その9 漆黒の微笑
■ 魔王と、手をつないで。
魔界。
血の滝が流れる庭園に、漆黒の花が咲く――
魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世は、そこにいた。
となりに、コーラを持ったまま固まる男――けんたろう。
「……なぜ俺は、今、デートしてるんだろう……?」
■ 魔王の美、そして圧。
魔王は歩くたびに、地面が黒薔薇のつぼみを咲かせる。
「けんたろう。今日はあなたと、魔界の文化を共有したくて」
「文化!?魔界の文化って……!」
「まずは拷問博物館。次に魂料理の試食会。最後に“冥界の風景を望むレストラン”ね」
「どこ行っても、命が削れるラインナップ!?」
けんたろうは震えていた。
でも、不思議なことに――
怖い。けど、美しい。
そして、その美しさの奥に、確かに感じるものがあった。
「……愛?」
「いや、怖いよ!?怖いけど、なんか……たぶんこれ……愛だよね!??」
■ ディアボル様の“愛”
「けんたろう。もし私が滅びることがあれば、あなたには魔王の座を継がせます」
「いきなり重いッ!!」
「あなたの瞳には、世界を焼き払う力がある。だから私は惹かれるの」
「え、今“世界を焼く瞳”って言った?そんなエフェクト俺にあった!?」
「……でも、どうしてそんなに緊張しているの?」
「そりゃするよ……!魔王だよ!?でも、綺麗すぎて、もうわけわからんのよ!!」
けんたろうは、初めて“怖さ”と“恋心”が混ざる瞬間を味わっていた。
怖くて美しくて、理屈が通じない。
でも、確かに、心が揺れていた。
■ 一方そのころ:アソアハソ裏酒場《ドラゴンの膵臓亭》
勇者・リリィの面接はまだ続いていた。
新たに現れたのは、帽子を深くかぶったツンツンとした少女。
「……べ、別に仲間になりたいわけじゃないけど……あんたが困ってるみたいだから……しょ、しょうがなく来てやったのよ!」
名は――エルネスティーナ・ルゥ・カレイド
通称:エル。
職業:魔法使い(火と氷を得意とする)
性格:ツン→ちょっとデレ→またツン(ループ)
■ リリィの試し
「で?なんの自信があるの?また“私は才能ある”系?」
「そ、そんなわけないでしょ!あんたこそ、何なのよ!!暴力的で無礼で、性格最悪!!」
「ふーん。じゃ、1対1で勝負ね。火力勝負。手加減しないよ?私、本気出すと死ぬよ?」
「や、やってやろうじゃない!!」
周り「やばいぞ……また殺る気だ、あの勇者……!」
■ 勝負――その後
結果。
爆風一閃、酒場の外壁が半壊した。
リリィは、炎の中から普通に歩いて出てきた。
エルは、地面に倒れてヒイヒイしていた。(でもギリ無事)
「ちょっとだけ見どころあるじゃん。合格」
「え……?」
「ツンツンしてるけど、あれは“根が真面目な証拠”でしょ。
こういう子、実は命張ってくれるタイプなんだよね」
リリィは、ふっと笑った。
周囲が、またもざわついた。
「……あれ?今ちょっと……人を見る目あった?」
「ゲスの皮の中に、なんか……本物の選定眼が……」
「マジで世界救うんじゃないか、あいつ……いや、怖いけど……」
■ 最後に、リリィの一言
リリィは、立ち上がろうとするエルに手を差し伸べた。
「しがみついてでも、生き残ってね。
死んだら置いていくから」
リリィは漆黒の微笑を浮かべた。
\\\ し、しびれるッッッ!!! ///
昨日から始めたこの物語。
私が一番書きたい『指先のユーロビート』。
なかなか読んでもらえないので、ヤケでこの物語を書いたら、指ユビより読まれていて、複雑です。