その52 次元を裂く悪魔的デート♡──いや、ただのプリクラ目的だった
魔界の宮殿。《メフィス・ヘレニア・ダークネス・クレプスキュール宮殿》
けんたろうは、魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世(←長すぎるので以後「魔王様」)にべったり抱きしめられていた。
魔王「けんたろう……おぬしの世界でプリクラが撮りたい♡」
けんたろう「えええええ!?よりによってプリクラ!?なんでそこチョイス!?」
魔王「わらわが目にした“盛れる”なる技術……あれを体験せずして魔王は名乗れぬ!」
魔王は真顔で言った。
その口調は、世界の破滅宣言より重々しく聞こえた。
けんたろう「いや、絶対ダメでしょ!魔王様が地球に来たら……物理的に世界が終わるから!!」
魔王「ならば次元の壁に穴を開けるだけじゃ。三秒で済む♡」
けんたろう「ひいいいい!!!」
――けんたろうは悟った。
もし魔王がプリクラ欲のまま現代日本に出現すれば、地球は終わる。
いや、世界史そのものがリセットされ、「縄文時代 → 弥生時代 → 魔王時代」という教科書の年表が出来上がってしまう。
そして、その原因はまさかのプリクラ。
人類史の終焉が、平成カルチャーの副産物に委ねられていいのか!?
けんたろうは震えながら、静かに決意を固めた。
――自分が、魔王を食い止めるんだ。
――この魔界で、一生を終えよう。
けんたろう「魔王様……私は元の世界に未練がありません。この魔界で、あなたと死ぬまで過ごすつもりです」
魔王「……そうか。けんたろうよ。なんとかわいいやつじゃ」
魔王の瞳が潤んだ。
けんたろうは、読者のあなたの世界を救ったのだ。
世界の平和は、彼が“プリクラ拒否”したことにより保たれた──。
◆魔王軍、ツインテール会議(議題:前回のあれ何だったの?)
クロコダイノレとバルドは不在。
会議室にはハドうー、ザイオス、ネフェリウス、ファイアイスが集まっていた。
ハドうー「で、前回のツインテールは何だったのだ?」
ザイオス「どう見ても某バーチャル青髪歌姫だった」
アスタロト「いや、ネギ持ってたから完全に確信犯だ」
ネフェリウス「問題はだな、あれを“けんたろう殿へのサービス”だと本気で思ってる魔王様の純粋さよ」
ファイアイス「純粋っていうか…破壊力の方向間違ってるよな」
ハドうー「いや、破壊っていう意味では間違ってない。物理的に壁ぶち抜くからな」
一同「確かに」
そのころ――勇者たち。
リリィ「ふん……あのワニ野郎はどうにかなったわけだけど……」
仲間たち(いや、お前が子熊を人質にとったからだろ!?)
リリィ「それにしても、あとから出てきたあの竜のやつ、ヤバかったな。戦ってたら確実に死んでたぞ」
仲間たち「……」
リリィ「よし。今夜はウズーベで宿をとって、ちゃんと休もう!」
仲間たちは思った。
――さすがのリリィも、あれだけゲスを極めていたら気疲れもするんだろうな、と。
……ただし翌朝、宿の従業員にまで「宿代まけろ!」と凄んでいたことは、ここに付け加えておこう。




