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東方伊吹伝  作者: 大根
第七章:未来を見据えて
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人生って何があるか解らないよね

何時もよりグダグダです。キャラ崩壊に注意して下さい



「ご主人さま、昨晩は楽しかったね!」


「知りません、覚えてません、やってません!」


「いい加減に認めようよ~」


「…それよりもルーミアちゃん見てよこの財布。可哀そうだと思わない?」


「後悔してないし反省もしてない。両方の意味でごちそう様なのか」




突然で申し訳ないけど一つ言わせて欲しい。僕は無一文である。言い方を変えてみると、無一文にさせられました。身に覚えのないことを言うルーミアちゃんもどうにかしないといけないけど、これでは生活ができない。口を開けば『金をくれ』 が口癖になってしまいそうなくらいだ。更に無一文どころか多額の借金すら出来てしまった…と思う。これから先のことを思うと非常に泣きたくなるのだけど、そこは僕も男の子。溢れんばかりの涙をぐっと堪えて雨のせいだと言い張ります。




何故僕が無一文になったのか? それを知るには昨晩まで遡ってみようか…





◇◆◇◆◇◆◇





「……妹紅…?」


「やっと起きたか。身体の方は大丈夫か?」


「うん…見た目よりはだいぶね。綺麗に痛めつけられたから治りも早いはずだと思う」


「…それはそれで怖いな。なら行こう、慧音が待ってる」




妹紅に家まで運んで貰う様に頼んだはずなのに何故か慧音さんの家で目が覚めた僕は、あれよあれよと言う間に里で一番高級な料亭に連れて行かれた。こんな料亭で食べられる程のお金を今は持ち合わせてないよ? そう言った僕を完全無視した妹紅は、僕の腕を引っ張ってどんどん奥へと突き進む。


道中には部屋に入りきれなかったのか、大勢の人が酒を片手に酔っぱらっていた。中には子供達の姿も見られる。もちろんこちらはお酒ではなく、お茶と料理のみだったけど。どうやら既に宴会が始まっているみようだ。



何か祝い事でもあったのかな? そう思いながら歩いていると、何やら不吉な声が耳に入ってきた。




「今日は大和の奢りらしい。命一杯飲んで、あいつの懐を軽くしてやろうな!」


「最近元気がなかったのが治ったらしいからな、景気づけにこれ一杯!」


「く~ッ! 他人の金で飲む酒は上手いねぇ~!!」




…ちょっと待て、僕の奢りだって? この人里最高級の料亭で僕の奢り? 懐を軽く? 馬鹿言っちゃいけないよ。この人数でこの料亭、手持ちとか家に置いてあるお金とか関係なしに、これじゃ間違いなく借金生活まっしぐらだ。




「もっ妹紅? これはいったいどう言うことなんです…?」


「あん? お前の復帰祝いが何時の間にか大きくなっただけだよ。喜べ大和、お前の復帰祝いに里中の人間が今日ここに集まったぞ。ああ、比喩じゃなくて言葉通り全員な。もちろんお前の奢りで話が着いてるから観念しな。ああ、お前の財布の中はもう空っぽだぞ。私が慧音に渡したからな」




そう言われ、慌てて財布を確認するも既に軽くなった布切れだけだった。それを見て項垂れている僕の肩を叩くのはニヤついた妹紅。何処で貰ったのか、手には一升瓶が持たれている…っておい!? それ幾らすると思ってるの!? しかも里中!? この人達の子供の夕飯はどうするの? もしかしてそれも此処で僕持ち? 里の人口がどれだけか解って言ってるの? 僕、本気で生活出来なくなるよ?


寝起きの頭がぐるぐると、嫌な予感で満たされていく。しかし驚きはこの程度で終わりはずもなく、奥の部屋へと進むに連れて宴会場は更に混沌としていく。




「見ろお前ら! あっちで慧音先生と黒いお嬢ちゃんが飲み比べしてるぞ!?」


「わははーどんどん酒持ってこーい!!」


「何だこの酒は! 上手いじゃないか!? えぇい造った奴は私の頭突きをくれてやる、表に出ろぉ!!」


「「「「押す! 先生の御凸、味わわせて貰います!!」」」」




酒を飲んでも飲まれることのない慧音さんが箍を外してしまったのか、一番奥の席で持って来られる酒を浴びるように飲み干していた。いったい何処で何を間違ったのか、清楚な慧音さんが姐御な慧音さんに変身してしまっているではないか。


そしてその隣ではどうやって入りこんだのか、家で留守番をしていたはずのルーミアちゃんが酒と摘まみに舌鼓を打っている。二人とも完璧に出来あがっているようで、酔っぱらって口に入れられなかったお酒が服を濡らし、身体のラインが完全に浮き上がっている。…うむうむ、これは眼福です。ってそうじゃなくてだね…。



一人この雰囲気に乗っかれない僕を傍目に男衆はそんな慧音さんを見て歓声を上げ、それに気を良くした慧音さんは更に酒を豪快に呷っていく。…ルーミアちゃん(小) を見て歓声を上げる奴等なんて僕の目には入って来ない。来ないったら来ないのだ。




「残念だ…本当に残念だな大和…。慧音と潰れるまで一緒に飲んだことの無いお前は知らなくて当然だろうけど、あいつは本気で酔うと人が変わったように凶暴になるんだ。ああなったらもう私にだって止められない、本気で破産を覚悟しておくんだな。…同情するぜ」


「ちょ―――」


「おお主賓! そこにいるのは主賓じゃないか! 早くこっちに来い、私が酒を注いでやろう!」


「ほら早く行け、私はあっちで静かに飲ませて貰うから…っさ!!」




慧音さんが大声で僕を呼んだからか、周囲の目が完全に僕に集中している。いやぁ照れるなぁ…なんて軽い冗談も出ないくらい、いろんな意味で怖いです。その光景にたじろいでいた僕の背中を、妹紅は容赦なく強く押してくれた。酷い。そして野次やら拍手やらで騒々しい輪の中に僕は放り込まれた。気分は見世物だよまったく…。




「飲め」


「いや、あの、慧音さん…?」


「私の酒が飲めんのか」




お前本当に誰だよ、なんて聞く度胸が僕には無かったです。




「い、いただきます」


「タマついてたら、どう飲めばいいかくらい解るよな」




慧音さんが僕に酒を渡すと、つい先程まで騒がしかった会場が恐ろしいほど静かになった。この場に居る誰もが僕を見守っている。完全に見世物な上に引くに引けない。どうしてこうなったのか? これも僕の奢りなのか? ルーミアちゃんは何でいるの?



なんて理屈っぽいことはもう全部投げ捨てて、僕は酒を呷った。もう考えるのが面倒になったんだ、てへ。




「「「「しゃぁああああああああああああああああああああ!!」」」」




御望み通り全部飲みほしてやると周囲から雄叫びが上がった。はっはっは、もう知らない考えない! ヤケクソでも何でも今を楽しんでやるぞコンチクショー!




「よ~し教え子共、今日は飲むぞー!!」


「「「何処までも付いて行きます、慧音センセーーーーーーー!!」」」





◇◆◇◆◇◆◇





…とまぁこんな感じで僕も宴会に突入して嵌めを外しちゃったわけです。暴走した慧音さんの、非常に愛の籠った頭突きを避けながらだったけど、久しぶりに多くの人と触れ合えた楽しい一夜だった。




特にアレだ、一郎さんとの話は盛り上がったね、うん。


何を話したかって? そりゃあ服が身体に張り付いて身体のラインが見え見えだった慧音さんに決まっているじゃないか。気付けばほぼ男衆全員が集まってあの子が可愛い、あの子が狙い目だなんて話も始まっちゃってさ。いやぁ年頃の初心な青年を弄るのは楽しかったねぇ…。人を弄るのがこんなに楽しいとは思わなかったよ。…やられる方はたまったもんじゃないけどさ。



そうこうしている内にそれが女性達にばれて、一郎さんを始めとする既婚者は嫁にしょっ引かれて行った。霧雨家の嫁って手加減なしなのね、思いっきり顔面を強打たれてた。浮気者はしょうがないな! そう言って僕も含めた半分以上はその光景を見て笑っていたんだけど、気付いた時には僕にとっても笑いごとじゃなくなってた。酔っぱらったルーミアちゃんが僕の首根っこを掴んで攫おうとしたのだ。結婚するー、とか言って。




幼女か!? やはり幼女なのか!?



なんてふざけた事をぬかした独身貴族を気取った結婚出来ない男共には、しっかりと愛の籠った拳骨をくれてやった。何度でも言うけど、僕は『お酒の入っていない』 慧音さんが好みのタイプです。結局その後も皆で酒を飲んで食べて暴れて―――そこから記憶が無いんだよね。でも目が覚めた時には家の床で寝転がってたから、ちゃんと帰ってこれたとは思うんだけど…。




問題はその後。隣でルーミアちゃんが寝てた。それはまだいい、何時も勝手に布団を敷いて寝てるから。でも何故か僕のすぐ隣で『例のあの後』 のように衣服が着崩れしていた。





そんな、まさか…? 嘘ぉ? …ないない! 例えナニがあってもそれだけは絶対にない! 証拠だ、証拠を出せェッ!!




なんて一人悶えながら証拠を探しているとルーミアちゃんが目を覚ました。←今ココ





「じゃあ働こうか。主に借金返すために」


「うぅ、わたしの為に頑張ってねあなた…」


「よし、一度表に出て肉体言語で会話しよう。話はそれからだね」


「もう、昨日に続いて今日は外でだなんて…」


「もうヤダこの子…」




この際輝夜でも母さんでもいい、誰でもいいから僕を助けて―――




「失礼、大和殿。少し尋ねたいことが…何をしているのだ?」



そんな僕の心の叫びが天に届いたのか届かなかったのか、運が良いのか悪いのかは知らないけど僕の家を訪ねる人がいた。あの紫さんの式、八雲藍さんだ。しかも家の扉を開けたタイミングが非常に拙い。だって僕、現在ルーミアちゃんに伸し掛かられて肩揺すられてますから。




「いえ、ちょっと取り込み中なんです。変な意味ではなく」


「ご主人さまは責任とらないのか?」


「責任…? 大和殿、あまり良い趣味とは言えないぞ」


「誤解ですって! 藍さんも騙されないでくださいよ!?」




あーもうっ、何でこうややこしくなるかなぁ!?




「…ふむ、見た感じそれらしい痕跡は無し。あの臭いも確認出来ず、か…。大和殿の言う通り、私の早とちりだったようだ。すまない」


「あ、いえ解って貰えたならそれでいいんで…」




臭いって藍さん、僕少し貴方が解らなくなりましたよ。でも流石、何時でも冷静なんですね。そう言う所は凄く羨ましいですよ。ええ、そこだけは本当に…。




「むむ…何かと思えば、それを忘れてたのか」





君はもう黙ってなさい。


そして藍さん、謝るらなくていいですから。むしろ早く帰って貰いたいです。零夢の仇の一人が目の前にいると思ったら、今にも飛び掛かってしまいそうな自分が居るんです。どうやら僕は貴方と違って冷静な人間じゃないみたいです。自制を心がけていても詰め寄りたい自分が此処にいますからね。




「…しかし大和殿も変わった趣味をしている。自身の命を狙った者と共に暮らすなど、危険だと考えたことはないのか?」


「嫉妬か? それは嫉妬なのか~?」


「何、事実を言ったまでのこと。先日もここで強い結界の構築を察知したのでな。家主である大和殿が漸く帰って来たようなので、今日はそれについて聞きに来たわけだ。…大和殿、この妖怪に何かされなかったか?」


「大丈夫です。ちょっと暴れられましたけど大したことじゃなかったので」





半目になって探るように見つめてくる藍さんから、なるべく自然を装って目を逸らす。たぶん今、この人は僕の心の内を探っているはず…。



狐は一種の読心術のようなことも出来るはずだ、ルーミアちゃんからはそう聞かされた。ではどうやって? 読心術は心の動きを捉えることから始まると言われている。ならそれは僕の流水制空圏の原理と同じなんだろう。だとすれば、それは相手の目を見て心の流れを探る類の物のはず。読心術対策に大切なのは、まず目を合わせないことだと僕は結論づけた。



しかしそれでは足りない。ルーミアちゃんと僕の読みが間違っている可能性もある。だから完璧に騙し通すには、幻術で藍さんの心を気付かれないうちに騙すしかない。おそらく霊格が高いであろう九尾の狐である藍さんにどれだけ僕の幻術が効くかは解らないけど、これはもうやるしかない。出来ればもっと前準備が欲しかったけど無い物強請りだ。頼む、気付かないでくれよ…




…目を逸らして何秒経っただろうか、胸を叩く心臓の音がはっきりと耳に届く。まだか…まだなのか…?




「………解った。大和殿がそう言うのならそうなのだろう。だが何かあれば何時でも相談してくれ。私なら何時でも相談に応じるぞ?」


「あ……あはは~、じゃあ僕と結婚しません? そうすればルーミアちゃんも諦めてくれるだろうし」


「フフ、君もそのような冗談を言うのだな。では前向きに検討させて貰うとしよう」


「よろしくお願いしますね~」




最後に妖艶な笑みを浮かべ、藍さんは僕の家から帰って行った―――――――――












―――――――――ぶはぁッ、よ、よかった~~~~~………。



一気に緊張が解けたからか、身体中の空気が口から溢れ出て行った。流石に今回ばかりは騙せないかと思ったよ。寿命も何年か縮んだかも…。でもその甲斐あって結果は良好…のはず。緊張しすぎて最後に変な事言っちゃったけど、それも冗談だと受け止められたみたい。




「ご主人さま、素晴らしい演技力だね。わたし感動したよ」


「ありがとうルーミアちゃん。そう言って貰えると苦労した甲斐があったよ」


「うん。だって最後の部分とか思わず噴き出しそうになっちゃったし。…騙すためとはいえ、ちょっと冗談が過ぎたんじゃないのかー? 嫁の名前を言ってみろ、なのだ」


「……僕にしてみれば君も冗談みたいな存在だよ」




油断も隙もあったもんじゃないよ、まったく。





正直宴会だけなら今回の話いらなかったと思ったじらいです。まぁその為に藍様に出てもらったのですが…あまり必要な内容ではなかったと少し後悔。はっちゃけるのが目的だったのでどうでも良かった…とは言いすぎですかねw


慧音先生ご乱心! 普段しっかりしてる人って酔うとすごい…と思うんです。だからやっちゃいましたw ルーミア? 最後にヤンデレにしようかと一瞬迷って止めました。


次回からも更にグダグダになるかと思いますが、何卒ご容赦を。それでは



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