何でもない日常が楽しいって感じる
「なんかもう、一気に疲れた気分…。僕もう一回寝るけど、ルーミアちゃんはこの後どうするの?」
「わたしも一緒に寝るー。もちろん布団は一つでOK?」
「No,子供は外で遊んできなさい」
「ご主人さまは年上好きじゃなかったのかー?」
「僕より年上なんですか!?」
ルーミアちゃんの暴走・藍さんの調査なんて濃い過ぎる午前を過ごして疲れ切った僕は、昨日のお酒も抜けきっていないこともあって、今日一日は家でごろごろしていようと二度寝に入ろうとした。ならば私もと、もはや僕の隣が定位置になりそうな…悪友? 何故かご主人さまとか言われてるけど、僕にしてみれば悪巧みをする友達です。
友達だ、なんて言っても本人は納得しないだろうけど、僕は子供を侍らすような変態的思考は持ち合わせてないので断固拒否します。出来れば呼び方も大和に変えて欲しい。知らない人が聞いたら確実に誤解されるから。
…もういいや、面倒臭いし寝よう。もちろん布団は二つで。寝てから考えるよ…。
そんな訳で横になったのはいいけど、最近特にべったりなこの子がそう簡単に諦めてくれる訳もないわけで。ごろごろと転がって布団に侵入してくるの金髪の小さな悪魔。これがボンッキュッボンッなお姉さん系だったら…なんて思うのは実際に変身出来るこの子相手に対しては愚の骨頂でしかない。むしろ本気で迫られたらどうしようもないので、逃げるために僕もごろごろと部屋の中を転がっています。
いや、立って逃げろよ。なんて言葉よりも先に眠気が吹き飛んで吐き気が沸いてた。二日酔いなのに転がり回った僕の阿呆。
「う゛ぇ゛気持ちわる…。ルーミアちゃん水とって」
「ご主人さまは鬼の子供なのにそんなにお酒強くないよね」
「肉体的にはちょっと変わった人間なだけだから………ん?」
渡された水をちびちびと口に運んでいると、遠くから知らない魔力反応が近づいてくるのを見つけた。…でも珍しいな、魔力持ちはほとんど魔法の森に住んでいるから知ってるはずなのに。何でか知らないけど僕が魔法の森の主(仮) みたいに言われてるから、これでも気には懸けてるんだよね。言ってるのは森の木とか生き物とかだけだけど。
まぁそれほど強い魔力は感じないから問題ないと思う。何かトラブルでもあったら僕の耳にも入って来るだろう。それにわざわざ森の目の前にある僕の家に来るわけでもないだろうし。
「反応、扉の前で止まったね…。ご主人さまアレだし、わたしがヤろうか?」
「待って…あっちは何もする気が無いみたい」
敵意…とでも言えばいいのか、感じられる魔力に棘々しいモノが感じられない。と言うか、むしろ必死で敵意が無い事をアピールしているかのような慌しい印象すら感じられる。
「ご、ごめんくださ~い」
すると少し緊張した様子の声が聞こえてきた。家に踏み込んでから挨拶をする某焼き鳥屋さんや、伝言を伝えるためだけに家に忍び込む某竹林の兎さんとは違った、デキたお客さんらしい。
「また女の声、しかも初めての…。ご主人さま、今度はどこで引っかけてきたのかー?」
「馬鹿言ってないでお茶の準備でもしておいて。…すいませーん、今いきまーす」
建てる時に母さんが張り切ったか僕が張り切ったかは今となっては解らないけど、僕の家は何気に大きい。紅魔館なんてふざけた規模の建物じゃないけど、一般の家に比べれば大きいはず。永遠亭や稗田家のような豪邸とは言えないけど、頑張れば建物を二分して片方を御店、もう片方を住居として利用出来そうな大きさだ。…ここ売ったら借金返せるかなぁ。
一人住まい…今は二人だけど、無駄に大きな家の廊下を抜けて、ようやく扉を開けた。
「え、えっと、はじめまして!」
「………はじめまして」
紅い髪に紅い目、翼を生やした綺麗な御方が立っていました。オマケにボンッキュッボンッ…まではいかないけど、それなりの御方で何が言いたいかと言うと…とりあえず好みです。御近づきになりたいね!
◇◆◇◆◇◆◇
ドンッ!!
勢いよく置かれた湯のみ茶碗から、熱したお茶の飛沫が飛び上がって台を濡らした。そんな勢いよく置いたのは我が家の新家政婦ことルーミアちゃん。にこにこと無邪気な笑顔を浮かべながら、いったい腹の中ではどれだけ黒い事を考えているのだろう。歯ぎしりが鳴りやまないことから心中穏やかじゃないとは確かだろうからね。…ってこらこら、妖力出して威嚇しないの。小悪魔さんがプルプル震えてるじゃないか。
ああ、この翼の生えた女の子は小悪魔って言うらしい。パチュリーの使い魔として呼ばれたらしいけど…パチュリーめ、こんな可愛い人を召喚出来るなんて羨ま…もとい、こんな有能そうな人を召喚出来るなんて…妬ましいぞ!
「ぐぬぬぬぬ…」
「(プルプルプル…)」
震える姿も実に可愛いです…。
でも小と付くように力は弱いみたい。今も僕の隣に座っているルーミアちゃんを怖がっている。リボン代わりの御札で妖力押さえられているはずなんだけど、本人からは何とも言えないオ-ラが、ね…。いや、平然としてるけど僕も怖いからね? …でっでもまぁ、この女狐め! とか、実際に襲いかかったりはしないだろうから僕も平然としているんだけど。
「この女狐めッ!!」
「ちょっ!?」
「ヒィッ!?」
「なんなのだその胸は!? 封印されてるわたしへの宛てつけなのかー!?」
「どうどう! 落ち着いてルーミアちゃん!!」
卓袱台に足のっけるの禁止! 壊れるから!!
「離してご主人さま! じゃないとこいつをヤレない!」
「やらなくていいから!?」
本当に封印されてるのか疑ってしまうほど元気が溢れてますねお嬢さん!? フンガー! なんて女の子が言う言葉じゃないよ!? …仕様が無い、僕もこんなことで怒りたくなかったけど。
「…やめなさい」
「ッ…はい…」
少し力を込めてそう言うと解ってくれたのか、足を降ろしてくれた。シュン…と項垂れているこの子を見ると、何だかすごく悪いことをした気分になって来る。その姿が余りにも悲壮感漂っていたので、仕方なしに胡坐を掻いて膝の上に座らせてあげた。すると今までの姿が嘘だったかのように、まるで子猫が甘えるように足の上で笑っている。咽喉は鳴らしてないけど。
…はぁ、なんでこんなにも懐かれたのかなぁ。
「ほぇ~、あの話は本当だったんだ…」
「…どんな話かなぁ?」
「な、なんでもないです! そっそれよりもですね、今日は用があってこちらに参らせてもらいました。実は伊吹さんに我らが主、レミリアお嬢様より招待状を預かって来ました」
我らが主…? ああ! レミリアが遂に紅魔館の主の座を馬鹿親から奪い取ったのか! さてさて、だいたいどんな内容かは予想がつくけど、今は渡された招待状を読んでみよう。
『ヤマトへ。お姉様が紅魔館の主になったから皆でお祝いパーティーしようね!』
「………小悪魔さん? これ、レミリアじゃなくてフランが書いた奴じゃない?」
流石は紅魔館、僕の予想の斜め上を爆走してくれる。スカーレットクオリティここに極まるってやつだ。まさか招待状が新しい主からではなく、その妹からだなんて思いもよらなかったよ。
「え…? …す、すいません! 妹様からお嬢様のだと渡されたので、私ったらそれを信じて…。本当にすいません!」
「別にいいじゃないですか、それくらい。それにあの姉妹っぽくていいと思いませんか?」
「駄目です! 今回はお嬢様にとって大事な…ハッ!?」
「大事な?」
「な、何でもないです!」
「…小悪魔さんって、天然だとか言われません?」
「ッ~言わないでくださいよぉ~」
な、なんて可愛さなんだ!? クッ、使い魔を召喚したくなる衝動が僕に…。静まれ、静まるんだ僕の使えもしない召喚魔法よ…。新しい恋をしろなんて言われたけど、幾らなんでも浮気はまだ早いぞ…!
「と、とにかく紅魔館に来ていただけますね?」
「もちろんです。あ、祝いの品を買いたいので人里に寄ってもいいですか?」
「はい! お嬢様も御喜びになります!」
「わたしも行くよー」
「「…え゛?」」
◇◆◇◆◇◆◇
所変わってここは人里。今の僕にとっては金摂りの里。ぐぅの音も出ないほど絞りとられた憎き里でしか買い物が出来ないなんて、幻想郷はいったいどうなっているのだろうか。だからごめんね、レミリア。今の僕には安っぽい物しか買えそうにないよ…。なんて一人涙を流しながら人里で安物を探そうと思い歩いていると、必死に頭を下げている変な人を見つけた。
「本っっ当に申し訳ない!」
「いいですって、別に謝られる程のことでもないですから。慧音さんは酔った時の記憶が無いって言うし、それに僕だって良い物見れましたし…」
「…他の者も言っていたが、いいものとは何のことなんだ? 気になっているのだが、粗相をした私からはどうも聞きにくくてな…」
「気にしたら負けです」
「わたし知ってるよー?」
「本当か!?」
「慧音さん、この子の発言の9割は嘘で出来てますから信じないほうがいいです」
「いや、しかし…」
「ほぇ~、人里って初めてですけど…案外拓けてるんですね」
変な人の正体は里の住人に必死に頭を下げている慧音さんでした。いったい何をしているのだろうかと声を掛けようとしたところ、血相を変えた慧音さんがそのままダイブするかの勢いで迫って来た。そのまま両肩を掴まれて真摯な目を向けられた時には、僕も混乱の極みにあって…。
一瞬目を閉じて待ち構えた愚かな僕を、背中にへばり付いているルーミアちゃんが正気に戻した。…仕方ないじゃないか、あんな真摯な目で見つめられたら誰だって想像するよ…。
「本当に気にすることじゃないですよ? あ、でもどうしてもと言うのなら提案が。昨日のアレ、僕と二人で割り勘にしません?」
「頑張ってご主人さま! 借金減らすチャンスだよ!」
今、慧音さんは僕に対する罪悪感と自分の犯した粗相で胸が押しつぶされそうなほど苦しんでいる。だからこその提案だ。でも勘違いしてもらっては困るな。別に弱みに付け込もうだなんて微塵も思っていないよ? むしろそんな慧音さんを助けるための妥協案と言うモノを提案するのが、真の友だと、そうは思わないかね? そう思うだろ、君。
「すまないが、無理だ」
「へぁ?」
即答!? 今まで見せていた僕への罪悪感は!? 自分の粗相への心配はいったいどこへ投げ捨てたの!? 少しは昨日の自分を知った方が、僕にとっても里の人にとっても良いことだと思うよ!?
「私はね、働き手がいない、か弱い女の一人暮らしだ。解るだろう…?」
何を仰るハクタクさん、貴方自身が働き手じゃないですか。それにか弱い人は肩に乗せた手に力を籠めるなんてことはしません。むしろ自分を知るために払った方が身のため…
「い ぶ き く ん?」
痛い痛い!? 肩がメキメキ言ってる! 畜生、この人昨日から容赦なくなってきてないか!?
「りょ…了解、です」
「…ふぅ、解ってくれたか。ところで今日は何をしに? まさか昨日今日であの料金を払えるわけもあるまい」
そう思うのなら、少し肩代りするかあの場で自重して欲しかったです。
「紅魔館の主が変わったので、その祝い品を買いに」
「何だと!? それは本当か伊吹君!?」
「ええ、そうですけど…」
「…一大事だぞ、これは。その者が人里を襲うなんてことになったら…」
うんうん唸っている慧音さんも心配が尽きないんだろう。確かに紅魔館には前科があるからね…。あれ? でも確かあれは紫さんから条件を出されて解決したってレミリアから聞いてたけど…?
「それはないから安心するといいぞ、上白沢慧音」
「お前は確か八雲の…」
「藍だ。…数時間ぶりだな、大和殿」
噂をすれば、というのはどうやら本当らしい。数時間ぶりに見た藍さんだけど、今回は本当に偶然みたいだ。買い物籠の中に大量の食材が詰め込まれている。
「藍さんは買い物ですか。何時も此処で?」
「ああ、君が採って来た物もよく買わせて貰っているよ。紫様も褒めているぞ? あの子が採って来た物は美味しい、とね」
「あ、紅魔館でもそうお嬢様方が言ってました。ちなみに執事長が買い出しに来てるんですよ?」
「それは…照れますね」
藍さんを目の前にしても普通に会話することが出来るのは、僕が何時も以上に疲れているからなのだろうか。朝に会った時に沸いて来たようなどす黒い感情はなく、あるのは全てを知る前の穏やかな感情だけだった。
「すまない、紅魔館のことを詳しく説明してもらえるか?」
「もちろんだ。後で詳しく説明しよう、今まで説明していなかった私達に非があるのだからな。まったく、紫様が我儘を言わなければもっと早くに説明出来ていたものを…」
「相変わらず苦労しているんですね」
「出来れば変わって欲しいところだよ…。ああそうだ、朝に伝え忘れたことなんだがな、博麗神社に新しい巫女がやって来たんだ。すまないが、大和殿のほうで面倒を見てやってくれないか? 勝手知ったる神社だ、君ならばと頼んでみたが…どうだろう?」
「ほう…博麗零夢に続く新しい巫女か。気になるな」
新しい巫女、か。零夢の願いでもあるし、僕にも異論はない。あるとすれば、これから起こるであろうことに巻き込まないように注意することくらいか。もう零夢みたいな不幸な出来事を生み出さないためにも、出来るだけ距離をおいてサポートに回るだけにしよう。
「はい、大丈夫です。零夢からも頼まれていたので、最初からそのつもりでしたし」
「助かるよ。では私の方から彼女に連絡を入れておくから、出来るだけ早く行ってやってくれ。…すまない、待たせたな。では紅魔館のことについて…」
紅魔館について話し始めた二人を置いて、僕らはまたお店を回り始めた。そんな藍さんと会った僕を心配してくれているのか、背中のルーミアちゃんが後ろ頭を撫でてくれる。可愛い子め、へばり付いているのもしんどいだろうから、おんぶしてあげよう。
でも心配してくれなくても大丈夫だよ…未来は視えているはずだから。
「さて、僕らも御祝いの品を買って行きますか!」
「おー!」
「はい!」
まぁとりあえずは、新しく主に就任した小さな女の子の御祝いをしに行こうじゃないか。
サブタイがまったく思いつかないじらいです。最近は涼しいので外で走り回っても汗が…出ますね。滝のように出ます。運動不足を感じさせられますよ…。
今回もグダグダでした。むしろキャラが多すぎてどのセリフが誰か解らないかも。
オマケにルーミアのキャラが固定出来なくて困ってます。台詞とか特に。ヤンデレにするかデレデレにするかも迷ってます。むしろ今のままじゃマスコットみたいなんでw
次回は久々のおぜう暴走…ですが、遅くなります。ちょっと旅行にでも行く予定なので。…男だけで旅行に行って何が楽しいのやら、私にはまったく解らないですね! 華がないですよ、華が。むさくるしいだけです。
でもこの3日で仕上げれたら投稿しておきます。零の軌跡が終わればですけどね! 遂に第4章入りましたよ! この思いは活動報告にでも書いておくので、それ見て笑ってやってください。