その15 漆黒に染まる心
■ 魔王の、愛が全力でこじれている件
魔王城・玉座の間。
けんたろうは今日も、魔王ディアボル=ネーメシア=アークトリウス=イレイザ=ヴァルハラ=トラジディア十三世の隣に座らされていた。
魔王の視線が熱い。いや、文字通り焦げそうなほど熱い。
「けんたろう。今日もかわいいわね。
さあ、世界を征服したら……その国々の民、すべてあなたに捧げるわ」
「え?いやいやいや!! 俺、ちょっと人間ですし!」
「気にしないで。あなたが一言うるさいって言えば、彼らは舌を噛んで黙るわ。
命令ひとつで、何百万人の運命が動くのよ。それって、愛じゃない?」
「…………」
(やばい、この人、愛を支配で表現するタイプだ……)
魔王はとろけるような声で囁いた。
「世界が終わっても、あなたと私だけが残ればいいの。
ふたりきりで、世界の最期を眺めましょう?
私の膝の上で――焼け落ちる空を見ながら……♡」
「こわぁぁぁい!!!」(←心の叫び)
■ 魔王軍会議:ザイオスが怖すぎてつらい
地下666階・地獄的円卓の間。
総司令官ハドうーの声が震えていた。
「えー、ではザイオスには……また西部方面への出張任務を。出発は今夜で……」
幹部A(あ、また逃げた)
幹部B(あんなに目を合わせない上司、初めて見た)
幹部C(あれ、完全に“距離取りおじさん”だよね)
ザイオス(伝説の竜剣士)は無言で立ち上がる。圧。
そのだけで空気がビリついた。
ハドうー「よ、よろしくね……がんばってね……(震)」
けんたろう(小学生の班長の方が強気なんじゃないか)
■ クロコダイノレのやさしさ(涙)
会議後、魔王軍の休憩室。
ハドうーが机に突っ伏していた。
「……俺、もうだめかもしんない……
あいつの目がさ、もう“剣”なのよ。目が武器。あれ武器。」
クロコダイノレ(リザードマン幹部)が、そっとカフェイン入りの魔界栄養ドリンクを置いた。
「ハドうー殿、あまり無理はなさらずに……。これ、魔界バイタルEXです。羽が生えるらしいですよ(副作用です)」
ハドうー「ありがとぉぉおクロコぉぉぉ!!」
幹部たち(泣いてる……)
■ 勇者、ついに戦闘開始
そのころ、人間界――
勇者リリィ一行、ついに初の戦闘へ!
敵は、森に潜む――
\\スライムたち!!//
ぷるぷる震えるゼリー状のモンスターたちに、仲間たちは気を引き締める。
カティア「よし、行くよ!」
エル「魔法詠唱、いきます!」
ミレルカ「ケガしたら、私が治しますねっ!」
リリィ「うるさい、私の邪魔だけはすんなよ」
スパーンッッ!!
勇者リリィ、開始早々、スライム3体を一刀両断!!
エル「え!? 魔法の出番、ない!?」
カティア「ちょ、ちょっと!手加減は……!?」
リリィは剣を納めながら、冷たく言い放つ。
「いい?あんたたちは、雑魚の相手だけしてればいいの。
私が戦えば、終わるから」
ミレルカ「勇者さま、ケガを――」
リリィ「してない。あんたは後ろで荷物持ってればいいの」
仲間たち(え、仲間って……なんだっけ……?)




