表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/115

その20 魔王軍総司令官降臨(なのに勇者の方が性格真っ黒)

■ 魔王とけんたろう、ラブラブという名の恐怖劇場

 ――魔王の間。

 けんたろうは、魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世と並んで座っていた。距離、約7cm。

 人間的には近いけど、魔王的には遠い。それがこの世界の愛の距離。


「けんたろう……結婚式の引き出物、悩むわね……」


「え、えっ!? まだ話まとまってないですよね!?(っていうか式、やる気満々!?)」


 魔王は静かに頷きながら言う。


「やっぱり定番のカタログギフトかしら……?

地獄産くちなしの蜂蜜とか、冥府の大理石ティーカップセット……センスが問われるのよね、こういうのって」


「カ、カタログギフトってどこで知ったの!? 誰から!? ていうか冥府のティーカップって何!?」


 魔王はやわらかく笑って、手元の冊子を取り出した。

 それは――人間界・最新ブライダル事情 2025夏号。


「あなたのベッドの下から見つけたわ。とても参考になる内容だったわ」


「うわあああああああああ!!!!」


(なぜ見つけた!?なぜ読んだ!?ていうかそれ俺のじゃない可能性ない!?)


 けんたろうの脳内では、鐘の音が鳴り響いていた。

 ――結婚式ではない。

 それは、人間の限界を告げる、死亡フラグのゴングだった。



■ ソソザの村に嵐、来たる

 場所は変わって、勇者リリィ一行――

 ソソザの村、朝。目覚めとともに、ギリギリの命を回復した仲間たちが、

 ほうほうの体で宿屋から出てきた。


 エル(魔法使い)「…ああ…ベッドって…人権なんですね…」


 ミレルカ(白魔導士)「……マットレスの硬さがちょうどよくて……泣けました……」


 カティア(剣士)「……なんとか生きてる……でも足が棒……」


 そんな仲間たちの会話を尻目に、リリィはパンをかじりながらご満悦だった。


「ふっ。昨日も稼いだわぁ~。雑魚狩りで金策して宿泊費浮かせて、今日は村の広場でバザー物色しよっと。

 んで、ツボあったら割る!」


 \ゲス!ゲス!ゲス!!/


 だが、そのとき――


 ゴロゴロォォォォン……!!!


 曇天がにわかに暗くなり、空を切り裂くように漆黒の雷が轟いた。

 空間が歪み、何かが“落ちて”くる。


 ズンッ!!!

 地響きと共に、漆黒の鎧を纏った男が村の広場に降臨した。


 その姿を見て、まず反応したのは――リリィだった。


「……お前、普通の魔族じゃねぇな」


 その瞳に宿る、獣のような感覚。勇者としての本能が警鐘を鳴らしていた。



■ 総司令官、名乗る。

 漆黒の男が名乗りを上げた。


「……我は魔王軍総司令官――ハドうー!!

 魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世様の命により、貴様ら勇者一行を――討滅する!!」


「ええええええ!?!?!?!?!?!?」

 仲間たちの悲鳴が、ソソザの村の静寂を打ち破る。


 カティア「ちょ、ちょっと待って!!魔王軍って……しかも、いきなり総司令官!?え?チュートリアルどこ行ったの!?雑魚戦とかないの!?」


 エル「ねぇ!?私たち、スライム倒したばっかなんだけど!?まだステータスも見てないんだけど!?!?」


 ミレルカ「えっ……あれ……魔王軍総司令官??えっ、ストレートに出てくるパターン!?!?!?」


■ 勇者リリィ、本気を見せる(でもゲス)

 だが――リリィだけは、動じていなかった。

 いや、確かにゲスである。

 旅の仲間をしごきにしごき、宿泊費をケチり、アイテムはすべて自分が先取りする鬼畜女だが――


「……あんた、悪いけど、私の狩りセンサーがフルバーストよ。

 初見だけど、殺る気は、私の方が上だから」


 ギラリ、と抜いた剣が、広場の朝日に光を放つ。

 その佇まい――


「……これが、勇者……?」


 ハドうーは、思わず息を呑んだ。

 確かに……性格はクズ。性根はゲス。しかし、その剣筋には本物の強者の気配があった。


 リリィ、ニヤリと笑って――


「じゃ、始めよっか。魔王軍の大物幹部さん♪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ