転生社畜と没落令嬢の、どうしようもない共犯関係

過労死寸前、男は異世界に逃げ込んだ。
藤原景。彼の唯一の願いは、「もう二度と、誰かの期待に応えないこと」。
死んだ魚の目で、無気力に日々をやり過ごす。それが、彼が手に入れた、ささやかな平穏だった。

だが、運命は、そんな彼に、もう一つの「檻」を用意する。
没落した家の再興という、叶わぬ夢にヒステリックに固執する「災厄の姫」、桜小路瑠璃。
彼に下されたのは、彼女との偽りの結婚と、その「お目付け役」という、あまりにも屈辱的な命令だった。

祝言の夜、二人は、互いの瞳の奥に、同じ「絶望」の色を見出す。
これは、救済の物語ではない。
ましてや、愛の物語でもない。

退屈しのぎに始めた、危険な火遊び。
息苦しい現実から逃れるための、秘密の「共犯」。
黄泉路の闇の中だけで、二人は、かろうじて息をすることができた。

これは、社会からドロップアウトしていく、どうしようもない二人の、転落の物語。
しかし、その、どこまでも堕ちていく道の果てに、彼らだけが知る、歪んだ「幸福」が、あるのかもしれない。

綺麗事では、決して満たされない、あなたのための、退廃的和風ファンタジー。