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自分の道を切り開く


 今和歌と別れている理由は自分にあるとそう言い聞かせました。

 夜景を眺めて、改めてそう思いました。心が洗われて素直にそう思いました。


 暫くの静寂の後、和歌は重たい口を開きました。


和歌「・・・初めてSEXする時は好きなとSEXした方がいい。それがいいに決まってる。あのクソ顧問なんかに処女をとられるのが、ドブに捨てる事と同じような気がして凄く嫌だったのよ私は。だから初めては大好きなえいちゃんがいい。そう思ったの」


 付き合った当初、和歌は処女でした。私も童貞でした。最初はどのように性行為をしたらいいのかが全く分からず、2人で色々勉強してしっかりと出来るようになりました。和歌はかなり運動神経が良いのでそっちも結構上手でした。


柴田「いや結局、顧問が好きだったんだよ和歌は、俺よりも顧問が。俺は負けたんだよ。ざっくり纏めて言うとそういうことでしょう」



和歌「ううん、もっと言うとね。もう何が言いたいか少し分かってると思うんだけど・・・・私って、ほら普通科じゃん?えいちゃんやリュウとかと一緒で、一応ある程度勉強して普通科水準の学力があると認められて、スポーツ推薦で龍ヶ丘高校に入学したのよね。・・・・えいちゃんも知っていると思うけどバドミントン部って殆どの部員が体育科所属なのよ。スポーツ推薦でうちの学校に入って来ている子が殆ど。要するに上手な子ばっかりが入部する部活。到底私の実力は足りてなくて、私は良くてせいぜいベンチに入れるか入れないかの瀬戸際の選手・・・レギュラーには普通に部活をやっていてもなることは出来ない・・・・・どうしても私は良い大学に特待生で入りたかったから。うちの家計では私立の大学に行くのがちょっと厳しくてね。それで私は自分の人生の為に自分の体を売ったのよ。これは本当に自分の為にやったことなの。自分の事ばっかりでごめん。えいちゃんの気持ちも考えずに・・・・・傷つけてしまってごめん・・・・・」


 これが本当の秘密でした。和歌という女性はなんて強い人間なのでしょう。こんな恥ずかしくて絶対に言いたくない秘め事、心の奥底でくすぶっていた自分の本心を私にしっかりとした口調で話してくれました。

 私と別れた理由も良く分からなかった為、当時はただただ唖然としていた事を思い出します。別れるには理由があります。それを当時の私は無頓着で和歌から聞き出すことが出来なかったんです。和歌が困っている事に気付かなかったんです。


 そういえば少し前、修治も殆どが体育科で構成されている部活動の中で、普通科でしかもバンバン有名大学から推薦が来る、強豪バドミントン部キャプテンでレギュラーだなんてなんかおかしいと、不思議がっていた事があります。

 こういうカラクリがあったようでした。自分の若い体を顧問に明け渡す事で、和歌はキャプテン、そしてレギュラーの位置、大学推薦を獲得していたのです。


 和歌は私の事を本当に嫌いになって、去っていったのではないという事がここでわかりました。私などより、よほど和歌の方が傷ついているはずですが、自分自身が苦しい部分の話を一切私にはしませんでした。


和歌「ごめんえいちゃん・・・・お願い・・・こんな私を許してね・・・。私はえいちゃんの気持ちを分かっているつもり、別れた後もいつまでもいつまでも私を見続けてくれていて嬉しかった。どんなに汚れた私を見ても、それでも私を遠くで好きでいてくれて、私の事を頭の片隅でいつも考えていてくれて・・・・・」

 

 涙ぐむ和歌を抱き寄せました。良く話してくれました。こんな頼りない自分に対して・・・・・。


 もうこれで、和歌の気持ちは分かりました。確かに和歌の家庭はそんなに裕福ではない事を付き合っている時に聞かされていました。今の龍ヶ丘高校も親に結構無理を言って入れて貰ったんです。私や他の友人達がジュースを自動販売機で買って飲んでいる時も、和歌はずっと自分で作ったお茶を持ってきていました。デートの時公園で、勉強で学費の安い公立大学に行けたらいいなぁという話も聞いたし、バドミントン推薦で学費がかからない大学に行けたらいいなぁという話も本人の口から聞きました。学業の成績が低迷していたことも分かっていました。3年生になって最下位の9組まで成績が落ち込んだら後はもう、バドミントンでしか自分の道はない。自分の道は開くことが出来ない。


 私は運命を憎むということまでは思いませんでしたが、和歌の現状、こうするしか無かった。これが最善だった。私は和歌本人ではないですが、恋人である私を捨てて、体目当てである顧問の方に行かなければ自分の人生を切り開くことが出来ない。そのように思ったのでした。

 女を投げ捨てて、スポーツ選手として未熟だった才能、評価の部分を自分の力で補ったのです。


 ふと気がつくと私は涙を流していました。こんなに苦しい決断をしなければならなかった和歌の気持ちを知らずに、ここまでのうのうと高校生活を過ごしていました。きっと誰にも相談できなかった。あの頃すぐ傍に居たはずの私は和歌にとって相談相手としてはふさわしくなかったんだ。

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