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東方伊吹伝  作者: 大根
第七章:未来を見据えて
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番外 今昔大和物語

これは本編ではやらなかった、もしくは都合により出来なかったネタです。こんな一面もあったのか、くらいに留めて貰えると嬉しいです。


~拾われたばかりの頃~




「びえええええええええええええええええええん!!」


「ゆっ勇儀!? 大和は何で泣いてるんだ!?」


「さあねぇ、何でだろうねぇ。あたしゃ連日の夜泣きのせいで寝不足でね、頭がこれっぽっちも働かないよ。周りを見てみな、まるでここが地獄の一丁目みたいだ」




人間との闘いの末に拾われた赤子。大和と言う名前と母親(仮) は決まったものの、誰も人間の赤子など育てたことがない。鬼式の子育て方もあるにはあるが、人間の赤子にそれが通用するか解らない。そうやって考え込んでいる内に連日の夜泣き。鬼達の疲労はピークに達していた。…一人を覗いて。




「おしめか!? それともお腹が空いたのか!?」


「お乳でもやればいいじゃないか」


「出るわけないだろう!? よしよし、母さんが付いてるからな~」




初めての子育て、初めての子供。母親となった萃香の奮闘は続く―――





◇◆◇◆◇◆◇





~大和5歳~




「お姉さん、だれ?」


「紫じゃないか、久しぶりだね。ほら大和、挨拶しな」


「大和です! 初めまして!」


「あら、出来た子ね。初めまして、私は隙間妖怪の八雲紫。貴方のお母さんの友人よ」




この瞬間、初めて2人は出会った。当時はただの暇つぶしでしかなかった八雲紫と、伊吹を名乗ることを許されなかったただの大和。当時の大和はまだ5歳。あまりにも幼く、そして今よりももっと純粋な子供でしかなかった。




「母親の真似事をしているとは聞いたけど、本当だったのね」


「ふふん、真似事なんかじゃないぞ? 大和は私の自慢の息子だ」


「あらら、熱いことで」


「紫さん、すきまって何?」


「うーん、説明しても君にはまだ解りにくいかな? そうだ、実際に見せてあげましょう」


「…その変な割れ目がすきまなの?」


「え? 私はまだ隙間を開いて…。まさかこの子…? ねえ、貴方の目には何が映っているの?」


「わかんない! 母さんたちは未来が~なんて言ってた!」


「萃香?」


「たぶん、ね…。この子は能力持ちだ。それも随分と強力な」


「……へぇ」




若干5歳にして大和はその能力を開花しつつあった。彼女がその能力の全貌を知ることはまだ先であるが、それでも彼女なりのある種の未来予知とでも言うのだろうか、大和の力を感じ取っていたのだろう。その時の八雲紫は口元を歪ませ、それはそれは愉快な笑顔を浮かべていた。頼みの母親が友人の変化を訝しげに見ているのを感じ、すぐさま表情を隠したのだが…。


それ以降は隙間を使い三人で遊んだり、萃香の武勇伝等を聞かされ終始和やかな雰囲気だったそうな…





◇◆◇◆◇◆◇





~大和6歳~




「お姉さんだれ?」


「子供…? それも人間じゃない。僕、ここで何してるの?」




無知とは罪である。そして罪であると同時に冤罪でもある。妖怪の山から抜け出す手段を持たぬ少年がどうして彼女の存在を知り得ようか。いや、知り得る術などなかった。


普段の彼女ならば幼子など瞬きする間に捻り潰せるだろう。だがそうはならなかった。子供だからか、それとも人間の子供が一人山で釣りをしている度胸を認めたのかは解らないが、彼女の気紛れによって幼い命は失われずにすんだ。例えそれがとるに足りぬ存在故に見逃したのだとしても、少年の命が助かったことは特筆するに値する。




「魚つり! でもつれなくて困ってるんだ。これじゃごはん食べられないよ」


「あ、そ。…一応聞いておきましょうか。僕、鬼がどこにいるか知ってる?」


「知らない人には教えちゃだめだって、母さんが言ってた」


「母さん? 僕、鬼の子供なの?」


「そうだよ! 母さんはしてんのうでとっても強いんだ!」


「…噂は本当だったわけね」




この頃になると、とある有名な鬼に一人の子供が出来たという噂が山以外にも流れ出していた。もっとも、まだ余り知られていない上に、その噂を笑い飛ばす者の方が多かったのだが。彼女もその笑い飛ばした者の一人だが、現実に目の前で呑気に釣りをしている子供を見ては信じないわけにはいかなかった。そうでないと、このような場所で子供が一人釣りなど出来るはずもないのだから。




「じゃあ何処に住んでいるかくらい解るわよね?」


「だから、知らない人に教えちゃだめだって言われてるんだ」


「(#`-_ゝ-) じゃあ魚をとってあげる。そうすれば知らない人にならないでしょう?」


「知らない人からモノをもらったらだめなんだよ?」


「…名前は風見幽香。(#^∀^) こ れ で い い わ ね ?」


「は、はいっ!」




ご存知の通り、水中に大きな衝撃を与えれば魚が気絶して水面に浮いてくる。ガチンコ漁と言って褒められる漁の仕方では決してないのだが、そんなことは彼女には関係ないし通用しない。



―――同士ノ河童諸君ヘ。全力デココカラ退避セヨ。水中ハ危険ナリ。繰リ返ス、水中ハ危険ナリ!!



省ける手間は省く。彼女は握りしめた拳で水辺の石を殴りつけ、その衝撃によって辺りを泳いでいた魚達がゆらゆらと浮いて流れてきた。そして残念なことに、この山の川に住むものは魚だけではない。…その光景を見れば誰もが納得するはずだ。妖怪の山では、河童も衝撃で気絶するという事実と、河童の川流れとは本当に河童が川を流れていく様を言うのだと。




「これで魚は十分でしょ? ほら、鬼が何処にいるのか教えなさい」


「アッチデス」


「そう―――」




魚と河童が同じように流れていくと言う阿鼻叫喚の光景を前に、少年は身体から沸き上がって来る震えを止められずにいた。だが少年の恐怖はまだ始まったばかりだった。彼女の手に持たれた日傘から視界いっぱいの妖気の塊、所詮レーザーらしき物が放たれたのだ。それもつい先ほど少年が指差した方向、つまり鬼の集落にだ。放出された妖気の塊が集落付近に激突し、光が弾ける。遠く離れた場所、少年のいる川にまでその余波が届き、その余波に耐えきれなかった少年は岸辺をころころと転がって木に当たって止まった。


その瞬間、山の所有者たる鬼神の怒気が一気に山を包み込んだ。鳥たちは一斉に木々から飛び立ち、大地では様々な生き物が身に危険を感じて走り出した。空ではその鳥に混じった天狗達が我先にと山から逃げ出して行く。鬼神の怒気とはそれ程のものなのだ。


そして件の少年と言えば、嘗てない程の気に当てられ逃げ出すことも出来ず、その場で気絶した。その気絶する瞬間にふと目に入った彼女の表情は、それはもう極上の笑みだったそうな…





◇◆◇◆◇◆◇





~大和7歳~




「だからこの『妖力増加装置』 を付ければ文も鬼の妖力に追いつけるかもしれないんだって」


「にとり、出来れば魔力増幅装置も欲しい!」


「まぁ待ちなよ。それはこれが完成してからだ。…文、準備はいいかい?」


「準備完了!」


「じゃあいくよ! ぽちっとな」




妖怪の山の問題児。少年と少女らがそう呼ばれるのには理由がある。




一人はその生まれ持った才能から将来を約束されていた鴉天狗。だが現在はそうではない。彼女自らその約束された将来を反故にしたのだから。天狗社会の為に生きていればよかったものを、最低限のルールを守るだけに留め、己の道楽の為にひた走ったのだ。人間に、しかもまだ子供でしかない者に誑かされた愚か者。そう影口を叩く者もいるが、それは彼女がそれでも優秀な証拠か。



一人は人間を盟友と謳いながらも人見知りをする河童。この世の物ではないような、まるで未来の産物のような物を操って摩訶不思議な現象を引き起こす天災集団の一員。彼女たち河童にしてみれば作れない物などありはしない。その謳い文句と共に今日も山の地形を変える程の発明を起こす。



一人は山に住むたった一人の人間であり、鬼の子である少年。彼の存在から魔法使い成る者を聞き、日々その存在になるために努力を惜しまない。こう聞くととても素晴らしい美談のように思える。が、それをフォローする者を思えばそうとは思えない。考えてみて欲しい。猛獣の群れに放り込まれた一匹の草食動物がいったいどういう存在なのかを。自身は気付いていないだろうが、山での少年は正にそれなのだ。いくら鬼がバックについているとはいえ、それを理解できない妖怪など山には数え切れぬほど存在する。少年が一人特訓を行えるのは、一重に哨戒天狗たちの血の滲むような努力の結果なのだ。




故にこの三人は山の問題児として、一部を除いて広く知れ渡っている。そして誰もがこう言うのだ。『ああ、またあの3人か』 と。




「成功だ! 文の妖力が膨れ上がっていくぞ!」


「でもこれどうやって止めるの?」


「あ」


「ちょっとにとり!? これ止まらないんだけ――――――




そして今日も妖怪の山には愉快な爆音が響き渡るのだった。



今回の原因→増加した妖力の暴走






◇◆◇◆◇◆◇





~大和13歳~




「あの魔道機関を改良したい? そうは言われても最近の魔女狩りのおかげで魔道具を扱う店なんて一般にはないで?」


「やっぱそうだよね…。はぁ、せっかくパチュリーが改良案出してくれたんだけどなぁ…」




大和の師父、武天が授けた魔道機関『イクシード』。込められた魔力を三倍にして持ち主に返すというある意味増幅器のような役割を果たす機械なのだが、誰がどう見てもオーバーテクノロジーの塊でしかない。しかも渡された当初はさびた鉄屑でしかなかったのだから、オーパーツと言われても頷けるだろう。それでも今では本来の形を取り戻し、新たな持ち主である大和の力になるようにパチュリーが解析・改良案を提示した。その為にイクシードを改造出来る場所を探しているのだが、魔女狩りの影響は多方面にも渡っているようである。




「まあ待ちいや。一般に無かったらワイらはどうやって魔道具の整備をすると思う? 蛇の道は蛇。ほれ付いてき、ワイら守護騎士専用の工房に案内したる」




そう言われ、案内された場所には小さな工房があった。それも人目を避けるかのようにひっそりとした路地裏に建てられており、一般人の目には確実に留まらないように配慮されていた。




「おーい爺さん、仕事やでー」


「あ、ケビンさんお久しぶりです。すいません、おじいちゃんは今出ちゃってて私しかいないんです」


「そうなんか? それは困ったな…」


「何か急ぎの用事ですか? 何ならわたしが見ますけど…」


「お、さすが爺さん秘蔵の孫娘やな。ほれ大和、物を渡し」




目の前には長い金髪に赤いベレー帽、ゴーグルという特徴的な格好をしている少女。歳は大和と同じかそれより下か、自身と変わらぬ年齢の少女に大和は内心不安がっていた。自身と変わらないような少女に師父から貰った大事な物を預けて大丈夫なのだろうか、と。




「…言っとくけど、この子は魔道具に関しちゃワイらよりも博識やで? ワイもようお世話になっとるし、深く知り合えるええ機会やないか」


「えへへ、最近は機械についても勉強を始めたんです。だからその、預けて貰えますか?」


「…解った、じゃあ頼むね。ああそうだ、これ解析結果と改良案なんだけど…」


「これは…こんなの見たことが無い。騎士団の新たな戦術魔道機? ううん、それでも規格外すぎる。造りも精巧で僅かな歪みもない、こんなの今の技術力じゃ絶対に出来ないのに…。いったい何処の誰がこんな代物を―――ってはぅ!? すっすいません! わたしこういった物を見ると夢中になっちゃって!?」


「はは、すごいね。一応解析結果と改良案があるから渡しておくね」


「あぅ…すいません…。でもこんな物、いったいどこで手に入れたんですか?」


「僕の師の一人から貰ったんだ。何時か役に立つ時が来るからって」


「そうだったんですか…。あ、この改良案なんですけど、実現するにはたぶん時間が掛ると思います。解析結果があっても実際にバラしてみないと解らないこともあるんで…」


「その辺はお任せ、ちゅうことで。大和君もええやろ?」


「うん。じゃあお願いするね?」


「はい!」




こうしてイクシードは改良され、魔法媒体としても使える短剣に搭載されることになるのだが、それは何年も先のことである。





◇◆◇◆◇◆◇





~大和14歳~




「いやぁー今回もお疲れ様」


「…………」


「大和君のおかげで今回の任務も無事成功! お互い怪我もないし大成功やな!」


「いったい誰のおかげだと思ってるんです!? 毎回毎回僕と敵が重なるように位置をとって、オマケにその後からボウガン撃つし! 避けれなかったら死ぬよね!? 僕が敵の銃弾避けてもケビンさんが死ぬよね!?」




騎士団の任務を終えて帰って来た二人は人目も憚らずに言い争っていた。とは言うものの、熱くなった大和が一方的にケビンに捲し立てているだけなのだが。しかしそれも仕方が無いことなのかもしれない。何故なら大和の言う通り、ケビンは毎回大和と一直線になるような位置取りをする。そうすることで自身に迫る攻撃を大和という盾で防いでいるのだ。そして敵に隙があれば大和の真後ろからボウガンを放つ。大和の言う通り、これなら何時どちらかが死んでもおかしくないだろう。




「おい見ろよあの二人。また言い争っているぞ」


「まあ、またあの二人? 華の騎士団にもああいう輩はいるのねぇ」




大和とケビン。名前こそ知れ渡っていないが、その格好と騎士団から流れ出る噂が噂を呼び、二人は騎士団の中でも特に民衆に知られる存在になっていた。一人は騎士が着ないような派手な礼服を纏った長身の男。一人は執事服に、背中に騎士団の紋様が刻まれたロングコートを羽織った少年。こんなデコボコ異色コンビが目立たない訳が無かった。




「ほれ大和君、人の目もあるからそれくらいにしとき」


「他人事!? まさかの他人事なのこれ!? なんなら団長に直訴するよ!? コンビ解消だって!」


「大和君!」


「っ、何だよ…」


「上手い飯でも食べに行こう」


「…は……ははははは……。その顔が陥没するまで殴ってやる! 殴ってやるぞ!!」


「止めてや、せっかくのイケメンが台無しになってまうやろ?」




こうしてまた悪い噂が流れ、それを聞いた副団長は頭を痛めるのであった。





◇◆◇◆◇◆◇





~大和 15歳~




「ケビンさん、僕はただの手伝いだよね?」


「そうやで。ただのワイのお手伝いさんや」


「じゃあさ、何でこんな重要マークが付いている書類を僕に回すの?」


「そりゃお前、その方が効率ええからに決まっとるからな」




聖堂騎士団守護騎士第七位就き特別補佐官(出向)


長い役名であるが、簡単に言うと雑用係である。しかしただの雑用係ではない。特別補佐官とはデスクワークも戦闘もこなさなければならない役職なのである。守護騎士には正騎士や従騎士が何名かで補佐をするのだが、彼のような問題児にはそれでも数が足りない。そこで白羽の矢が立ったのは彼の友人であり、彼のことを良く理解している大和だったのである。


普段ならケビンの幼馴染であり従騎士である女性が仕事をしろと五月蠅く言うのだが、生憎と今日は出張っていてここにはいない。その為に大和が重要書類を捌いているのだが…。




「止めてやるぞ…。こんな職場、絶対に止めてやる…。アルフォードが何か言ったらぶん殴ってやる…。協力関係? ハッ、だったら自分で出向すればいいんだ」


「そんなこと言わんとって。大和君に見捨てられたらワイどうすればええん」


「潔く尻に轢かれればいいよ。よかったね、墓場まで一緒だ」


「堪忍してや…今日『も』 ええ店連れてったるさかい」




ここで言う『ええ店』 とは……『ええ店』である。未成年は知らなくてもいい店である。ただ美人なお姉さんが居て、お酒が出てくるだけでなんの問題もないお店である。強いて言えば、そのお酒が銘柄以上に高値で売られているので財布が軽くなることくらいか。




「…前と同じお店がいい」


「へへ、なんやぁ? 大和君もイロイロと好みがあるんやな? この浮気もん、レミリアちゃん達が知ったらなんて言うやろな~?」


「別に何も言わないよ、ただお酒を飲みに行くだけだし。それより早くしないと彼女が帰って―――」


「もう帰ってます」




空気が死んだ。間違いなく二人がいる執務室の空気が死んだ。それも仕方が無い、二人が今一番聞きたくない声が部屋に響き渡ったのだから。


二人の男の額は汗で光っている。実は彼らが如何わしい店に行っているという噂は既に聖堂・ヨハネ騎士団内では結構有名なことなのだ。それについてとやかく言われないのは実際にその光景を見られたことが無かったことと、騎士団で問題視されるケビンでも流石にそれは、と思われていたからである。



幻術に長けた大和が追跡の目を誤魔化し、悪名高いケビンが嘘か真かをただ立っているだけで誤魔化す。そうした二重の誤魔化しによって二人は夜の街に消えてきたのだが、今回ばかりは現場を抑えられてしまった。それも厄介な相手に。会話だけとはいえ、それでも聖堂騎士団式拷問術で追求する価値があるものを聞かれた二人の心境はどれ程の言葉を以てしても形容出来ないだろう。




「ケビン、ちょっと外でお話しましょうか」


「おッ落ち着け、落ち着いてくれ頼むから! その法剣を下げようや、な…?」




こうなってしまえば最早これまで。幼馴染に剣を向けられた友人を尻眼に、大和は幻術で姿をくらまして離脱を計る。そしてそれは成功するのだが、執務室を後にする彼の耳にはある種の死刑宣告が届くのであった。




「紅魔館の方にも証拠が揃い次第、正式に報告させて貰いますね? 実は私、今日はその調査だったんです。あそこのお嬢様に貴方の身辺調査を依頼されまして。でもよかった、見つからなかった証拠が目の前に現れたので依頼は成功ですね」




後日、紅魔館に大和の悲鳴が響いたのは記すまでもないだろう。





◇◆◇◆◇◆◇




~大和永遠の16歳 幻想郷~




「ゲホッゲホ、すまないな伊吹君。子供たちを頼むぞ…」


「僕も精一杯頑張ります。だから慧音さんも安静にしてくださいね?」




人里で依頼をこなすようになった大和には様々な仕事が舞い込んでくる。食材集めやその護衛、果てには喧嘩の仲裁まで様々なものだ。そして今回は風邪で寝込んだ慧音の代わりに一日教師を頼まれた。不安はあるがそれでもやるしかない、何故なら大和の仕事は何時の間にか何でも屋に変わってしまったのだから。




「はい、皆こんにちわ。今日は慧音さんから頼まれて僕が先生だから、わからないことがあれば何でも聞いてね」


「「「はーい」」」




とは言うものの、事前準備もなく授業など出来るわけもない。更に大和が持つ知識と言えば、魔法とその効率的な運用方法。その為の数式や物理式、そして諸外国でのコミュニケーションに必要不可欠だった言語くらいか。もっとも、言語に関しては魔法を介していたため余り褒められる出来ではない。後は身体を鍛える方法だけだが、それを実践させると間違いなく死人が出るためそれは却下した。


以上の事から今回は自習でいいと前もって慧音から言われていたために今回は自習で済ませ、何かあれば大和の解る範囲で教える…となっていたのだが、ここで一つ問題が起きた。




「大和せんせー、男と女の違いって何ですかー?」




二次性徴を間近に控えた少年が大和にそう尋ねたのだ。その少年の名を一郎と言い、その後には三人の弟達が連なっている。そう、これが大和と彼ら四兄弟の初めての出会いである。



男と女。思春期を迎えた子供達なら誰しも一度は考えたことが有るだろう問題を、永遠の16歳である大和は解決しなければならない状況に追い詰められた。何せ今日は一日先生、生徒の質問にはしっかりと答えなければならない。自身の少ない知識を総動員して大和は必死に説明した。身体の造りの違いや何故かその魅力について、そして発達する心の違いを詳しく、それはもう詳しく語った。必死に説明する大和に、まるで何かの宗教にでも毒されたかのように熱を帯びていく四兄弟。その結果―――




「うん、じゃあ実際に慧音さんに聞いてみようか」




己の思考の限界を感じた大和は、自身の勉強も兼ねてそう宣言したのだ。後の寺子屋異変の始まりである。大和自身も絶え間なく押し寄せる質問に頭が追いつかなくなったのだろう、しかし宣言したのは正しく変態のそれであった。


次の日、甲高い悲鳴と鈍い音が人里に五回鳴り響いたのだが、その理由は記さずとも理解出来るだろう。






◇◆◇◆◇◆◇





~大和永遠の16歳~




大和と零夢の半ば同棲とも言える奇妙な関係が続いてから早二年。二人は何度も衝突し、その度に無益な闘いを繰り広げてきた。例えば風呂場でばったり会った時―――



「くぁwせdrftgyふじこlp!?」


「…失礼しましたー」



扉を閉める大和だが、その扉ごと大和を蹴り飛ばす零夢。もちろん直ぐに蹴り飛ばしたためさらし姿のままである。更にその姿を見た大和が…の繰り返しに逆切れした大和も応戦。




例えば残り一つの煎餅の取り合い―――



「…ちょっと、あんたその手を退けなさいよ」


「…誰がこれを買ってきたと思ってる? そっちこそ譲れよ」


「年寄りは若者に譲りなさい。あんまり食べると歯が抜けるわよ」


「ぶくぶく太りたいのか? 巫女のくせに空が飛べなくなるよ」




どちらの手が早かったのか? それは大した問題ではない。どうせ結局は組んず解れつの大乱闘になるのだから。そして何百年も生きた16歳と、若干13歳の花も恥じらう乙女の醜い争いは次第に間接を決め、『まいった』 『まいらない』 の寝技の応酬へと変化していく。ぎゃあぎゃあとお互いを罵りながらも笑顔が絶えないそんな日常。


しかしこの男女、本当に恥と言う言葉を知らないのか…





そして今日も今日とて、神社では騒がしい一日が始まる。そこには笑顔が溢れ、互いを信頼し合う二人の姿があったそうな…



「大和! あんたまた――――――」





◇◆◇◆◇◆◇




~ちょっと先の未来で~





「……………」


「どうです? 大和さんのこれまでを特集記事にしてみたんですけど」


「へ~…師匠、お前も大概馬鹿だな」


「…………捏造だよ」


「マジかよ、自分の師匠がこんなにも変態だったなんてショックだぜ」


「いやぁ~これでもまだ押さえた方なんですよ? ね、大和さん?」


「会話が成り立ってないね。とりあえず文は後で泣かす。でもその前に失礼な弟子を泣かす!」


「来いよ変態! 外聞なんか捨ててかかって来い!」


「この野郎ブッ飛ばしてやる!!」


「いったい何が始まるんです?」



大参事大戦だ。



オワレ




別にゴーグルの少女が某孫娘だなんて宣言するつもりはないじらいです。どうもお久しぶりです。


今回はPV100万記念と言う形でやってみましたが、案外楽しいものでした。本編に関わりがあるといえばあるんですけど、何故か気が楽でした。大和主観じゃないかもしれません。機会があればこう言う短い話もやってみたいです。


でも本当はもっとやりたかったんですよ。萃香暴走ルートのifとか、つい最近の輝夜爆走ルートなどなど。ここまで長い話? を読んで下さった皆様の為に後書きで輝夜verの触りだけでも…と思ったのですが、一行書いて止めましたorz 根性無しの私をどうか許して下さいw 理由? エロイのしか書けそうになかったからです(キリッ


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