その39 魔界の華麗なる撮影会、だが本当にキャプチャーされたのは勇者の財布だった件
◆ラブラブ(強制コスプレ)タイム
けんたろうは、朝から胸騒ぎがしていた。
理由はすぐに判明する――玉座の前に立つ魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世(呼吸一回で言える者、ゼロ)。
その手には、キラキラと輝く、フリル満載・リボンだらけ・色彩爆発の衣装。
「けんたろう、これを着ろ」
「……これって……」
「黙って着ろ。似合うに決まっている」
半ば強制的に着せ替えられるけんたろう。
魔王は満足そうにビデオカメラを構え、目を細めて叫んだ。
「すてきですわーーーっ!!」
後ろからディランダルが、謎のテンションで登場。
「こにゃにゃちわー!」
けんたろうは小声でつぶやいた。
「……なんかこれ、カードになって封印されそうなんだけど」
※完全に某カードキャプターのオマージュである。
◆魔王軍飲み会(戦力外通告の宴)
夜、魔王城下の居酒屋「呑魔」にて。
不死軍団長バルドと極竜軍団長ザイオス――魔王軍最強ツートップが、テーブルを挟んで酒を酌み交わしていた。
バルド「ハドうーはしくじったけど、俺が行けば勝てたな」
ザイオス「まぁ、勇者の実力は本物だろうよ」
バルド「だとしてもだ、俺のマッディスクライドを食らえば…」
ザイオス「いやいや、俺のペタブレイクなら…」
バルド「いや、俺の――」
ザイオス「いやいや俺の――」
言い争いがヒートアップするたび、店の壁やテーブルが軽く焦げたり割れたりしていく。
店主の魔物は完全に青ざめ、皿を運ぶ手が震えていた。
店員「……バルド様、ザイオス様、くれぐれも“全力”だけは……」
二人「わかってるよ!!」
――直後、グラスをぶつけただけで爆風が発生した。
(※居酒屋呑魔、本日も営業中)
◆その頃の勇者(ゲスの早朝活動)
そして時は同じくして――
夜が明け、城塞国家イタロマの巨大な門が重々しく開く。
ミレルカ、カティア、エルはその光景を見て、ほぼ泣きながら感動していた。
「やっと……やっと中に入れる……」
「ベッド……枕……お風呂……」
「人間の食事……!」
そんな三人を見て、リリィは笑顔で言った。
「よし、お前ら、宿でたっぷり休んでいいぞ!」
「勇者様ーーーっ!!」
と、仲間たちが泣きながら感謝する中――
リリィは振り返って、悪魔的な笑みを浮かべた。
「……ここ、イタロマってさ、モンスター闘技場があって、ギャンブルできるんだよね」
「……あいつらが寝てるうちに、たっぷり遊んでおこっと♪」
天が呼ぶ――地が呼ぶ――ゲスが呼ぶ!!
今日も勇者は、全力で自分の欲望のために走り出すのであった。




