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だから俺は悪くない

作者: 白川 涼
掲載日:2026/09/05


 小説を書いていると、時々不思議なことが起きる。


「キャラクターが勝手に動き始めた」


 物書きなら、一度くらい聞いたことがある言葉だと思う。


 作者が予定していなかった台詞を喋る。


 予定していなかった行動を取る。


 プロットでは右へ行くはずだったのに、どう考えてもこいつなら左へ行く。


 作者自身も驚くような展開が生まれる。


 創作とは面白い。


 架空の存在にすぎなかったキャラクターが、長く書き続けるうちに人格を持ち、作者の手を離れて一人の人間として動き始めるのだ。


 なんとも神秘的な話である。


 ……本当にそうか?


 よく考えてみろ。


 そいつを書いているのはお前だ。


 台詞を考えたのもお前。


 行動を決めたのもお前。


 キーボードを叩いたのもお前だ。


 キャラクターは一文字も書いていない。


 それなのにプロットから話が逸れた途端、


「いやぁ、キャラクターが勝手に動いちゃって(笑)」


 じゃない。


 お前だ。


 お前が動かしたんだ。


 プロットが崩壊した責任を架空の人物になすりつけるな。


 キャラクターからすれば迷惑な話である。


「俺、そんなことする予定じゃなかったんですけど」


 と言いたいのは、おそらく向こうの方だ。


 物書き諸君。


 自分の作品には責任を持とう。


 キャラクターは作者の言い訳のために存在しているのではない。


 ――以上、


「いや、主人公なら絶対こうするから仕方ない」


 という理由でプロットを何度も変更している俺からでした。


 ……いや、違う。


 今のは俺じゃない。


 俺はちゃんと、最初に決めたプロットどおりに書いている。


 右へ行くはずだった主人公を左へ行かせたのも、


 予定になかった告白をさせたのも、


 ラスボスと戦うはずの場面で急に土下座させたのも、


 全部、主人公が勝手にやった。


 俺は一文字も書いていない。


 キーボードを叩いたのも主人公だ。


 ……たぶん。


 だから俺は悪くない。

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