乃蒼の短所
残念そうな表情で教頭はまた話しはじめました。
教頭「弟さんの事は今回の話とはまた別なんだ、修治君。非常に残念な事だとここに居る全員が思っていることだ。・・・結果乃蒼さんは自分の頑張りでその事件で退学にはならなかった。本当は一発退学でもよかったような案件だったと思わないかい?」
修治の罵声の後、教頭が冷静に返して、少し間が開いた所で和歌が恐る恐る口を開きました。
和歌「・・・・確かに危ない事に首を突っ込んだかもしれませんが、社会に対する責任感で動いたという事を認めてあげて欲しいんです。乃蒼は両親譲りの責任感が強い人間です。」
教頭「うーん・・・責任感・・・・でもそれは修治君も和歌さんも里中君も同じような気持ちでしょう。彼女の口から責任感が伝わるような?そういう言葉を聞きたかったが、まぁ仕方ない反省文をこっちが読んだんだから。・・・・あの(笑)乃蒼さんが憎くてこちらも言っていると思われたらそれは大間違いですからね。・・・・後それと・・・・・これまでの貴方の担任からの情報を読んでいた時に、もう一つ貴方に聞きたい事があった」
るみ「こちらの資料のことですかね」
るみ先生は自分の手元から一枚のA4サイズの資料を教頭に渡しました。
教頭「貴方は何故、今回の事件に関わったのですか?何かを疑っているわけでは無いですので正直に教えて欲しいのですが、担任の話だと修治君とは仲が良かった?」
乃蒼「ええ・・・まぁ・・・・カラオケの暴行事件の時も一緒に居たし・・・・・」
教頭「しかし、他の四人のメンバーとは仲が良いという風には聞いておりません。こんな危ない所に信頼ができない仲間と行ったのですか?蛇頭ヶ丘に」
乃蒼「修治に誘われたので・・・楽しそうだなと。・・・ただそれだけ」
リュウ「繋がりが無かったわけではありません。俺はこれまでの学校生活のほとんどを乃蒼と同じクラスで過ごしました。そういう仲だから、俺が比較的仲の良い修治に誘ってくれと頼んだんです」
和歌「私はクラスが同じクラスになったことはこれまでありませんが、乃蒼と境遇が似ていて、これまでに何度も話した事があります。両親が夜勤のある仕事をしていて、お互い一人っ子だったこともあったので共通点が多かったです。確か一年生の時の学園祭で話したのが初めてだったかと」
乃蒼「柴田以外とはそれなりの仲。別に普通の関わり方をしてたよ。早川も知っているし・・・信頼が無かったわけではないけど・・・・」
教頭「なるほど、それは分かりました。乃蒼さん、周りの友人に話させるのではなく、自分でそろそろ話せませんかね?もうこの部屋を出たら自分で自分の意見を私と担任に話すチャンスは無いですよ?そういう時間は今後作りません、こちらも忙しいので。チャンスはここしかない、ここをこのまま出たら終わりだと思った方がいいですよ。何故貴方が行ったのかを聞いているんです」
・・・固まりました・・・・・。先程反省文を読まれてからというもの・・・・乃蒼は個性を消してしまっていました。現状打破する力を持っているのに、その力を有益に使わないのです。
教頭の言う通りです。チャンスであるのかもしれません。チャンスを逃して駄目にする人間はたくさん居ます。意地でもしがみ付くような言葉が飛び出さないものでしょうか・・・・・。
修治「なんか、何でも良いから言え乃蒼。その事件で退学処分になった他のみんなの事を思い出せ。俺達が彼らの分まで言うつもりでいかないと。お前は一人じゃないんだぞ。それにお前らしくない」
修治は乃蒼の目を見ずに正面向いてそう言いました。
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