表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/10

バイト先は異世界でした

 高校三年生の夏休み、俺、星川遥希(ホシカワ ハルキ)はスマホで求人サイトを片っ端から見ていた。

 高校生最後の夏休み。クラスの連中も、友達も、当然のように遊ぶ計画を立てていた。俺も一緒に行くつもりだった。だが、そこにはひとつ、大きな問題がある。

 

 ──遊ぶにも金がいる。

 

 カラオケ、ファミレス、映画、ゲームセンター。何をするにしても、無料で楽しめるものなんてほとんど無い。

 

「飲食はキツそうだし、引っ越しは体力仕事だし、家庭教師は頭使いそうだし……もっと楽で、時給いいやつないかな……」


 夏休みの間だけの小遣い稼ぎだ。適当なバイトでもいいのかもしれない。だが、せっかくやるならできるだけ楽で、高時給の仕事がいい。俺のような怠惰な人間にとって、これは人生の最優先事項である。

 受験勉強もそこそこに、高校最後の夏休みをダラダラと過ごしていたが、ついに母親から「受験のめどが立ってるなら小遣いくらいは稼ぎなさいよ」と、お小言を頂いてしまった。

 簡単に言うな、母よ。

 受験があるからこそ、長期間続けるバイトには手を出しにくい。そうなると、短期バイトに限られるわけだが──これがまた、なかなか条件が合わない。

 

「お、在宅入力業務……時給800円? 安っ!」


 やっぱり高時給のバイトはそれなりに大変なんだろうな、と諦めかけたそのとき、妙な求人が目に飛び込んできた。


【未経験OK!即日払い!高待遇!】

『勇者パーティーの一員になりませんか?』

日給:10,000円

勤務地:異世界


 「……は?」


 一瞬、目を疑った。

 どこかの企業のふざけた広告かと思ったが、詳細ページを開くと、やたらと作り込まれた募集要項が並んでいる。


・仕事内容:勇者パーティーの一員として魔王討伐をサポート

・必要な資格:特になし(未経験者歓迎!)

・福利厚生:異世界での宿泊、戦闘補助あり

・支払い方法:現地通貨または日本円振込可


 「いやいや、何これ。エイプリルフールか?」

 

 いや、今は8月だ。

 妙にリアルな募集要項に、俺は眉をひそめる。

 見たところ、最近流行りの単発バイトのアプリ経由の求人らしい。

 とはいえ、いくらなんでも怪しすぎる。

 もしかして何かの闇バイトか?

 そう思い、検索エンジンで調べてみるが、それらしい情報は何も出てこなかった。


 「そもそも単発バイトで宿泊って無くない?」


 ……怪しすぎるだろ。ありえないことはわかっている。わかってはいるけど好奇心が襲ってきて堪らない。

 ま、まあ人生は一回きりだ。後悔してもばかばかしい。

 そう心の中で呟き、俺は自分を納得させようとうんうんと首を振る。

 

「どうせ嘘だし」


 試しに応募ボタンを押した。

 その瞬間、画面が眩しく光り、周囲がモノクロになった。


「はああああっ!?なんだよこれ!?」


 スマホの画面からはメッセージの書いてあるスクリーンが飛び出し、俺の周囲には魔法陣が展開される。先ほどまで風に揺られていた電灯の紐は妙な状態で固まり、時が止まったかのように浮いている。

 おいおいマジの代物だったのかよあのバイトの募集は!!

 焦った時にはもう遅い。確実にまずいことをしてしまった。勇者パーティ?こんな時期にやることじゃねえだろ!


 『星川遥希様 当バイトへのご応募ありがとうございます』

 「は?」


 スマホから自動音声が流れた。へー、このサイトこんな機能があるんだ。って絶対違うよな!!??


 『掲載者よりメッセージがございます』


 メッセージ?


 『えっと、当バイトにご応募いただきありがとうございます。あなたと一緒に戦えることを楽しみに待っております』


 先ほどまでの機械音声感漂う自動音声とは違う声が流れた。歳は俺より下だろうか。かわいらしい女の子の声だ。雇用主、って勇者だよな?こんな子が?


 『以上です。続けてステータスの開示です』


 ステータス、ゲームの世界って感じがするな。


 『レベル:1

  体力:1

  魔力:ゼロ

  攻撃力:2

  防御力:1

  俊敏:3

  知力:5

  運:1』


 絶対低いだろこれ。俊敏が少し高いのはちょっとだけ独学で格闘を学んだから?知力は……まあ受験があるからかな?


 『スキル付与:≪単発バイト≫ ≪相互言語理解≫ ≪新人研修≫ 』

 「スキル……?そういうのも貰えるのか?」


 ──と思ったのも束の間、耳を疑った。


 『≪単発バイト≫ 契約した対象が死亡した場合、契約者も死亡する。また、あらゆる仕事契約の履行が可能』

 「ハイリスクすぎやしませんか!!!!!!」


 勇者が死んだら俺も死ぬ!?

 命がけのバイトにもほどがあるだろ!!!闇バイト過ぎない!!!!????

 前半のインパクトが強すぎて後半が頭に入ってこない!!え!?なに!?履行!?なんだっけそれ!!!

 次の相互言語理解は何となく理解できるけどさ。多分現地の言葉を理解でき、こちらの言語も理解してもらえるやつだろ。


 『≪相互言語理解≫ 概ねその通りです』


 サボんじゃねえよ!!

 

『さらに補足説明を行います』

 「ん?」

 『≪新人研修≫のスキル効果により、現地の言語はあなたの知っている言葉に近い形で聞こえます。また、あなたの発言も相手の言語に合わせて変換されるため、意思疎通がスムーズに行えます』

 「つまり?」

 『例えば、現地の食べ物が「トールグル」という名称だった場合、それが豆を煮込んだ料理なら、あなたには『豆の煮込み』と認識されます。また、あなたが『米』と言った場合、相手にはそれに近い、現地の穀物の名前として伝わります』

 「……マジかよ。ってことは、俺が『ハンバーグ食べたい』って言ったら、相手にはハンバーグっぽい何かを求めてるって伝わるのか?」

 『その通りです。ただし、完全一致するとは限りません』

 「めっちゃ曖昧じゃねえか!?」

 『補足説明を終了します』

 「いや、勝手に終わらすな!」


自動音声に突っ込んだ所で何も自体は動かない。ただ、俺自身の気持ちを落ち着かせる為にも声を出してしまう。


『 ≪新人研修≫ ステータスメッセージが音声として聞こえることがあります』


 ステータスメッセージってなんだ?便利そうではあるが……


 『それでは異世界でのご検討をお祈りしております』

 「お、おい!!ちょっと待――」


 唐突に締めようとする音声にそう叫ぼうとした瞬間、俺の意識は闇に落ちた。



初めまして、ゆきみなと申します。

今更な題材なものですが、良ければお付き合いいただければ幸いです。

一応40話くらいで第一部完となる予定です。

その時の人気によって進退決めようかな〜と思っております。

厚かましいですが、ブクマ等面白かったら随時よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ