その19 血の祝宴か?滅の儀式か?(親戚づきあいは地獄より恐い)
■ 魔王の優しさは人類には刺激が強すぎる件
魔王の間――
けんたろうは、例によってソファの端っこでちょこんと正座していた。
ソファなのに正座。膝が沈み、バランスがとれずプルプル震えるけんたろう。
「けんたろう……」
魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世が、しっとりとこちらを見つめる。
「私、人間界の親戚づきあいというものが、どうにも苦手で……」
「そ、そうですか……?」
「ほら、あなたのおじさま、おばさま……ご親族の方々、私……うまくやれるかしら?」
「いや、それは別にそんなに大事じゃ――」
「けんたろう……私ね……」
魔王、目を細めて語り始める。
「――親戚というのは、血の繋がりの名の下に無遠慮に土足で入り込んでくる部外者だと聞いたわ……」
「ひぃっ!!?」
「挨拶に来て、勝手に家の間取りを批評し、食器の汚れを指摘し、手土産の価格を見て、あらまぁとため息をつき、最後には最近の若い子はって言ってくるらしいじゃない……?」
けんたろう(だ、だれに聞いたんだそんなこと!?ていうかなんで若い子って俺なの!?)
「でも安心して、けんたろう。もしそんなことがあったら、私が灰にするから♡」
「やめてえええええええ!!!」
■ ハドうー、出陣前夜
一方その頃――魔王軍作戦本部。
またしても、始まる会議。議題は一つ。
「勇者リリィ、現地にて発見された場合、どう対応するか」
魔王からの命は明確だった。
「最短で、最大戦力で、確実に仕留めろ」
総司令官・ハドうーは、鎧を身にまといながら低く言った。
「今回は、俺が一人で行く。誰も連れていかん。俺の責任で、俺がやる」
周囲、ざわつく。
バルド(人間剣士)「ふん……我が不死軍団の力ならば、迅速に片がつくものを……」
ザイオス(竜の剣士)「フッ、どうやら我が極・竜軍団の出番はまだのようだな」
ネフェリウス「ふむ……では、わしの禁呪・魂喰らいの虚空の出番もお預けか」
ファイアイス「ヒャッハー!ついていったら怒られるぅ~~♡」(でもワクワクしてる)
クロコダイノレ「ハドうー様、何卒ご武運を」
ハドうーは苦笑しながら、
「……プレッシャー、ハンパないな……これ、失敗したら俺、胃じゃなくて魂までやられるんじゃね?」
(魔族なのに……ストレスで髪の毛が抜けるってどういうことだ……)
とはいえ、司令官の意地と誇り、見せてやるしかない――!
■ 勇者、ついに村へ…が、やはりゲス
その頃――草原を抜け、ようやく見えてきた、小さな村。
カティア(剣士)「やった!やっと休める……!」
エル(魔法使い)「わたし……久しぶりに床で寝たい……」
ミレルカ(白魔導士)「お願い……ベッドっていう概念に触れさせて……」
リリィ(勇者)「あんたらさ、なんでそんな泊まる気満々なの?」
「えっ……」
「村に入ったからって、即宿屋とか甘えじゃん?」
「な、なにを……」
「まずは村の周囲にモンスターがいないか確認、それから探索、アイテムボックスに空きがあるなら、タンスやツボをチェック。
それが冒険者の基本でしょ?」
「チェックって……泥棒じゃ――」
「違う。あれは伝統なの。
文化なのよ!!」
\\ゲスの極みィィィイ!!!//
ミレルカ(無言で涙)「うう……うちの村でやられたこと……まさか、自分がやるとは思わなかった……」




