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迫りくる悪魔


 私はしばらくの間自分の罪について考え込み、俯きながら下を向いていました。


和歌「えいちゃん、性格的に悩んでしまう人だから・・・・こういう時あんまり自分を責めないでね。ここについてきたのは私だから。えいちゃんは全然悪くないから。最終的にここに行くと決めたのは私自身だからね。誰も悪くない。絶対みんなでここから脱出出来る。えいちゃんも修治も早川もリュウも乃蒼もみんな信じてる。みんなさ、普段クラスでふざけていて見えない部分だと思うけど、強い人間だもの。私と違って意志が強くて忍耐力があって我慢が出来る人間だと思う。ちゃんと龍ヶ丘高校は自分で責任を取る事が出来る人間を選んで入学させているはずよ。絶対に明日になったらみんな元気になって笑顔で、修治の家とかで集まってお酒でも飲んでおしゃべりしてる。そう信じてるよ私は」


 和歌は私を慰めてくれました。彼女は天使のような人でした。卑屈でマイナス思考の私のような腐った人間ではなく、凄くプラス思考で前向きでした。


 この隠れ場所を知っていて良かったです。山を登る前に予め旧トンネルを修治と一緒に中を確認した甲斐がありました。

 先程の狂った自殺ガイドの青年達が言うようにフェンスからの一本道には隠れる場所が全くなかった為、下山してくる太った青年がまだ広場に降りて来てない事を確認して、和歌とこの旧トンネルの瓦礫に登りました。このスペースであれば和歌と二人で隠れる事が出来ると思ったのです。


和歌「ねぇ、怖がらせるわけじゃないんだけど、さっきから私の足に何か当たってて、なんだろうコレ・・・・。」

柴田「え?何?・・・・ちょっといい?・・・・」

 私はトンネル内を匍匐前進で進みました。和歌の細い足の方に回り込んでそれを掴み、入り口付近まで持っていき、月明りでその物体を見てみました。




 ・・・骨でした・・・・・。これは間違いなく骨でした・・・・。人間?・・・動物?・・・・



柴田「・・・・・・・・これは・・・・・・・・・」

 絶叫しそうになる心を押し殺して、私は耐えました。自分の口を抑えて耐えました。

 和歌には詳しく言わないでおこう、ただでさえ恐ろしい目に遭ってるんだ。また怖がらせる事になってしまう。なので私はこの骨の事は何も話さない事にしました。これ以上和歌に心配をかけることはどうしても出来ないです。骨があるような所に居たくないと言って、慌ててこの隠れ場所から出ようとするかもしれない。ここしかないという隠れ場所を極端に嫌がる行動に出るかもしれないからです。


柴田「これは・・・・なんでもない・・・・ただの瓦礫の固まりだった。・・・それより・・・どのタイミングでここを出ようか」

和歌「そっか、よかった・・・。ここから出るのが怖いけど、フェンスの外に出ないと助けを呼ぶことが出来ないし、どこから国道に出ようか・・・・・」


 私達は暗いトンネルの中で今後どのようにするのかを考えました。その間も雨は降り続けて、気の利いた答えが出ないまま時間だけが過ぎていきました。俺がもう少ししっかりしていて・・・・もう少し頭が良ければ・・・・気の利いた答えが出る筈なのに・・・・・・。


 ・・・・・・


 ・・・ガシ・・・

 ・・・ガシ・・・・・



和歌「ん?・・・・・」

柴田「しっ!・・・・・誰か来たぞ」


 悪魔は確実に私達の近くまで迫っていました。

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