動かない職員
私が扉の向こうの人間と対応すると、相手が私の声を知っている可能性があった為、敢えて和歌に対応をして貰ったのですが、特にそれから向こうは動くこともなく、扉の向こうにずっと立っているようです。
何の音もしない・・・・さっきこっちに向かってきた廊下のギシギシ音もない・・・・向こうも無言、そしてこちらも当然ながら無言・・・・。耳を澄ましています・・・・。
柴田「・・・・・・」
和歌「・・・・・・」
耳打ちして和歌に話します。
柴田「扉の向こうにまだ居るぞ・・・また何かこっちに聞いてくるかも・・・こっちからもう一発なんか言ってやろうか。本当の職員ならクレームにされるのが一番よくないはずだから。」
私がもし職員であれば直ぐに全館、特に使用されている部屋を全室訪問し安否確認したい所ですが、何故先程の女性はこの場所から全く動かないのでしょうか。停電で電話も出来ない、しかも外にも出られない・・・・すなわち大クレームを抱えているのです・・・。
職員は大方・・・居ても2、3人・・・・・。
夜中でそんなにたくさんの職員も居ない筈なので、尚更訪問を急がないといけないような気がしたんです・・・・これは自分から言わせたら絶対におかしいことなのです・・・・・・。
和歌「あの・・・どうかされましたか?他の部屋の安否確認された方がいいんじゃないですか?」
和歌は客としてイラッとしている感じを出して、少しだけ大きめの声で言います。
女性「いや、あの・・・・・・」
女性は和歌の声に驚いたような口調になっていました。
何か動揺している、確実にさっきと雰囲気が変わった・・・・。
女性「・・・停電時の安全装置の確認をさせて頂きたくて・・・・」
和歌「安全装置??それは一体なんのことですか?・・暗くて点検なんかできるんでしょうか?」
女性「できます・・・・なので・・・・少しだけお部屋に入らせていただきたいのですが・・・・・」
和歌「安全装置って入り口の電気錠の事ですか?」
女性「そ・・・・そうです・・・・。」
私は和歌を手で近くに来るように呼びます。
和歌は直ぐに戻ってきました。
私は鼻を摘まんで、少し口調を変えて話しました。
柴田「・・・・あー、動作確認ですか?こっちでやるのでいいですよ。やり方だけ教えて下さい。あなたの言い方だとこのホテルは『停電中』であるのに・・・・玄関入り口の『電気錠』はどうにかすれば動くという事ですよね?どうにかすれば・・・・・・その手順を踏めば・・・。」
少し間が空き、再び女性が話し始めます・・・・。
女性「マニュアルだと、お客様じゃなくて職員がやらないといけないので・・・・」
柴田「マニュアルマニュアルってそれで納得する人と、そうじゃない人も居るんじゃないですかね?とういかお客さんを優先するというマニュアルは無いんですか?プライベート空間をお金払って買っているのに、他人に入って来られて何か作業をされたらこっちは困りますよ。ここに居るより他の部屋に回って他のお客さんの安否確認するなり、停電の原因を究明した方がお互いにとっていいんじゃないですか?動作テストを今部屋に入って来て貰ってやるのもどうかと・・・・・。どうしても、しないといけないというなら、停電時でも電気錠を動作出来るやり方を教えて下さい。・・・・どこにその、電気錠のコントローラーがありますか?私がやります。・・・場所を、在処を教えて下さい!!」
私は相手に滅茶苦茶しっかりと聞こえるように大きい声で叫びました。
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