表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/116

その45 九頭竜をデートコースに選ぶ魔王!悪魔的スリルの誘いだったが、実は勇者の方が怖かった件

 魔界の夜。

 けんたろうは魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世の膝の上に座らされ、背後から抱きしめられていた。


(……いや、なんでこんな構図なの?

 これ、完全に“王座に座るラスボスと、その膝の上にいるペット”だよね!?)


 魔王は優雅にワインを傾けながら、ふとけんたろうに尋ねられた。


「……あ、あの…魔王様。質問してもいいですか」

「許す。何だ?」

「魔王様って、怖いものとか……あるんですか?」


 魔王は鼻で笑い、漆黒のマントを翻す。


「余に怖いものなど、存在せぬ」

「ですよねー……」

「強いて言うなら……別次元にいる邪悪な九頭竜よ。あやつだけは、始末しておかねばなるまい」

「えっ……く、九頭竜!? 別次元!? スケール違いすぎません!?」

「婿も一緒に来るか?♡」

「こわいいいいいいいい!!!!」


 ――魔王のラブが、いちいちホラー。

 けんたろうの心臓は、愛と恐怖の両方で常に限界突破していた。


 ◆ 魔王軍会議:魔界教育課程について ◆


 場面は変わり、魔王城の会議室。

 勇者との戦闘? 侵攻作戦? そんな議題はどこへやら。今日のテーマは「魔界教育課程の改革」だった。


 ネフェリウス「……第二言語は必要である」

 アスタロト「しかし母語の習得が優先されるべきではないか?」

 バルド「これ以上カリキュラムを増やして、幼少期に過度な負担をかけてはならん」

 ザイオス「いや、まずは異文化に慣れ親しませることだ。学問として詰め込むのではなく、『素地を培う』活動から始めるべきだろう」


 一同「おおおおおお!」


 ……魔王軍、まさかの教育熱心。

 彼らは「第二言語活動」「自己肯定感の育成」「異文化交流の重要性」について延々議論を続け、気付けば人間界の教師顔負けの真剣モードになっていた。


 アスタロト「では、魔界版・英語村を作るか?」

 バルド「いやいや、まずは安全な環境づくりが大切だろう。炎の海とか溶岩地帯は教育的に不適切だ」

 ネフェリウス「うむ、それは確かに」

 ザイオス「給食はやはりバランスのとれたものを――」

 ファイアイス「唐揚げとポテトは毎日出すべきだな!」

 一同「黙れ!」


 ……勇者と戦うより、教育委員会ごっこに熱中している魔王軍であった。


 ◆ 勇者一行の珍道中 ◆


 一方そのころ――。


 勇者リリィ一行は、イタロマ王の冠を盗んだ盗賊・堀木を追い、アルデンヌの塔を目指していた。

 だがその道のりは険しく、山越えが必要だった。


 ミレルカ「勇者様……もう足が……動かない……」

 エル「私も……もう足が前に出ません……」

 リリィ「はあ!? 情けない! いいか、お前ら。体を前に倒そうとすると……ほら、足が出るだろ? それでいけばいいんだよ!」

 ミレルカ「す、すごい! こんな方法があったなんて!」

 エル「勇者様……天才です!」

 リリィ「これが重力前傾歩行術よっ!」

 カティア(……それってただ歩いているだけじゃないの?)


 勇者リリィ。今日も仲間をゲスい方向に導きつつ、なぜか絶賛されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ