だから俺は悪くない
小説を書いていると、時々不思議なことが起きる。
「キャラクターが勝手に動き始めた」
物書きなら、一度くらい聞いたことがある言葉だと思う。
作者が予定していなかった台詞を喋る。
予定していなかった行動を取る。
プロットでは右へ行くはずだったのに、どう考えてもこいつなら左へ行く。
作者自身も驚くような展開が生まれる。
創作とは面白い。
架空の存在にすぎなかったキャラクターが、長く書き続けるうちに人格を持ち、作者の手を離れて一人の人間として動き始めるのだ。
なんとも神秘的な話である。
……本当にそうか?
よく考えてみろ。
そいつを書いているのはお前だ。
台詞を考えたのもお前。
行動を決めたのもお前。
キーボードを叩いたのもお前だ。
キャラクターは一文字も書いていない。
それなのにプロットから話が逸れた途端、
「いやぁ、キャラクターが勝手に動いちゃって(笑)」
じゃない。
お前だ。
お前が動かしたんだ。
プロットが崩壊した責任を架空の人物になすりつけるな。
キャラクターからすれば迷惑な話である。
「俺、そんなことする予定じゃなかったんですけど」
と言いたいのは、おそらく向こうの方だ。
物書き諸君。
自分の作品には責任を持とう。
キャラクターは作者の言い訳のために存在しているのではない。
――以上、
「いや、主人公なら絶対こうするから仕方ない」
という理由でプロットを何度も変更している俺からでした。
……いや、違う。
今のは俺じゃない。
俺はちゃんと、最初に決めたプロットどおりに書いている。
右へ行くはずだった主人公を左へ行かせたのも、
予定になかった告白をさせたのも、
ラスボスと戦うはずの場面で急に土下座させたのも、
全部、主人公が勝手にやった。
俺は一文字も書いていない。
キーボードを叩いたのも主人公だ。
……たぶん。
だから俺は悪くない。




