ぷろろーぐ
初投稿ゆえ、至らぬ点があるとは思いますがご容赦ください。
本作品は二次小説です。ご都合主義・キャラ崩壊・独自解釈を含みます。
以上の点を理解したうえでお読みください。
「でりゃっ!!」
季節は春。冬を越えた此処、妖怪の山の一画に幼い少年の声が響く。
「ははっ、まだまだだねぇ。ほいっと」
「うっうわ!?」
少年の『魔力』の籠った突きは、逆に腕をとられてしまいそのまま投げられてしまった。背中から地面に落ちるが、魔力で身体強化されているためこれといった痛みは感じない。非常に優しく投げられたというのが一番の理由なのだが。
「今日はここまでだね。あんたの母さんがお待ちかねだ」
背の高い女性が息も切らさず事もなげに言う。汗などは一切掻いておらず、むしろ清々しいまでの笑顔を見せている。
「はぁっはぁっはぁ…」
対する少年は地に仰向けになったまま空を仰ぎ、息継ぎもままならないようであるが。
「まったくだらしないねぇ。これくらいで音をあげてたらこれからどうするんだい」
女性の名前は勇儀。寝転がっている少年との一番の違いは、額から生えている特徴的な角だろう。
「ねっ姉さんが凄すぎる、っだけだと、思うんだけどっ」
「はは、そりゃちがいない。なんたって私は鬼だからね。人間の子供とは比べものにすらならないよ」
わっはっは、と笑いながら言う彼女は鬼である。妖怪の中でも破格の力を持つ鬼であり、その中でも上位の存在であるのだ。それに対して少年は、魔力を使うとはいえ唯の人間である。生物としての土台が違うので、この結果が当然といえば当然であるのだが。
「それでも、悔しいことにかわりはないよ」
ようやく息が整った少年が起き上がりながら言う。悔しそうに口を尖らせているのは何時ものことだ。
「それでこそ、あたしの弟分だよ大和」
わしゃわしゃと乱雑に少年の頭を撫でながら彼女は笑う。それに気を良くしたのか、拗ねていた少年にも笑顔が浮かんでいる。
「さて、あんたも落ち着いたところで帰るか」
「はい!」
まったく元気なもんだ、と彼女は苦笑し、二人は山奥へと帰っていった。