EP 24
リベラの悪魔的プロデュース
『タローソン王宮特別支店』のバックヤードにある事務室。
そこは本来、店長が発注業務を行う場所だが、今は「債務者への尋問室」と化していた。
パチパチパチパチ……ッターン!!
高速で電卓を叩く音が響く。
デスクに座っているのは、オーナーのリベラ・ゴルド。
その向かいで、店長の流賀隆史、キャルル、ルナ、リーザが正座をさせられていた。
「……店長さん」
リベラが眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、冷徹な声を出した。
「今月の売上は過去最高。……素晴らしいですわ」
「は、はい! おかげさまで!」
「ですが、『純利益』がマイナスなのはどういう計算かしら?」
リベラは一枚の紙を突き出した。そこには赤字でびっしりと経費が書き込まれている。
『店舗外壁修繕費(キャルルが蹴り壊した分)』
『店内水没復旧費(ルナが水源を作った分)』
『精神的慰謝料(リーザの0円ツアーで被害に遭った店員へ)』
『風評被害対策費(雑誌記事の火消し)』
「稼いでも稼いでも、貴方たちがそれ以上に破壊活動を行うせいで、私の投資が回収できていませんの。……このままでは、アパートを差し押さえるしかありませんわね」
「「「ひいいいいっ!!」」」
四人は震え上がった。
ホームレス生活への転落。それだけは回避しなければならない。
「そこで、です」
リベラは椅子を回転させ、一人の少女を指差した。
「リーザさん。貴女、本気で稼ぐ気はおあり?」
「えっ? わ、私ですかぁ?」
リーザがきょとんとする。
「貴女は『アイドル』を自称していますが、やっていることはただの『乞食』……失礼、路上パフォーマンスですわ。それでは小銭しか稼げません」
グサッ。
正論のナイフがリーザの胸に突き刺さる。
「大きく稼ぐには、大きな舞台が必要です。……来週、王都で開催される**『大感謝祭』**をご存知?」
「も、もちろん知ってます! 年に一度の国最大のお祭りですよね? メインステージには、他国の有名な歌姫や聖女様が立つって……」
「ええ。そのメインステージの枠を、私が『金』と『コネ』でねじ込みました」
「は?」
全員が絶句した。
王都の感謝祭のメインステージ。それは武道館、いや東京ドームクラスの晴れ舞台だ。そこに、無名の(悪名高い)自称アイドルをねじ込んだというのか。
「貴女にはそこで歌っていただきます。観客動員数は数万人。成功すれば、一夜にしてトップスター。借金も全額返済できるでしょう」
リベラは悪魔的な微笑みを浮かべた。
「ただし」
彼女は分厚い契約書をドン! と机に置いた。
「最高のステージにするために、衣装、音響、照明、宣伝……すべて最高級のものを用意します。その費用、概算で金貨1000枚(約1000万円)。……これらは全て、現在の借金に上乗せさせていただきます」
「いっ、いっせんまいぃぃぃ!?」
リーザが白目を剥いた。
失敗すれば借金は倍増どころか天文学的数字になる。人生が終わる。
「む、無理ですぅ! 私なんかがそんな大舞台……! お客さんが来なかったら……ブーイングされたら……!」
リーザはガタガタと震え、後ずさった。
自信がないのだ。
今まで「パンの耳」をかじり、路上で小銭を拾ってきた彼女に、数万人の視線に耐えるメンタルはない。
リベラはため息をつき、懐から一枚の写真を取り出した。
「そうですか。……残念ですわね。成功すれば、毎日これが食べられる生活が待っていたのに」
写真に写っていたのは――
『極厚・霜降りローストビーフタワー(トリュフソース添え)』。
「!!」
リーザの動きが止まった。
彼女の脳裏に、今朝の朝食(水でふやかしたパンの耳)がフラッシュバックする。
(……食べたい)
(お肉が食べたい。お腹いっぱい、柔らかいお肉が食べたい……!)
生存本能が、恐怖を凌駕した。
リーザの瞳に、炎が宿った。
「……やります」
彼女は立ち上がり、契約書をひったくった。
「やります! 歌います! 踊ります!! 私、もうパンの耳は嫌だぁぁぁ!! お肉食べるんだぁぁぁ!!」
リーザはペンを握りしめ、契約書にサインした。
『署名:リーザ・マーメイド』。
「ふふ、良い返事ですわ。それでは……」
リベラはパチンと指を鳴らした。
「本日より、『地獄のアイドル強化合宿リベラの悪魔的プロデュース
『タローソン王宮特別支店』のバックヤードにある事務室。
そこは本来、店長が発注業務を行う場所だが、今は**「債務者への尋問室」**と化していた。
パチパチパチパチ……ッターン!!
高速で電卓を叩く音が響く。
デスクに座っているのは、オーナーのリベラ・ゴルド。
その向かいで、店長の流賀隆史、キャルル、ルナ、リーザが正座をさせられていた。
「……店長さん」
リベラが眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、冷徹な声を出した。
「今月の売上は過去最高。……素晴らしいですわ」
「は、はい! おかげさまで!」
「ですが、『純利益』がマイナスなのはどういう計算かしら?」
リベラは一枚の紙を突き出した。そこには赤字でびっしりと経費が書き込まれている。
『店舗外壁修繕費(キャルルが蹴り壊した分)』
『店内水没復旧費(ルナが水源を作った分)』
『精神的慰謝料(リーザの0円ツアーで被害に遭った店員へ)』
『風評被害対策費(雑誌記事の火消し)』
「稼いでも稼いでも、貴方たちがそれ以上に破壊活動を行うせいで、私の投資が回収できていませんの。……このままでは、アパートを差し押さえるしかありませんわね」
「「「ひいいいいっ!!」」」
四人は震え上がった。
ホームレス生活への転落。それだけは回避しなければならない。
「そこで、です」
リベラは椅子を回転させ、一人の少女を指差した。
「リーザさん。貴女、本気で稼ぐ気はおあり?」
「えっ? わ、私ですかぁ?」
リーザがきょとんとする。
「貴女は『アイドル』を自称していますが、やっていることはただの『乞食』……失礼、路上パフォーマンスですわ。それでは小銭しか稼げません」
グサッ。
正論のナイフがリーザの胸に突き刺さる。
「大きく稼ぐには、大きな舞台が必要です。……来週、王都で開催される『大感謝祭』をご存知?」
「も、もちろん知ってます! 年に一度の国最大のお祭りですよね? メインステージには、他国の有名な歌姫や聖女様が立つって……」
「ええ。そのメインステージの枠を、私が『金』と『コネ』でねじ込みました」
「は?」
全員が絶句した。
王都の感謝祭のメインステージ。それは武道館、いや東京ドームクラスの晴れ舞台だ。そこに、無名の(悪名高い)自称アイドルをねじ込んだというのか。
「貴女にはそこで歌っていただきます。観客動員数は数万人。成功すれば、一夜にしてトップスター。借金も全額返済できるでしょう」
リベラは悪魔的な微笑みを浮かべた。
「ただし」
彼女は分厚い契約書をドン! と机に置いた。
「最高のステージにするために、衣装、音響、照明、宣伝……すべて最高級のものを用意します。その費用、概算で金貨1000枚(約1000万円)。……これらは全て、現在の借金に上乗せさせていただきます」
「いっ、いっせんまいぃぃぃ!?」
リーザが白目を剥いた。
失敗すれば借金は倍増どころか天文学的数字になる。人生が終わる。
「む、無理ですぅ! 私なんかがそんな大舞台……! お客さんが来なかったら……ブーイングされたら……!」
リーザはガタガタと震え、後ずさった。
自信がないのだ。
今まで「パンの耳」をかじり、路上で小銭を拾ってきた彼女に、数万人の視線に耐えるメンタルはない。
リベラはため息をつき、懐から一枚の写真を取り出した。
「そうですか。……残念ですわね。成功すれば、毎日これが食べられる生活が待っていたのに」
写真に写っていたのは――
『極厚・霜降りローストビーフタワー(トリュフソース添え)』。
「!!」
リーザの動きが止まった。
彼女の脳裏に、今朝の朝食(水でふやかしたパンの耳)がフラッシュバックする。
(……食べたい)
(お肉が食べたい。お腹いっぱい、柔らかいお肉が食べたい……!)
生存本能が、恐怖を凌駕した。
リーザの瞳に、炎が宿った。
「……やります」
彼女は立ち上がり、契約書をひったくった。
「やります! 歌います! 踊ります!! 私、もうパンの耳は嫌だぁぁぁ!! お肉食べるんだぁぁぁ!!」
リーザはペンを握りしめ、契約書にサインした。
『署名:リーザ・マーメイド』。
「ふふ、良い返事ですわ。それでは……」
リベラはパチンと指を鳴らした。
「本日より、『地獄のアイドル強化合宿』を開始します。店長さん、キャルルさん、ルナさん。貴方たちも連帯保証人兼スタッフとして、死ぬ気で働きなさい」
「な、なんで拙者たちまでぇぇ!?」
「一蓮托生ですわ。さあ、稼ぎますわよ!」
こうして、タローソンのバックヤードは、コンビニ業務の傍ら、芸能事務所のレッスンスタジオへと変貌することになった。
パンの耳生活からの脱出を賭けた、リーザの、そしてチーム・サスガの戦いが始まる。を開始します。店長さん、キャルルさん、ルナさん。貴方たちも連帯保証人兼スタッフとして、死ぬ気で働きなさい」
「な、なんで拙者たちまでぇぇ!?」
「一蓮托生ですわ。さあ、稼ぎますわよ!」
こうして、タローソンのバックヤードは、コンビニ業務の傍ら、芸能事務所のレッスンスタジオへと変貌することになった。
パンの耳生活からの脱出を賭けた、リーザの、そしてチーム・サスガの戦いが始まる。




