その24 悪魔的手料理(メインは処刑)と、勇者的戦術
「けんたろう、今日は……私が料理を振る舞ってやろう」
魔王・ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世は、けんたろうの目の前に巨大な皿を置いた。ぐつぐつと湯気を立てるソレは、何かの肉だった。肉の色も形も、見たことない感じで、なんならちょっと動いている。
「え、ええと……これは、何の肉、ですか……?」
「うむ。ついさっき、地下牢で騒いでいた裏切り者を処刑しようと思っていたのだが、せっかくだから肉にしてみた♡」
笑顔がまぶしい。いや、輝いてる。物理的に。
「魔剣アルケラトス、今朝もよく切れたぞ。さすがは魂喰らいの呪われし刃よ」
ドシャァァァ!
けんたろう、思わず床に崩れ落ちる。コーラを飲んでいたら確実に鼻から出ていた。
「こわいこわいこわいこわい!!!」
――この人、好きとか言ってるけど、ラブの定義が違いすぎる……ッ!
~~~川~~~
一方その頃、人間界・ソソザの村では――
「……がはっ!!」
リリィの腹を、ハドうーの黒き爪が貫通していた。
鮮血が地面にぽたぽたと落ちる音だけが、世界のBGMとなった。
「勇者様ァァァ!!」
「リリィー!!」
仲間たちが駆け寄るも、ハドうーは不敵に笑った。
「ふははは……言っただろう、俺の心臓はふ・た・つ……!
甘く見るなよ、小娘がぁあああ!!!」
だが、そのときだった。
「……ふふっ。甘いのは、そっちのほうだよ。ハゲうーさん♥」
「誰がハゲだァ!?」
「名前覚え間違えてるし!わざとだろ!」
リリィは腹から抜かれた爪の間をすり抜けるように離脱し、血の代わりにゲスな笑みを浮かべた。
「カティア!エル!ミレルカ!」
「了解ッ!!」「はいですぅぅぅ!」「も、もう無理だけど……が、頑張るぅぅぅ!!」
カティアの剣が盾となってハドうーの一撃を受け止め、エルの魔法が閃光を放ち、ミレルカの回復魔法が乱射される。
だが、そのすべては囮だった。
リリィはそのスキにまわりこみ――
「くらえ……!仲間を盾にして不意打ちィィィ!!」
ズバァアアアッ!!!
ハドうーの肩から脇腹まで、深く斬られた。
「ぐおおおおおおお!!!貴様ああああああ!!!」
──血を流し、傷ついた総司令官ハドうーは、とうとう膝をついた。
カティア「え、ちょっと今の作戦……私たち完全に盾にされたよね?」
エル「私なんて完全にカモだったよぉぉぉ!」
ミレルカ「お、お母さん……田舎に帰りたいよぉぉ……」
それでも、勝利は勝利。
ハドうー「覚えてろ!」
ハドうーはワープ魔法を唱え、その場から消えた。




