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東方伊吹伝  作者: 大根
第七章:未来を見据えて
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何時までも変わらない人なんていない

R-15らしき表現があります。つまり『戻る』 推奨です。特にレミリアファンの方は避難を急いで貰えると助かります



大陸の西…欧州で一般に開かれるパーティは、僕の故郷である妖怪の山で開かれる宴会とは違った楽しみがある。騎士団内で開かれるパーティにはビュッフェ…だったかな? とりあえずいろいろな形式があった。でも騎士団で開かれる場合は人気取りの為に招かれる貴族たちも多くて礼儀作法が厳しく、山での宴会は何でもありだっただけに少し堅苦しいと感じていたけどね。




でもそれでも楽しく感じることもあった。例えばお酒。飲まれるお酒の味もまったく違い、初めて『ワイン』 と呼ばれるお酒を飲んだ時の衝撃は今でも忘れられない。ブドウと呼ばれる果実から造られるのだけど、残念ながら幻想郷ではあまり広まっていない。実はワインが僕の最初のお酒だったりもする。それだけに愛着や拘りもあったりするけど、やっぱり母さん達が飲むようなお酒も美味しいく感じている。




今回紅魔館で開かれたパーティは正餐と呼ばれているものだ。前菜と呼ばれるものから始まる料理を食べ、それぞれワイン等を飲むものだ。騎士団等では人が多かったためにスタンディング・ビュッフェと呼ばれる立食パーティだったけど、今回は仲間内だけで行われるだけにそうなっているのだろう。





「ご主人さま、料理美味しいね」


「本当だ、美味しい。流石は執事長ですね」


「確かに私も手を出したが、下準備を手伝って下さった方に礼を言ってもらいたい」





運ばれてくる料理はどれも美味しく、見た目もすごくいい。料理下手で味音痴らしい僕は舌に自信があるとは口が裂けても言ってはならないのでどこがどう美味しいとは言えないけど、それでも美味しく感じる。高級レストランで出される料理と大差変わりないんじゃないのかな、これは…?



そして執事長がこう言うということは、やっぱり作ったのは…





「褒めて褒めてー?」





少しお酒が回り出したのか、白い頬を仄かに染めたフランドールなわけだ。





「…え!? フラン、貴方料理なんて出来たの!?」


「えっへん! お姉様が馬鹿している間にたくさん練習もしたんだよ?」


「その頃のレミィは違うことに熱心だったからね…。前々から美鈴の昼食もフランが作って持って行っているのよ?」


「ホント、初めの頃に比べるとだいぶ上達しましたよね! 妹様のお料理、とても美味しく頂いてます!」




本当に…フランも大きくなったんだなぁ。自分で料理出来るようになったなんて。産まれた時から面倒を見てきたからか、こうして目に見えた成長はとても喜ばしいね。お兄さん、妹の成長が嬉しくてついつい笑顔が零れてしまいます。



それにほら、上座の親馬鹿もえらく上機嫌に見える。自分では隠しているつもりなのだろうけど、すごくニヤつきながらワインを口に運んでいる。でも解る、今回ばかりはその気持ちが僕にも解るよアルフォード。こんなに可愛い子がすくすくと育っていく姿を見て喜ばない人なんていないだろうから。






「そっそれよりも大和、もう大丈夫なの!?」


「ん? 何が?」





満面の笑みを浮かべているフランドールを皆が褒めていると、レミリアが焦ったように話題を変えた。今回はレミリアの晴れ姿を披露するのだから、自分が中心にならなければそれは面白く思わないだろう。新しく紅魔館の主になったと言っても、まだ僕より歳も身体つきも幼い少女。子供っぽいところはまだ抜けきっていないのかもしれない。



だからフランに向けていたままの笑顔でレミリアを見て、蔑ろにするつもりはないと伝えておく。どちらかだけを可愛がっては駄目、姉妹平等に接してあげないといけない。親や兄と言うモノは、そうやって良い関係を築くべきだと思うから。それにどちらかを優先してしまうと、この姉妹は情け容赦なしに不満を僕にぶつけるだろう。そうなったら目も当てられない。





「えと……だから、その………巫女のこと…とか……」


「…あぁ、それならもう大丈夫だよ。……はは、もう大丈夫だからそんな顔をしないで。せっかくのレミリアのための宴なのに、そんな辛そうな顔は駄目だよ」





…そう言えば、レミリア達にはまだ僕が立ち直れたことを伝えてなかったね…。風の噂では聞いているかもしれないけど。



そのレミリアは焦り過ぎて言葉を失ってしまったのか、それとも言ってしまってから不味いと思ったのだろうか、一言づつが消えそうなほど小さな声でそう尋ねてきた。表情までも先程声を張り上げた時とは違って、少し怖がったように感じられる。優しいレミリアのことだ、会いには来なかったけど、きっと僕のことを心配してくれていたんだと思う。それでその想い故に、咄嗟にそう口に出たのかもしれない。本人の意思に関係なく。




でも言ってしまったことは仕方が無い。今までその話題に触れようとしなかったパチュリーやフランや美鈴、執事長までもが目線で僕のことを見てくる。




本当にもう大丈夫なのか? 前回のように、また一人で逃げ出すようなことはしないのか?




皆がそう言っている。あのアルフォードでさえ、伏せ目がちだが視線を送ってきている。こちらは何を考えているのか解らないけど、おそらく罵倒に近い心配なんだろうと勝手に解釈しすることにした。…喧嘩を売られている気がしないでもないけど。





だから僕も一度頷いて、強い視線で皆を見た。でも心ではこう思う。本当に、自分はどうしようもなく弱い奴だな、と。でもだからこそ、僕はこうして多くの人に支えられているのだと。そしてこれからは、僕が皆を支えられるようになるのだと、強く思った。…僕の出来る範囲でだけど。



近くにある手を掴めない僕が、腕を伸ばしても何の意味もないことくらい痛いほど学んだからね…。





「それにほら、今はこの子が傍で騒がしくしてくれているから。レミリアが心配してくれることはないよ」





隣で一心不乱に料理を口に運ぶ小さな友。何でこんな僕に力を貸してくれるのかは解らないけど、それでも彼女は隣にいる。零夢の代わりなんかじゃない、代わりになんてなるはずもないけど、人とは現金なモノだと思う。だって、誰かが隣に居てくれるだけで、こんなにも違うんだから。





「ッ! そ、そうね…。大和は……大和は皆に支えられてるから…私は…」


「…?」


「ううん、何でもないわ。…そんなことより、今日は楽しみましょ! 私の晴れ舞台、フランが手伝った料理もあるんだから!」


「…それもそうだね、せっかくだし楽しませて貰うとするよ」






◇◆◇◆◇◆◇






差しこんでくる月の光が優しく照らす紅魔館の一室。新しく当主になったとはいえ、私の部屋が変わることはない。当主になって変わったことと言えば、昔にお母様が使っていたクローゼットを使わせて貰うようになったくらいか。



そのクローゼットに着ていたパーティードレスを脱いで入れようとしたが、そんな気分にはなれなかった。レディの風上にも置けないはしたない姿だとは思うけど、下着姿のままでベッドに沈んだ。もちろんドレスは床に脱ぎ捨てたまま。でも少し疲れた私にはそれが心地よかった。当主としてはアレだけど、誰にも見られない今の時間が一番好きなのかもしれない。





「はぁ…結局、何も言えなかった。それどころか傷を抉るような事を言って……私の馬鹿…」





仰向けにベッドに倒れ込んで月の光を全身に浴びる。何時もならすごく気持ちいいはずなのに、今日に限ってはそうは思えなかった。それも全て、私の自業自得と言えばそうなんだけど…







あの後はただ純粋に宴を楽しめた。可愛い妹が作ってくれた料理も悔しいけれど美味しかったし、心配していた大和とお父様の諍いも比較的小さくて済んだ。一名気に喰わない奴が居たけど、何よりもこうやってまた皆一緒に楽しめることが出来て本当に嬉しかった。でも、





「本当に…どうしたらいいのかしら…」





当主になんてなりたくなかった――――――とは言わない。でも本当の所はそうとも言えない。誇り高きスカーレット家の重圧を可愛い妹に丸投げになんか出来ない、という理由もある。本当ならフランに投げ出して大和と駆け落ちでもしたいけど、そうすればあの娘が本気で怒るだろうからそれは出来ない。




私は紅魔館の主として強く、気高く、この地に根付かなければならない。でも本来の私はそれほど気が強い者ではない。むしろ弱い方だと思っている。…何を言ってるかって? 私も心の底は臆病者だと言うことよ、認めたくはないけど。子供の頃はただの世間知らずで無鉄砲だっただけ…。だからこそあれだけ動くことが出来たんだと思う。





だからこそ変わらなければならなかった。当主になるために、お父様から私がどれだけのモノを背負って立つのかを学ばされた時、私は自分がどれだけ重要な存在になるのかを認識させられた。王が動かねば民は動かない。だからこそ、時には自分すら偽らなければならない。王とはそういう存在なのだ、と。面倒な…。




そうやって理由がなければ、自分では動くことすら出来ないと言われた。…ふざけるなと、私自身は勝手に動くつもりだと思った。だってお父様も勝手にしているのに私だけだなんて、そんなのずるいじゃない。


でも無邪気だったあの頃とは違って、今の私には背負うものが多すぎる。大和のように、自分の意志で好き勝手に動くことは出来なくなった…はず。だから当主になりたくないなぁ~…なんて。だって今の私、まるで蜘蛛の巣に捕えられた蝶のようじゃない。動こうとすればするほど、雁字搦めになって動けなくなる。





大和への気持ちだってそう。臆病な私が初めて巫女と会った時、絶対に彼女には敵わないと思った。それと同時に、彼女が居る限りは私の想いすら叶わないと解った。



――――――でも仕方ないじゃない、どうせお父様は反対するわ。それに大和だって、私になんか興味なんてないはず。だってこんな子供みたいな身体つき、彼の好みじゃないもの。





しないと決めた理由付けをして、私は自分を納得にげさせた。巫女が居る間はどうせ無理だ、でもあの巫女さえ居なくなれば…。一度心の底から溢れた思いは加速し、当主になるために培った知識が私に更なる手段を閃かせる。それは巫女と正面からやり合わず、如何に出し抜くか。規格外の巫女とはいえ所詮は人間、寿命は私の生きてきた年数にも満たない。だからその後から頑張ればいいじゃない。愛する者を失って悲しみに暮れる大和を慰めれば、後は…。




そして思いの他早く訪れたその時に私は心配しているフリを装い、まるで聖女のように大和の心に訴えかけた。打算的な考え。物事を知ったために純粋ではいられなくなった私が初めて行った捻り手が、想い人に対するこの仕打ちか。理由を付けて逃げて、結局闘わずして勝ち逃げされたことに気がついた。大和が目の前から去った時に全てを悟ってしまった私は、愚かな自分が悔しくて涙が止まらなかった。





だから私は、せめて彼に対するこの想いだけはもう真正面から自分の気持ちに従おうと思った。例えどんな強敵が現れても真正面から捻り潰す! 当主の時は当主として威厳ある姿で、無慈悲に強力な夜の女王として君臨する! そうやって区別をつければ何の問題もない! だから湧き出るカリスマにも磨きをかけ、夜の女王としての知識も完璧にマスターした!





「でも何も言えなかったら意味ないじゃないの!? 私の馬鹿馬鹿馬鹿!! それに大和も大和よ! あんなにおめかししてきたのに、綺麗だね、とか、似合ってるよ、とか気の利いた事を言えないの!?」



「…あ~、何と言うか…綺麗だったよ…?」




憤りのあまりにベッドで手足をばたつかせていた私に聞こえてきた声は、待ち望んだ想い人の声だった。跳ねるように起き上がり、苦笑している彼を見る。何でここに? どうして? まさか…これが噂に聞いたジパング名物『YOBAI』 なるものなの!?




「とりあえず勝手に入ったことは後で謝るから、服着ようか。その格好は目に悪い」


「へ……~~~~~~ッキャ「待ったぁ!!」 むぐむgmじゅ!?」




自分が下着姿だと言うことを指摘されて思わず声を上げそうになった所で、彼の手が私の口を押さえつけた。その勢いが余りにも強かったので私は溜まらず後に倒れ、それに続くように彼が私に伸し掛かって来た。服を脱いでいるために、彼の感触を直に肌で感じることが出来る。



そう思ってしまうと、次第に身体が火照っていくのが解った。今、私と彼を止めるものは何もない。これはもしかすると…もしかするのかもしれない。お母様、今から私は大人の階段を上ります…。お父様、紅魔館にまた新しく当主が誕生します。もしかするとその跡取りまで…。



圧し掛かるようにして私に覆いかぶさっている彼を一度見て、私は静かに目を瞑った。……パチェ、貴方は知識は武器だと言っていたけど、知ってるだけじゃこんなの対応しきれないわ…。






◇◆◇◆◇◆◇





大和です。パチュリーにレミリアの様子がおかしいから見に行ってあげてと呼ばれて来た大和です。まず最初にレミリアの部屋の前に着いてから何度かノックをし、返事が返ってこない状況が続きました。でも部屋の中に気配はあるし、時々声も聞こえてくるのに全く返事がないのを不思議に思った僕は、少し悪いかと思いつつも扉を開けて部屋に入りました。





「でも何も言えなかったら意味ないじゃないの!? 私の馬鹿馬鹿馬鹿!! それに大和も大和よ! あんなにおめかししてきたのに、綺麗だね、とか、似合ってるよ、とか気の利いた事を言えないの!?」




すると何と言うことでしょう、何故か悪口を言われていました。あちゃぁ、確かに一言似合っていると褒めておくべきだったかもしれない。少し後悔しながら声を出してみると、なぜか綺麗だったに変わっていた。しかも吃りながらでしか声も出ない。…おかしい、似合っていると言うはずだったのになんで…?



少し困惑しながら彼女にそう言うも、僕の視線は彼女の姿に釘付けにされていた。またそんなはしたない格好をして…。そう思いつつも、月の光に照らされた彼女の肢体に魅了されていた。…なーんて、何言っているんだか。




「とりあえず勝手に入ったことは後で謝るから、服着ようか。その格好は目に悪い」




別に子供なんて目に悪くねーです……何言ってるんですか僕。うん? 本当に何を言っているんだろうか…? お酒が回ったせいか、はっきりしない頭から捻り出すように服を着ろと言った時、僕はまるで冷水を浴びさせられた気分になった。自分がどう言った状況に陥っているのかを理解してしまったのだ。





つまり―――目の前には下着姿のレミリア→それを凝視するお姉さん好きの男→恥ずかしさのあまり悲鳴を上げるレミリア→皆が駆け付ける→変態趣向と勘違いされて社会的に死亡




「待ったぁ!!」




必死だった。本気で社会的に死ぬかどうかを賭けた世紀の一戦だった。おそらく自己最高の踏み込みでレミリアの口を押さえることに成功した…が、勢い余って二人仲良くベッドに沈んでしまった。これはむしろ、前より不味い状況なんじゃ…?



そう思った僕は慌てて退こうとするも、下に居るレミリアが邪魔で上手く力が入らない。ふがふがと何かを訴えている口を押さえるためにも片腕は塞がれている。時々艶のある声なき声を上げるレミリアに僕の冷や汗は増していくばかり。正に万事休す。こんな所を誰かに見られたら間違いなく死ねる。




「あ~レミリア…? 僕ちょっと退くけど、騒がないで貰える…?」


「へ…? ――――――――――――――――――――――――ウン、ワカッタ。フクキルカラ、ドイテクレル?」


「あっ、ありがとう」


「ウウン。ダッテ、ハジメカラシタイモンネ?」


「…? 何言ってるのかは解らないけど、とりあえず服を着てね。あっち向いてるから」




何故かカチンコチンに固まっているレミリアを尻目に、僕は背を向けた。いくら小さいと言っても、もう紅魔館という組織の主となったレディの着替えを見るのは失礼だろう。…下着姿を見るのもどうかと思うけど、それは事故だよ事故。




「着替え終わったわ…」


「解った。じゃあ振り向くけどいい?」


「いいよ…きて…」


「…?」




振り向いた時、何時もの白い服を着たレミリアがベッドに座っていた。が、何故だか高いお店…なんのお店かは突っ込まないでくれるとありがたい。ちなみに知っているだけで、断じてそこにだけは行ったことはないと亡き零夢に誓って宣言する…に勤めている人たちが取るようなポーズで横になっていた。あまりの突然の出来事と、何故レミリアがそんなことを知っているのかという思考が頭を支配して、口をポカンと開けて呆然としてしまった。




「come on!」


「……レミリア? 何処でそんなの憶えたの?」


「図書館の本」


「先生ぇ……」




本を集めるのが好きだとは聞いてたけど、そんなものまで集める必要ないじゃないですかぁ…。貴方の娘さん、酷い勘違いおこしてますよぉ…。




「…あのねレミリア、こういうことは好きな人とするんだよ? 君はまだ幼いから変な思い込みをしているんだ。女の子はね、決して自分を安売りしては駄目なんだよ」




本当はこんな軽い行いをするレミリアに本気で怒りたかったけど、努めて優しくそう言った。きっとこの子は何も解っていないんだ。興味があって調べたのはいい、どうせこの先必要になる知識なのだから。でも実際に行動を起こすとなると話は別だ。




「だから――――――ってまだ話は終わってないよ!?」




僕が更に説教を続けようとすると、何を思ったのかレミリアはスタスタと歩いて部屋の中を移動する。いったい何をしようというのか? するとレミリアは綺麗な木箱の中からワインを一本取り出し、




「遊びでやってんじゃないのよ!!」




僕に向かってそう吐き捨ててからワインを飲んでいった。小さな口では瓶から流れ落ちるワインを受けきれなかったのだろう、零れた雫が咽喉を通って服を濡らした。…あんなに一気にお酒を飲んで大丈夫なのだろうか。




「あそひでこんらこと、れきるわけないわひょ! わらしは! やあとが! すひなの! わはる!?」


「何言ってるかさっぱりだよ!?」


「むぅ~~~~~! そほにすわひらさい!!」


「とりあえず落ち着いて!?」


「すはるの!!」


「…はい」




酔った勢いに負けた僕は指で示されたベッドの上に座り込んだ。すると鬼気迫る表情で僕を見つめるレミリアもベッドに上がり、対面するように座った。窓から差し込む月の光がお互いを照らし、頬を真っ赤に染めたレミリアの顔が目に映る。…僕は、いったいどんな顔をしているのだろうか。





「わらひは、あならがすひ」


「…家族として」


「ちがふ!」


「じゃあ、どういうことなんだよ…」




そんなの、聞かなくても解っているくせに。僕が自分でそう思ったのか、それともレミリアが僕にそう言ったのかは定かではない。でもこの時、僕の頭ははっきりとそう言っていた。聞くだけ無駄だと、今まで逃げてきた想いからは、もう逃げられないのだと薄々感じて来ていた。




「とりあえず酔いを覚まそう、じゃないと会話が成り立たない。コップと水は…あれ、ここには置いてないの? 仕方ない、魔法で――――――」


「出さなくていいわ。こんなこと、酔った勢いじゃないと言えない」




今までの呂律が回っていなかったことが嘘のように、レミリアは流暢にそう言った。酔った振りをしていたのか本当に寄っていたのかは解らない。でも未だに顔は真っ赤に染まっている。でもそれは酔っているからなのか、それとも…。




「もう一度、何度でも言うわ。――――――好きよ。私は貴方のことが大好き」


「……………」


「家族としてじゃない。一人の男として、貴方が好き」


「……………」


「何処にも行って欲しくない。ずっと傍にいて欲しい。危険な事もして欲しくない。……でも、無理よね…。だって貴方は大和だもの。それが、私の好きになった大和だから」


「…………」


「諦めようって…何度も叶わないって思ってた。それでも諦められなかったから今も頑張ってアピールしてるの。でも今日の金髪の子との間柄と、さっきの大和の対応で解ったわ…。大和は私とは違う場所に立っている。私なんかじゃ「それでいいの?」 え…?」


「僕が言えることじゃないけど、それって簡単に諦めていいモノなの? 譲ってもいいモノなの? レミリアにとってそれは、その程度のことだったの?」





僕は決して諦めることは出来ない。零夢を諦めることなんて出来なかった。だから最後まで、最後の最後までずっと傍にいて、一緒の時間を過ごした。今だってそう、他人の思惑で生きている人生から抜け出すために、必死に努力している。ルーミアちゃんだって、母さんだって、紫さん達だってそうだ。だれもが諦められないモノ、譲れないモノの為に必死に努力している。だから想いがぶつかるんだけど、それすら乗り越えていければ、きっとその先には素晴らしい世界が待っていると信じている。





「だからレミリアも、諦めたら駄目なんだよ。…ほんと、言えたことじゃないんだけど」


「……諦めなければ報われるのかしら」


「解らない…。でも、悪いようにはならない。それだけは約束できる」


「そう……。―――――――――私は、大和が好き。大和は、私が好き?」





真摯に見つめてくるレミリアを見て、僕の知らない間に成長したのだと思った。人とは違って、妖怪は成長が遅い。特にレミリアたちは身体の成長にそれが著しく見られている。けれど、それは見かけだけのことだった。心はしっかりと、強く成長している。何時までも変わらない人なんていない。もう、子供扱いはできないね…。




「今はまだ断言できない。妹として好きだという感情の方が大きいから。でもきっと、今までみたいな子供扱いは出来なくなると思う」


「ふふ、それを聞いて安心したわ。…だったら覚悟しなさい、絶対に振り向かせるから」


「うげ…まるで輝夜が増えたみたい」


「輝夜…? ちょっと大和、貴方まさか…!?」


「あ゛!?」





ヤヴァイ、口が滑った





「ちょっと…いったい何人に好かれてるの!? もしかして、巫女の代わりがもういるなんて言わないわよね!?」


「いるわけないよ!? それにレミリア、ちょっと深くまで踏み込んで来てない!?」


「当たり前よ! もう隠すモノも何もないのだから、ガンガン行くわ!」


「だからって服を脱がないの!? ……このッ、こっちににじり寄らないの! お兄さんはそんなはしたない子に育てたつもりはありません!」


「子供扱いしないんじゃなかったの!?」






ぎゃあぎゃあと、薄暗い廊下に響く二人の声。月に照らされた夜に想いは告げられ、新たな関係の始まりを祝福するかのように淡く月が輝いた。これは一つの想いを伝えた吸血鬼のお姫様と、そんな彼女を迎えに来た王子様の物語。




「ま、この調子じゃお姉様もまだまだかなぁ~。さて、と……わたしもそろそろ頑張ってみようかな~?」




そして、それを聞いて微笑むお姫様がもう一人。






やることなくなってきたからエロに走るしかなくなったじらいです。いや、本当は部屋でゆっくりワイン飲みながらレミリアが想いを告げて…なんてロマンチックなものにする予定だったんですよ。でも何故かこんな形に…。書いてて思ったのですが、どうも私は話が長くなればなるほど雑になっていくみたいです。だからなのかも。…あるぇ? これ前にも書いた気が…。



正直最後の方は何を書いているのか理解不能でした。一応見直しましたが、おかしいだろこれ!? と思う所があれば言って貰えると嬉しいです。



気がつけばユニークアクセス数が10万超えてました。そして最近はお気に入りも増えて来ているようで…感謝です。モチベーションも上がります、ウィーン。せっかくなのでユニーク記念でもしようかと。やるとすれば…要望があればそれにします。話のタネを下さい。あと十五夜もやりたいなぁなんて思ってますが、時間がたりるのか心配です…。




旅行から帰って来ると台風直撃。しかもリアルで家が流されそうな現時刻。周囲の地域は避難勧告が地味に出てたり…。と、とりあえず脱出準備だけは完璧です。この鍛え抜かれた逃げ足には自信がありますよ! とりあえず今日は寝ずに家の番をしなければならないようです…!

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