしている間、少女は棚に並べられてある魔道書や、つい先ほど持って帰ってきた魔道書と研究ノートに目を奪われていた。とは言うものの、勝手に中を見たりはしなていない。すごく見たいと言う雰囲気が溢れだしてはいるが、当然の事ながら勝手に人の研究を見ることはしないようだ。





「お待たせしました。初めまして、伊吹大和と言います」


「いきなり訪ねたりしてごめんなさい。アリス・マーガトロイドよ、よろしく」


「その周りの人形……マーガトロイドさんは人形遣いなんですか?」


「敬語は使わないで結構よ? あとアリスで良いわ、私も大和と呼ばせて貰うから。察しの通り、この子達は私の大事な人形たち」





淹れた紅茶を机に置き、一息つける状態になった所で自己紹介。アリスはルーミアちゃんと同じ流れるような金髪に、染まることを知らない白い肌。整った顔立ちは可愛らしい服装と相なって、まるで大陸で見た人形のように感じる。





「紅茶をどうぞ、なのか」





まるで自分で淹れたかのように紅茶を勧めるのは、座っている今も背中にへばり付いて離れないルーミアちゃんだ。紅茶を淹れる時も、片時も離れるかと言わんばかりにへばり付いていた。僕も両手を使っていたので支えることは出来なかっただけど、そんな問題など些細な事らしい。……暑苦しぃ。





「ありがたく頂くわ。……あら、いい葉を使っているのね。フフ、この国特有の外見をした屋敷だったから紅茶は置いてないと思っていたのだけど、案外見栄っ張りなのかしら?」


「紅魔館から盗った紅茶があってよかったね、ご主人さま」


「盗った……? それにご主人さまって、貴方も魔法の森の妖怪?」


「紅魔館から貰った、の間違いだよ。あと、ルーミアちゃんは魔法の森の妖怪じゃないよ」


「今はご主人さまの肉d「宵闇の妖怪です」 ……言わせてくれないのかー」





言わせればどんな誤解が生まれるか解ったもんじゃない。事情を知っている人でさえ変な目で見てくるのに、これ以上被害を広げるわけにはいかないよ。なるべく気にしないようにしているけど、あの奇異な目で見られるのは精神的に堪える。





「でも今ご主人さまって言ったわよね?」


「言ったよ? でも何で私が森の妖怪だと思ったの?」


「え……だって今ご主人さまって……」


「「……………ゑ?」」




これはいったい……




「「「どういうことなの?」」」






◇◆◇◆◇◆◇






「つまり貴方は年端もいかない少女に主従プレイを強要している『変態』 だというわけね?」


「その歳になってもまだ人形遊びに夢中な『変態』 に言われたくないね」


「「…………フフフフフフフフ」」


「これが『変態』 同士の視殺戦なのか……」


「「あなたも十分変態だから」」





お互いの誤解を解くためにとりあえず話をしたり聞いたりしてみると、何をどう間違った解釈をされたのか、誠に不愉快な『変態』 という称号を付けられた。なんでも小さな子に主従プレイを強要している鬼畜野郎だと思われたらしい。何度でも、誤解のないようにはっきり言っておくと、僕は強要なんてしてないし、そんな呼び方されて飛び跳ねて喜ぶ変態じゃない!



……慕ってくれるのはちょっぴり嬉しかったりだけど。仕様が無いじゃないか、懐いてくれて悪い気分なんてしないんだからさ。






「……お互い無益な争いは止めましょうか。これ以上言い争ったらどんな墓穴を掘るか……」


「だね……」


「わははー、つまり此処には変態しかいないのかー……オゥチッ!?」





終わらそうとした話を掘り返すような子には後頭部の頭突きをあげよう。高い鼻を押さえて悶えてればいいよ……って、顔をぐりぐり背中に擦り着けるな!?




「なのかなのかな・の・か!!」


「仲良いわねぇ」


「そう見える? ……あーもう、ルーミアちゃんの好きにしたらいいよ」


「いいの!? するよ? じゃあするよ? 本当にしちゃうよ!?」


「やっぱり止めようか!」


「……私はちょっと見てみたいかも」






他人のネチョを見たいって……アリスのスケベェ……





「ッオホン! じゃあ本題に入りましょ。私が此処に来た理由はね、森で住む許可を貰うためなの」


「……ちょっと待って、何で許可なんて? 勝手に家建てて住めばいいじゃないか」


「私だってそのつもりだったわよ。でも森の魔法生物や妖怪たちが貴方に許可を貰ったのか、って五月蠅いのよ。何でも自分たちの主だから、貴方に木を切り倒すのも森に住むのも許可を貰えって。それどころか貴重な魔法植物の採取だって……。貴方、あそこで何したの?」


「特に何もしてないけど……。ああ、喧しい奴等には話合いの席に着いて貰ったっけ?」





クックック……なんて怪しく笑ってみる。ちょいと力を入れて話合いの席に着いて貰っただけですよ?





「ごっご主人さまからしょ、瘴気が……!? きっとそれなのだ……間違いなくそれなのだ……さっきみたいに般若な顔だったに違いないのだ……」





般若とは失敬な。普段は浮かべない、それはもう優しい笑顔を浮かべているだけなのに。




「酷いこと言うなぁ。ねえアリス、アリスはこの笑顔っていいと思わない?」


「ひぃっ!? ややややや、大和! 貴方本当にナニしたの!?」


「……皆酷いや。心当たりと言われても一つくらいしかないよ」





ルーミアちゃんが言うほど酷いことはしてないつもりです。



家を建てたばかりのころは新参者弄りと言うか、上下関係をはっきりさせようとする輩が多かったんだ。だから、とりあえず向かってくるのは千切っては投げ千切っては投げで対応していたんだけど、流石に数が多くなってくると流石に面倒臭くなってね。仕方がないので僕から出向いて森の頭を叩きのめしたんだ。そのあと僕のお願いを少し聞いて貰えるように幻術で脳をいじ…もとい洗n…でもなくて、話合いで決着を着けた。





「見かけによらずに残酷なことするのね」


「何度も襲ってくる相手がいたら、アリスだってそうすると思うけど?」


「心外ね。会ったばかりの人にそう言われるとは」


「いいや違うね。僕が言っているのは『アリス』 だからじゃない。『魔法使い』 だからだ」






基本的に魔法使いは容赦という言葉を知らない者が多い。極論で言うなら、自身の研究の為なら他人の命でも道具のように扱う者も数多くいる。そんな人たちは自分の命すら道具のように扱うだろうけど。……まぁ今回の場合は、基本的に排他的で自分本位な輩が多い魔法使いがただ襲われるのを黙っているはずがないと言うだけなんだけどね。





「ふぅん……ただの甘ちゃんかと思ってたけど、その認識は改める必要がありそうね。魔法使いとして最低限の矜持はあるみたいね」


「ま、僕の場合は少し特殊だけどね。むしろさっき君に言われた言葉をそのまま返してやりたいよ」





「あらごめんなさい、私も『自分本位な魔法使い』 なの。貴方はそうじゃないようだけど」


「……その確信はどこから来るのか聞いても?」


「森の生物たちの大半は貴方に強要されたようでなかったし、なにより貴方達の関係を見ていると解るわよ。上辺だけじゃない、心から許せる相手がいる。それだけで証明になるわ」


「うんうん、会って直ぐなのによくご主人さまのことを見てくれている。ご主人さま、これがご主人さまの強みなんだよ? 絶対に、これを忘れたら駄目だよ?」





後から僕の頭を撫でながら、ルーミアちゃんがそう言った。なんて言うか……恥ずかしいです、はい。なんだか子供扱いされてるみたいで少し腹も立つ。僕だってもういい歳だ、子供扱いされて嬉しいことなんて一つもない。




ルーミアちゃんのくせに、僕を恥ずかしがらせるなんて生意気だ。





「わかった、わかったから手を退けてよ」


「恥ずかしがってる?」





背中から移動して僕の正面、膝の上にちょこんと座る。視線から見えたのは、今まで見たことのないような慈愛に満ちた表情で見つめてくるルーミアちゃん。優しく髪を撫でてくる姿は、まるで全てを抱擁する聖母のように感じた。





「ならいいの。それさえ忘れなかったら、どんな時でも前を向ける。だから頑張ってね?」





最後に抱き着くように僕の胸に倒れ込んだ小さな聖母は、そう言った後ゆっくりと小さな寝息を立て始めた。背中を擦ってあげるとくすぐったいのか、僅かに口元が緩んでいた。そんな彼女がすごく可愛らしくて、とても愛らしく感じた。





「ルーミア………」

































「ぅォッホン! ……あー、いいかしら?」




ちょ、しまった!? アリスがいること完全に忘れてた!





「妬けるわね~お二人さん。やっぱりそういうカンケイなの?」




そう言うアリスは立ち上がり、ニヤついて見降ろしてくる。不味い、このまま誤解されたまま帰られるととんでもない間違いが起きそうな気がする。



それだけは回避しなければ! 引き留める為に僕も立ち上がろうとするも、膝の上で寝息を立てているルーミアちゃんが邪魔で立てない!? でも背に腹は代えられない! 起こしてでも……って、この子ニヤついてる!? まさかこれを狙って!?!?





「ち、違うよ! 僕たちはただの友達で悪友なんだ!!」




クッ! アリスの側からはこの悪魔の顔は目に入らない。しかも僕が立てないように巧みに動いている。手詰まりかよコンチクショウ!?





「必死に否定しちゃってまぁ……童貞?」


「喧し……しまった!?」




つい条件反射でそう返してしまった!? 畜生、これじゃあ認めたも同然じゃないか!?





「あ、そうなの。だったら童貞の血が要る様になったら抜き取らせてね」


「なっ!? 嫌だよそんなの!!」


「あら? ロリコンだって言い触らされたいの?」


「謹んでお受けしましょう。何リットル必要ですか?」




背に腹は代えられぬ……背に腹は代えられぬぅ!





「冗談なんだけどね。だいたい必要なのは処女の血よ。童貞の血を使う魔法があれば見てみたいわよ」


「………ボクだってジョウダンでしたヨ?」





ロリコンじゃない。僕はロリコンじゃないです。断じて! 僕は四郎みたいな幼女性愛者ではない!!




「まぁ良いわ。じゃあ森に家建てるけど良いわよね?」


「好きにしたらいいよ……」




なんかもう、疲れたよ……。





背を向けて帰っていくアリスを見て、上手く言い包められた自分に自己嫌悪。はぁ……やっぱり腹の探り合いっていうのは苦手だ。『魔法使い』 相手に勝てるなんて思ってもなかったけど。おまけに味方が味方として働いてくれなかったし……やっぱ向いてないよね、こういうの。戦闘ならともかく、本格的な頭脳戦にでも持ち込まれたら僕に勝ち目なんてあるのか?





相手が誰であろうと、僕は負ける自信がある!




「脳筋ここに極まる……笑えないぞ!? スペック上は頭はそれほど悪くないはずだと思うんだけどなぁ。何たって僕、月のサラブレッドだし」





師匠のだって混じっているんだから賢いはずなんだ! こういうのはおいおい勉強していこう。一朝一夕で出来る物でもないだろうし。




「さて、じゃあ神社に行きますか。……寝てる人は置いて行くからね」


「起きたのか!」


「現金な子だなぁ……。じゃあ行こうか、悪友」


「はい、あなtッツゥ~~~!?」




冗談が過ぎるとブツからね?




「普通はブツ前に言うんだよ……」




どの口が物を言うか。





書 け な い じらいです。机に向かうと眠気が襲ってきます。それがPCを触るためだとしても。……勉強したくない病(仮) などと勝手に命名してみたりしています。




今回も時間が掛った割に文字数も少ない、内容も平らでした。まぁこんな話があと……何話続くのだろう? 少し変化が欲しいと思う今日この頃です。巫女・魔法・兎・山・剣とネタは盛り沢山なのですが……自信ないです、はい。何かもう、最近自信ないです。



とまぁ少し愚痴って置きまして、次回は神社です。時間は掛ると思いますが、頑張っていきまーーーーしょい!

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