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東方伊吹伝  作者: 大根
第六章:君と過ごした最高の日々
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強者の条件


「あー、くそ。勝てねえ」



大和からコイツの相手を任されてから数分、珍しく弱音を吐く。輝夜なんて比じゃない強さを誇る化物相手に粘って粘って粘り続けてきたけど、流石にもう妖力が残り少ない。私らしくもなく、早く戻って助けろなんて思ってしまう。



「貴方も損な人ね、勝てる訳ないのに時間稼ぎのためだけに残るなんて。ほら、もう解ったでしょう? 諦めてそこを退きなさい」


「残念ながら、どっかの誰かさんと同じように諦めが悪いんでね。もう少しだけ粘らせてもらおうか」


「はぁ…、殺しても死なないって本当に面倒」


「そう言わずに付き合ってくれよ」



とは言ったものの流石に手強い。だが太刀打ち出来ないほどじゃあないことも確かだ。一度だけ腕を捥がれたけど、ただそれだけ。その程度の傷なら、蓬莱人である私は瞬きする間に修復されるから問題はない。ただ修復に私の妖力を使うという点が逆に私を追い詰めているのだが、それは仕方のないこと。その他にも炎を出し過ぎたせいか、もう後がなくなって久しい所だ。



「そろそろ本気で行こうかしら。何時までも此処で時間を取られるわけにはいかないし…」


「そいつは頼もしいね」



ここまで私を追い詰めておきながら尚余裕の態度を崩さないとはね。でも貧乏くじを引いた、とは思わない。少し強がるのと同時に残った妖力で炎を纏う。こちとら今までの攻防で既にお前の弱点は把握しているんだ、此処で一度痛い目を味あわせてやらないと気が済まない。



「粉々に吹き飛ばせば復活に時間がかかるでしょう?」


「っふざけやがって、避ける隙間もねえじゃねえか!?」



千か万か、それともそれ以上の槍が視界を埋め尽くす。それはもはや弾幕ではなく一枚の壁。一つ一つに妖力が込められた槍は、その一つが鈍い光沢を放ち、敵を射殺す命令を待っている。それが目の届く範囲、すなわち視界全体を覆っているのだ。上下左右共に逃げ場はない。



「どうせ避けられないんだ。…だったら全力でいってやる! 『フェニックス再誕!!』 」



残った妖力の全てを込め、今出来る最上級の妖術を放つ。伝説の不死鳥、火の鳥を再現したそれは私の持つ中で最大の熱量と破壊力を兼ね備えた正しく奥義と呼べるもの。



「ど真ん中を突っ切る!!」
















「ねぇ永琳、大和と妹紅の闘いを見て少し思ったことがあるんだけど」


「何かしら?」


「あの妖怪に弱点なんかあるの?」


「在るわよ」



むしろ弱点の無い者など存在しない。それが精神面か肉体面かの差があるだけだ。もちろん他人に完璧と言わしめていた私にも弱点は存在する。ただ私達クラスになるとそれを隠すのが非常に上手くなるため、弱点が無いように見えるだけ。



「そうなの? 強大な妖力に豊富な手数を以て圧倒してくるあの妖怪に?」


「在る。それも致命的とまで言えるものよ」



確かに存在する。だが、おそらく今の博麗の巫女では彼女は倒せまい。あの場所で彼女を倒しきることが出来る者がいるとすれば、我が不肖の弟子である大和だけだろう。



「大和は一度だけだけど彼女に肉薄することに成功したわ。御世辞にも賢い方法だったなんては言えないけれど。その時、彼女は決定的なミスを犯した。それは私達・・なら何の動揺もなく冷静に対処できる程度のこと」














「これがどういう意味か解るか? フランドール」


「ん~。お父様なら対処出来て、尚且つヤマトを殴り返せたってこと?」


「その通りだ。ではレミリア、何故あの妖怪はそうしなかった?」



お父様なら完全に対処出来ていた…。でもあの妖怪は何か慌てたように全方位・・・に咄嗟に迎撃用の攻撃を放った。そこから何が導き出せるか? それは、



「接近戦が苦手だから、ですか?」


「正解だ。あの妖怪は接近戦を非常に嫌っている。最初こそ肩を貫かれもしたが、そもそもあれはあいつの注意不足だ。参考程度にしかならん」


「じゃ、じゃああの剣を出したのは…?」


「ブラフだ。初めに剣という接近戦用の武器を相手に見せ、接近戦の心得があることを示そうとしたのだろう。レミリア、よく覚えておくがいい。闘いとは、何も武力を以て行うだけではないのだ」















「じゃあ大和があのルーミアとか言う妖怪に勝てる可能性はあるのね?」


「十二分にあるわ。それだけのことを教えてきたし、それ並み以上の経験も積んでいる。それに輝夜、如何に貴方と云えど、もう大和相手に超高速下での接近戦で勝ちを拾うのは難しいわ。あの子はもうその領域にまで成長している。あとは…」


「大和がそれに気が付いているか、ね…」



多くのことを教えてきた。だから、今の大和なら…














「じゃあ私が後衛、大和が前衛でいいのね?」


「うん、それしかないと思う。零夢も接近戦出来るだろうけど、どちらかと言えば後から御札や霊弾を撃つ方が得意だよね? それに零夢の援護があれば僕も安心して闘える」



ルーミアの弱点は付かず離れずの接近戦。それが僕の結論だ。


あの時、師匠なら間違いなく僕を投げ飛ばしたはず。アルフォードはその暴力的な魔力を用いて殴り返すだろうし、美鈴も迷いなく撃ち返すだろう。僕よりも強い人達は必ずそうする。だけどルーミアはしなかった。いや、不利な距離まで詰められ、焦らされたために出来なかったのだ。これさえもブラフならどうするのか、と考えないでもない。だけど僕には心強い仲間がいる。


隣を飛ぶ巫女、博麗零夢。彼女となら何でも出来ると思える。一度負けたというのに、自然と負ける気はしない。能天気なのか、それとも零夢が緊張していないからか。とにかく隣に彼女が居るというだけで僕は強く成れた気がしている。



「…何見てんのよ」


「いや、僕も単純だと思って」


「今更? …まあいいわ。大和、これが終わったら決着を付けましょうか」


「…? 何の?」


「…はぁ、これだから鈍ちんは困るのよ。そんなの決まってるでしょ。私達の関係に、よ」



な、何を言っているのか僕には理解…できます、はい。だからそんなに睨まないでよ。



「と、とにかくまずは目先のことに集中しよう!」



…顔がニヤけるのを止められない。














「だがなレミリア、己の弱点をそのままにしておくのは3流のすることだ。俺たちのような強者、即ち誇り高い者たちはそれを克服し、総じて奥の手と言うモノを隠しているものだ。それを一般に奥義などと言ったりすることもある。紅、お前ならあの妖怪の奥の手は何だと思う?」


「そうですね…。接近戦に弱いのなら、接近されても大丈夫なように対策をするのが普通です。それが返し技なのか、防御に徹する技なのかの判別は付きませんが」


「だろうな。俺もその可能性を考える。だがあの小僧がそこまで考えているとはどうも思えんのだ」



「「「あ~、解る気がする」」」

















広範囲に渡って槍を展開していたせいか、やはり一点集中を狙った攻撃には弱い。全ての槍を私の炎がいとも簡単に飲み込み囲いを突破し、私は宵闇の妖怪に迫ることが出来た。既に大半の力を失った私が、まさか囲いを突破出来るとは思っていなかったのだろう。目の前には驚愕に満ちた表情を浮かべた間抜けの顔がある。残念、もう防御は間に合わないぜ! その顔目掛けて思いっきり右腕を振りぬいた。


手応えあり!


鈍い音とともに右腕に手応えを感じた。確かに右手は当たっていた。ただ、あと数ミリで頬と言う所で影から伸びた障壁のような物に阻まれた。さほど厚いとは思えない障壁だが時間を多く掛けて作られたのだろう、今の私には破れる気が全くしなかった。



「自身の影から伸びる自動防御。私の意識の範囲外の物を感知し、それらを完璧に防ぐ。最後の砦にふさわしいように、込めている妖力もそれなり以上のものよ。並大抵の攻撃じゃあ私に傷一つ付けることも出来ないわよ?」



阻まれた右腕を掴まれ、自慢げに宣言してくる馬鹿・・を嘲笑ってやる。大馬鹿だなお前は。自分の奥の手をさらけ出すなんて、よっぽど自分に自信がある馬鹿以外には出来ないことだ。それと二つ目のミスだ。なぜなら既に、



「妹紅を、放せーーーーーーーーーーー!!」



2人はこの光景を見ていぶるぅぁあ!?



「妹紅大丈夫? 怪我してない? 死んでないよね?」


「こ、このクソ大和! 助けだす相手に蹴り入れて助ける奴がどこにいる!?」


「えっと、僕と零夢」


「私はそんな野蛮じゃないわ。一緒にしないで」


「え!?」


「どうでもいいんだよそんなことは! …ああもう、覚えとけよ! それと今の見てたんだろ? 行けるよな? 行けないんだったら私が強制的に逝かせてやるから覚悟しろよ」


「大丈夫、行けるさ。だから妹紅は後で見ててよ」



…へぇ、いい顔するようになったじゃないか。中々にいい男だよ、今のお前は。



「そうさせてもらうさ。流石に疲れた…」



ああ、見させてもらうぞ大和。お前がどれだけ強くなったのかをな。

とりあえず早く投稿をと頑張ったじらいです。褒めて貰えると大変喜びます。そして零夢と大和の初めての共同作業だと思った方、すいません。まずはルーミアの弱点バラシをすることにしました。



今回、せっかく隙間で皆さん見ているのだから場面を変えていきたいなぁ、と思ったので場面が飛び飛びしてしまいました。とりあえず行を少し多めに空けることで読みにくさを無くそうと思ったのですが、それでも読みにくいのなら言って下さい。もっと空けます。むしろ止めろと言われた場合には…熟考です。



最近、サブタイについて悩んでます。ポンと浮かぶのは中二ばかり。それ以外なら大和に何か言わせるかくらいで、どうにもなりません。

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